カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
そして翌日。
再びのカードトレインを利用してラグナロク学園生たちは学園のプライベートビーチにバカンスにやってきていた。
「わーい、海だー」
「……」
「海だー……玄咲?」
「……海だな」
砂浜に生徒の群れ。
その只中にあって玄咲はローテンションで地面に刺したパラソルの中で体育座りをしていた。隣にはシャルナ。水着を着ている。しかし、玄咲が何かしらリアクションをすることはない。
玄咲がぼやく。
「……例えば俺が他の生徒の水着を見たとして」
「うんうん」
「それで誰が喜ぶ。誰も喜ばない。だから俺は何も見ないことにしたんだよ……」
「むー? 言ってることが、よく、分からない……」
「分からなくていい。ただ、俺に勇気がないというだけの話なんだ……いや、神聖領域を神聖領域でいさせるための試みなんだよ……」
「これがライトノベルとかなら挿絵が着くから有意義なのかもしれませんがそうではありませんからね。と、コスモはコスモは自分でもよく分からないながらツッコミを入れます」
「やぁ、コスモちゃん」
背後から現れたコスモ。いつも通りの電波発言。だが、玄咲が顔を上げることはない。さらに
「ゲンサックは何か自分と猛烈な戦いを繰り広げているみたいだからあっち行こうか。コスモちゃん」
「おお。では、今回の出番はこれでおさらばバイバイです」
背後から現れたクゥがコスモを引っ張っていく。再び二人きりになる玄咲とシャルナ。シャルナは朧げに玄咲の意図を察した。
「つまり、理性を保てそうにないから、何も見ないようにしてるんだね」
「まぁ、そんな所だ」
「ふーん……せっかく、みんな水着、着てるのにね」
「だからだよ」
「あー、天之くん」
ビクリ、と玄咲が身を震わす。声の主は天之明麗。ざっざっざっと砂を掻き分けて近づいていく。そして玄咲に近づいて、
「私と一緒にビーチボールでもして遊びませんか」
「!!!」
俯く下から玄咲を見上げた。弾みでその体のライン、特に胸部さえも僅かに見える。玄咲はさらに頑なに蹲って明麗の誘いを断った。
「申し訳ありませんが、俺はここでシャルナと蹲っているだけで楽しいので」
「むー、そうですか。それなら仕方ありませんね……」
トットット。
明麗が走り去っていく。玄咲は安堵の息を吐いた。
「危なかった。会長の美貌は異次元の領域だからな。見たら正気ではいられない」
「玄咲、今日はなんだか、本気で情けないね……」
「なんと言われようと俺はこのスタンスを貫く。これが俺なりの処方箋」
ゲシッ。
玄咲は背後から後頭部を足の裏で蹴られた。振り向きかけ、
「!!!」
微かに見えた水銀色の長髪から相手を察知。そして微かに水着の紐が視界に入る。危険だ。そう判断した玄咲は再び頑ななモグラとなった。背後でため息が聞こえる。
「クロ……あなたは馬鹿ですか」
「ルディラ先輩……何と言われても今はこれが俺のスタイル。崩す訳にはいきません」
「そうですか……まぁ、あえてこれ以上のツッコミはしないでおきましょう。本人はいたって真面目そうですからね……」
ザッザッザッ。
遠ざかる気配。玄咲は蹲って動かない。シャルナが背後から玄咲の肩をツンツンとつつく。
「なんとなく、玄咲が必死な理由は、分かったけど、そこまでする?」
「ああ。どこまでもだ。俺は俺の心の安寧の為に今日はこのスタイルを貫く」
「う、うん。もう、あえて、何も言わないどく。じゃあ」
トスッ。
隣に腰を下ろす気配。シャルナもまた玄咲の隣で膝を抱えた。
「隣で、他の人が遊んでるの、眺めとく」
「……ごめん」
「いいよ。隣にいるだけで、満足」
しばしの間、2人は浜辺に隣り合っていた。
「うむ、十分空気を楽しんだし、そろそろ移動するか」
「? どこに?」
しばしの後、俯いたまま立ち上がった玄咲。そして、ずっと手に持っていたAD――シュヴァルツブリンガーを揺らして見せながら、俯いたまま不敵な笑みを浮かべる。
「水中呼吸の魔法でとっておきの場所にだ。もちろんシャルも一緒にな」
「! うん」
2人は立ち上がり目的地へと移動を開始する。