カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第57話 赤い翼

「「召喚――悪魔神バエル」」

 

 

 

 

 

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

 史上最強のADで召喚された悪魔神がこの世に降誕する。ディアボロスブレイカーの銃口を中心に円陣を広げた魔法陣から輝くような哄笑を上げて這い出る。自由に力を振るえる体を引っ下げて宙返り。夜空のようなドレスが翻る。両手を広げて爽快に身を浸す。矮小なる人口の天に己の天上の美を月面反りに見せつける。そしてくるりと玄咲の裏側に降り立ち、その首に両腕で抱き着いた。

 

「ねぇ、玄咲、どうして欲しい? あなたの言う通りにしてあげる」

 

「バエル。皆殺せ」

 

 玄咲は端的に言った。

 

 バエルは鷹揚に頷いた。

 

「120点満点の答えよ。了解。御意のままに。ああ、それと玄咲。多分、あなたまだ勘違いしているだろうから言っとくけど」

 

「え?」

 

 

 

 

「私、あなたの想像している100倍は強いわよ?」

 

 

 

 

 バエルの全身から赤黒いオーラが迸る。それは背中へと段々集約していき、形作っていく。揺らぎ燃え立つ蝶が羽広げるような禍々しい光の翼を。この世の何物よりも強く、頭を遥か上回って大きな、強大な悪魔のシルエットを。巨大で赤黒い悪魔の翼が、決闘場を飲み干すほどに広がっていく。

 

 まるで獲物に喰いつかんととする獣の口蓋のごとくサンダージョーたちへと伸びていく。

 

 

 

「召喚――爆雷王ナックル!」

 

 懲罰十字聖隊からのカード魔法による魔力バフを受けたサンダージョーは爆雷王ナックルのカードをインサートしたマリアージュ・デューを精霊を召喚する呪文と共に虚空へと思いっきり振るった。精霊の力は召喚者の魔力の影響を受ける。魔力を上昇させればその分精霊の力も上がるのだ。

 

 虚空にぶつかって跳ね返ったマリアージュ・デューが魔法陣を産み出す。魔法陣からのっそりと雷丈家の金色の守護神が姿を現す。金ぴか細工をじゃらじゃらぶら下げたイカした衣装の金色の精霊王。爆雷王ナックル。その四角い頭が丸く見えるほど角なき穏やかさに満ちた超然とした菩薩のような笑みの頼もしさにサンダージョーも思わずにっこり笑む。

 

「流石のセンス。爆雷王ナックル様。あとは任せました」

 

「任せなよォ。僕に任せれば全て平気へっちゃらさ。なんとかなる絶対ダイジョブってね。さぁて、今日の犠牲者はだーれっかなっ――」

 

 赤黒い魔力が山火事のように爆発した。

 

 サンダージョー陣営全員の表情が凍った。

 

 その中には爆雷王ナックルも含まれている。

 

 赤黒い翼がサンダージョーたちへと伸びてゆく。魔法結界に沿ってまるでバトルフィールドを球形に埋め尽くさんとするかのように。赤黒い津波が内側から魔法結界をまるでスライムが這うかのように侵食していく。サンダージョーは慌ててナックルに笑顔を向ける。

 

「だ、大丈夫ですよね! ナックル様。なにせナックル様は最強なんですから。いつも通りアトミック・バーンで一発ドカン」

 

「は、早く僕を送喚(リコール)しろ! あ、ああ、なんであの方が……悪魔神さまが……悪夢だァ……」

 

「え?」

 

 ナックルはガタガタ震えながら気が狂った芸術家にペインティングされたかのようなぐちゃぐちゃに歪んだ顔でサンダージョーの胸倉をずんぐりむっくりした腕で掴んだ。

 

「いいから早くしろ蒸し焼きに焼いて焼き殺すぞクソガキャア! 僕を殺させたいのかァ!」

 

「ちょ、ちょ待っ、息、苦し……」

 

「はっ! ほら声出せるなら早く僕を送喚して! あの方にかかったら魂さえも消めっグガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 ナックルが血反吐を吐いて白目を剥く。心臓部から血肉に塗れた赤黒い棘が一本突き出している。そのぬめりにサンダージョーは悲鳴をあげた。

 

「ナ、ナックル様ァ! リ、送ギャアアアアアアアアアアアア!」

 

 爆雷王ナックルのカードがサンダージョ―の手首ごと地に転がる。サンダージョーは手首の断面を抑えて泣き叫んだ。気が付いたら手首が飛んでいた。地面に、鋭利に尖った赤黒い羽根型の棘が突き立っていた。

 

「久しぶりねぇナックル。相変わらず醜悪なこと。あなたもあなたでずっと殺したいと思ってたの。いい機会だから、魂ごと浄滅してあげる。本当の意味で、ね……う、うふふふふ、アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

 

「グ、ガ……アトミック・バーン!」

 

 ナックルの金ぴかの服の下腹部が開帳する。その中に隠されていたのは大筒だ。殺人的なサイズの砲口からバチバチと雷光が迸る。そして解き放たれた。先端が丸く尖った細長い雷の弾丸がバエル目掛けて飛んでいく。当たれば大爆発を巻き起こし爆風と熱と有害魔素によって死をもたらすナックルの切り札だ。無駄な足掻きと知りながらナックルはアトミックバーンを撃った。

 

「ありがと♪」

 

 バエルは手を前にかざす。虚空に黒い渦が発生しアトミックバーンがその手に吸い込まれる。バエルの翼の輝きが増す。バエルは不機嫌そうに吐き捨てる。

 

「まっず……やっぱ玄咲の魔力が一番ね。こんなまずいものを食わせてくれたお礼はちゃぁんとしなきゃね……今日はこんな趣向で行こうかしら。シャットアウト」

 

 バエルが指を鳴らす。

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