カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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 設定の整合性を保つため大分設定が混雑してしまいました。申し訳ない。


第7話 フェルディナの昔話3

「いきなりこんなこと言っても訳分からないわよね。大丈夫。ちゃんと全部説明してあげる。

 

 神様にはね、己が作った世界に直接干渉をしてはならないというルールがあるの。何でそんなルールがあるのかは分からない。ただ、そういうルールが初めからあって、そういう制約の中で色々と導きをつけなきゃいけないの。だから精霊神という間接的に私の意向を遂行する存在を創ったりもした訳。こと得意分野に限れば私以上の力を持つ上にあくまで自由意思で従わせねばならず、そのせいで力の化身として産み出したバエルなんかは私の意向を無視して人類を虐殺しようとしたりしたけどね。とにかくそういうルールがあるの。

 

 でも、そのルールにも抜け穴がある。神様自身が人間に転生した場合にのみ限り直接干渉することが可能になるの。だから私は“人間”勇者カーンに転生して世界を救うことにした。もうそれしか王魔戦線時代に投げ出された人類を救う方法はないと思ったから。

 

 だから私はキャラクリ――えっと、転生体の人間を創る行為――をして王魔戦線時代を救うに相応しい魔力を持った存在をクリエイトし、転生したわ。人間に転生する以上万能の力を持たせるわけにはいかず、しかし神様の転生体であるという有利条件があるからキャラクリのポイントは豊富で、かなり理想に近い転生体をクリエイト出来た。そして私は人間界に勇者カーンとして転生を果たした。

 

 それからが地獄の始まりだとは想像だにせずにね」

 

 フェルディナは深いため息をついて美しい容貌に影を落とした。嘆き。それが、この神にはあまりにも似合う。おそらく根底にあるものが深い深すぎる嘆きなのだろう。話のスケールに圧倒される玄咲とシャルナにフェルディナは解説を再開する。

 

「ごめんなさい。少しナーバスになっちゃった。あの時代の事を思い出すとどうしても、ね。

 

 人間に転生した私はバシバシ魔物どもをしばき回ったわ。だけど魔物の数は衰える気配を見せず、やがて私は強力な個体を狙って討伐を重ねるようになった。すると、同じことを考える人間がやっぱりいたのね。その旅の中で私は強力な人間の仲間と出会った。後に勇者パーティと言われる面々ね。

 

 破龍のガスキン。聖杖アリア。魔導姫マナ。そして何より――剣聖アベル・マルセイユ。みんな一騎当千の力を秘めたまさしく英雄足る力の持ち主だった。そしてその中でも剣聖アベルの力は図抜けていた。――私を凌駕するほどに」

 

 フェルディナはふぅ、と感嘆の息を吐いた。

 

「あんな人間がいるなんて思わなかった。強くて、格好良くて、性格も豪放で、どんな魔物相手にも物おじせず魔剣アベルを手に立ち向かって、倒してしまう。まさしく英雄。神に選ばれた、いや、神すら及ばぬ英雄の中の英雄だった。彼がいれば王魔王アイギスの討伐も夢じゃない。柄にもなく浮かれた頭で私はそう思ってた。……正しかった。正しかったのよ。その想いは。足手まといさえいなければという前提がなければね……

 

 人類救済の旅を続けた私たちはある時とうとう王魔王アイギスと相まみえる機会を得た。そこでも一番活躍したのはアベルだった。アイギスの音速の攻撃を剣一本で凌ぎ、そして有効打を加え続け、私たちはサポートに徹した。当時、私たちの中で最強の魔符士がアベルだったの。だからアベルをフロントに私たちは補助役に回るというのが当時の私たちの最強フォーメーションだった。そしてとうとう、アベルが王魔王アイギスを倒してしまった。

 

 私は歓喜と共にアベルに抱き着いた。感情のままに、世界一大好きな人に、飛びついた。ええ、そうよ。男同士よ。でも、私の心は女だった。そして旅をする中で完全にアベルに惚れ切っていた。ノロケじゃないわ。単なる事実。そして――私の最大の罪。

 

 王魔王アイギスはまだ死んでいなかった。いや、正確には死して尚一度だけ復活するという誰も知らなかった特性をアイギスは隠し持っていたの。アイギスはアベルを狙った。それでも、平時のアベルなら容易く躱せた。その程度の攻撃だった。

 

 でも、その時アベルには私が抱き着いていた。

 

 そしてアベルは咄嗟に私を庇った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アベルは死んだ。アイギスの触手に貫かれて嘘みたいに呆気なく。私を庇って。

 

 

 

 

 

 

 私のせいで。

 

 

 

 

 

 

 

 アベルは死んだ。

 

 

 

 それからは撤退戦だった。当時の私たちはまだ力不足でアイギスを倒しきる力はなかった。そしてアイギスもまた命のストックを失って臆病になり、私たちと戦うことを避けた。その結果、互いの撤退は驚く程スムーズに進み、あっという間に撤退は完了した。

 

 アイギスは命のストックを失った。私たちは剣聖アベル・マルセイユを失った。それは取り返しのつかない、本当に重大な損失だった。

 

 私は泣いた。3日3晩泣いた。仲間たちも呆然自失としていた。それ程までにアベルの存在は私たちにとって大きかった。戦力としてだけでなく、精神的にもアベルは私たちの支柱だった。そのアベルを自分のせいで失って私は自暴自棄になりかけた。

 

 でも、私は神だった。そんな泣き言赦されなかった。アベルを殺したのは私。だから、死んだアベルの分も魔物を退治し、必ず王魔戦線時代を終わらせねばならなかった。それが私の使命で、アベルを殺した責任。だから私はそれからも戦い続けた。戦い続けて、レベルアップを重ねた。ADもカードも強化に強化を重ねた。

 

 そして戦いの中で、私はガスキンもアリアもマナも失った。王魔王アイギスは私と直接戦うことを避けて、仲間を一人ずつ襲撃して殺して回った。一人殺されるたびに私は内臓を抉られるような痛みと悲しみに襲われた。だけど、それでも私には使命があった。だから歯を食いしばって戦い続け、そしてようやく。

 

 

 王魔王アイギスを打倒し王魔戦線時代を終わらせる日がやってきた」

 

 

 フェルディナは唇を引き結んで、瞳を揺らして、嗚咽を堪えるように語った。

 

 

「でも、その時既に私の精神は限界だった。勇者パーティ以外にもたくさんの仲間の死と出会った。それでも戦い、戦い、戦い続け、ようやくたどり着いたフィナーレ。私は神界に戻って、それからゆっくり休みたいと思った。休もうと思った。だから、勇者カーンとしての人生を終わらせて、神界に戻ろうと思った。その直後だった。

 

 リーン・フォーンの生態魔術《ナチュラル・マジック》が直撃したのは。

 

 神への祈り。あの絵画に籠められた思いの全てが私に直撃した。そして思い知った。私が勇者ごっこをしている間に本当の地獄を味わった人間が何億人といたのだと。私は何も救ってなどいないと。ただ終わらせただけ。

 

 私のミスで始まった王魔戦線時代を私の手で終わらせただけ。自分の尻を拭っただけで、何一つとして己の罪を拭えてなどいなかったのだと。

 

 ……私は泣いたわ。泣いて泣いて、泣いたわ。そして泣き疲れて、結局は神界で休もうと思い、神として念じることで、人の生を終わらせ神界に戻るための自死を行おうとした。

 

 できなかった。

 

 私の神としての神格はそれ程までに落ちていた。

 

 神はその信仰に応じた報いを受ける。王魔戦線時代の人々が神へと送った神への祈り。それが地獄に落ちろという想念だとしたら? そんな想念を寄せられるような神がそれまでと同じような神でいられる訳もない。気づけば私は人々の怨嗟の対象となっていた。王魔戦線時代を創り出した大罪人。それが人々が神に突きつけた結論だった。私はもう以前のような神ではなくなっていた。

 

 ただの貧弱な神界の染みとでもいうべき存在に成り下がっていた。

 

 1度目の世界で人類が殆ど滅んでも私が神として存在できたのは1度目の世界では私の名前を出すことがなかったから。人はそれぞれ勝手な神を創って信仰していたから。だけど、神の分割は結果的に宗教戦争という世界崩壊の切っ掛けの一つを創った。だから2度目の世界では私が直直に神として名を出し、世界唯一の神として神の統一を行うことにした。当時はそれが最善だと思っていたのよ……。でも、そのせいで最終的に神への怨嗟が全て私へと還ってきた。奇しくもリーン・フォーンの生体魔術を切っ掛けとして。同時、当時の精霊界でも私の威光は地に堕ちていた。その結果、私は神格を殆ど失った。神としての権能を殆ど失った。それが神が名前を現し己を崇めさせるリスク。そして忘れられること、名前を損なうことを恐れる理由なのよ。とにかく私は神として致命的に信仰を失い、それどころか怨嗟を集め、神格を損ない、かつて出来たことが出来なくなっていた。

 

 それでも神界に戻る方法はあった。私が死ねばいい。だから私は首を切って自殺した。そして神界に戻った。神界に戻った時私の殆どの権限は朽ち果て使えなくなっていた。それでも、私がかつて創造した世界。つまりこの世界に関する権限だけは僅かに残っていた。神格が落ちたことで皮肉にも直接干渉してはならないという神としての制限も緩んでいた。だから、それに縋った。縋って、縋って、縋って。

 

 私自身への永遠の刑罰を私に与えることにした。

 

 それがこの私自ら創造した祠への私の永久封印。それくらいの権能は残っていた。私はこの世界の、誰の目にもつかない水中の祠に私自身を封印することにした。それが今ここにいる私。落ちた神フェルディナという訳」

 

「は、はい……あの、それじゃ、なんで、祠が、開いたんですか?」

 

 シャルナの素朴な疑問に、フェルディナは少し恥ずかしそうに答えた。

 

「……私は旅の最中たくさんの子種を撒いたの。私自身いつ死ぬか分からない身だったし、私が死んだ後、私の遺伝子を受け継いだ優秀な子が王魔戦線時代を終わらせる鍵になるかもしれないと思って。結局その心配は不要だったけどね。その、少しだけ未練があったの」

 

「未練?」

 

「ええ。私がこの世界で作った子供と合ってみたいっていう理由。母性の暴走よね。だから、一つだけ祠の封印に条件をつけておいたの」

 

「条件」

 

「ええ。私の子孫が会いに来たらその時は祠が開くようにってね。……こんな水中に本当に私の子孫が現れるとは思わなかったけどね。でも、いい経験ができたわ。天之玄咲、だっけ」

 

「はい。俺が天之玄咲です」

 

「そう。不思議な事情を持っているみたいだけど。そっか、あなたが」

 

 フェルディナはまじまじと玄咲を見つめ、それから手を玄咲へと差し伸べて、

 

「私の子供なのね」

 

 むにゅり。

 

 そのまま抱きしめた。途方もない母性に玄咲は一瞬気が遠くなるも、シリアスなシーンだからと自分に言い聞かせ必死でシリアスな表情を保った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

注釈:アイギスは命のストックを失ったまま復活しています。当初のプロットではアイギスは8つの命を持った化け物でアベルがその命を残り一つまで削ったという設定だったが、いざ書いてみるとアイギスが強すぎないかと、あと6章の戦いが茶番にならないかとしっくりこなかったので命のストックが1つに。没設定としてここに供養しておきます。

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