カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第15話 夜襲

「……クロ」

 

「はい」

 

「起きてますか」

 

「はい」

 

 まだ寝入ったばかりなので当然起きている。ルディラは布団の上端を握りながら言った。

 

「明日は私、頑張りますからね。今日みたいな醜態、見せませんからね」

 

「……はい」

 

 玄咲は力強く頷いた。

 

 

 

 

 

 夜2:00頃。

 

 不意に悪寒を覚えた玄咲は起きた。枕の下のシュヴァルツ・ブリンガーを手に取り、ルディラを起こしにかかる。

 

「ルディラ先輩。ルディラ先輩」

 

「何ですか……寝させなさい」

 

「そうしたいのは山々なのですが……どうも悪寒がする」

 

 穏当ではない玄咲の言葉を受けて、流石にルディラも目を擦りながら体を起こし上げる。

 

「悪寒、ですか。クロの、勘……」

 

「ええ。まるで」

 

 ふと、窓の外が陰った。

 

 それは二人が話している最中のこと。

 

 自然、そちらに視線が向く。

 

 

 

 

 

 窓一杯を埋め尽くす白き巨大な人面と、目が合った。

 

 

 

 人面はにちゃあ、と醜悪極まる形に表情を歪めた。

 それは人には――サンダージョーにも模倣できない、悪意を煮詰めた表情だった。 

 その視線はルディラに縫い付けられていた。

 ルディラは「いやぁあああああああああああああああああああああああああああああああああ」発狂し、玄咲に縋った。遠慮ない力で玄咲の腰に抱きつく。玄咲も目を剥いた。予想外の事態に一瞬反応が遅れるも、咄嗟にシュヴァルツ・ブリンガーを窓の外に向ける。

 

 

 そして、

 

「召喚――」  

 

 躊躇わず呼び出した。

 

「夢幻牢メリー」

 

 最強の盾を。2人がピンク色の結界に包まれる。と、ほぼ同時。 

 

「美少女ォ゙オオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 3階を覗いて尚地に着くほど長い無数の白い髪が一斉にラグナロク・ペンションを壊しながらメリーの結界に巻き付いた。正面には相変わらず巨大な人の顔。いや――。

 

 建物が大幅に壊れたことでようやくその全景が二人には把握できた。

 

 それは8つの人のような手足と白い髪の毛の計9本の足で高空に胴体とそこから生える人面を支える巨大な魔物だった。脚を大きく折り曲げ、それでようやく玄咲たちに視線を合わせている。それほどの背の高さ。

 

 玄咲たちはその魔物の名前を知っていた。

 天之神社で見たから。

 

(九足白鬼のアルメリウス。勇者カーンが退治した王馬種。なぜ、ここに――!?)

 

「ああ? なんだこのピンクの繭――なんで壊れねぇんだよぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」

 

 「ひ、ひぃいいいいなの!」

 

 アルメリウスの特徴――伸縮自在のその鋼糸のような髪の乱打に、破られぬと分かっていながらもメリーまでもが怯える。ルディラは言わずもがな。抱きつき続けている。玄咲は迷わず一つの行動を取った。

 

 カードケースに手を伸ばす。SDから1枚のカードを排符する。

 そして、武装解放した。

 

「武装解放――ディアボロス・ブレイカー」

 

 顕現するはこの世の理を超越した世界最強のAD。さらに1枚のカードをインサートする玄咲の手元を見て、アルメリウスが反応した。

 

「お前、何だそのAD」

「召喚――悪魔神バエル」

 

 戦闘は終了した。虐殺が始まった。

 

 

 

 

 

 

「さて」

 

 さらに3匹のラグナロク・ペンションを襲っていた王馬種を殺したバエルが手を叩いて玄咲を見る。

 

「何、この状況?」

「……分からない」

「そっか。取り敢えずその子を助け起こして上げなさい」

「そうですね。先輩。教員方が生徒を集めています。あちらに向かいましょう」

 

 ルディラは少しは落ち着いたが相変わらず泣いて震えている。その肩を取り、玄咲はルディラを助け起こそうとした。

 

「あ、駄目! あっ!」

「先輩?」

 

 ルディラは横にこけた。スカートで隠されていた部位が顕になる。

 黄色く湿った、木造の床が。

 ルディラは失禁していた。瞳から涙が溢れ出す。

 

「うっ、ううぅ……!」

「……す、すいません」

 

 玄咲はどうすることもできずただ謝った。ルディラが落ち着くまで、さらに5分程かかった。

 

 

 

 

 翌朝。

 

「……これはやってくれたねぇ……」

 

 さんざ起こされたにも関わらずようやく眠りから覚めたマギサ。睡眠を解除するような魔法はその高すぎる抗魔力により無効化される。そして年故生命力が衰えているため、クロノスを発動したマギサは一度眠ると長時間の睡眠を取るまで目が覚めない。故に、マギサが目を覚ましたのは事がすっかり終わった翌朝のことだった。

 

 既に施設は修復し終えている。時魔法の力だ。しかし、幾ばくか出た死者はそのまま。そればかりはクロノスがいないと蘇らせることができない。

 

 クララがため息をつく。

 

「……教員会議をしていたということにして誤魔化しておきましたよ」

 

「すまんね。こればっかりはどうしょうもなくてねぇ……取り敢えず今日の試験は中止だ」

 

「ですよね。当然の判断だと思います。生徒たちはラグナロク・ペンションで各々待機、でいいですね?」

 

「うむ。伝えといてくれ。今何が起こってるかもね。私には」

 

 前日、クロウから報告を受けた、そしてクラウンから記憶を読み取った洞窟型のダンジョンの方角を見て、マギサは言った。

 

「会わなきゃならない奴がいる。ちょっと話し合いをしてくるよ」

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