カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
ある日のこと。
「天之神社に行きたいわ」
「……」
玄咲は突然だなと思いながら、学園から帰宅後の自室666号室にてフェルディナに応対する。
「なぜ」
「この世界の歴史を目で見て知るためよ。何でも王魔戦線時代の資料やそれ以後の時代の資料も充実している上にあの神への祈りまで飾ってあるらしいじゃない。今最も私が行くべき場所だとピンと来たわ」
「はぁ……一人で行けばいいんじゃないですか?」
などとは流石に言えない。当然玄咲は、
「じゃあ、今度の休日一緒に行きましょうか」
「本当! ありがとう!」
弾むような笑顔を見せるフェルディナ。それが見れただけでも休日を潰す価値はあるなと玄咲は思いながら再々度の天之神社の来訪を決めた。
そして当日。
「もう、3度目、だねー」
「ああ、もう3度目だ。短期間で俺たちは何度天之神社に訪れるんだろうな……」
シャルナが当然のように同行している。学校で玄咲が次の休日にフェルディナと天之神社に行く事を伝えた所、即断で「私も、行く」との回答。そして宣言通り玄咲とフェルディナと天之神社を訪れていた。フェルディナが2人に礼を言う。
「今日はありがとう。私のために付き合ってくれて。感謝するわ」
「いえ。フェルディナ神のためですから。一向に構いません」
「ねぇねぇ玄咲」
「なんだシャル」
「思えば、フェルディナ神って、エルロード聖教の神様だよね。なんで、エルロード聖教で、崇められてるの?」
玄咲は難しい表情で答えた。
「それはな、単にエルロード聖教が崇めるに対して便利な神様だったからだ。創造神だから威厳はばっちりだし、行方不明だから口出しもされないし、好き勝手創り変えるのに丁度いい存在だったんだよ。だからエルロード聖教で崇められているフェルディナ神は名ばかり同じの別の神格みたいなものなんだ。旧約聖書と新約聖書みたいに――いや、何でもない。とにかく、実態とかけ離れている神であることは間違いない。実際の所、フェルディナ神に神格が反映されていないことからも別の神として判定されているのは間違いない」
「そ、そうね。この世界で一番流行っている宗教らしいエルロード聖教とやらで私が崇められているのなら私がこんなポンコツのはずないものね。おそらく別の神が新たに生まれて神格を集めているのでしょう。本物の私を差し置いて、ね」
「へー……よく分かんない、けど、名前だけ同じ、新たに作られた神をエルロード聖教は、崇めてて、本物の、フェルディナ神に、その信仰は、届いてない、ってこと?」
「そういうことだ。まぁ、宗教ではよくあることだよ。同じ神でも別の存在として扱われてその結果新たな神が生まれてしまうってことはな」
「へー……あ、見えてきたね」
天之神社別館。歴史資料館。その入口へと繋がる廊下を渡り終え、3人は歴史資料館へと足を踏み入れる。
そして一通り見終えた。
フェルディナは展示物を何でも興味深げに眺めていた。自分の知らない歴史をそうして辿っているようだった。王魔戦線時代の展示物を見ている時は何でも懐かし気だった。セイント・ソードや魔剣アベルの前では随分長く立ち止まっていた。大ダンジョン時代の展示物を見ている時は明るい時代がきたのだと喜んでいた。災戦時代の展示物を見ている時は非常に苦々し気に「結局この世界でも前の世界と同じような結末を辿りかけたのね……」と呟いていた。核、それをあるいは凌駕するラグナロク・ウェポンの模擬物展示の数々をフェルディナは哀し気に見つめていた。そうして一通りのコーナーを見て回って。
とうとう、王魔写真館の前に辿り着く。
「……この先の景色はかなり刺激が強いので注意してください」
「ええ。それでも見るわ。それが私の責務だもの」
そして、足を踏み入れた。
「ふぐ、ひっぐ、ぐす、う、うぅ……」
「……」
「……」
フェルディナは泣きまくった。終始泣いていた。写真に収められた痛みをまるで自分のものとして感じているかのようだった。とても哀しそうだった。それはそれとして少し泣き過ぎであった。観覧は終始無言で行われた。玄咲とシャルナは少し気まずかった。そして、やがて王魔写真館の終点へと辿り着き――。
【神への祈り/地獄に落ちろ】
「……」
フェルディナはじっと神への祈りを見ていた。かつて己に直撃した生体魔術がかかった絵画。リーン・フォーンが残した生涯最高傑作。やがて、その瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちた。玄咲は心配した。
「大丈夫ですか。出ましょうか」
「いえ、大丈夫よ。……ただね、凄い絵だなって思ってね。私にも生み出せないものを私が生み出した者たちが生み出す。その瞬間っていうのはね、神にとって何にも代え難い喜びの一つよ。そうか。これが神への祈り。うん。うん……」
そしてフェルディナは振り返り、泣いたまま綺麗な笑みを見せた。
「いい絵だわ。あの時代を余すところなく表現した、素晴らしい絵よ」
「……」
神への祈り/地獄に落ちろ。そう名付けられた絵を前にしての、その余りにも無邪気で純粋な笑みに、玄咲は胸に我知らず畏敬の念が湧いてくるのを止められなかった。そして、その笑みの美しさに、瞳の奥が熱く揺れた。
そして3人は外に出た。フェルディナが外に設けられたベンチに腰掛けて伸びをする。
「うーん……いい体験が出来たわ。これはあの祠に引き籠っていたら決してできなかった体験ね」
「そうですか。それは良かったです」
「私を引っ張り出してくれてどうもありがとう。私は意固地だから誰かに引っ張り出してもらわなきゃずっとあの祠でメソメソ泣いてた。だから、本当にありがとう」
「……どういたしまして」
「にしても、今日はいい天気ね」
フェルディナが眩し気に太陽を眺める。本当に今日はいい天気だった。快晴の、雲一つない空が青々と輝いている。
まるで穢れ無き心を映す鏡のように。
「……フェルディナ神は」
玄咲は何となく尋ねてみた。
「どうしてこの世界を創ったんですか」
「寂しかったからよ。そして創るより他に出来ることがないから」
「神でも寂しいんですか」
「寂しいわよ。神と言っても私はもう殆ど神格を失ってしまっているけどね」
「俺が」
玄咲は言った。
「神格を取り戻しますよ。全盛期並に、とはいかないまでも。何とかして」
「……ふふ。ありがとう。あなたはとても優しいのね」
「いえ、俺なんか。シャルの方が優しいです」
「ふぇっ!?」
不意打ちを喰らったシャルナが驚き振り向く。フェルディナは笑った。
「あはは。あなたたちは仲がいいわね……そうね。いつか神格を取り戻したその時は」
そしてフェルディナはどこまでも青い空を見上げて、呟いた。
「何もしない。きっと私がいなくてもこの世界は大丈夫。あるべき人達がなるようにしていく。だから、何もしないわ」
「……フェルディナ神」
それはそれでどうだろう。一瞬思うも、口には出さない。当然の判断。
「ありがとう。あなたたちのお陰で素敵な時間が過ごせたわ。そろそろ帰りましょうか」
「そうですね。フェルディナ神がたっぷり時間をかけて見学したのでもう夕暮れ時ですしね」
「うん。帰ろっか。私たちの」
シャルナが前に出る。そして夕暮れを背景に振り返り、いつかの明麗の真似をして、微笑んだ。
「ラグナロク学園へ」
――階段を下る3人の影がどこまでも伸びる。3人のシルエットの上に夕日がいつまでも輝いていた……。
カー学の更新はこれで完全終了です。途中から筆力が落ちていたのが読者にも分かると思います。4章の最終話で更新を終了するのが一番の理想だった。だが、その理想を自分でぶち壊してしまったのでけじめをつけるためここまで無駄に更新が長引いてしまった。夢を壊すような真似をして本当に申し訳ない。とある理由により僕はもう完全に作家としては壊れていてこれ以上続きを書くことは出来そうにありません。それを割り切るための更新だったという気も今ではする。僕にはもうカー学の続きは書けない。実はこっそり続きを書いてみたが到底人に見せられるようなクオリティのものにはならなかった。第11章を結末まで書いたが全没です。だから本当にこれで終わりです。情けない限りですが、それでも今まで追ってくれた読者の皆様、本当にありがとう。そして最後まで物語を紡げなくて申し訳ありませんでした<(_ _)>