カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
ダンジョン・サバイヴァーズ部室。
「……来ませんね」
「はい。コスモちゃん、大丈夫でしょうか」
部室には現在、真央、心亜、玄咲、シャルナ、クゥ、の5人がいる。みな、コスモを待っている。今日は魔獣退治試験突破記念の打ち上げパーティーをやる予定なのだ。既に食材は揃っている。あとは、人数が揃うだけ。コスモが来るだけ。
だが、そのコスモが来ない。玄咲は心配そうに部室の扉を見つめる。
「やはり、気にしているのでしょう」
「うん。あれはコスモちゃんのせいじゃないって何度も言ったのに……」
魔獣退治試験にて機械王ゴア・ドグマ・ゼロに遭遇した時にコスモの身に起こった事。あれは機械種特有の電波ジャック攻撃による洗脳操作であったと結論づけられている。暴走したコスモは目につくラグナロク学園の生徒を片端から殺して回った。その中には真央も含まれている。信じられない戦力で、上級生も歯が立たなかった。最後はときめきエネルギーを使い果たして自死した形になったが、その間の記憶はばっちりコスモに残っているらしい。そのことをコスモはずっと気にしており、ダンジョン同好会の打ち上げにも姿を見せない始末だ。
玄咲は席を立った。そして断言する。
「探してきます。もしかしたらグルグル工房ならいるかも」
「う、うん。任せたよ後輩君。いや、私も探しに行こうかな……」
真央も席を立つ。そして部室の扉へと向かいかけたその時。
ガララ。
「あ、コスモちゃん……」
「コスモ、ちゃん……」
「あ、天之玄咲に、真央、ぶ、ちょう……その、あの……」
コスモは扉を開けたまま部室に入らない。視線を下向けて狼狽えている。時々、チラリと真央の方を見る。明らかに、ゴア・ドグマ・ゼロの1件を気にしている。真央は息を飲んだ。それから、フッと笑って。
スッ。
その手を差し出した。コスモに向けて。
「待ってたんだよ、コスモちゃん。さ、一緒にご飯食べよっか。それが贖罪だと思ってさ」
「あ、その、コスモは……えっと、その、じゃあ」
スッ。
そして、差し出された手をコスモもまた手に取った。
「お願い、します」
「ッ! コスモちゃん!」
「わっ!」
真央がコスモに抱きつく。コスモは狼狽えるも、その顔に笑みを浮かべて、結局は抱き返した。
「美味しいね」
「ああ。真央部長の料理はいつも天下逸品だ」
「じゃんじゃん食ってねー。というか過剰な程用意しちゃったから、食べてもらわないと後処理困るんだにゃー」
「はふ、はふっ! 真央、美味しいです!」
「うん。美味しい。ね、コスモちゃん」
「はい、美味しいです。……ぐす、本当に、美味しいです」
打ち上げパーティーは無事始まった。6人で有り余るほどの料理を食べる、食べる、食べる。賑やかなその空気の中で、コスモも段々といつもの調子を取り戻していった。そして、しばらく経ったその時、
コンコン。
「はいはーい。誰かにゃー」
部室をノックする音が響き、真央が応対した。そして、部室のドアを開けたその瞬間、凍った。
「え、ルディラ……?」
「はい、ルディラです」
「……」
「……どうも」
ルディラがぺこりと頭を下げる。凍り付いた真央も慌てて頭を下げる。玄咲が席を立ち、思わずルディラの元へと馳せ参じた。短い間で身についた主従関係が染みついている。
「何でここに、先輩が」
「来ちゃ駄目ですか?」
「滅相もないです」
「そうですか。では、これを」
「……?」
ルディラが一枚の紙を差し出す。それを見て、2人とも声を揃えた、
「「入部、届け?」」
「はい、いけませんか?」
「い、いや、そんなことないにゃ! ルディラならもちろん大歓迎にゃ! うんうん! あ、今打ち上げパーティー中。どうぞ入って入ってー。食事はまだまだあるからー!」
「あ、失礼します……」
結局ルディラも同好会の面々に混じって、というか新たな一員として、真央の料理に舌を打つことになった。真央の料理は美味しかったらしく、目を剥いて表情を変えないまでも喜色を顕にしながら料理を食べるルディラに玄咲は小声で尋ねた。
「ルディラ先輩、魔物とかダンジョン嫌いだったんじゃ。何故ここに」
「愚問ですね。欠点をいつまでも欠点のままにしておくほど私は愚かな存在ではないのです。……私も、少しは」
くすり、と初めて見る笑みを玄咲にだけ密かに見せながら、ルディラは小声で囁いた。
「自分を変えようと思いまして」
第6章 王魔決戦編、完