カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第3話 巨人狩り

 500年前

 

「巨人狩りじゃあああああああああ」

 

 巨人。人の数倍から数十倍の体躯を擁する、数ある魔物の中でも最上位の実力と、それ以上の存在感を誇る魔物種だ。今より魔工学力において遥かに劣る500年前の王魔戦線時代にあっては、それこそ災害のような脅威であった。

 

 そんな時代にあって、巨人討伐を半生業と化し代名詞と化していた一人の英雄魔符士がいた。

 

 炎条躯(えんじょうむくろ)――炎条家の開祖であり、レーヴァテイン・モードという一枚のカードを生涯使い続けたことでも有名な規格外の魔符士である。

 

 ただ一枚のカードを使い続けた理由はその規格外の魔法相性。符号魔法という域を超えてまさにカードと一体化し、その性能を120%引き出し操り、ランク7相当とは思えぬ出力で魔物を薙ぎ倒し王魔戦線時代を駆け抜けた、英雄の中の英雄だ。

 

 その中でも特に巨人狩りで勇名を馳せたのは、巨人種がそのあまりにも目立つ体躯と脅威度故に優先して討伐対象となったから。

 

 そして何より、

 

「巨人なんて幾らでもかかってこいやぁああああああああああ!」

 

 炎条躯の使うレーヴァテイン・モードが巨人種と相性のいい魔法だったからだ。

 

 炎条躯がその全長30メートルを超える長さの炎剣を振るう。同じく30メートルを超える巨躯の巨人が足をなます切りにされ崩れ落ちる。そして、

 

「一丁上がりィイイイイイイイイイイイイイイイイ!」

 

 首を根元から切断される。そのリーチのはるか遠くからの一方的な虐殺。巨人種の持つ優位性が炎条躯とレーヴァ―テイン・モードの前では容易く覆される。巨人は体躯が大きく再生能力さえ持つが、決して防御能力は高くない。そして首という明確な急所を持つ。それも相まって、レーヴァテイン・モードを纏ったADの一奮い毎に巨人たちが死んでいく。

 

「すげぇ、あれが炎条躯。そしてレーヴァテイン・モードか」

 

「巨人種をああも簡単に……! あんな真似ができる魔符士はあの勇者パーティーを覗けばあのお人くらいのものかもしんねぇな……!」

 

 レーヴァテイン・モードを纏ったADが炎の軌跡に命を散らす。そして、その炎は、血は、時代を超えて受け継がれる。

 

 炎条家史上最高の天才の手の中に。

 

 時の流れの中でより洗練され強化されたADとカードと共に。

 

 

 

「弱ぇ」

 

 炎条司が無双していた。

 

 傍には巨人種たちの無数の死体。

 

 全て司が一人で倒したものだ。

 

 その手には剣型のAD炎剣伝承ファイ・ロード。それは長大な真紅の魔力光を纏っている。魔力光の全長は30メートルを優に超える。その剣を振るう。

 

 それだけだ、視界の中の巨人種がまた一匹と命を散らす。遠間から、何もできず。

 

 傍にいた岩城剛志が驚嘆の眼で司を見る。

 

「……炎条司。なるほど。噂以上だ。巨人狩りの伝説再来、か。現代の技術で炎条躯がレーヴァテイン・モードを振るったら、丁度今のお前みたいになるのかもな」

 

「分っかんねぇけどよぉ、俺は俺だぜ。俺は俺で最強を目指す。そう決めたんだ。次は」

 

 司が長大な炎剣を一際大きな巨人――王魔種奇形醜ゴローへと向ける。

 

「あいつだ。一撃でぶった切る」

 

 

 

 

 奇形醜ゴロー。

 

 全長100メートルを誇る巨人の王魔種だ。

 

 醜悪な奇形。顔は当然、その五体までもも醜く歪で不揃いだ。特にその2の腕は歪に膨らんだ樽型で、ゴローの最大の特徴とされる。その2の腕で振るわれる攻撃は防御不可能の破壊力を持つ。

 

 ラグナロク学園の生徒たちもその巨躯に圧倒されて、そしてその高い再生能力を備えた体積を一度に吹き飛ばす魔法が中々存在せず、遠間に遠隔魔法を撃つばかり。全く誰も近寄ろうとしない。

 

 そこに、司が一人で歩み寄る。岩城剛も一緒についてくる。司は初手からフュージョン・マジックを詠唱した。

 

「フュージョン・マジック――」

 

 巨人種は再生能力が高い。だから一撃で決めるつもりだ。正眼に垂直に構えたADが赤く発光する。

 

至紅炎剣(レーヴァテイン)至勇紅炎舞踏剣(ブラテマ・ロンド)

 

 赤く伸びる魔力光が天の頂へと果て無く伸びる。その全長は王魔種ゴローの身長をも超える。100メートルを超える伸長を見せ、さらに伸び、月を指してようやく止まる。あまりに長大な炎剣。それを見たゴローも流石に無反応とは行かなかった。その巨大な腕を引き絞り、地面を掻くようにして振り抜いた。

 

 無数の岩盤飛片が司目掛けて飛ぶ。岩城剛志がその前に立ちはだかる。その手に握るハンマー型のAD【牙城建砕(タクティカル・アルト)アイアン・ハマー】を構え、詠唱しながら地面目掛けて振るう。

 

「オデッセイ・タワーゲート」

 

 ゴゴゴゴ……。

 

 司の前の地面が隆起し、グァバッ!と城門型の防壁を形成して、司を飛来する岩盤飛片から守り切る。さらに、ゴローはその拳を司に振るった。岩城剛志が再度詠唱する。

 

「フュージョン・マジック――」

 

 ハンマー型のADをサイド地面に振るう。

 

魂成羅生門(ソウル・ゲート)

 

 司の前に人の顔の形を成した門が現れゴローの拳を受け止めた。ゴォーン! と遠く高鳴る金属音のような響き。魂成羅生門は罅割れ、しかしゴローの拳を受け止めきった。攻撃の反動でゴローがたたらを踏む。司は口角をニヤリと歪めた。

 

「あんがとよ。あんたの防御魔法はきっとラグナロク学園No1だぜ。いくぜ――」

 

 司が剣を真っ向振るう。至紅炎剣(レーヴァテイン)至勇紅炎舞踏剣(ブラテマロンド)が大勢を崩したゴローの頭部から剣先を食いこませる。そして――

 

「死ねオラァアアアアアアアアアアアア!」

 

「ウンッゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 ――ゴローの頭頂部からその股間までを一撃で叩き斬った。2つに分かれたゴローがズドォオオオン……と巨大な音を立てて縦に崩れ落ちる。司はニヤリと笑って岩城剛志を振り向いた。

 

「ざっとこんなもんよ。炎剣魔法って巨人種と相性がいいんだ。ま、俺様の才覚あっての結果だが、流石に相性差もあらぁな。でも、ま、上出来だろ」

 

「ああ。1年でこんだけやれる人間なんて見たことねぇよ。あ、いや、生徒会長とルディラは別格がいるけど、あいつらは別格か。にしても、本当凄ぇや……」

 

 いつも純粋な輝きを目に灯している、しかし成熟した気配も同時に漂わせる不思議な雰囲気の上級生の岩城剛志に司は少し照れたような笑みを浮かべた。

 

「……あんたがいてこその成果でもある。あんがとよ」

 

「いいっていいって。俺防御魔法ばっか達者でそれを埋め立ててくれるお前には俺も感謝を――っ!?」

 

 岩城剛志が表情を変える。司は訝しんだ。

 

「どしたんだ?」

 

「ゴ、ゴローが、再生を始めて……!」

 

「ッ!? マジか。くっ、ポーション飲んでもう一撃同じ攻撃を」

 

「あ、いや、それには及ばねぇわ多分」

 

「え?」

 

 司がゴローを振り向く。その先には――

 

「フュージョン・マジック――超力王弾(オーライザー)!」

 

「死んどけオラァ! フュージョン・マジック無敵三鋭斬(ストライクフィニッシュ)!」

 

「再生する前に息の根止めちまえ! フュージョン・マジック怒雷武車輪撃(マッハドライブ)!」

 

「オ、オゴゴ……」

 

 地面に倒れ身動きが出来ないゴローの頭部中心に火力高めのフュージョン・マジックを叩き込み続けるラグナロク学園生達の姿。間もなくしてゴローは沈黙した。司はため息をついて、その場に腰を下ろし感慨深げに言った。

 

「やっぱこの学園凄ぇわ。木っ端に至るまで戦意が徹底してるぜ」

 

「あの学園長の元育てられてるからな。3年にもなる頃にはああやって適応していくのさ……」

 

 岩城剛志もまたため息と、それと同時に笑顔を浮かべて戦局の終局を見守った。

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