カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
ラグナロク学園の休日1 ―電波ジャッカー―
ラグナロク学園にも休日はある。週に一度、日曜日。それと、各種イベントや試験後にだ。完全自由にとはいかないが、。学内施設は通常通り稼働し、バトルセンターなども普通に利用可能。ただし、進捗の悪い生徒は補習が課される。怠けていると休日がやってこず、負のスパイラルに陥り最後は退学になる。そもそも普通の生徒は周りがハイレベルな生徒しかおらず、少し気を抜くとあっという間に差をつけられるほど意識の高い環境のため、気を抜こうにも抜けられないのだが。これだけ生徒が多いと怠ける生徒もどうしても出てくる。そういう生徒は学校側からノルマを課し、休日も補習を課し、徹底的に周りに追いつかせようとする。ラグナロク学園は学園の誰かが符闘会に出場して当たり前、そしてどの生徒も強くて、高レベルに到達して当たり前という超異常な意識をごく自然に共有するからこそ、当たり前のように全生徒が強くなっていく。魂が無意識の内に成長の枷を外す。レベルが上がりやすくなる。
積み重ねた歴史が、実績が。
ラグナロク学園をそういう特別な場所にした。
魔力的にもそういう磁場が形成されている。
学園長がラグナロク学園が1年で符闘会に通用する選手を育てられるまでになったのは技術革新だけが理由ではない。近道のない超長期的な環境作りの成果なのだ。
もちろんそういう環境作りを邪魔する生徒は退学してもらうことになる。
退学試験は環境作りのためのふるい落とし制度でもある。
学園長にそんな深謀遠慮などあるはずもなかったが、ただ出来の悪い生徒は落とすと脅しておけばケツに火がつくだろうくらいの考えしかなかったが、結果としてそうなっている。
学園長の勘は【いい未来】を嗅ぎつける嗅覚でも備わっているのか、結果として臨む結果に落ち着くことが多い。
が、それはそれとして、ラグナロク学園にも休日はある。それぞれがそれぞれの過ごし方をしている。
根を詰めるばかりではない。休むこともまた成長に必要な要素だからだ。
「おっはー!」
5月23日。
ダンジョンアタック終了後の日曜日。
ラグナロク学園の特待生の一人コスモ・ミストレインはグルグル工房を訪ねていた。グルグルは慣れた様子でコスモに挨拶する。
「おっはー、コスモちゃん。頼まれてたもの出来てるよ」
「おお。これですか」
コスモはグルグルに渡されたものを見分した後、満足げに頷いた。
「コスモちゃん、本当よくくるよね」
「当たり前です。! コスモのマキナハートは機械の声を聴きます。みんな、グルグル博士に感謝しています。愛が満ちた場所です。だからコスモはこの場所が好きなのです」
「おお。初耳の設定だ」
「開示するタイミングを逃したらしいです。タイミングを逃す。嫌な言葉ですね。時と場合の違いですよ」
「? うん。そうだね」
グルグルはコスモがまた何か電波を受信したなと思いながら頷いた。そして尋ねる。
「でさ、それ、どうするの?」
「もちろん使います。さぁ、いざ起動!」
コスモはサイドにアンテナが立った黒いモノアイ型のゴーグルを装着し、横のボタンを押した。
「電波ジャッカー!」
ブルー色の空間が目の前に広がる。マキナハートを持つ機械種にのみ認識可能なマシンネットワークの構成がメタ的にビジョン化されたサイバー空間。マシンネットワークに意識を接続したコスモは己の意識をデフォルメチューンした3Dモデル【ねんどろコスモ(自称)】として再構成しサイバー空間を飛び回る。
「む! まずはあの建物に入ってみましょう!」
コスモは最寄りの建物――縮尺された距離関係を現実に照らし直して再構成すればラグナロクネストに還元される建物へと向かう。そして、
「……他意はないですがまずは天之玄咲の部屋へと向かいましょう。主人公ですからね。他意はないのです。はい」
666号室へ真っすぐに飛ぶ。そして、その扉を開く。天之玄咲はいない。天之玄咲はマシンネットワークに接続できないので当たり前。だが、
「電波ジャック!」
ピピピ!
全部屋に備え付けのエアコン・リード・デバイスの意識を合意の下ジャック。これで現実世界を覗き見ることが可能に。コスモは「666号室だからダミアンと呼んでくれ」と語りかけてくるエアコンくんに感謝しながら一時的に意識を合一化。ちょっとドキドキしながら覗き見た部屋に広がる光景は――。
【666号室】
「ハァ、ハァ、シャル、シャル、シャル……!」
天之玄咲がちょっと逝ってしまった目でテーブルの上の紙にシャルナ・エルフィンの絵を量産している。ド下手だが、いい絵だ。それはそれとして、シャルナ・エルフィンと一緒にいる時には決して見せない姿に見てはいけないものを見てしまった感が凄まじい。
【665号室】
「……」
シャルナ・エルフィンが丁寧な所作でテーブルの上で人形を作っている。傍には木箱に収まった長さが不揃いの黒い髪の束。見てはいけないものを見てしまった。
【996号室】
「いけ! キャプテン・バードック!」
「ガァ――――――!」
クゥ・クロルウィンが相棒のハヤブサ丸と共にテレビに映る右目に眼帯をつけた頬に傷のある鳥人族の英雄を描いたアニメに熱中している。キャプテン・バードックが銃を撃つと「ド下手!」と叫ぶ。微笑ましい光景だった。以前、一緒に弁当を食べた時にキャプテン・バードックのアニメが好きだと語っていたことを思い出す。アニメーションの存在は山育ちのクゥにとって衝撃だったらしい。純粋な夢が詰まっていて大好きなんだとか。逆に欲望を刺激するような作品は嫌いらしい。純粋なクゥらしい判断基準だと思ったことを覚えている。クゥは不思議と感性が合う大事な大事な友達だ。
【066号室】
「自分を信じてただ行動、Reason For me、Reason for me……うーん、これもなんか違うなぁ……」
アルル・プレイアズが机の上のリリックノートと格闘している。いつのまに寮に泊まるようになった。親の猛反対を押し切り精神的な自立のため一人暮らしを選んだらしい。だが、部屋にはしっかりとプライアの写真が写真立てに飾られている。微笑ましい光景だった。アルルの被っているものと同じデザインの誰がどう見てもダサい赤白帽子を被った垢抜けないジャガイモ顔の、しかし情熱に満ちたいい笑顔をした男性の写真も部屋に飾られている。あれが時々語るシン・ピーターなのだろう。曲も聞かされた。ダサいが熱くて真っすぐな歌詞と曲調のいい歌だった。曲名は確か【ボコボコのライフ】。ライフじゃなくてマイクだったかもしれない。ボコボコのマイク。
【443号室】
「えっと、この調合剤と、この前ポイントで買ったこれを組み合わせれば……いや、駄目だね。計算段階でもっと煮詰めないと。危険な素材を扱ってるんだからうんと慎重にやるくらいで丁度いいの。曖昧な部分もちょっと詰めておくか。失敗したらその分お金もかかるしねー……。入院費を代替してもらっている今はボーナス期間。ラグナロク学園の在学中に絶対対魔ウィルスの特効薬開発してやる……!」
死水綺羅々がケミカルな部屋の中で何らかの実験をしている。傍には細かい図式や文章がびっしり刻まれたノート。まるで本物の科学者のような真剣さ。その髪にキラキラはなく、化粧でも落としてるからいつもより少し野暮ったく見える。だが、いつもより自然に見えて、劣化と言うより新たな魅力と映る。あるいは学校では少し自分を取り繕っているのかもしれなかった。今更という声が聞こえたが無視することにする。キララは意外と複雑な心の持ち主なのかもしれない。そして根は凄く真面目なのかもしれない。そうでなければこれだけ真剣に、根気のいる作業をストイックにはできないだろう。ふと、そう思った。
「あー、駄目。疲労が溜まってきた。ちょっとだけキメて――」
(む)
ブスリ。
「キャハハハハハハハ! 漲って(⤴)キたァ! さぁ、ここからさらに根を詰めて――」
見た目通りなのかもしれない。やっぱり、そう思った。あと、過去の戦いを思い出して神経がちょっとビリビリした。
【539号室】
「ハァ、ハァ、コスモちゃん様、コスモちゃん様、コスモちゃん様!」
ポット・デフォールがコスモのグッズに塗れた部屋でコスモがプリントされたTシャツを着てコスモのプリントされたタオルを口に押し当てて魔力電池で魔力を充電している。コスモは何も見なかったことにした。
【最寄りのパチンコ屋】
クロウが真剣な表情でにゃんこモチーフのコスプレをした魔法少女が瞑目して手を祈り合わせる画面を真剣に見つめる。画面にPUSHボタンが現れる。クロウはPUSHボタンを押す。
ビカビカビカ―ン!
【地球の未来にご奉仕するにゃんBONUS!】
「……よし! 振り分け取った! あとは2分の1を通せば――ッ!」
通した。ガッツポーズ。ラッシュを消化し始める。打ってる台はわんにゃん魔法少女パラダイス ――からくり仕掛けの電脳機神VS王魔種グリードスライム大戦争Verだ。動物をモチーフとしたちょっとえっちな格好をした魔法少女たちの冒険活劇と見せかけて、実写をも使った際立った演出満載のグロテスクな怪物たちと死さえ当然の世界観で血肉撒き散らしながら戦う、ギャップの妙を狙い、そして完璧に嵌って大ヒットした名作だ。その3作目。からくりという謎の力を操りハナゾノ病という奇病をバラ撒く異世界からの侵略者ノーフェイスと王魔戦線時代から蘇った無限の成長性を持つ化け物グリードスライムの戦いに魔法少女が第3勢力として介入し、圧倒的な戦力不足ゆえの残酷な決断を幾度も強いられながら戦局のコントロールによる同士討ちに最後は持っていき、最後はノーフェイスを取り込み進化したからくりグリードスライムを劇場版も含めたこれまでのシリーズで培った力を総動員して紙一重の差で勝利するという熱いラストを迎える。これまでのシリーズと違ってB級映画のようだと批判されることもあればエンタメ性に振り切ってて潔いと評価されることもあり、賛否極端な3作目。そのパチンコ台だ。ラッキートリガー搭載機。とにかく荒いが爆発力はピカイチ。新台補正も手伝い現状中々の高稼働。また、その原作にない主人公が王魔化する演出は良くも悪くも作品を象徴する演出となり、話題になった。作品同様賛否極端な台。その台をクロウは打っていた。
「新台だから打ってるけどもういいかな……最近は昔ほど脳を焼かれたくて打ってる訳じゃないし、流石にここまでの射幸性は求めてないんだよな……。やっぱサンダーキング3000は神台だった。サンダージョーは俺と限りなく近いレベルで理想を共有している。あーあ、サンダーキング3000また再稼働してくれないかな……」
クロウはぼやきながら今日も気だるげに、でも楽しそうにパチンコを打つ。
【職員室】
「ああ、梅こぶ茶零しちゃった……!」
クララがびしょ濡れになったプリントを見て顔を青くしていた。クララはちょくちょくドジを発揮する先生でそんな所も人気があった。
【203号室】
バン!
「マルタちゃん! カードバトルよ!」
「休日まで鬱陶しいの……」
アカネがマルタを誘ってバトルセンターに行く。とても真面目な子だ。
【111号室】
「今だけダブチ食べ子……なるほど。中々可愛――」
バン!
「オラァ! リュートォ! カードバトルしにいくぞォ! リベンジマッチだァ! ――ってお前、何だその包み紙。そういうのが趣味だったのかよ……」
「い、いや、これは今だけ食べれるダブルチーズバーガーを頼んだら勝手についてきただけで、断じて僕にそういう趣味は――」
「天之みたいな言い訳すんなよ。好きなら好き。それでいいじゃねぇか。それよりよぉ――やろうぜ。俺とカードバトル。今日こそぶっ殺してやる」
「――そうだな。やろうか。君とのバトルはいい訓練になる。だけど今日も勝たせて――」
「よし行くぞ」
「あっ」
炎条司が光ヶ崎リュートの手を引っ張ってバトルセンターに向かう。2人は犬猿の仲だったと聞いたが今はもうそんな面影は見えない。良き好敵手といった感じだ。ダンジョンアタックからどこか変わったように見えた。それはそれとして自分はこんなことをしてていいのだろうかとふと思った。
【バトルセンター10号館4番室】
「ふー……お疲れさまでした」
「か、会長、強すぎ……」
「HP1割も減らさなかったよー……」
「やっぱ、次元が違うわ。ラグナロク学園の3年生って、世間的にはもう化け物の群れみたいなものなのに……」
「お疲れさまでした」
バトルセンターの中に生徒が、11人いる。全員女生徒。戦闘後のクールダウン。明麗は学年でもトップクラスに位置する明麗の個人訓練に集まった10人の生徒たち―赤羽軽子もいる―に立ち上がっていった。ぺこりと頭を下げる。
「訓練終わりです。みなさまお付き合いいただきありがとうございました」
「か、会長のためなら、余裕です……!」
「ふ、ふふ。こんな貴重な機会、この学園の外にはないからねー……在学中にしゃぶりつくさないと」
「うーん……相変わらず壁は高いなぁ。
「でも軽子くらいですよ。本気の私を
明麗はパンと手を叩き、笑顔で告げた。
「休日は休日。ちゃんとメリハリをつけておく方が長期的に見たら効率的なのです。という訳で皆さん。今日はお疲れさまでした。そして、ありがとうございます」
明麗の言葉を受けて生徒たちが帰っていく。その中の一人を明麗は呼び止めた。
「あ、凛子はちょっと待ってください」
「? 私に何か
「はい」
明麗はパン、と手を叩き合わせ、笑顔で、
「今度の試験のために後輩への指導の仕方をレクチャーしてください」
【食堂】
「へへっ。やっぱこの世で一番うまい料理はカレーだぜ!」
(ど、どうしよ。なんか怖い人と同卓になっちゃったけど、怖くて離席できない。ど、どうしよ……。こんな所でも勇気を発揮できない。だからアカネちゃんに半人前なんて呼ばれるんだ。ど、どうしよ……)
「これよー、5人前なんだけどよー。半人前の間違いなんじゃねーかなっていつも思うんだよ。あんたもそう思うだろ?」
(半――半人前っ!? 初対面の人にまでDisられてる!? ……でも、そうだよね。今のままじゃ、半人前のままだよね! もっと、頑張らないと……!)
「わ、私は、1人前になる!」
「――そうだな、1人前にすればいいんだよな。そのためには――量を2倍にするしかねぇ」
「う、うん。せめて2倍は、頑張らないとね!」
「そのためには――もっとポイントを稼がないといけねぇ」
「うん、そうだね、ポイントを――へ?」
「という訳で丁度真ん前にいるお前。俺とカードバトルだァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
ピシャァアアアアアアアアアアアアアアアアン!
大声を出したさとしが食堂のおばちゃんにハリセンで叩かれる。生徒たちが慣れた様子で視線を戻す。しかし、頭を抑えて尚ユキに指を突き付け続けカードバトルの意思は表明し続けるさとしを見て、ユキはハッとした。
(そ、そうだ。今の私に足りないのはこの自己主張の強さ。そして周りの目を恐れない強い心――よ、よし!)
「や、やろう」
「お?」
「い。いつもはあなたみたいな怖そうな人とのカードバトル、断るんだけど、今は、だからこそ丁度いい。私とやろうか。私がラグナロク学園に入学した目的は自分を変えることでもある――こ、後悔したって、知らないよ。私だって、ちゃんと、強いんだ……!」
「――面白ぇ」
さとしはカレーのついた唇をぺろりと舐めて獰猛に笑った。
「俺はよォ……体の芯に一本糞みてぇな根性詰め込んだ奴が好きだぜ。つまりよォ……お前のことが好きだぜ」
「……」
ユキは突きつけられたドリルリーゼントの先端を眺めながら「やっぱやめときゃよかった」と早くも後悔し始めていた。
「“場所”変えようぜ。”本気出せる場所”に行こうや……」
(? 本気云々関係なくバトルセンターに行くのは前提じゃないの……?)
2人はバトルセンターに向かう。その姿を食堂の券売機の目を借りて見ながらコスモは思った。
(ふむ。うんこヘアーの彼は相変わらず男気に溢れていますね。それに小動物のような彼女も見上げた向上心です。凄く人間らしいです。ときめきますね……そうですね。コスモも頑張らないといけません。休むばかりが休日じゃない。自分の役に立つことを全力でやれるのもまた休日。よし、そうと決まれば――最後に一部屋見て終わりにしましょう! 学園長室と同様電脳世界にまで魔力が漏れ出しているあの部屋が気になっていたのです!)
コスモは次の部屋に向かう。
【060号室】
カリカリ。
「……」
カリカリ。
「もう少し、だけ……」
静かな部屋にひたすらペンを走らせる音が響く。その内容は、その作者は――。
(……)
コスモは本日最大の見てはいけないものを見てしまった背徳感に襲われ、マシンネットワークとの接続を断ち静かに電波ジャッカーを脱いだ……。
「あ、コスモちゃん、どうだった? 何が見えた? 言われた通りマキナ・ハートの機能拡張しつつサイバーネットワークの
「グルグル博士」
コスモは首をふるふると振ってグルグルに電波ジャッカーを返却した。
「これはお返しします。人類には早すぎた技術です」
「え? な、何が見えたの?」
「実は」
コスモは詳細を省いて機能を話した。グルグルはハッとした。
「そ、それは危険すぎる。盗撮は普通に犯罪だよ。これ、映像データ録画してたんだけど削除しとこ……」
「……」
コスモも知らない機能を勝手に搭載して視覚データを盗撮していたグルグル。グルグルには少しマッドな気がある。コスモは頼もしさのような危うさのような複雑な感情をグルグルに抱いた。
「しかし、お陰でこれからコスモがやるべきことが見えたのも事実。コスモはこれから有意義な休日の過ごし方を実行します!」
「ん? 誰かに触発されたの?」
「はい。やはり、休日だからと言って怠惰に過ごしたらいけませんね。めっ! です。という訳でこれからコスモの同胞と有意義な休日を過ごしてきます! コスモは危機感に目覚めました! 今のコスモは危機感の塊です! 危機感さんより危機感を抱いています!」
「? うんうん、そうだね。なんか危機感の使い方が違う気もするけど――」
「という訳でアデュー! まずは……天之玄咲!」
(あ、やっぱコスモちゃんそうなんだ)
コスモはいつものように嵐のように訪れ、そして疾風のように去っていった。残されたグルグルは手元に残った電波ジャッカーを見てゴクリと喉を鳴らす。
「……ちょっとだけ、ちょっとだけだから」
最初の玄咲の映像の途中で「これはあかん奴だ」と危機感を抱いたグルグルは速やかに映像を削除し、そして電波ジャッカーをゴミ山の奥の方に押しやり、二度と取り出さないことにした。
【666号室】
「な、何だコスモちゃん。今俺はカード図鑑を読んでて」
「言い訳禁止です! さ、コスモと一緒に来てもらいますよ」
ギュ!
「!? う、うん! こ、コスモちゃんと一緒ならどこにでも行くよ」
「!? そ、その言い方は卑怯です! と、ときめきが」
バタン!
「……」
「……」
「……」
665号室から現れたシャルナ・エルフィンも連れて行くことになった。
【996号室】
「な、なに? 今私――キャプテン・バードックのアニメ見てたんだけど、一緒に見る?」
「言い訳――でもないですね。天之玄咲とは大違いです」
(えっ、何でバレてるんだ?)
「用件は一つです! コスモ達と一緒に特訓をしましょう! 明日のために、明日のために! 撃つべし! 撃つべし! 撃つべし!」
「いいよ。そうだね――明日のために、撃つべし。いい言葉だね。なんかパクリ感あるけど、名言だ。たくさん撃つよ!」
クゥも合流した。他に危機感を共有するべき相手は思い浮かばなかったのでその4人でバトルセンターに向かう。一瞬ポットが頭に思い浮かんだが、偶数で割れない人数はバランスが悪いのであえて無視することにした。
他意はない。