カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
4人は天之神社にやってきていた。
玄咲、シャルナ、明麗、ルディラの4人だ。魔獣退治試験後、試験を通して色々な想いが過った4人は、揃って天之神社にもう一度訪れる必要性を感じていた。
もちろん目的地は天之神社の中のあるコーナー。
「王魔写真館に行きましょうか!」
「はい。バエルにも見せてあげないといけませんから」
「なんとなく、見なきゃいけない、気がする」
「大丈夫。私は大丈夫。成長した。だからもう気絶したりなんかしないはず……」
「ふふ。では行きましょうか。今日は普通に学生服を着て行きますよ」
4人は王魔写真館を訪れる。
「うわー……壮観ねー……こりゃ、本当見て損はない景色だわ」
簡易召喚したバエルが写真たちを見てそんな感想を漏らす。シーマも今バエルと一緒に写真を眺めているらしい。その感想についてはまた帰ってから聞こうと玄咲は考えている。今はただ、神妙な気持ちを抱いているであろうシーマに、ただ黙ってこの景色を見せていてあげたかった。
「お、おえ……会長、やっぱこの景色、私にはきついです……」
「ふふ、倒れないだけ進歩してますよ。一昨年は本当こっちが驚きましたから」
「うー……私も、やっぱ、この景色、きついなー……」
「でも、これはもう過去の景色ですよ」
明麗が笑う。それは見惚れるような、美しい笑みだった。
「私たちが防いだ光景です。それは誇りに思いましょう」
「……はい」
4人は王魔写真館をそれぞれの想いを抱いて見物する。そして、神への祈りの展示場へと4人は足を運ぶ。
それは巨大な絵だった。
赤の濃淡だけで描かれた絵だった。
血だった。爆発だった。人だった。怒りだった。何もかもすべてが狂っていた。グチャグチャで無秩序なようでいて、テーマが強烈に燦然と花火のように、爆竹のように、咲き誇っていた。それは血だった。
血だった。
血だった。
血だった。
血だった。
血だった。
血だった。
血だった。
血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。血だった。
ドブ沼のように混沌と赤い血が叫び狂っていた。
それは泣き叫ぶ表情そのものだった。
あるいは血に埋もれた赤子そのものだった。
それはまるで胎盤のような赤い血の目玉焼きだった。
お天道様の代わりに地獄を照らし出す真っ赤な砂丘だった。
永業の罪苦を釘の穴で固定した永劫なる赤い檻だった。
どこにも逃げ場はない赤轢なる錆火の牢獄に囚人が囚われている。
神だ。
神への怒りが描かれている。
【
「なるほど。これは凄まじいわね……! でも、凄く良い絵。私、一目で気に入ったわ」
「バエルもか。俺もだったよ」
「ふふ。私たち相性抜群みたいね。そして、そうね。確かにかかってるわね……生体魔術。なるほど。確かにこれでかかってない訳がないわよねぇ……納得」
「そうなのか。なるほど、な……」
神への祈りの前で4人と1精霊並んで見物する。バエルは神への祈りをいたく気に入っている様子だった。シャルナは相変わらず不気味な絵だと言い、明麗は王魔戦線時代の悲惨さが良く表れている良い絵だといい、ルディラは顔を背けて口を抑えていた。5者5葉、相変わらず見るものに色々な想いを抱かせる、まさに芸術らしい絵であった。
食事処【里見の里】
その後は飲食店で舌鼓を打った。
茣蓙の敷かれた和風レストラン。メニュー表を覗いて明麗が声を弾ませる。
「今日のおすすめランチは天之ラーメン! 当たりですよ! 是非これを頼みましょう!」
「天之と名のつくのにレギュラー商品じゃないんですね……」
「私、頼んでみる」
「私は無難にこのステーキランチにしましょう」
結局玄咲、シャルナ、明麗の3人は天之ラーメン、ルディラはステーキランチを頼んだ。天之ラーメンは天然素材100%の添加物0で作られた優しい、しかししっかりパンチの効いた味わいのラーメンで、その独特の旨味とヘルシーな後味に気づけばスープまで飲み干してしまう逸品だった。ルディラも明麗に少し分けてもらっていたが、美味しそうに食べていた。最後に「そっちでも良かったかもしれませんね」と言っていたのが印象的だった。
【祈祷所】
明麗が歌い上げながら舞を踊っている。
ゴスペル調の礼賛歌だ。
荘厳な調べが和風な舞にベストマッチしている。
紅白の流麗な軌跡が目に鮮やかな軌跡を残す。
流水のように淀みを知らず大火のように盛り続ける。
玄咲は訳知らず涙が零れた。
それは本当に美しく尊いものに触れた時にのみ流れる涙だった。
天之明麗の舞は天上の美しさだった。
「これにて流刃万火の舞を終了させて頂きます。観覧頂きありがとうございました」
明麗は礼儀正しく地に膝と手をつけ頭を下げる。玄咲はもはや涙を流しながら高速拍手をすることしかできなかった。シャルナも同じだった。ぐすりぐすりと泣いていた。ルディラは無言でパチパチと。しかし瞳の端に太陽の破片が煌めいていた。明麗は恥ずかしそうにはにかんだ。
【賽銭箱】
チャリンチャリン。
パンパン。
「……」
「……」
「……」
「……」
何でこんなことしてるんだろう。全員、同じことを思っていた。
【おみくじコーナー】
「おみくじを引きましょう!」
ガラガラ。
中吉
小吉
大凶
吉
それぞれ、明麗、ルディラ、玄咲、シャルナの結果だ。相変らず玄咲は大凶のようで、気まずい空気が流れた。
【おみやげコーナー】
「おみやげを買いましょう!」
「そろそろ帰りますからね。何がいいかな……」
「あ、あれにしませんか?」
ルディラが本棚に並ぶ幾つかの漫画を指差して言った。玄咲はそれも悪くないなとやんわりと肯定した。
「ルディラちゃんは漫画好きですからねー」
「!? 何故それをッ!」
「見てれば分かります。隠してるつもりだったんですか?」
「あ、う……」
「……ルディラ先輩のお土産は漫画でいいとして、俺は何を買おうかな」
「あ、あれにしよ!」
シャルナはボタンを押すとメタルな曲が流れる【デス・レクイエム】という名前の小型ギターアクセサリーを指差した。玄咲はやんわりと断った。
「んー、この前の鳩のアクセサリー程しっくりくるものがありませんねー。あ、そうだ! 店員さーん!」
明麗はある商品を手にレジに駆け込み、そしてまた戻ってきた。そしてルディラに購入した商品を手渡す。
「はい、これ!」
「これは、灰色の鳩のアクセサリー?」
「はい! この前3人でお揃いのを買ったんです! だから、ルディラちゃんにも、はい!」
「……じゃあ、はい」
ルディラはおずおずとアクセサリーを受け取った。そして、照明にかざすように灰色の鳩のアクセサリーを眺めて、ふっと口元を緩めた。
「なんかいいですね。こういうのも」
「はい! いいですよね!」
ルディラはとても嬉しそうだった。明麗もまた、いつものように輝く笑顔で頷いた。
【下校】
「それじゃ、そろそろ戻りましょうか」
明麗が微笑み笑顔で言う。歴史資料館を見学した。凄まじい絵を見た。飲食店で素材の味が生きた美味しい食事を食べた。明麗の舞とゴスペル調の祝詞の融合した不思議で荘厳な演舞祈祷に涙した。おみくじを引いた。賽銭箱に金を投げ入れお参りをした。平和を祈願するような灰色の鳩のキーホルダーをお土産屋でルディラの分も買った。それはとてもとても楽しい時間だった。人と過ごすからこそ味わえる、この世で2つとない時間だった。楽しい楽しい時間だった。
でも、それももう終わる。
楽しい時間には終わりが来る。
「はい。俺たちの」
「うん。私たちの!」
「ラグナロク学園に、ですか。まぁそろそろ時間ですね」
「はい。私たちの」
玄咲と、シャルナと、ルディラの前で、夕暮れを背負った明麗が最後の鳥居の向こう側で、階段を背に両手を広げて告げる。夕暮れ色に染まった街並みの果てにはラグナロク学園――玄咲たちの帰るべき場所。
そこに、みんながいるから。無数の夢がある。希望がある。愛がある。
だから、無限の光が生まれる。明麗が鳥居とその果てに広がる夕空を背に優しく微笑んだ。
「――ラグナロク学園へ」
――階段を下る4人の影がどこまでも伸びる。4人のシルエットの上に夕日がいつまでも輝いていた……。