カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
プロローグ 特殊交通機関【CARD TRAIN】
ガタンゴトン。
ガタンゴトン。
入学式以来の登場となるラグナロク学園が誇る特殊交通機関。
カードトレイン。
ラグナロク学園一同はそのカードトレインでそのドロミテ大樹海まで向かっていた。窓の外の景色が高速で流れていく。校外。荒野。荒れた地には魔物が点在している。一匹、象のような魔物が近寄ってくる。突進してくる。
ズガン!
「ブモ―!」
カードトレインの車体に取り付けられた砲塔から自動で発射された魔力弾が象を打ち殺した。 あっという間に死体が後方に流れていく。そうでなくてもカードトレインには常時強靭なバリアが張られている。ただのバリア。しかし時速300Km以上で走るカードトレインのバリアに触れれば無事ではいられない。ラグナロク学園が誇る最先端交通機関。それがカードトレインだ。
「わー、凄いね!」
シャルナが窓の外の光景を見てはしゃぐ。玄咲もまた頷いた。
「ああ。機動戦艦みたいなものだな。しかもレールを必要としない。悪路もなんのその。まさにスーパー兵器だ。変形してロボになっても全然驚かないぞ」
「玄咲、語るね」
「今日の俺は80%テンションだ」
「そっか」
「このカードトレイン学園長の作った魔力電池で動かしてるんだってね。無茶な運用を実現させるあの人も大概化け物だ」
「そうだねー。あの人が一番のスーパー兵器かも」
玄咲たちの対面にはキララと雫が座っている。2人は仲がいい。カードトレインは4つの席が一つのテーブルを挟んで向かい合う形式になっている。席は自由席。当然隣の席に座った玄咲とシャルナの下にキララ、そしてその友人の雫がやってきた形だ。さとしとタッチの差だった。玄咲の理想の電車旅は形を変えながらも間一髪で守られた。偶然だが玄咲の下に美少女が集まった形。玄咲の80%テンションの理由の一つ。G組車両。他の男子生徒の視線がどうなってるかなど言うまでもなく。ふと、通路側のキララが表情を弾ませて通路側に手を挙げた。
「あ、販売回ってきた! ドロミテ・チップスください!」
カードトレイン内は常に飲食販売員が徘徊している。ポイントで自由に商品を買える。ドロミテチップスはドロミテ大樹海原産の芋で作られたポテトチップス。それを摘まみながら4人で話をする。話題は自然試験関連中心となる。ドロミテ・チップスを興味深げに齧る玄咲の横で、窓際のシャルナが日差しの中でふと遠くに視線をやる。
「……見えてきたね」
窓の外には魔物が徘徊する荒野。その果てに濃緑の陰が見える。比べればカードトレインが豆粒に見える、地平線を埋め尽くす大威容。圧倒されるスケール。まるでこの世に顕現した異界。あれが、
「ドロミテ大樹海。今回の試験会場か……」
「凄く、大きい」
「うん。ヤバイくらい大きいね。それに遠目でも鬱蒼としてて、あそこで戦うって考えただけで今からゲーっって感じ」
「うー、あそこで戦うのか。最悪の環境だ。見てるだけで今から憂鬱になってくるなー……」
地平線の果てを占領する濃緑がまるで深淵の入り口のように見える。4人は圧倒されながら窓の外の光景にしばし魅入られていた。ふと、シャルナが4人の間に置かれたテーブルの上の地図を指差して、
「しかし、本当、広いよね」
「ああ。地図を見ただけでうんざりする。生徒で協力して、ざっくりとだが担当地域を分けて探索することになっただけはある」
「こんな馬鹿っ広い所生徒に探索させるなんて馬鹿じゃないの? 魔物は出るし樹木で視界は覆われてるし、人間が立ち入るべき領土じゃないって。学園長に遠距離魔法で薙ぎ払わせちゃおうよ」
「その学園長の意向だからな」
「……そうだね☆」
キララは笑った。奥深く、諦観の滲んだ笑みだ。笑顔の奥のペシミスティックに玄咲は刹那ときめきを抱く。雫が浮かない顔で地図を見つめる。
「……でも、本当、大丈夫かな。魔物に食われたり、連れ去られたりして、本当に死んじゃわないよね」
「んー……なんとかなるっしょ。これまで通り。何だかんだ上手く収まるってー」
「……そうだね。本当」
雫が揺らぐ瞳で蜃気楼が揺らぐ地平成の彼方を見つめる。瞳の中で涙のように揺れ輝く太陽の破片が、地平線の彼方の緑と重なり、そして飲み込まれた。
「何も起こらないといいんだけど」