カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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 超説明会。情報量が多くなりすぎたが、カー学の背景設定を全部明かしておきたかった。半分設定資料みたいな話。


後日談
クロウの歴史授業 ―この世界の歴史―


 カッ、カッ!

 

 黒板にチョークを叩きつける音が響く。

 

「魔符士の本来の仕事は魔物との戦闘だ。近代では厳格なルールの下、【究命符】という所有者を気絶させる代わりに致命傷を一度だけ防ぐ札を1枚ずつ所持して戦うスポーツ興行的なカードバトルが符闘会の熱狂が波及する形で発展し、それを仕事とする魔符士も多いがな。だが、歴史を省みるとやはり魔符士の本懐は魔物との戦闘だと言えるだろう」

 

 5月1日。入学から1か月も経てば新入生も嫌でもラグナロク学園の校風を学ぶ。面倒臭がりだが根っこの所はどうしようもなく真面目なのだと聞けば分かるクロウの講義に現状声立てる程の不満がないのと、授業を妨げると普通に暴行を働くこともあり、G組の生徒たちは大人しく講義を聞いている。

 

「今日はその魔物とダンジョンの来歴、そして定義についておさらいしよう。俺たちの本来の敵がどういう存在なのか。魔物と戦う上でそれを知ることは決して無意義ではないはずだ。前置きがやや長くなったがこれから本題に入る。次の試験に関わる重要項目だからよく聞いて欲しいだ」

 

 クロウが黒板に白チョークを叩きつける。

 

 カッカッ!

 

【魔物=異界の侵略者】

 

 【】で囲われた黒板上部の文字列の下にクロウが喋りつつ補足を書き加える。

 

「今書いた通り魔物は異界の侵略者だ。次元の壁の歪を越えてこの世界に来襲する。まぁ小学生でも知っている、今更話すまでもないことだが――」

 

「……」

 

 教室の片隅。シャルナの机の上のメモ帳に走らせていたペンの動きがピタッと止まる。それからまた無表情のままにカリカリと筆記を再開する。シャルナは小学校を出ていない――玄咲は何も見なかった振りをしてクロウの話の傾聴を続ける。

 

「だが、その歴史背景まで知っている奴は少数派なんじゃないかと思う。なので今日は魔物とダンジョンの来歴について詳しく説明していく。大人しく聞くように」

 

 クロウが再び黒板にチョークで文字を刻む。

 

【魔物とダンジョンの発生原因はカード魔法の濫用】

 

「どういうことかと言うと」

 

 カッカッ!

 

 ・今から1000年前。カード魔法の発明と濫用により、1万年間変動がなく【固形化】していた世界に満ちる【世界魔力】が絶え間なく揺らぎ続ける。

 ・ある日、とうとう固形化した魔力が崩壊し超巨大魔力震が起こる。この魔力震を【世界転壊(ワールド・コラプス)】と呼ぶ。

 ・世界中に魔力層の亀裂が生じる。その亀裂から、魔力次元【魔界】に魔力体として彷徨う生物【魔物】が物質界であるこの世界に侵略目的で流入する。

 ・ついでに魔界の一部もこの世界と融合する。魔界と物質界両方の性質を合わせ持つ超特殊空間【ダンジョン】が誕生する。

 ・ダンジョンは外の世界の100倍の魔力で満ちている。100倍の魔力で満ちたダンジョン内でのみ利用できるカードをダンジョンカードという。

 ・また、ダンジョンは長期間放置するとダンジョンコラプスを起こし魔物が溢れ出す。定期的な間引きが必要。

 ・世界の魔力が【流体化】し再安定した後も魔力層の亀裂は残り、この世界に魔物とダンジョンが根付く。

 ・現代におけるダンジョンは国家資源である。

 

「……」

 

 カキカキカキカキ!

 

 シャルナが無言で猛スピードでペンを走らせる。なのに文字が全く乱れていない。シャルナの意外な特技に玄咲は感心する。他にも筆記をしている生徒はちらほらいる。入学から1か月たってG組の生徒にも少しずつ意識変化が訪れていた。知識面も含めて常時全力で駆け抜けなけらば生き残れない。そういう学園だと理解し始めたのだ。カッカッと板書の音が響く教室の中、少し間を開けてからクロウが説明を再開した。

 

「世界転壊以後100年間に渡り世界の魔力は不安定な状態が続いた。その間、魔界からの魔物の侵略は絶え間なく続き人類は総力戦を余儀なくされた。この100年間を」

 

【王魔戦線時代】

 

「と呼ぶ」

 

 ざわ。

 

 王魔戦線時代、とクロウが口にした瞬間、教室がざわめいた。

 

「王魔戦線時代だってよ。とうとうきたな」

 

「俺この時代には詳しいぜ。何せ漫画逢魔戦尖学園を全巻読んだからな……!」

 

「あれ脚色だらけだからあんま役に立たないぞ」

 

「ふふ。歴史と言ったらやっぱ王戦時代よね……!」

 

 あまりにも有名過ぎる時代ゆえ、生徒たちの反応も劇的だった。シャルナもまた玄咲に話しかける。

 

「ねぇ玄咲。私もこの時代、名前知ってる。というか、知らない人なんて、いないよね」

 

「……らしいな。国によって伝え方は違うらしいけど、赤子でもなければまず知ってる時代、らしいな」

 

「らしい、多いね」

 

「……断言はできないからな」

 

 断言して恥を掻いた過去が玄咲から断定系を奪っていた。しかし、当然王魔戦線時代についての知識も玄咲の頭の中には詰め込まれている。転生から1か月経って尚、微塵も薄れていない。

 

(――王魔戦線時代。CMAのメインストーリーにも深く関わってくる最重要背景設定の一つ。人と魔物の100年戦争。まるで物語のようにドラスティックな時代。それ故人気が高く、幾度も小説や漫画の題材にされている。街中の書店をうろつくと王魔戦線時代をモチーフにした逢魔戦尖学園という漫画が購入可能で、とあるキャラとのイベントを進めるために必須となる……無駄なことまで思い出してしまったな。一応知識はあるがどこまで当てになるものか……裏合わせのためにもしっかり話を聞いておかないとな)

 

「今日の授業のメインはこの王魔戦線時代の話だ。少し長い話になる。この時代は掘り下げるとキリがないので魔符士科の授業ではざっくりとした沿革の解説のみにとどめる。興味がある奴は図書館にいくなりして自分で調べてくれ。では説明を開始する」

 

 クロウは黒板に要点を板書しつつ解説を始める。

 

【王魔戦線時代とは】

 

「世界転換以降の魔力が不安定となり際限なく魔物が魔界から流入してきた100年間のことだ。王魔種と呼ばれる強力な魔物が跋扈し、最終的に王魔王アイギス率いる魔軍と人類連合軍との総力戦となり、世界そのものが魔軍との戦いの最前線とでも呼ぶべき状態になった時代を揶揄してつけられ名前だ。最終的に勇者兵装と言われるオーパーツ性能をしたADとカード、そして光の精霊神のカードを授かった勇者カーン・スパークが魔王アイギスを相打ちで倒したことで王魔戦争時代は終焉へと向かっていった。王魔王アイギスの軍に併合されていた他の王魔種も含めた当時の代表的な魔物はカーンが魔王を倒す前に殆ど倒してしまっていたし、丁度そのタイミングで世界の魔力が流体化し再安定したからだ。カード魔法に世界が適応したとも表現されるな。王魔王アイギスの討滅との関連性は不明だが、1説ではただ生きてるだけで膨大な魔力を発し世界魔力を乱し続けたアイギスを筆頭とする王魔種たちが粗方討滅されたことで再安定に繋がったのではないかと言われている。だが、それまでの間世界は常に魔物に侵略され続け、全人類が魔物との戦争を余儀なくされた。そういう時代だったらしい」

 

(……王魔戦線時代。改めて聞いても、完全にダークファンタジーの世界だよな。いや、そもそもCMAは明るい作風で誤魔化しているだけで基本ダークなんだが。サンダージョーとか登場するし)

 

 カリカリ。カリカリ。

 

 筆記音が響く教室の中でクロウが講義を纏める。

 

「ちなみにこの時代のカードやADは古代カード、古代ADと呼ばれている。ランクや補正値がないのが現代との一番の差異だな。ランクも補正値も近代に発案された概念なんだ。古代カードは平均して現代のカードより貧弱だ。現代のランク1のカードでも王魔戦争時代の最初の方なら最前線で通用する。今でいうランク3程度のカードを大真面目に切り札として運用していたのが初期の王魔戦争時代なんだ。ADも同様だ。補正値10のベーシックガンさえ当時の技術力からしたら推薦ものの威力だろう。勇者兵装みたいな例外はあれど、当時の技術力はその程度だったんだ。魔物という外敵がいないから兵器として発展させる必要がなかったんだよ。

 

 そんな有様だから当然人類は魔物に歯が立たなかった。殺されまくった。だが、そんな当時の人類にも唯一魔物と互せる力があった。それが」

 

 カッ、カッ!

 

【エレメンタル・カード】

 

「だ。当時はまだ精霊が数多くいた。必然、人類と友誼を結ぶ精霊も数多くいた。だからエレメンタル・カードもたくさんあった。並外れた精神力を持った人間がなる召喚士と呼ばれる職業があったくらいだ。王魔時代最初期の人類はエレメンタルカードを主力として魔物と戦っていたんだよ。

 

 精霊も、この世界は魔物の魔物の進行を食いとどめる瀬戸際の世界で、この世界で食いとどめないと魔物が今度は精霊界に進行してくる、というか実際してきていたらしいから、人類に必死で協力した。この世界を戦場として精霊界の被害を抑えたかったんだな。そのお陰で人類は何とか魔物と渡り合うことができた。

 

 だがな、精霊も普通に死ぬんだ。

 

 一枚のエレメンタル・カードを複数人で使い回す。そうやって人類は精霊に心身ともに頼り切った……とまでは言わないが、人類も人類で全力で戦っていたらしいが、やはり実際の戦力的には精霊に頼り切った戦いを繰り広げていたらしい。そりゃ、ちんけな補正値とランクのADやカードでSSSランク以上の魔物である王魔種の相手なんてできるはずがないからな。止むを得ないことだろう。人類は精霊を酷使することでなんとか戦線を保っていた。

 

 だが、前述の通り精霊も普通に死ぬんだ。

 

 戦いの中で多くの精霊が死んでいった。その中にはランク9の王クラスの精霊も含まれていた。人類のAD技術が未熟で全力を発揮し切れなかったというのもあるだろう。だが、それ以上に、それ程当時の魔物の水準というのは高かったんだ。SSランクが最低基準とされる王魔種という魔物はそれ程の化け物だったんだ。また、普通の戦いも、毎日、限りなく、終わりなく行われた。だから、精霊はどんどん摩耗し、擦り切れ、果ては戦いに負け、戦死し、とにかくこの時代は多くの精霊が死んだ。現代でエレメンタルカードが希少とされる所以はこの時代に精霊が数を減らし過ぎたせいだ。エレメンタルカードの譲渡という行為の危険性を精霊が思い知ったからでもあるな。強制的に召喚され、戦わされ、そして死ぬ。まるで奴隷だ。当時の戦い疲れた精霊の中には召喚直後にエレメンタルカードを破壊し精霊界に引き籠ってしまった精霊もいたらしい。合意の下でエレメンタルカードを破壊してもらった精霊とかもな。でも、多くの精霊は死ぬまで戦った。人類のために、創世神フェルディナの号令の下、身を投げ打った。そのおかげで、人類は最も厳しい時代を生き残ることができた。

 

 ここまでを精魔戦争時代と呼ぶ。そして次の時代を」

 

【人霊戦争時代】

 

 と呼ぶ」

 

 カッ、カッ。

 

 神妙な無言が満ちた教室にクロウの板書の音が響く。

 

「これ以降、精霊の奮闘で王魔種が数を減らし、世界魔力がやや安定して魔物の出現頻度が減り、人類が精霊が稼いだ時間で魔工学を死に物狂いで発展させてADやカードをどんどん進化させていった。精霊が命がけで倒した王魔種を筆頭とする強力な魔物の素材には事欠かなかったのも追い風だった。人類は精霊と協力して戦えるまでに進化した。――時間がねぇな。少し飛ばす。とにかくこの時代に人類はすさまじい勢いで戦力を整えた。魔物の出現ペースも落ち、残る王魔種も数える程となり、そしてとうとう人類は勢力図を塗り替えた。このままなら再び世界の支配権を魔物から取り戻せる。人類は生存を確信した。だが、そこで現れたのが最強最悪の王魔種――」

 

 そしてクロウはその名を黒板に刻む。

 

 カッ、カッ。

 

【王魔王アイギス】

 

 ――だ。この世界に知らない者はいないであろう、史上最強にして史上最悪の魔物だ。この王魔王アイギスが世界の勢力図を再び塗り替えてしまった。そしてその手管がそれまでの魔物と明らかに違った。アイギスはとにかく狡猾だった。ただ強いだけではなかった。知性があった。戦略を駆使するだけの人類すら凌駕するほどの知能が。そして何より――残酷だった。知性がありながら、残虐な本性を抑えきれず、理性に反した非合理な行動をとることもままあった。人間牧場の資料はR15指定されて子供には見せられないとされているくらいだ。俺も天之神社で見たことがあるが種族の違いというものをあれ程感じさせられた資料はなかったな……」

 

 クロウは遠い目をした。それ程、ショッキングだったのだろう。

 

「でだ、アイギスは前述の通り戦略を駆使した。この世界に来てまず行ったことが素性を隠し人類の英雄とされる魔符士を狙い殺し、拷問死体を人類の拠点に送る事だった。謎の存在による度重なるこの所業は戦力はもちろん人類の士気も打ち砕いた。人類の活動はしばらく消極的になった。そしてその間にアイギスはそれまでバラバラに動いていた魔物たちを圧倒的な力で従え軍として再編してしまった。その中には王魔種も含まれた。そしてその王魔軍を率いて――アイギスは人類に戦争を仕掛けた――大奴隷時代の幕開けだ」

 

 大奴隷時代。人類の地獄とされる時代。

 

「団結した魔物はそれまでの数倍から数十倍の強さを誇った。戦場の柱となる英雄を失っていたこともあり人類は容易く蹂躙された。殺し尽くされた。当時の主要な魔符士は全て。――いや、例外もいたか。容姿に優れた女性だけはアイギスに生かされ、それから――」

 

 クロウはそれからアイギスの残虐な所業を語った。ラグナロク学園にR18という概念はないらしい。

 

「――人間牧場ってのはそういう使われ方をしていた訳だ。容姿の良い女性は生きて捕らえるように言われていたし、容姿の良い男性も繁殖用に捉えられ、苗床として使われた。アイギスの生殖をさせると腹立たしいという理由で、文字通り生殖機能だけ取り出した苗床としてな。詳細は流石に語れない。残酷だし時間が押してる。

 

 アイギスは人類の半数を殺した辺りで侵略をやめた。そして人間牧場の管理に注力した。後世に残された魔物側の資料によると、どうやら人間牧場で遊ぶのに嵌り過ぎて戦争をするのが面倒臭くなったらしい。以降アイギスは部下に支配された地域の人類の管理、そして残った人類の掃討と捕獲を任せ、人間牧場に引き籠った。それがアイギスの敗因となった。高い知能を持ちながら残虐性を抑えられなかったというのはこういう所だな。時々非合理に動くんだ。だから人類は滅ぼされなかった。アイギスが本気なら間違いなく人類は滅んでいただろう。

 

 それから15年の時が過ぎた。そして――」

 

 カキカキカキ!

 

【勇者カーン・スパーク】

 

 人も魔物も知らぬ孤島で生まれていた勇者カーンが魂成期を迎える。光の精霊神に選ばれ、虹色の魔力を持ち、オーパーツとされる勇者AD、そして勇者カードを使いこなす、学園長を除けば、人類史上最強とされる魔符士だ。そして王魔戦線時代を締めくくる最後の5年間、

 

【神話勇戦時代】

 

 が始まる。それからは――」

 

 

 ――それからの話はまさしく神話だった。勇者の果てしない雄々しさ、強さ、そして勇敢さ。そしてそれに対する魔王の残虐さ、無道なまでの強さ、そして何より小物さ――そう、王魔王アイギスはどこまでも小物臭かった。最強として君臨している間はギリギリ隠れていたが、勇者という己に匹敵し得る個が現れた途端その生来の性分がむき出しになった。勇者出現以降のアイギスの振る舞いは超越者の振る舞いではなく、完全に力を得た小物の振る舞いだった。勇者を恐れ、絶対直接敵対せず、血生臭い罠をいくつも貼った。仲間の拷問死体を送り付けたり、勇者のいない地点を重点的に襲ったり、とにかく卑劣だった。決して一人では行動せず、その一方で好みの女がいるという理由で単独で人の集落を襲いたまたまそこにいた勇者に返り討ちにされたり、その八つ当たりで部下を何十匹と殺したり、とにかく小物だった。

 

 だが、それ故に恐ろしかった。ただの強者にはない恐ろしさがあった。知性を凌駕するほどの醜悪な本性。もし勇者がアイギスに負ければその後の世界は勇者出現の芽すら出ないほど徹底的に人類が管理された大奴隷時代以上の地獄になることは確定的に明らかだった。アイギスは桁外れの化け物だった。そんなアイギス相手にカーンは幾度も血まみれの奸計を仕掛けられ、しかしその全てを人とは思えぬ精神力と力で乗り越え、そしてとうとう――。

 

「――僧侶。タンク。魔法使い。剣士。全ての仲間を残酷に殺されながらも尚奮い立ち戦い続けた勇者の奮闘によりとうとう魔王アイギスは倒された。アイギスが倒れて程なくして世界の魔力も完全安定した。王魔戦線時代はこうして終焉を迎え――膨大な犠牲と引き換えにな」

 

 黒板に数字を刻んだ。

 

【10億人】

 

「王魔戦線時代の人類の総死者数だ。これは当時の人類のほぼ半数とされる。人類は本当の意味で魔王軍と総力戦を繰り広げていたんだ。人類史上もっとも血に塗れた時代。それが王魔戦線時代なんだよ。

 

 また、勇者も魔王アイギスとの一騎打ちの最後、ともに光に包まれ姿を消したという。アイギスがそれ以降現れない以上倒したのは間違いないのだろうが、勇者もまた消えてしまった。謎の多い最後で未だ議論が交わされている。

 

 この時代の先人の奮闘のお陰で俺たちの今の自由がある。もしそれがなければ今頃世界中がアイギスの人間牧場になっていたかもしれない。考えたくもないことだがな。とにかく、アイギスの残虐さも相まって魔王戦線時代は地獄そのものな時代だった。後から調べる分には面白いんだけどな。俺もこの時代は大好きで学生時代結構個人的に調べて――っと」

 

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 

 授業終了のチャイム。クロウは早口で講義を終わらせる。

 

「もう少しだけ補足すると王魔戦線時代の後は大ダンジョン時代という比較的平和な時代が300年続く。活気と希望に満ちた人類復興の時代だ。その後ラグナロク・ウォーが起こり災戦時代が到来し、一度人類が滅びかけ、そして今の時代。天下壱符闘会を中心として世界が動くアフターウォー時代に繋がる。すまない。少し長引いた。学生時代を思い出して少し熱が入ってしまった。もっと詳しく知りたい奴は図書館に行ってくれ。古代カードとか古代ADとか王魔種とか、他にも面白い話が一杯あるぞ。以上」

 

「ねぇねぇ。先生が、授業時間、はみ出すの、珍しいね」

 

「それだけ王魔戦線時代が好きなんだろう。王魔戦線時代はコンテンツとして人気があって、世界中で演劇や漫画や小説の題材にされてるからな。もちろんパチンコにも王魔戦線時代をテーマにした台がある。体験するのは絶対ごめんだが後から調べる分には面白い時代だからな。詳しく掘り下げて言ったら英雄や精霊の名前が何千何万と出てくる時代なんだよ」

 

「へー……なんか、興味湧いてきた」

 

「天之神社とかも当時の資料がたくさん残っているらしい。あそこは資料館でもあるから」

 

「天之、神社?」

 

「生徒会長の実家さ」

 

「なる、ほど……」

 

(いつか、シャルと尋ねてみたいな……)

 

 その後2人はいつものように2人でお弁当を食べながら王魔戦線時代についての雑談をした。途中キララが混ざり、それからなぜかしるけんが絡んできた。

 

「王魔戦線時代はカードの出力不足を補うために代償を捧げて出力を上げるタイプの禁止カードが大量製造された時代なのです! どうせ死ぬ命なら死ぬ前に有効活用するべきというのが当時主流の考えだったらしいです! 有名な禁止カードを上げると例えば生贄の祭壇――」

 

「へー……」

 

「光ヶ崎家の先祖の光ヶ崎リューガは王魔戦線時代を生き残った英雄の一人なのです! 王魔種を倒したこともあるらしいのです! プレイアズ王国初代王女と共に国を立ち上げたのです! 王女を愛していたらしいのですが、王女は時代を共に生き抜いた精霊を愛していたのです! なので光ヶ崎リューガは慕情を胸に秘め建国を共にした王女をずっと傍で支え続ける道を選んだらしいのです! それがハンターの名家光ヶ崎家の国を守る盾としての在り方の大元であり、そこには愛を勝ち取る権利を得られなかった男の悲しきも雄々しき信念が――」

 

「ふーん……」

 

「水姫家の先祖は当時流行ったカルト宗教の教祖なのです! 末法の世に邪教が蔓延るのは世の常であり、しかし戦いが終わった途端それまでの宗教家としての役割を脱ぎ捨てた辺り実利家としての水姫の血を感じるというか――」

 

「ほーん……」

 

「当時はまだ科学技術という近代には失われた技術が残っていたらしいのです。純粋薬学を基とするケミカルの源流もさかのぼれば王魔戦線時代の薬学に源泉を見つけられると――」

 

「っ! よく知ってるね。ケミカル製作者でも知らない人多いのに――!」

 

「は、はひっ!」

 

 しるけんは意外と博識だった。どうやら得意分野には強いタイプらしい。他にも中々興味深い話が聞けた。たまには普段交流のない生徒と交流するのも悪くないなと玄咲は思った。

 

 

 当時と比べればずっと平和な時代のお昼休みの一時だった。

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