カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「これが、伝説のレーヴァテイン・モード……」
司のパートナーの岩城剛は声を震わし感嘆を零した。さらに震える指で既に魔力光を失ったファイ・ロードの長大な剣身を指差す。
「……なぁ」
「なんだよ先輩」
「それ、本当にシングル・マジック?」
「ああ」
「ランク7?」
「ああ」
「……なるほど。これが、炎条家の象徴レーヴァテイン・モード。そして炎剣に特化した血を持つ炎条家屈指の鬼才の力、か……そういや、炎条家が最強だったんだよな。プレイアズ王国では長い間」
「リュートの祖父のリューキ爺ちゃんの代で逆転したけどな。ま、俺が歴史を取り戻してやるさ」
「かっけぇ……」
――司の前に切り開かれた森がある。夥しく埋もれた木々の死体。その中には魔物の死体も複数混じっている。
大きな大きな体躯の、歪で奇妙な人型の、巨人種と呼ばれる魔物の死体が。司のパートナーの岩城剛志が額に手を当て死体を見晴らす。
「しかし、巨人種が出るとはたまげたなぁ」
「ああ。珍種中の珍種だぜ。その人目を引く容姿と残虐さから世界的にも絶滅対象としてと刈り尽くされ、俺の先祖の炎上躯が巨人狩りの名人としてレジェンドになるきっかけにもなった巨人族。どうやから今年の試験はただ事じゃいかねぇらしいな。ヘンテコな魔物がうようよいやがる」
「でもさ、そんな相手にも平然と戦って討滅していくラグナロク学園って凄いよな。俺、この学園の一段として戦えて今本当に誇らしいよ」
「……まぁな」
あんたも大概だけどな。その言葉を飲み込み、司はふと天を見上げた。
星弾が天を遡り魔物たちを撃墜していく。司の口角に皮肉気な笑みが浮かぶ。
「あんにゃろー。やっぱ目立ちやがるな……」
「フュージョン・マジック――」
リュートが星紡剣ステラを引き絞る。そして天に向かって振り払った。
「
走ってきた巨大な猪型Aランクモンスター――フォレスト・ボアの群れがフュージョン・マジックの直撃を受けて消し飛ぶ。
「フュージョン・マジック」
さらにリュートは天に剣先を向け、詠唱。
「
百をも超える無数の光弾が襲いくる飛行型モンスターの群れを蹂躙した。傍にいた上級生の一人が指摘する。
「あいつ、フュージョン・マジック何回使った? しかもどれも信じられねぇ高威力だ」
「流石光ヶ崎リュート。光ヶ崎屈指の天才魔符士と呼ばれるだけのことはあるぜ」
「あれが光ヶ崎リュート。世界屈指の才能……!」
この場にあってリュートは誰よりも目立っていた。星魔法の華やかさ。フュージョン・マジックを乱打する戦法のインパクト。そして何よりその強さ。1年生、どころか2年生ですらどれだけ互せるか怪しい。圧倒的なカードとADの性能差を誇る3年生になってようやくという所だろう。それだけの力をリュートは見せつけていた。
リュートは化物だった。
「……」
しかし、浴びせられる惨事にやや複雑そうな顔をするリュート。そのリュートに一人の生徒が近づいた。
「やぁリュート君。流石だね」
「ケビン部長」
ダンジョン・ハンターズの部長としてその指揮能力を如何なく発揮しているケビンが切なくありつつも今日は引き締まった笑みで近づく。そして、モンスターの死体で溢れた周囲を見渡しながら声かける。
「しかし、妙だとは思わないか?」
「妙、というか異常ですね。今君が倒した魔物も本来ならドロミテ大樹海では珍種のはず。しかし、全然そんな気配がない」
「ああ。異変が起こっているというのは確かなようだ。しかし原因は分からない。広域ネクロマンシー、という仮説をも立てたがこんな規模ありえないからな……」
「そうですね。ありえません」
「余裕があれば原因の解明を進めたい所だ。しかし、この変異以上にラグナロク学園の生徒の質が際立っているのが救いだな。もしかしたら、今年は死者0もいけるかもしれない」
「そうですね。想像以上にみんな強い。死者は、見たくないですからね……」
「ああ……」
2人は神妙な顔で頷いた。共に、経験があった。
「気を引き締めていきましょう」
「そうだね。油断は禁物だ。ドロミテ大樹海はそこまで甘くはない――む」
ケビンがふいに足を止める。頭上、白い太陽に、黒い光が被さった。黒い光は瞬時に急降下し、その後、魔物のけたたましい悲鳴。リュートは納得し、笑みを浮かべた。
「なるほど、彼女、か。ふふ、天之玄咲のおまけと思っていた時期が今じゃ懐かしいな……」
「ふふ、流石ですねシャルナちゃん」
「ハァ、ハァ……」
膝をつくシャルナ。その横で明麗が感嘆の息を漏らし、見下ろす視界を共有する。
SSランク魔物
凶鬼フンババ
怒れる形相の巨大な棍棒を持った灰色の熊のような胴体に巨大な人の顔を張り付けたような魔物だ。木を素手で引き千切るパワー。獰猛な殺意。生半可な攻撃を弾き替えす強靭な毛皮と皮膚。本来なら主と呼ばれてもおかしくない程の恐ろしい力を持った魔物だ。並の3年生でさえ油断すれば返り討ちにあってもおかしくない。生態系の頂点に位置する魔物の一体だった。
それをシャルナは一人で倒した。
明麗の援護なしで。
明麗の身が震えた。
「これは……本当に凄いです。私の1年生の時でさえここまでやれはしませんでした。シャルナちゃん、あなたには間違いなく戦いの天凛がある。彼と磨き上げたものが、彼の不得手を埋める私との訓練と実戦を経て昇華されつつある。このままいくと――」
再度、身を震わし、明禮は白色の唇から言葉を零す。
「ふふ、シャルナちゃんはどこまでいってしまうのでしょうか」
「どこまででも、です!」
シャルナが膝から手を離し前を向く。そして歩き出す。たった今倒した魔物――力強いばかりで動きが単調で玄咲とは比べ物にならない雑魚――の死体の傍を通り過ぎ、ついでにキャプチャーして、それから、その白色の眼で、天を向く。
白い太陽が、木々がなぎ倒され晴れ渡った視界に、晴れ晴れと咲いている。
「私は、夢を叶える。」
シャルナの瞳が太陽と同化し煮え立つ輝きを灯す。
「玄咲のためなら、私は、無敵ですっ! 2人の未来のために、どこまでも、私は、強くなる! 2人の夢に届くまで、私は歩みを止めない――!」
シャルナは拳を握り、玄咲がデザインしたエンジェリック・ダガーを、鬱蒼と茂る森のなか、それでもいつも頭上にある白い太陽へと、突き上げた。
「未来は、この手で、切り開く!」
――照らし出す太陽。エンジェリック・ダガーが陽光を反射し、黒と白の2つの光を天へと伸ばした。