カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
毎日夜8時に投稿します。尚、感想返信は精神的負担が重いため辞めることにしました。ご了承ください。
第1話 地獄の詩
約束した
必ず君を幸せにすると
この胸に誓った
必ず運命を変えると
だけど俺は忘れていた
俺が足掻けば足掻くほど
世界は無情なまでに俺に残酷に当たるのだと
だから俺は
俺は
俺は――
君を
君を
だから君を
俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は俺は
約束した 裏切った
必ず君を幸せにすると 君を地獄に突き落とした
この胸に誓った だまれ悪魔が
必ず運命に帰ると 貴様に何も救えはしない
だけど俺は忘れていた 忘れるな
俺が足掻けば足掻く程 お前はどこまで行っても
世界は無情なまでに俺に残酷に当たるのだと 地獄しか生み出せない人間なのだと
だから俺は 忘れるな
俺は 忘れるな
俺は―― 忘れない
君を愛していた こんなはずじゃなかった
さよなら こんなはずじゃ
シロ―― こんな――
これは俺の罪の話。
そして。
そしてそしてそして――――。
そしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそして――。楽園は反転して地獄となり、そして地獄は反転して――。
シロ。
もう一度君に会いたい。
エルロード聖国。
それは世界最大の国家にして、エルロード聖教を国教とする宗教国家である。
そして世界最大の異常国家である。
エルロード聖教を軸に作られた法に基づく国の在り方は余人の理解を大きく逸脱している。
例えば、亜人奴隷の常態化。
例えば、アマルティアンの残虐ショー。
例えば、他国では亜人と認められている生物の肉食文化。
他にも数々の亜人に対する非人道的な扱いが為されている国である。
さらに例を上げれば――。
「今日の授業はこれで終わりとする。各自復習を怠らないように。以上」
クロウの授業が終わり休み時間が訪れる。シャルナが玄咲に話しかける。
「ねぇねぇ。今日の授業、なんかちょっと異質で、怖かったね」
「ああ。エルロード聖国の授業だからな。自然そういう内容になるだろう」
言ってから玄咲は沈黙して俯いた。シャルナが首を傾げる。
「どうしたの? なんか、憂鬱そうな、表情」
「ああ。いや。ただ、とうとうこの季節が来たなって思って」
「この季節」
「ああ。俺たちが」
玄咲は窓の外の、エルロード聖国がある方角を見ながら呟いた。
「エルロード聖国に留学に行く時期がだよ。ああ、本当に憂鬱だ……」
エルロード聖国への留学。
それはCMAの中盤に位置するゲーム中最大規模のイベントであり、屈指のトラウマイベント。
とある亜人を巡る騒動は発売初期から賛否両論があり、この後味の悪さがいいとする声もあれば、やり過ぎだ、子供向けソフトの範疇を越えているという声もあり、BBSなどのネットスペースなどでよく議論が巻き起こった。それでもやはりCMAにこのイベントはなくてはならないものという声も多く、ただ単純にトラウマイベントというだけでなく、ゲームに深みを帯びさせる、大空ライト君の成熟に不可欠なイベントであったことから賛否両論はあれどギリギリ賛に傾いて片付いた、そんなイベントであった。
そのイベントが間もなくこの世界でも幕を開ける。
当然玄咲にそんな後味の悪い結末を迎えさせる気はなく、鬱展開を容赦なくブレイクするつもりだ。だが、どれほど原作の展開には抗えるかは玄咲のゲーム知識をもってしても未知の領域であり、それが故、ここ最近玄咲は憂鬱な心地で日々を送っていた。
そしてイベント発表当日。
その日は朝から何かと騒がしい日だった。
何せ、あの射弦義カミナが復学したのだから。
7月19日。
明朝。
ラグナロク学園に今日もシャルナと登校した玄咲は朝からF組の方角が騒がしいことに気づいた。シャルナが玄咲の袖を引き、
「なんか、騒がしいね」
「見に行くか」
F組の方角へと向かう。そして目にしたものは、
「カミナ、土下座しろ」
「そうだ。土下座だ!」
……射弦義カミナ――プラチナ色の髪を女性のように長く垂らした天使のような容貌の美少年――がクラスメイト達に教壇の前で糾弾され、土下座を要求されているシーンだった。シャルナが玄咲の袖を引き、
「ねぇねぇ、あの人って、クラス対抗ストラテジーウォー以降、獄中に姿を消してた」
「あ、ああ。射弦義カミナだな。しかし、この状況は……」
「やめてください!」
人垣を掻き分けて一人の女性がカミナの傍に向かい、そしてその肩をまるで守るように抱いた。神名木イツキ――射弦義カミナの元メイドで、今でも恋い慕っている女性だ。そのイツキがクラスメイト達に言う。
「こんなことして何になるんですか? 何にもなりません! カミナさまはもう贖罪を終えました! こんな糾弾は無意味です。違いますか!」
「違うな」
糾弾するF組の生徒の先頭に立つ男――ラズワルド・イェーガーが以前カミナに蹴り織られた首をコキッと鳴らしながら言う。
「それはこの男の個人的な贖罪が終えただけだ。俺たちに対する贖罪は終えていない。違うか?」
「そうだ、そうだ!」
「舐めろ、それかしゃぶれ。さもなければ土下座だ!」
「そ、それは」
多勢に無勢。語気を弱めるイツキの肩を射弦義カミナは優しく叩き、それから首を振りながら、
「いいんだ。イツキ」
「カミナさま。でも」
「これは僕が犯したカルマの清算。一つはその為に僕は帰ってきた。誰もカルマからは逃れられない。だから、僕が今やるべきことは」
射弦義カミナは姿勢を変えた。つま先を揃え、うずくまり、頭をF組の生徒たちに向け、額を地面に押し付けた。
土下座だ。
見事な土下座の姿勢。F組の生徒たちが怯む。そのF組の生徒たちに向けカミナは、
「クラス対抗ストラテジーウォーの時は本当にすみませんでした。今、謝ります。ごめんなさい」
誠心誠意、謝って見せた。
それは誰も文句のつけようがない、誠意の籠った土下座、そして謝罪だった。
F組の生徒たちの先頭に立つラズワルド・イェーガーが舌打ちする。そして、背を翻して自分の席に座り、
「もういい。お前らも解散しろ。射弦義カミナは誠意を見せた。だからクラス対抗ストラテジーウォーの一件はこれで終わりだ」
「……まぁ」
「クラス対抗ストラテジーウォーで一番に被害を受けたラズワルドくんがそう言うなら、俺も」
ガタ、ガタガタ。
生徒たちが次々に自席に向かう。射弦義カミナは方位から解放された。神名木イツキがべそを搔きながら射弦義カミナに抱き着く。
「カミナさまぁ……見事な土下座でした……」
「ありがとうイツキ……あ、君たちは」
そこでカミナがF組の教室外から視線を寄せる玄咲とシャルナに気づいた。視線が合う。カミナは神名木イツキに一つ詫びを入れて、
「天之玄咲くん。シャルナ・エルフィンさん。君たちとは出所したら真っ先に会話したいと思っていたんだ。ちょっと時間、いいかな」
「あ、ああ」
「私は、構いません」
射弦義カミナの要望に応じて二人は人の少ない校舎と校舎を繋ぐベランダへと移動した。
「クラス対抗ストラテジーウォーの際は本当に申し訳ありませんでした。今、謝ります」
「あ、ああ」
「それは、もう、いいけど」
ベランダに移動した後、射弦義カミナは真っ先に謝罪した。脱色されてプラチナ色になった光頭髪が目に眩しい。そして首元にのぞくうなじもまた、男の者とは思えぬ美しさ。色気。玄咲はゴクリと唾を飲んだ。シャルナは玄咲の足をさりげなく踏みながら、
「顔を上げて、ください」
「はい」
クラス対抗ストラテジーウォー以来に顔を合わせる射弦義カミナに向けて言った。
「私たちは、あなたを赦します。もう、昔のことだし、あれから色々あったし、お陰で成長も出来たし、もうあなたに思う所は、ありません。ね、玄咲?」
「あ、ああ。俺もカミナにもう思う所なんてないよ。しかし」
改めてカミナを玄咲は見る。そのプラチナ色の長髪(刑務所暮らしが長かったため伸び放題になっている)、細い体躯、男の者とは思えぬ小顔、あどけない美顔――完璧だ。完璧に天使だった。見た目だけなら。そんなくだらない感想を抱いてしまうことに、一瞬カミナに見惚れたことに、玄咲は自己嫌悪を抱いた。咳払いをして、自他を誤魔化すように、
「……何でもない。本当に久しぶりだな、カミナ。見違えたよ」
「よく言われます。髪の色が変わって見た目の印象が大きく変わって、中身もなんか憑き物がおちたようで別人のようだと。……以前の僕から変わったと玄咲くん、あなたにもそう言ってもらえて一先ず安心しました」
「あ、ああ。本当に変わったよ」
「別人みたいに、落ち着いてるよね」
「あはは……昔の僕は、そうですね、キチガイみたいに色々しでかしましたよね。今じゃ反省してます。ごめんなさい」
「いえ、それはもう、いいです」
「ああ。ところで、用件はそれだけか?」
玄咲の問いに、カミナは首を縦に振った。
「はい。あなたたちに改めて謝りたかった。それが僕の真っさきにやりたかったことです。許してもらえるかは心配でしたが……やはりあなたたちは優しいですね」
「いや、それはどうだろう」
「優しいですよ……これで、以前のことはお互い水に流しましょう。お互いに、ね」
「あ、ああ。お互いにな」
お互いに、と言うのは、あの拷問のことを指しているのだろう。確かにあれはやり過ぎた。今では玄咲も反省している。しかし、実の所心の片端に僅かに後悔が残っていたのだ。そのことを察してお互い水に流そうと口にしたのだとしたら、確かにカミナは大きく変わったらしかった。人の事を深くまで慮れるほど、優しい性格へと。
(……ゲームでもサンダージョーが復学するまではこいつは時々怪しい言動がありつつもいい奴だったもんな。これが本来のカミナの姿なのかもな)
「それでは、僕はこれで。今度のエルロード聖国留学、僕も選ばれるらしいのでその時はよろしくお願いします」
「……ん、んん?」
最後に聞き捨てならないことを聞いた。カミナはハッとして、玄咲に確認した。
「……もしかしてまだ知らされていない感じですか? ああ、そうか、あの婆――いや、学園長は僕にだけ先に教えてくれたのか。しまったなぁ……今のは忘れてください。今日の内に恐らく教師から説明があると思います。くれぐれも口外無用、ですよ。それじゃあ」
「あ、ああ」
カミナが去っていく。シャルナが玄咲の袖を引く。
「……また、ゲームと、違う展開?」
「ああ。ゲームじゃ1年の代表は大空ライト君と光ヶ崎リュートと炎条司くんの3名だったんだ。となると、一体誰が代表から外れたんだ……?」