カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
玄咲は苦戦していた。
黄金騎士ゴルディオン・ナイト。
その能力は単純。全ての魔法攻撃の無効化。ただし、その対象は己も含む。だから、黄金騎士の攻撃手段は原始的な剣撃攻撃だけだ。
しかし、その技量が並外れている。魔法を抜いて魔物と戦うという無茶を要求する上に、本人自体が魔法抜きでの戦いを極めたような性能をしている。魔符士が魔符士たる由縁を否定し魔法抜きの戦いを強要する。剣聖アベルが一騎打ちで討伐したが、剣聖アベルでなければ討伐できなかったと言われている。それが故に魔符士殺しの異名を持つ魔物。その魔物と玄咲は真っ向勝負を繰り広げていた。
そして、苦戦していた。
「ぐっ!」
「ヤル、ナ」
その理由は剣の扱いの非習熟にあった。使い始めて2週間にしてはよくやっている。だが、黄金騎士を相手にするにはやや技量が不足していた。むしろ、たった2週間で均衡を築ける程に習熟しているのが奇跡的ともいえる。戦闘の天才の自負は伊達ではない。しかし、それでも、足りないのは事実。
「しまっ」
「隙、アリ」
とうとう均衡が崩れる。剣を弾かれ、その隙に剣撃を振るわれる。
(あっ、これ、やば――)
玄咲は反射的に手の甲を使って剣劇を弾きに行った。装甲を纏ったディライダーの拳なら弾けるのではないか。そう考えてのことだった。その結果は。
ガギン!
普通に弾けた。
黄金騎士が驚く。同時、玄咲も驚いていた。考えてみれば当たり前だが、ディライダーという装甲を纏った玄咲の拳は生身とは違うのだ。ならば、徒手空拳で弾けるのも当然の道理。
「……」
そこまで考えが至った玄咲は。
ゼアニアム・ブレードを握る手から力を抜いた。
(え? 相棒、お前、なんで俺の魂を手放して――)
「こっちの方が戦いやすい」
玄咲は徒手空拳で黄金騎士に立ち向かった。当然ながら剣での反撃がくる。今度はそれを拳で軽くいなし、一瞬で間を詰め、そしてインパクト。拳を叩き込んだ。
「グ、オオ」
「なるほど。戦いやすい」
慌てて振るわれた剣を今度は素手で挟んで真剣白刃取りを決める。そしてそのまま捻じり取って、奪い、遠くへ放る。ボディががら空きとなった黄金騎士の体に雨あられと拳の雨を降らせる。黄金騎士は剣がない戦いには不得手なようで玄咲の拳の乱打に圧倒されていた。
(な、なるほど。お前、そっちが本領だったのか)
「まぁ、剣を使うよりはな。徒手空拳と銃撃の方が体に馴染んでいる」
(……なんだろ、この何とも言えない気持ち、ゼアニアム・ブレードを思いっ切り振るって活躍して欲しかったが)
「今から使う」
(え? 本当か!?)
ディライダーの声には答えず、玄咲は決定打を与えるべくゼアニアム・ブレードを再び手に取った。そして接近。武器を失った黄金騎士はその本領を発揮できず、素手での防戦を選ぶが、
「悪いな。徒手空拳の相手は慣れてるし、こっちも少しは剣の使いも慣れてきた。負ける道理はない」
(行っけー! 決めちまえ天之玄咲ゥ! ゼアニアム・ブレードでとどめだァ!」
ピシリ。
ゼアニアム・ブレードが黄金騎士の鎧を切り裂く。もう一撃。斜め十字の亀裂が入り、それは広がり、やがて鎧全体に広がって、
「ウ、グオオオオオオオ!」
割れ爆ぜた。その中身は空洞。黄金騎士は鎧が本体の魔物であったのだと、玄咲はその時になって初めて気づいた。黄金騎士が破片を落としながら地に崩れ落ちる。そして、最後に言い残した。
「アベル、以来の使い手、だった。見、事……」
黄金騎士が沈黙する。鎧の胸部に空いた大穴が致命傷となったらしい。玄咲は額を拭い、黄金騎士を見下ろす。
「なんとかなったな。うむ」
(お前、俺の想像以上に凄い使い手だったんだな。あのアベルと同列に語られるとかマジかよ)
「え? 知ってるのか?」
(ああ。有名だからな。俺だって当時戦ってたんだぜ。いやー懐かしい。そうだ、せっかくだから俺の武勇伝を語――)
轟音。玄咲は会話を打ち切った。ルディラの戦いも佳境を迎えているようだった。