カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第12話 シャルナ無双

「お、おおおおおおおおおおおお!」

 

 ルシフェルは目にも止まらぬ速度で己の周囲を飛び回り、信じられぬ鋭さで防御魔法を突き破る攻撃を繰り出すシャルナに完全に圧倒されていた。ありえぬことだった。己以上の速さで飛び、己以上の瞬間火力を出し得る存在。そんな相手、想定もしていない。たかが人間如きが持っていい力ではない。その力の源は――。

 

(あのAD。あれに切り替えてから別人になった。一体何なのだ。あのADは! 糞ッ!)

 

「ケルビム・インフェルノ!」

 

 ルシフェルは広範囲に広がる光と闇の両方の属性を持つ混沌属性の火炎魔法を放つ。しかし、シャルナを捉えることは叶わない。シャルナは攻撃を回避するどころか一瞬でルシフェルの背後に回り、主導権を回復して攻撃を繰り出してくる。ルシフェルは振り返り、詠唱する。

 

「カオス・ガード!」

 

 ガギィイン!

 

 攻撃を受け止めるも、一撃で防御魔法が軋み、亀裂が入る。2撃目が放たれる前にその場を離脱する。防御魔法は2撃目は受け止めきれず、パリィン、と爆ぜ壊れた。ただ威力が高いだけではない。鋭い。魔法の威力を最大化する術を知っている。稀に起きるその事象。それを意図的に行ってくる。だから、ADの補助はあれど己以下の魔力であれだけの攻撃力を実現し得る。目の前の女は間違いなく化け物そのものだった。

 

(どうする――そうだな。女か。何、簡単なことだ)

 

 シャルナが再び突進してくる。ルシフェルは振り向き、その眼をカッと見開き、詠唱した。

 

混沌魅了(カオス・チャーム)

 

 シャルナの動きが止まる。

 

 

 

 

 あの堕天使の魔物に見据えられた瞬間、訳の分からない感情に襲われた。

 切なく、甘く、鋭い想い。それを、目の前の相手に抱いてしまう。得体のしれないその感情の名前は分からない。だけど、とてつもない甘美な感情。そして同時に、

 

「――さない」

 

 とてつもない醜悪な感情。

 

 己がそのような感情を向ける相手は生涯ただ一人と決まっている。

 

 天之玄咲。

 

 その相手以外に。

 

 このような感情を向けさせられた。喚起させられた。

 

 それが凄く許せない。裏切りだと思う。だから、だからこそ、

 

「殺す」

 

 一瞬で全ての感情が殺意へと転化し、体の内から己の知らない魔力が迸る。

 

「許さない」

 

 

 

 

 

 一瞬止まったシャルナの体の内から悍ましい魔力が迸った。それは己と同じ混沌属性の魔力。光と闇を混合せし最強の魔力属性の一つ。そして、迷わずこちらへと飛翔してくる。先ほどまでの倍以上の速度で。

 

 云倍以上の殺意を乗せて。

 

 ルシフェルは「ヒッ!」と息を飲んだ。慌てて己の持つ最大火力の魔法で迎撃を選ぶ。

 

「ルチーフェロ――」

 

 手を胸の前で重ね合わせる。そして、闇と光、2つの魔力を全く同じ量混ぜ合わせて、至高のバランスの上にのみ成り立つ最強魔法を放つ。

 

「カノン」

 

 黒と白の閃光が渦巻きながら放射状に広がっていく。シャルナは当たり前のようにその攻撃を大回りの飛翔で回避し、ルシフェルの背後へと回った。ルシフェルも攻撃の矛先を向け続けるが追いつけない。しかし、接近するにつれ攻撃が追いついてくる。もうすぐで着弾する。その直前、声が響いた。

 

「デュアル・クリティカル・インパクト」

 

 クリティカル攻撃を一度だけ10倍の威力で放てるギミック。クロウのダークロウに搭載されているギミック。さらに、

 

「ディープ・アビス・イラプション」

 

 クリティカル成立時にのみ発動する、闇の奔流を刃先から解き放つ魔法。それに加えて

 白夜幻創天照白刃(ダークネス・エルフィン)の補正がかかった魔法が、交錯の刹那、ルシフェルのルチーフェロ・カノンと重なった。

 

 結果。

 

「馬、鹿な…」

 

 瞬間火力でシャルナが押し切った。ルチーフェロ・カノンを一瞬の闇の光の奔流で塗りつぶし、ルシフェルに魔法を届かせた。ルシフェルに致命傷を与えた。ルシフェルが地に堕ちながら、断末魔の悲鳴を漏らす。

 

「醜悪な人間、ごときにィイイイイイイ! グハッ!」

 

 ルシフェルは最後に血を吐いて、絶命した。

 

 

 

「……死んでるな」

 

 クロウが死体に近寄り確認する。頷き、生徒たちに親指を立てる。生徒たちが沸騰した。シャルナも頷き、降りてくる。クロウはシャルナに呆れたような笑みを向けた。

 

「よくやった、シャルナ。本当に倒しちまうとは流石に驚いたぞ」

 

「この、ADのお陰です。やっぱり、補正値って、凄い」

 

「……そうだな。だが、それでもだ。俺には倒せなくてお前には倒せた。その意味をじっくり噛みしめるといい。そのADはこの試験中お前に託す。俺は予備のADを使わせてもらうよ」

 

「じゃあ、遠慮なく。っと」

 

 シャルナがたたらを踏む。魔力不足による枯渇現象。ポーションを飲んで回復し、シャキッと立って宣言する。

 

「玄咲を探しに行きます。きっと、待ってる」

 

「ああ。うん。待ってるかもしれないな。まぁ行ってこい。あとは何とかなる」

 

「はい」

 

 シャルナは玄咲の元へと向かう。その無事を無条件に信じ込みながら、

 

「きっと、玄咲なら、大丈夫だよね」

 

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