カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
「フェルディナ神。あなた戦えますよね?」
「ふぇっ?」
ある日のこと。
玄咲は別居しているフェルディナ神の住居――510号室を訪れて尋ねた。
「そりゃ、一応戦えはするけど、え、まさか私に戦わせるの?」
「せっかくエレメンタルカードがあるんだし戦えるなら戦わせたいなと」
創造神フェルディナのエレメンタルカード。ゲームではそれはオブジェではなくちゃんとした戦闘で使えるカードだった。最強とまでは言わないが普通に強力なエレメンタルカードでちゃんと使いどころがあった。しかし、目の前のフェルディナ神が戦うイメージが全く湧かず、それ故切り出しづらかった質問を玄咲はとうとう切り出すことにした。フェルディナは、
「うー……」
と唸って、その後。
「面倒くさいなぁ……」
と零した。
「……」
そう言う所がニート神と言われるんです。玄咲は喉元まで出かかった言葉をすんでで飲み込んだ。最終的に了承はしてくれた。
【学園迷宮ヴィズラビリンス】
学園迷宮ヴィズラビリンス。
第40階。
ボス部屋前。
「召喚――創造神フェルディナ」
シュン。
玄咲はボス部屋前でフェルディナを召喚した。フェルディナは「うー……」と唸って、
「私、戦うのは決して好きではないのよね……でも、いいわ。これも人類を地獄に叩き落とした報いよね。いいわ。戦うわ。戦ってあげるわよ……!」
「……」
フェルディナは基本ネガティブらしく、その性根は中々変わらないらしかった。自身もネガティブの気がある玄咲からしても自分以上のネガティブに見える。本当に戦えるのか? 疑念を持つ玄咲にフェルディナは胸に手を当て、
「まぁ、任せてよ。これでもかつて勇者カーンとして戦っていた時期もあるのよ。当時の身体スペックはもうないけどね、それでもね、戦う術はあるわ」
と、自信ありげに答えて、ウィンクした。そして、胸の前で両手を合わせて、詠唱する。
「簡易創造(デミクリエイト)」
フェルディナの掌の中に光が生まれる。それは拡大し、そして一振りの剣と、1枚のカードの形を取った。
その剣は見覚えのあるシルエットだった。そのカードは見覚えのあるカード名だった。玄咲は唾を飲み込み、その正体を言い当てる。
「天虹剣セイント・ソード。それにリベリオン・フォース……!」
「の、模擬品ね。実物よりランクや補正値は下がるけどそれでも十分な性能をしているはずよ。自分に慣れ親しんだものという制約はあるみたいだけど簡易創造くらいは今でも行えるみたい。かつての勇者の力、見せてあげるわ!」
フェルディナはADにカードをインサートし、威勢よくボス部屋の中に飛び込む。そして、
「リベリオン・フォース!」
第40階のボスたるジャイアント・アイアン・ゴーレムに己が切り札たる魔法を全力で放った。剣から解き放たれた閃光がジャイアント・アイアン・ゴーレムに直撃する。
ジャイアント・アイアン・ゴーレムの体が大きく罅割れる。だが、まだ倒れない。フェルディナは再度詠唱した。
「リベリオン・フォース」
「ンゴォオオオオオオオオオオオオオオオ!」
ズシィイイイイイン!
フェルディナは2発でジャイアント・アイアン・ゴーレムを倒した。それなりに魔力を消耗したのかハァ、ハァと息をついている。そして、バッと、笑顔で玄咲に振り向いた。
「どう!? やるもんでしょ! 私だってまだまだやれるんだから!」
「……俺は」
「うん」
「あのジャイアント・アイアン・ゴーレム程度なら一撃で倒せます」
「……」
フェルディナの笑顔がピシッと凍る。ADとカードの時代経過による技術格差。そして何より、フェルディナ自身の能力の劣化をまざまざと思い知らされる結果となった。ゲームではもう少し強かったのだが。思ったが、玄咲はそれ以上何も言わなかった。何故ならフェルディナが泣きそうな顔をしていたから。玄咲はため息を吐いて、甘えるもんじゃないなと自戒しながら、創造神フェルディナのカードを取り出して、
「送喚」
「あっ」
ウィン。
人にバレると色々取り扱いが難しいというデメリットさえ抱えているフェルディナを一旦送還して、学園迷宮ヴィズラビリンスから学園ギルドへと帰還した。そして、フェルディナを戦闘利用しようとした自分を反省して、以降フェルディナを戦闘目的で呼ぶことは滅多になかった。
反省1。フェルディナ神はそこまで弱くもないが強くもない。
おまけの小話2 フェルディナ神とパチンコ
10章執筆前に書いた小話。なので、今のフェルディナ神のイメージと少し乖離があるかも。せっかく書いたので載せておきます。話の立ち位置としてはIF短編。
それはフェルディナが祠から出てからしばらくたったある日のこと。
「ん、あれは……」
その日、バエルを簡易召喚しながら街を散策していた玄咲はパチンコ屋で死んだ目でパチンコを打っているフェルディナを見つける。玄咲も死んだ目でフェルディナに話しかける。
「何してるんですか」
「ひっ!」
「……」
フェルディナ言い訳開始。
「私はもう死んだ神。何もやることなんてない。そ、それに、私が何やっても結局何もかも最悪の結果に繋がるのよ。いつだってそうだった。私は何もしない方がマシなのよ! いいえ、私なんて存在しない方がマシなのよ! もう、もう、この世界に私は必要ない。いいえ。生まれてこない方がマシだった。私はもうどうしたらいいのか分からないのよ。何やっても駄目。どこにいても迷惑。どうせ私は何したって駄目なのよ! ならそんなの、そんなの……!」
そしてフェルディナは叫ぶ。
「パチンコするしかないじゃない!!!!!!!!!!!!」
ピク。
玄咲、瞼がピクリとする。珍しくシンプルにイラつく。簡易召喚してるバエルが威圧を籠めて言う。
「召喚して」
「え、でも」
「召喚して」
「あ、うん。召喚――悪魔神バエル」
シュン。
「ひっ!」
フェルディナが怯える。そのフェルディナにバエルは思いっ切り拳を振り上げる。
「歯ぁくいしばりなさい!」
ドガしゃぁアアン!
バエルに思い切り頬を殴られてフェルディナはパチンコ台にめり込んだ。そして大騒ぎになり、フェルディナと玄咲はその店を永久出禁となった。