カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第16話 天之神社9 ―勇者AD―

「お、おお……! おおおおおおおおおおおおおお!」

 

 玄咲の手に今虹色に輝く宝剣が握られている。

 震える手に伝説が握られている。

 勇者AD。天虹剣セイント・ソード。

 勇者カーン・スパークが最後に使っていた最強のADだ。

 原作にもなかったイベントに玄咲のテンションは上がりっぱなしだ。

 

「こ、これが本物のセイント・ソード。凄い存在感だ……!」

「う、うん。ディアボロス・ブレイカーには劣るけどね……」

「ま、まぁ、うん……それにしてもこれ、本物だったんですね」

「いえ、展示してるのは模造品でです。それは隠し倉庫に保管していた本物のセイント・ソードです」

「な、なるほど、道理でさっきより迫力が増して見えたはずだ。しかし、いいんですか? そんな貴重なものを持ち出して?」

「私には……マギサ法がある」

(あ、良くないけどゴリ押すつもりなんだ)

「さ、早く起動を。虹色の魔力の持ち主なら起動できるはずですっ! 取り合えずこれを」

 

 明麗が1枚のカードを玄咲に渡す。

 

 ランク1

 光属性

 ライト・フラッシュ

 

「ライト・フラッシュ!」

 

 セイント・ソードにカードをインサートした玄咲が叫ぶ。

 

 カッ!

 

「うおっ、まぶしっ!」

 

 間近で光を浴びた玄咲は目を瞑り顔を背けた。けたたましい程の光量。シュヴァルツ・ブリンガーより間違いなく格上。伝説のADの出力の一端が垣間見えた。

 

(流石勇者が使ったADなだけはある。凄い出力だ)

 

「……本当に起動、できた。驚きました! 凄い! 凄いです天之くん!」

 

 明麗がピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ。玄咲は悪くない気分になった。

 

「ふ、ふふ。いや、それ程でも、ふ、ふふ……」

「では次は、本番です!」

 

 シャルナが言葉を挟む間もなく明麗は玄咲にまた一枚のカードを渡した。

 

 リベリオン・フォース。

 

 またも博物館に展示されていた勇者カードだ。玄咲は戦々恐々カードを受け取り、震える手でセイント・ソードにカードをインサートした。

 

「天に、天に向けて撃ってくださいよ。伝承通りならランク10の威力があるので」

 

「ラ、ランク10……」

 

「わ、分かってます。ゴクリ……それでは、行きます!」

 

 玄咲はセイント・ソードを頭上に構え、声高く叫んだ。

 

 

「リベリオン・フォース!」

 

 

 

 

 

【エタ村】

 

「……ん? なんだべ、ありゃ?」

 

 プレイアズ王国の田舎に住む農家の畑高士(はたけたかし)は仕事中に天麓山の方向に不思議なものを見た。同じく夫と農業を営んでいた畑孝子(はたけたかこ)も顔を上げて天麓山の方向を見た。

 

 虹色の光が空高く迸っている。孝子の中で疑問はすぐに氷解した。

 

「あんれはぁ……魔法の光だっぺ。きっと明麗さまの魔法だっぺ」

「ああ。そうかぁ。明麗さまは天才だべなぁ。あれくらいの魔法使うっぺなぁ。いやぁ、凄いっぺ」

「耕士もあれくらいの魔符士になればいいだがなぁ」

「ははは。耕士はそこまでの器じゃないっぺ。ラグナロク学園に入学できただけでももうけもんだっぺ。学園の端っこでも無事に生きて卒業してくれればそれ以上は望まないっぺ。……でも、立派な魔符士になるといいだべなぁ」

「そうだがなぁ……そん時はたくさん赤飯炊くだ」

「んだんだ。そん時のために農業再開すっぺ」

「おうだ。泣いて戻ってきた時耕士に継がせる畑も用意しとかなあかんだぎゃな」

 

 畑夫妻は虹色の光のことはすぐに忘れて農業を再開した。大空の光とたくさんの愛情を受けて育った稲穂が虹色の光にも負けない眩しさでどこまでも光り輝いている。

 

 

 

 

 

 

 

【スラム街】

 

「……っけ。どうでもいい」

 

 いつものギラついた日常が繰り広げられている。

 

 

 

 

 

【プレイアズ王城】

 

「ッ! 勇者ADッ! カードッ!」

 

 プライアは執務室で叫んだ。

 

 

 

 

 

【ラグナロク学園】

 

「……」

 

 マギサはちらっと窓に視線を一度やってすぐに机上に戻しカードコレクションの手入れを再開した。

 

 

 

 

 

「お、おおおおおおおお……!」

 

 宝剣の先端から虹色の光が迸り止まらない。間違いなく過去最高のシングルマジック。勇者の伝説は真実だった。勇者ADも勇者カードもオーパーツだった。感動が玄咲の心を揺らしていた。

 

「す、凄い……!」

 

 シャルナの瞳も魔法の光を反射して虹色に輝いている。空高く昇る虹色の光の奔流はいつまでも止まらない。

 

 中々、途切れない。

 

「――もういいですよ。天之くん。疲れたでしょう」

「え? あ、そうですね……どうやって止めるんですか?」

「え? なんか、こう魔力の流れを締める感じで、こう――」

「……」

「……え? できないんですか?」

「ッ! できるッ!」

「ええ……」

「ふ、ふんッッ!!!!!」

「……」

「ふんッ!!!!!!!!」

 

 しばらくふんばったらなんか止まった。生き恥と引き換えに玄咲の魔力制御の能力が少し上がった。

 

 

 

 

「――凄い、ですね。勇者ADに、勇者カード。伝承に違わぬ化け物ADにカードだ……」

 

「――そうですね。流石に他の古代ADやカードとは一回り格が違うようです。――なるほど。これが、勇者ADに、カード……」

 

 明麗は感慨深げに玄咲の手元を見つめる。光を失ったADとカードがその瞳に移る。

 

 呟く。

 

「……もしかしたら」

 

 呟きかけた。

 

「あ、明麗さん! 今のは」

 

「あ、母さん」

 

 その時、異変に気がついた明麗の母が裏庭に下駄を吐いてやってきて、目を剥いた。

 

「勇者ADッ! カードッ! あ、あがが、ほんも、本物っ、持ち出し、起動し、え、えぇ!?」

 

「お、落ち着いてください。ただ絶対持ち出し禁止の2品を持ち出してちょっと起動して見ただけです。有益な実験結果も得られましたし何も問題ありません。私は悪くない」

 

「ウッ、心臓が」

 

「母さーーーーーん!?」

 

 明麗の母が倒れた。心不全を起こしていた。すぐに玄咲が持ち合わせの回復魔法で直した。その間にも天之神社の関係者が集まり、大騒ぎになり、言い訳を駆使した後最終的に明麗は謝っていた。玄咲とシャルナの明麗に対する幻想が少し崩れた。

 

(でも、これはこれで可愛いな。うむ。可愛ければ何も問題はない)

 

「あ、それと」

 

 明麗が天之神社の関係者に勇者ADとカードの説明を行う。それで全員納得した。その説明は玄咲もシャルナも聞いていた。騒ぎが落ち着いたあと、明麗は胸を張って言った。

 

「これにて一見落着です! さぁ、ちょっと疲れたのでレストランでご飯でも食べて休憩しましょうか!」

 

 

 天之神社での楽しい時間はあと少し(1話)だけ続く。

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