カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第48話 ラブコメ4 ――お守り――

「……ただ、安心したし、少し、冷静に、なった、けどね、やっぱり、サンダージョー、には、勝てないよ。私と、逃げた方が、いいよ」

 

「なぜ、頑なにそう思うんだ」

 

「――これ、ね」

 

 シャルナが胸ポケットからカードケースを取り出した。

 

「堕天使族の、秘境で、だけ、作られる、お守り。人の、識別をね、誤魔化す、効果がある」

 

 CMAには出てこないアイテム。玄咲の知らないアイテム。辟易とするほどの世界の広さを感じながら玄咲は尋ねた。

 

「そんなものがこの世界にあったのか」

 

「うん。この、リード・デバイスに、カード、挿れると、自分を、全体の、特徴は、そのまま、別の姿に、見せるの。あと、存在感が、薄まる。あまり、注目、されると、効果も、薄まる、けどね」

 

「ま、待て。シャル。ということは、今俺が見ているシャルは――カード魔法で作られた幻覚なのか?」

 

「ううん。例外が、2つ、あってね」

 

 シャルナがカードケースからカードを抜く。なぜかシャルナがさらに魅力的になった。存在感が増して、その容姿の美しさがさらに際立っていた。

 

 シャルナが告げる。

 

「運命の人、には、殆ど効かないの。少し、陰が、薄まる、程度」

 

「運命の、人?」

 

「うん。これ作った、お婆がね、人には、必ず一人、いるって。魂が、縁結ばれた、とびきり、相性のいい、人。絶対、何があっても、味方、してくれる、そんな、人。他生――前世、とかでまで、繋がってる人。縁が、強すぎて、魔法が、効かないん、だって」

 

「――俺が、シャルナの、運命の人?」

 

「うん。知ってる? 運命の人と、出会えた、堕天使族は、ね――9割以上、その人と」

 

 唇を寄せ。

 

「結婚、してるん、だよ?」

 

「!?」

 

 結婚。耳元で囁かれたそのワードのインパクトは激烈だった。想像する。シャルナとの結婚。幸せ過ぎて耐えきれなかったので一瞬で脳内映像の再生を打ち切った。平静を装おうとするも、顔の熱さは誤魔化せない。シャルナが笑う。

 

「あはは、これすると、真っ赤に、なるね」

 

 教室での初対面時のことを指しているのだろう。確かにあの時も耳元で囁かれて、顔が真っ赤になった。昨日のことなのに、まるで1ヵ月以上も昔の出来事のようにその思い出は懐かしく思い出された。ここに至るまでの時間がどれだけ濃密だったか、体感時間のギャップにまざまざと玄咲は感じ入った。

 

「最初から、結構、距離感、近かったでしょ。それが、理由。私も、かなり、意識、してたんだ、よ。玄咲の、こと」

 

 シャルナも、顔が真っ赤だ。相当恥ずかしいことを言っているのは分かっているらしい。その反応にもドキドキしながら玄咲は相槌を打つ。

 

「……なる、ほど。納得、した」

 

 シャルナは確かに最初から距離感が近かった。名前で呼び合ったり、妙にスキンシップが激しかったり。ようやく、腑に落ちた。その理由は玄咲にとって凄く嬉しいものだった。

 

「そ、それでっ!」

 

 気恥ずかしさを誤魔化すようにシャルナが話を再開する。

 

「それが、1つ目の、例外。2つ目はね――カードの、製作者より、高レベルな、人。だから、先生たち、には、効果、なかった。すごい、ね。この学園。まるで、魔境」

 

「国内最強の魔符士が集まる学園だからな。世界でも有数の高レベル者密集地帯だよ」

 

「そだね。で、その、お婆の、レベルが、80。つまり、サンダージョーの、レベルは、80以上」

 

「93」

 

「え?」

 

「それがサンダージョーのレベルだ。クズらしい数値だろ。93、つまりクズと読めるんだよ」

 

 その語呂合わせがそのままサンダージョーのレベルの由来だとまでは言わない。特に思い入れないんで適当に決めましたと開発者がインタビュー記事で語っていたのを玄咲はよく覚えていた。

 

「知って、たの?」

 

「ああ。俺はこの世界に詳しいんだ」

 

「そういえば、生徒の、情報、詳し、かったね。じゃあ、レベル、知ってて、決闘、受けたの?」

 

「ああ、だから何度も言っただろう。俺が勝つと。確証がなければ流石に俺も決闘なんか受けないさ。だからシャル、逃げる必要なんてない。サンダージョーを決闘で倒して一緒に学園に通おう。そして――」

 

 玄咲はシャルナに笑いかける。シャルナの不安を払拭するために。強く、優しく。

 

「一緒に、君の夢を叶えよう」

 

 シャルナの手を、握る。

 

「……うん。一緒なら、ね。頑張れ、そう」

 

 ベッドの上で絡み合った手をシャルナもまた握り返してくる。熱い熱が行き交った。

 

「でも、玄咲の、でも、あるよね。だから、2人の夢、でも、あるよね」

 

「うん?」

 

「玄咲も、同じ夢、抱いて、入学、したんだよね。だから――」

 

「え?」

 

「え?」

 

 顔を見合わせる。

 

「……違うの?」

 

「ん、いや、違わない。確かに入学時点では別の夢を抱いていたが」

 

 ヒロイン(天使と)エンディングを迎える(結婚する)という邪な夢を抱いていたが。

 

「今の俺の夢は君の夢を叶えることだ。だから何も間違っていない」

 

「……うん!」

 

 シャルナは嬉しそうに笑う。太陽のような笑み。やっぱりシャルナにはこの笑顔が一番似合った。一番、可愛かった。

 

「ところで、玄咲、すごい、自信、だけど、切り札、でも、あるの」

 

「ああ、もちろんだ。今見せよう。2枚ある」

 

「2枚?」

 

「これだ」

 

 玄咲は腰のカードケースから悪魔神バエルとディアボロス・ブレイカーのカードを取り出した。シャルナがカードに顔を寄せる。

 

「え――」

 

 そして、シャルナは絶句した。数秒程言葉を失ってカードを見つめ、それから震える手でカードを指さした。

 

「ランク、10――精霊神? それに、補正値、999の、AD? げ、玄咲。これ、何? おもちゃ、だよね?」

 

「いいや。正真正銘の本物さ。その証拠にこれからバエルを呼び出そう。バエルのカードを一緒に持ってくれ。そして、一緒に呪文を唱えるんだ」

 

「う、うん。簡易、召喚、だよね」

 

「ああ」

 

「分かった」

 

 そうすることで精霊を複数人で呼び出すことができる。シャルナがバエルのカードを持つ。玄咲はシャルナとタイミングを合わせて簡易召喚の呪文を唱えた。

 

「「簡易(インスタント)召喚(コール)――悪魔神バエル」」

 

 前振りも、前触れもなく、バエルが玄咲たちの前に現れた。

 

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