カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
第1話 激戦
【天之神社】
王魔資料館。
「この王魔種は知っていますか?」
試験前、明麗に連れられて天之神社を訪れた玄咲とシャルナは明麗に展示写真の一つを指差されながら尋ねられた。
細やかな白い一指し指の先には一枚の写真がある。
無数の機械の管を全身から生やし、多種多様な色の光線を撒き散らしながら、魔符士の群れと戦う一匹の魔物がそこには写されている。シャルナは首を横に振り、玄咲は首を縦に振った。
「知りません」
「機械王ゴア・ドグマレロ・ゼロですね。俺も詳しく知る訳ではないので、名前くらいしか挙げられませんが……」
玄咲の返しに明麗は頷き答える。
「正解です。この魔物は珍しくカーンらによらない一般的な魔符士によって退治された王魔種です。その悪名故に義憤に駆られた魔符士たちが一計を案じてそれが上手く嵌ったらしいです。その悪名というのは」
「あ、さっき見た、アナヒラって少女の、写真」
シャルナの気づきに明禮は頷きを返す。
「その通りです。王魔種は決して倒せない相手ではない。しかし、やはり莫大な犠牲者を産み出し、奇跡的に討伐がなされたという辺り、やはり油断ならない大敵です。例えば、あの写真」
今度は明麗が別の写真を指差す。2人の首もそちらを向く。
「あれは奇形醜ゴロー。巨人種の王魔種です。全長は100メートル。炎条躯によって討伐された魔物です。しかし、それまでに出した死者の数は1万人を超えると言われています」
「1万人……」
「壮絶な数ですね」
「はい。王魔種による犠牲者数は大抵文字通り桁が違う。滅ぼさねばこちらが滅ぼされる。そんな油断ならない相手ばかりだったそうです。写真で見てるだけでも、その悪意に圧倒されますよね」
「はい……ウッ」
シャルナがえづく。
巨怪人ゴローの醜悪な見た目に喰らったらしい。
3人でコーナーを移動する。
その最中、明麗が引き締まった貌で口にした。
「当時よりADもカードも段違いに性能は上がった。魔力が人類の生体に馴染んだことによって、たくさんの強力な魔符士が生まれた。だけど」
王魔王アイギス。その悪行の代名詞たる人間牧場。かのコーナーへと踏み入りながら、
「もし王魔種が現代に復活したとしたら、やはりとてつもない苦戦を強いられるでしょうね。あるいは現代の技術を持って尚圧されるか。まぁ、あくまで仮定の話、ですがね」
そう、話を締めくくった。
ランク3・水属性・水銀魔法
「アクア・ハイプレッシャー」
マッドドッグ・ビッグドッグ・チェーンドッグ――犬型の魔物の群れをルディラが詠唱した放射状に広がる範囲魔法が一撃で絶死に追い込む。さらに、
「ルディラ先輩」
「はい。アクア・ハイプレッシャー」
「GYAO!」
猛速で駆け込んできた犬型魔物――王魔種キング・ケルベロスを逃げ場を作らない範囲魔法がその駆け足より速い速度で飲み込んだ。さらに、
「アクア・ハイプレッシャー」
追撃。さらに、
「アクア・メガ・ボール!」
もう1撃。弱り動けなくなったキング・ケルベロスはとどめの単体魔法を受け頭部を爆散させて死んだ。範囲魔法でも大抵の敵を一撃で確殺可能なルディラの魔法と言えど、王魔種相手とならば連撃が必要となる。もっとも、キング・ケルベロスに単体魔法を最初から当てられたならば、一撃で足りたかもしれないが。
何にせよ、最弱クラスの王魔種とはいえキング・ケルベロスを問題なく倒せたルディラは、やはりこの戦場にあってもジョーカークラスの戦力であった。各所に配置すればそれだけでこの戦争が終わる目算も高い。
だが、当然そんな訳にはいかず。
「戦場が広い。そして敵の数が多い。クロ。ど、どうしましょうか」
「どうしようもない。ただ、俺たちは俺たちで各個撃破を続けましょう。それが最も効率的で、そしておそらく俺たちに取れる唯一の手段です」
「分かりました。が、頑張ります!」
いくら強くてもルディラは一人しかいない。ドロミテ大樹海という特異な環境にあっては、広すぎる樹海の中で蠢く一コマにしかなれない。
また、
「なるべく単一魔法で立ち回りましょう。いざという時混乱しないために。そしてフュージョン・マジックは魔力消費を考えてなるべく温存しましょう」
「はい!」
ルディラは戦力的には図抜けているが、経験・状況判断力・知識に欠け、万事において玄咲に判断を仰ぎ過ぎる欠点があった。そして何より、
「あっ」
「危ない」
ルディラには運動神経が欠けていた。玄咲がこけかけたルディラを肘に腕をかけて体勢を安定させる。ルディラがやや赤面しながら謝る。
「ご、ごめんなさい」
「いえ。気にしないでください。それより、次、来ますよ」
「ッ! もう、ですか。息つく暇もないですね……!」
次は昆虫型モンスターの群れ。死肉に集る蠅型モンスター【デス・フライ】。黒い煙のような悍ましい群れ。昨日までのルディラなら怯んでもおかしくない。
だが。
「アクア・ハイプレッシャー!」
毅然とルディラは己のAD水晶宮クリスタル・ロッドをデス・フライの群れに向ける。そして、詠唱し、殲滅した。
魔物への態度。そこだけは、昨日までのルディラではない。
戦場はどこも混迷の極みにあった。
基本方針として生徒たちは相性の良い魔物たちをそれぞれ相手取ることになった。
だが、その前提でさえ、どこも激闘が繰り広げられていた。
例えば、真央とコスモは接近戦が得意なので恐竜型の魔物が集まる戦場に派遣されていた。
そして、奮闘していた。
ランク7・80万ポイント・地属性・獣魔法
「ディザスター・クロー」
「WRUO!」
真央のクロー型AD――牙刃葬爪《アート・クロー》テリブル・ファングが闇色の光を纏い、迫り来た恐竜型魔物【アース・トリケラトプス】を交錯の刹那で5枚下ろしにする。
「コスモちゃん、そっち行った」
「はい! アイアン・モード。アンド――」
コスモが迫りくる獰猛な牙と爪が脅威の恐竜型魔物【キラー・ラプター】に鉄拳をぶちかます。
「スクラップ・フィスト!」」
「WGUO!」
鼻っ柱に炸裂した鉄拳がキラー・ラプターの頭部を一撃で粉砕する。キラー・ラプターの爪はコスモの黒ずんだ肌に当たるもはじき返され傷一つつかない。接近戦でのコスモの強さは折り紙付き。だからこそ、この戦場にパートナーの真央とともに派遣されていた。
「サンキュ。でも、敵が多くてやりづらいね。しかも」
真央は振り向く。そして、巨体を翻し尻尾を叩きつけようとしてきた【コズミック・サウルス】の攻撃を交わし、そのまま尾から背を駆けのぼる。そして、
「ディザスター・クロー!」
「GUOOOOOOOOOO!」
首を叩き斬る。
大柄の頭部がズれ、そして断面を晒して滑り落ちていく。真央は額の汗を掻き、厳しい貌を死体に向ける。
「先日より強力な個体が多い。こりゃ本当、死人が出るよ……!」
「コスモ、本当にこの学園に入学してよかったものかと現在進行形で思案中です。もしかして学園長って本気で頭の螺子がぶっ飛んでる人なのでは……!」
「今更気付いたのかにゃー……あの人は本気で常識が通じない人だから気をつけてね。と言っても、今回のは入学以来トップクラスのとびきりだけど」
「クゥたちは大丈夫でしょうか」
「うーん、分かんにゃい。だけど、っと」
真央は苦戦していた他の生徒の元へと跳躍。背後から恐竜型魔物の頭部を断つ。生徒に礼を言われながら、コスモに首で振り向き、冷静な貌で告げる。
「信じて戦うしかないよ。それ以外、今はできないしね。それに」
真央はいつものように、勘を頼りに言い切った。
「あの子なら、なんか大丈夫な気がする」
その戦場では風が渦巻いていた。
空に一匹の怪鳥。
災鳥ジズ。
鳥形魔物の王魔種。巨大な赤目の鷲。空を飛び回り、攻撃の届かぬ高空から、一方的に地上に攻撃を仕掛けてくる。厄介を通り越して災害としか言いようがない魔物。
だが、その魔物は今、地上に意識を向ける余裕を失っていた。
「我が王の仇討ち、ここで果たしてくれる!」
「FARURURURUURURURURURURURU!」
クゥの召喚した精霊。
ランク8 裂空将ガルダ。
燃え盛るような赤き体毛から可視化されそうな怒りを滾らせて、高空にて災鳥ジズと渡り合う。
そして地上――クゥは。
「そのまま風をさばき続けてください。隙を見て、撃ちます」
「は、はい。重力魔法もこういう時は便利ですね!」
心亜の展開する360度の重力魔法壁にて無形の風の衝撃から身を守りながら、木陰に潜みそのライフル型AD破風纏廻アームズ・ウィングを高空へと向け続けていた。