カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

253 / 278
5章最終話。最後までお付き合いいただきありがとうございます。


第24話 彼ですね

 ルディラ・メルキュールは空を見ていた。

 

 空には光がある。高く高く飛ぶ光。雲と同じ高さにある。しかしその存在感は別格。当然だ。光と同じ空にあるただ高空に浮かぶだけでどこにも辿り着かない浮雲の行方に思いを馳せながら、ルディラは空を眺め続ける。

 

「あの人は大変ですね。……私も来年は大変になるのでしょうか」

 

 天使のいない空にただただ雲が浮かんでいる。ルディラの美貌を彩る水銀色の髪が薄光を放ちながらふわりと浮かんだ。ルディラは己の感情が昂っていることに気づき、目を閉じ心を鎮めた。

 

 髪が垂直の角度を取り戻す。

 

「……全く、面倒くさいですね」

 

 ルディラは()()が乱れたせいで目にかかった前髪を指で払った。ルディラは髪が長いのでよく目にかかる。鏡を見るとルディラは銀色の瞳にカーテンのようにかかる水銀色の長髪のせいで非常に陰気で不機嫌に見える。他人に威圧感も与える。にもかかわらず髪を切らないのは、まさに他人に威圧感を与えられるからというのと、もう一つ、その陰気で不機嫌なさまがルディラの内心にぴったり合っているからだった。

 

 ルディラはそういう人間だった。

 

「……眩しいですね。太陽は」

 

 だから、ルディラの視線を落とした。地上へと。

 

(あ……)

 

 そこには、ルディラが最近注目している男子生徒がいた。いつものように木陰の下のベンチに座って恋人とお弁当を食べている。ルディラは手すりに肘をつき頬杖をついて嘆息した。

 

「……また、彼女と一緒にいるのですか。いつも一緒にいますね。別に人の好みをとやかく言うつもりはありませんが……()()()()()()。あの子は。……そろそろ戻りますかね。本校舎に」

 

 人のいない場所を求めて屋上を訪れたルディラは、風を浴びつつラグナロク学園の小都市染みた景色を眺める気分転換にも飽きたので後者に戻ることにした。背を翻しかけて、最後にルディラはもう一度空を見る。もう天使はいない。あっという間にどこかに飛び立ってしまった。

 

 おそらく、魔獣を退治するために。

 

 魔獣――。

 

「……また、思い出してしまいました。次の試験、誰と組みましょうかね……」

 

 ルディラは前髪に隠れた銀色の瞳をタイル張りの地面に落としながら給水塔の下の階段へと歩む。その脳裏にふと、数日前に見たダンジョンアタックの景色が蘇る。

 

「……()()()()、ですね。私に足りないものを埋められるのは、あの中だと、やはり――」

 

 無人の階段にカツーン、カツーンと冷たく乾いた足音が響く。そのミス・ラグナロクにも選ばれた程の孤峰の美貌にかかる銀髪をそのおぞましい程完璧なラインを描くしなやかな指で払いながらルディラは呟いた。

 

「《彼》ですね」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。