カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第2話 慌ただしい朝

 朝。

 

 通学路。

 

 ガヤガヤと今日は上級生たちが騒がしい。

 

「例年通りならそろそろだな」

 

「ああ。今年は導く側だ。緊張するぜ……」

 

「優秀な1年生を捕まえないと。うちの部活にイキの良いのが何人かいて――」

 

 聞こえてくる会話の断片から話している内容は容易に想像がついた。シャルナが玄咲に話しかける。

 

「ね、きたね。第2回目の退学試験」

 

「ああ。そのために念入りに準備してきた。次の試験も当然生き残るぞ」

 

「うん。……緊張するね」

 

「……」

 

 退学試験。否が応でも生徒たちが減る魔の区域。前回は殆ど面識のないどうでもいい生徒が退学になるだけだったし、そもそもサンダージョーがらみで退学試験どころではなかった。

 

 だが、今回は違う。

 

 親しい生徒たちが何人か退学になるだろう。そのことを思うとどうしても、ゲームの初回イベントだとワクワクしていたり、サンダージョーへの憎しみばかりがあった前回とは違う受け取り方をしてしまう。シリアスな面持ちで玄咲は頷きかける。

 

「……ああ。気を引き締め――」

 

「おっはよー! 後輩くんっ!」

 

「なっ!? げふっ、げふっ!」

 

 その背を元気のいい声と共に張り手が襲う。せき込む玄咲が振り返ると、そこにはここ数週間で一番親しくなった上級生の姿があった。

 

 黒澤真央。

 

 そして灰丸心亜だ。

 

「真央先輩に、心亜先輩。おはようございます。元気がいいですね……」

 

「あったりまえだよー。私はいつでも楽しくいたいの。だから楽しくいられるダンジョン同好会を作ったの。退学試験だからってねー、その主義はまげてやんないよ。大体私が落ちる訳ないし。不安要素はないかな」

 

 真央は不敵に笑って断言した。真央は3年生並のレベルと強さを既に身に着けている。ラグナロク学園にあって真央のスタンスを貫く。そのためには並々ならぬ実力が必要となり、その実力が真央にはあるのだとここ数週間で玄咲たちは実体験を以て理解していた。

 

「ね。心亜」

 

「……そうですね」

 

 真央が隣にいる心亜に同意を求める。心亜は地味でさして強くもない。いつも控えめな態度で、今もそうだ。

 

 だけど、不安そうな顔はしていない。

 

「今度の試験は私たち向けですから、はい。きっと大丈夫でしょう」

 

 心亜のらしからぬ強気な発言に玄咲とシャルナは呆気にとられる。真央はカラカラと笑った。

 

「その意気その意気。後輩くんたちもあまりしけた顔してたら駄目だよ。ラグナロク学園は強気なくらいで丁度いいの。まず気持ちで勝つ! そしてできれば楽しくやる! それが一番!」

 

「――そうですね」

 

 真央の言葉で玄咲はこの世界の知恵が息づいてきたが故の悪い意味での硬さに囚われていたことを自覚した。笑みを浮かべて真央に礼を言う。

 

「ありがとうございます。真央先輩は最高の先輩です」

 

「――」

 

 真央はなぜか照れて顔を背けながら礼を言った。

 

「う、うん。あんがと……後輩くんって普通にしてると普通に格好いいんだよなぁ……」

 

「えっ」

 

「勘違いしないでください。真央はただ容姿が整っているという客観的事実を口にしただけです。勘違いしないでください」

 

「あ、はい。分かってます」

 

「そうだよ玄咲。勘違いしない」

 

「シャル。分かってるって。大体勘違いなんてするはずがない。先輩と俺はただの先輩後輩の関係で――」

 

 ――4人は穏やかな会話を楽しみながら通学路を歩く。校門を抜け別れが近づいたところで真央が親指で自分を指さし、いつものように楽しそうな笑顔で、

 

「もしパートナーに困ったら私たちに声かけなよ。その時は喜んで後輩くんたちと組んであげるよ」

 

「絶対後悔はさせません。頼りにしててください」

 

「――はい。その時はよろしくお願いします」

 

「うん。お願い、します」

 

いつもの調子の真央と話している内に玄咲もシャルナも大分気が楽になっていた。4人は校舎に入って階段を上がって、階段を上がったところで真央たちと別れ。

 

 いつものようにG組へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

「第2回目の退学試験、来ちゃったねー」

 

 キララが玄咲の机にもたれかかりながらため息をついた。

 

「憂鬱だなー。合格できるかなー」

 

「なに。いつも通りやるだけさ。実力を出し切れば必ず合格できる。緊張のし過ぎはよくない。キララクラスの実力があれば必ず受かるさ。あとはメンタルの問題だ」

 

「朝、先輩から言われたこと、ほぼそのまんまだね」

 

「……」

 

 玄咲は押し黙った。キララは声を上げて笑った。

 

「あはは。天之君らしくないと思った。でもありがとね。気が楽になったよ」

 

「う、うむ。受け売りだがキララの役に立ったならそれでいい」

 

「んー……そだね」

 

 その後はしばらくキララと話をしていた。

 

「天之」

 

「なんだ狂夜くん」

 

 唐突に声をかけてきた狂夜に玄咲は普通に対応した。狂夜は大体いつも唐突だ。もはや慣れっこだった。

 

「……ふん。大丈夫そうだな。不安に押しつぶされていないか見にきただけだ。余計な心配だったか」

 

「そうか」

 

「じゃあな。それだけだ」

 

 ……沈黙。から、キララがひそひそと、

 

「あいつ、仲良くなりたいなら素直になればいいのにね。ロンリーウルフ拗らせすぎでしょ」

 

「か、彼は孤高なんだ。馴れ合いは趣味じゃないんだよ」

 

「それは最近、無理がある気が、してきた。ちょっとキャラ、迷走気味だよね……」

 

 パァン!

 

 3人で会話していると土竜さとしが突然教室に駆け込んできて立てつけの悪い扉をその怪力でパァン! と開け放った。大声で叫ぶ。

 

「た、大変だぜリーダー! 今日から、第二回目の退学試験が始まるらしいぜッッッ!!!!」

 

「……」

 

 みんな知ってる。そして今日から始まる訳ではない。思うも、誰も突っ込まなかった。さとしが馬鹿なのも今さらだったからだ。一人大騒ぎして慕っている玄咲の元へと駆け寄ってくるさとしをやや適当に相手していると、

 

「センセ! 起きてください!」

 

 ムクリ。

 

 教壇の陰から寝袋に収まったクロウが水名月雫に起こされて起き上がり、寝袋を脱いで寝ぼけ眼をこすりながら言った。

 

「おはようみんな……今日は大事な試験の説明の日だからちゃんと学校に泊まって十分睡眠時間を取ったぞ……俺だって教師として成長してるんだ……」

 

「キャー! センセ、素敵です!」

 

「……」

 

 退化なのか進化なのか分からない有様に皆何も言えなかった。クロウは寝袋を片付けながら、G組全員に言う。

 

「といっても、今日俺のやることは出席確認だけなんだけどな。昨日告知した通り第2回目の全校生徒合同退学試験の概要は大講堂で全校生徒に一斉に行う。慣れない説明をやらされなくてそこは気が楽だぜ……」

 

 クロウは説明をあまり好まない。面倒くさいからだ。それでも毎回きっちりやる辺りやっぱり根は真面目だった。

 

「それじゃHRを始めようか。出席確認と以後の簡単な流れの説明の後、大講堂に移動する。ではまずは出席確認から――」

 

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