カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
その異変に真っ先に気づいたのはシャルナと進路取りのため空を飛んでルート確認をしていた明麗だった。
「ん? えっ? あれは、あの魔物は――」
13通りの足音が山を下る。その巨体に応じた地鳴りを伴って。
「物足りないねぇ……」
マギサ・オロロージオはラグナロク・ペンションの前、ドロミテ大樹海を一望できる小丘に椅子を設けてヒロユキと試験を観賞していた。隣のヒロユキが渋面を作って言う。
「あのドロミテ大樹海を1年生混じりで安定攻略できているんだ。それだけでいいじゃないか。それ以上は欲張りというものだ」
「それはそうなんだが、でも、なんか物足りないよねぇ。なんかもっと、強大な魔物が現れたり、ピンチで覚醒したりとか」
「君は何を言っているんだ。相変わらず過激であればいいと思っている節が――む?」
ヒロユキはそこで気づいた。当然マギサも気付く。
ドロミテ大樹海にそびえ立つ巨大な山。それを下る13体の厳かで神聖な服を着た人型の魔物の姿に。
「な、な、あれは――!」
ヒロユキが動転している間にもあっという間にドロミテ大樹海に辿り着く。マギサは口角を歪めて立ち上がった。
「ほぅら。イレギュラーが現れた。私も一応、後詰として戦う準備だけしておこうかね」
その手には既に次元輪廻クロノスロッドが握られている。
「なんだよあの魔物! 異常だぞ!」
「魔法が、効かねぇ!」
「いや、効かないんじゃない。フュージョン・マジック――」
リュートは星紡剣ステラの先端をその魔物に向けて詠唱した。
「煌・三紡射手星」
星の光弾が魔物を襲う。魔物は詠唱し返した。
「System.out.printlndef defend_magic」
魔法の防御壁が現れリュートの星弾を防ぐ。だが、その一つが防御の壁を破り、直撃した。
「Ruooo……」
ほんの少しだけよろめいた。しかしそれだけ。すぐに体勢を戻す。リュートの額に
「堅いだけ。当たれば僅かだが効くよ」
「しかし、あの魔物」
ケビンが渋面で言う。
「まさかとは思うが、あれは伝説の13神……」
「いや、嘘だろ。嘘だろ……でも」
「あの外観。そうとしか考えられねぇ。いよいよ何が起こってるんだ!?」
その魔物は異形ではなかった。むしろ人に近い形をしていた。闇深きフードを被っており顔は深く伺えない。影が見えるのみ。しかし、その輪郭は人のものに見える。そして巨大だ。3メートルはあるだろう。
その巨体な人型の魔物が詠唱する。
「 System.out.printlndef Attack_magic」
「ッ! 防御魔法ッ!」
「フュージョン・マジック――煌・三紡宝瓶星!」
リュートが素早くレスポンスした。他の生徒も防御魔法を重ねる。そして、次の瞬間。
巨大な、帯状の光線が13神の口から吐き出された。防御魔法を次々打ち貫いていく。そして、
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
――最後の一枚。リュートの発動した防御魔法に亀裂を入れて、魔法が消滅した。驚きの気配。ケビンが既に接近している。
「うおおおお! フュージョン・マジック! 穿天万砕《ディザレスタン・ブレイク》!」
「ッ!?」
13神が防御魔法を詠唱する。その防御魔法を。
容易く打ち砕いだケビンのハンマが―13神を吹っ飛ばした。悲鳴と、血飛沫。効いている。確かに。ケビンが鋭く振り向き声を放った。
「大威力の魔法なら固い防御も穿ち貫ける! リュートくん! 君も頼りにしている!」
「ッ! はい!」
リュートがカードを切り替える。戦闘が激しさを増していく。
「……弱りましたね」
明麗は己が最初に発見し、念のためシャルナを置いて急行した戦場にて、7体の13神の死体を見てため息をついた。
「約半数逃がしてしまいました。みんな、大丈夫でしょうか……」
「……久々に本気の本気で戦ったよ」
「ハァ、ハァ、死ぬかと思いました」
「コスモも星を見る人になりかけました……」
「でも、殺ったね……。ラグナロク学園って本当凄いや」
クゥたちは周囲の生徒と協力して倒した13神の死体を見下ろし、予定外の強敵の相手をして尚それでも満足げな笑みを交わす。
「……16小節で倒しきれなかった」
「でも、大分弱体化させれましたよ。流石アルルさまです」
「姉上、本当頼りになりました……」
アルル達の元に向かった固体も無事倒された。アルルも1年生ながらその打倒に一枚噛んだ。
「まぁ、手こずる程の相手ではなかったな」
「ハァ、ハァ。と、当然だ!」
「無理すんな狂夜。無理と無謀は違う。だがまぁよくやった。フー……流石に俺も少し疲れた」
氷の華の中で燃えカスになった13神の死体の前で2人は粗い吐息を零す。2人で、倒したのだ。
「……んだよこいつ」
司は尻もちをついて、本気の戸惑いを張り付けた視線を今しがた先輩と協力してとどめを刺した魔物に向けた。
「やっと、倒せたな……」
「ああ。聞いてねぇこんな敵。だが」
司は岩城剛志から延ばされたにグーを打ち鳴らして、誇り高く笑んだ。
「倒せない訳じゃない、か」
「……あんたは駄目だ。生徒の相手はさせられない」
マギサは最も偉そうな、リーダー格と思しき聖人の如き顔の魔物の死体を見てフンと鼻を鳴らし、その場を去った。
13神の内12体は無事倒された
そして残る1体も、玄咲の手によって無事倒された。
それは猛烈な速度で近づいてきた。
だから玄咲は遠距離から確実に殺すことにした。3本指――フュージョン・マジックの合図を立てて、ルディラに指示する。
「先輩」
「はい。え? あ、はい。フュージョン・マジック――」
ルディラはクリスタル・ロッドを上げる。そして戸惑いつつも、轟音のする方へ、クリスタル・ロッドを向けて詠唱した。
「
巨大な球形に渦巻く水銀を宿した水球が無慈悲に敵へと放たれる。
「今のは一体、なんだったのでしょう」
ルディラの疑問に玄咲は首を横に振る。
「……分かりません。ただ、巨大な敵であったことは間違いないです。何事もなくてよかった」
「そうですね。何事も無くて」
ルディラが振り返る。玄咲に、仄かに緩んだ顔を。
向けようとした。
「よかったですね」
「 System、ou、t、printlndef、Tele、Port」
「え?」
ルディラの背後、突如として、声。転移魔法。ありえない事態。
玄咲は既に動いていた。ルディラを突き飛ばし、
(あ、間に合わない)
「レインボー・ドライブ。フュージョン・マジック――」
「GA、AAA!」
玄咲の腕が光線に飲まれ根元から千切れ跳ね飛んだ。
ルディラを突き飛ばした手だ。
ルディラが叫んだ。
「ひっ! いやぁああああああああああああああああああああ!」
絶叫の中、それでも玄咲は冷徹に遂行する。シュヴァルツ・ブリンガーの銃口を13神に向け、
「
己の持つ最大火力で敵の命を一撃で消し飛ばした。
「ダークネス・ヒール。ダークネス・ヒール。ダークネス・ヒール」
玄咲は回復魔法によって己の腕を取り戻した。魔力はポーションを1回使い、残り3分の1といった所。
だが、玄作たちは撤退を選んだ。当初玄咲は探索を続行しようとした。
「駄目ですよ」
だが、ルディラに腕を掴まれた。
「あんな痛い思いして、まだ戦うなんて、駄目ですよ。一旦休んだ方がいいですよ……」
「……」
ルディラに震える腕で掴まれて。
まさか玄咲に否と言えるはずがなく。
「分かりました」
結局その日の探索はそれで終わりとなった。
「あら、ルディラ?」
それはラグナロク・ペンションでの帰り道のことだった。
ルディラは水姫リサと遭遇した。
リサが高笑いを上げて玄咲を嘲笑する。
「あっはっは。何ですかパートナーのその様は! ルディラァ。あなたという人がついていながらその失態はないんじゃなくて? 恥ずかしいお人ですわね」
「ルディラ先輩は悪くない。ただ、」
「クロ、行きましょう」
「え?」
「私が悪いんです。だから、言い訳は不要です」
「……分かりました」
2人はリサの嘲笑を受けながらペンションに戻る。ワイルドな半袖を引きずる玄咲がリサとすれ違いざま、
「お前があの日郊外でルディラ先輩を殺そうとしたこと忘れていない。それだけだ」
そう呟く。リサは凍り付いた。
「……えっ、死にかけた?」
その巨大なドリルツインテールが揺らぐ。リサはもう一度呟く。
「――えっ?」