カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~ 作:哀原正十
ストーリーが思ったより進みが遅く山場のない展開が続き、そろそろ読者が離れるのではないかと思ったため、カンフル剤としては本来の展開を変更して暴力描写を入れてみたのですが、後の見せ場の効果を最大化するため、あとしっくりこなかったため、結局は序盤の退屈はある程度割り切りました。
(意外とG組も悪くないかもしれない)
そう思った矢先。
「おい」
「ん?」
声をかけられる。机の真正面に男の太い胴が現れる。机の丁度上の位置に股間がある。かなりの高身長。そして高チン長。隠しきれないもっこりがうんこで膨らんだパンツのようにズボンを盛り上げていた。汚物のようなイチモツを見せつける男の顔面を玄咲は見上げた。黄土色のドリルリーゼントを鼻っ柱に垂れ下げた見るからに知能指数の低そうないかつい
(こいつは――
ゲーム中に登場する牛のうんこと同じ色で髪が着色されていることからドリル状のリーゼントと相まってうんこドリルの蔑称をプレイヤー達につけられた男――土竜さとしが床と頭が平行になるまで腰を曲げて下から抉り上げるようないい角度で玄咲にメンチを切った。
「テめー、入学早々ちょっと目立ってるからってよー、いい気になってんじゃねーぞ。あんま上等コイてっとよー、俺様の“ドリル”で“ミンチ”にしちまうぞ……?」
低知能剥き出しの発言。流石、と玄咲は思った。
(G組信号機トリオの馬鹿担当なだけはある。期待を裏切らない低知能。うんこドリルらしい発言だ)
「スカした目で見てんじゃねーぞコラ! 黙ってねーで啖呵の一つでもカマしてみたらどーなんだよ。おお?」
「えっと、うん」
ゴホッ。
玄咲は咳払いした。
「――っと、俺は暴力が嫌いなんだ。出来る限り何事も平和的な解決を目指すべきだと思ってる。だから、うん――君とは争い合いたくない」
「――弱虫が」
へっ、と土竜さとしが笑う。
「強えー相手とは“カードバトル”する勇気がねーか? フェルディナ祭みてーに
ひとしきり笑ってから、ペッと玄咲の机に唾を吐き、土竜さとしは玄咲を見下ろした。
「シャバ僧がイキがんじゃねーぞ」
教室中で嘲笑が湧く。玄咲を馬鹿にする声が聞こえる。
「……」
「このクラスの“テッペン”に立つのは俺だ。覚えとけや」
土竜さとしが背を翻す。そのタイミングで玄咲は土竜さとしの膝の裏を蹴たぐる。体勢を崩して玄咲の目の前に落ちてきた土竜さとしの頭を掴んで翻しそのまま机の唾が付着した個所へと叩きつける。
ゴシャッ!
ドリルリーゼントが事故った車両のヘッドみたいに潰れた。
「へぶ!?」
「!?」
教室に感嘆符が湧く。ドリルリーゼントでごしごしと唾を拭う玄咲。
「てめっ、ふざけっ、ごはっ!」
ちょっと強めに頭を机に叩きつける。ゴンッ、ゴンッ! 土竜ひろしが玄咲の手を捉えようと両手を伸ばしてくる。サッと交わしその交差点を上から抑える。加圧する。拘束する。呻く土竜ひろしに玄咲は言い放つ。
「唾を吐くのは、やりすぎた」
「ああ!? 吐かれるテめぇが悪いんだろ!? 舐められる馬鹿が悪いんだよこの世界ではなぁ!?」
「そうだな。確かに、こういうアウトローな世界ではそういう理屈がまかり通る。だから、あんまり舐められるとやり返す必要がある。その必要が訪れないのが一番素晴らしいんだがな……」
「い、いででででで!」
土竜ひろしの関節に苦痛を与える。解体医のような無表情で玄咲は続ける。
「その、さっきも言ったが俺は平和主義者なんだ。君とは争い合いたくない」
「あ、あががががががが!」
ミシミシと手首のウィークポイントに指を喰い込ませて骨を軋ませながら玄咲は言った。
「ここは何もなかったことにして双方手を引かないか?」
「わ、分かった。何もなかった。俺はお前に何もしてないしお前も俺に何もしない!」
「OK。平和的解決だ」
玄咲は土竜ひろしを解放する。土竜ひろしは弾かれたように玄咲から距離を取った。口を開きかけるが、玄咲と目が合った瞬間「ひっ」と小さな悲鳴を漏らし、結局は何も言わず自分の席に戻っていった。
玄咲は椅子にもたれかかって息を吐いた。
(ああ。くだらない。心が荒む。ゲームしたい。早く、天使達に癒されなければ……)
「あいつ」
「!?」
少女の声。玄咲は少女のことをすっかり失念していた。一つのことに囚われると他の認識が疎かになる悪い癖。自分の暴力的な一面を見られたことに動揺し、玄咲は慌てて弁明する。
「あ、いや、今のは、違くて、俺のオルターエゴが勝手に暴走して……」
「いい気味、だね?」
「……そう、だね」
引かれるという玄咲の予想に反し、毒を吐き愉快気にくすくすと笑う少女。玄咲は少女の性格を少しずつ理解し始める。
(……この
「強いん、だね」
「あ、ああ。戦闘の天才なんだ俺は。数少ない、というか唯一の俺の取り柄さ。もっと別の才能が欲しかったけれど――」
「羨、しい」
少女は。
少し寂しそうに笑いながら、そう言った。
「――まぁ、役には立つよ。ダメダメだった俺が生き延びてこれたのはこの才能のお陰だからさ。極限状態に放り込まれてようやく自分の才能に気付いたんだけど、もっと早く気づいていれば別の人生も――なかっただろうな……」
戦争が始まったから――いや。
その前から天之玄咲の人生は終わっていたから。
その文末を玄咲は飲み込んだ。
「大変、だったんだ」
「それなり、には」
「……」
「……」
沈黙が流れる。玄咲は気まずさを覚える。だが、何の話題も思い浮かばない。ゲームの話でもするか。血迷ってそんなことまで考え始める。口を、開きかける――。
「悪ぃ。遅れた」
丁度その時、G組の担任教師が遅ればせにやってきた。