カード学園サヴァイヴ ~カードで全てが決まるゲーム世界の学園で狂人で軍人のゲーム廃人は天使のために最強になる~   作:哀原正十

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第11話 ラップバトル2 ―ルール説明―

「説明はいる?」

 

「一応」

 

「じゃ、簡単に。そこの君も聞いてね」

 

「あ、うん」

 

 アルルが玄咲とシャルナに大仰な身振り手振りを交えて説明する。

 

「ラップバトル――MCバトル、あるいはフリースタイルとも言うね。ビートに合わせた即興のラップで行う口喧嘩だよ。明確な勝利基準は決まってない。スキル、バイブス、プロップス、口舌――とにかくより観客や審査員を魅せた方が勝つんだ。必ずしもラップが上手い方が勝つわけじゃないところが面白いところだね。つまり君が僕に勝つ可能性もあるってことだよ。ここまで分かった?」

 

「ああ。ルールは」

 

「ルールは凄く単純。ビートに合わせて一定小節毎に交互にラップするだけだよ。フリースタイルと呼ばれるだけあって凄く自由なんだ。ビートをかけないアカペラってルールもあるけど今回は普通にビートをかけてやるよ」

 

「小節ってのがよくわからないんだが」

 

 CMAではラップをそこまで詳しく解説してくれない。

 

「ああ、それはこのあとビートをかけながら説明するね。僕に抜かりはないよ」

 

 アルルは足元のビビット・ビートのスイッチを入れる。軽快なビートが流れ出す。アルルが指と足で軽くリズムを取りながら説明する。

 

「これ、シン・ピーターの『Arise』って曲。正確にはそれを元ネタにしたバトルビートだけど。知ってる?」

 

「知らない」

 

「あとでCD(カードディスク)上げるね。でさ、この背後にドラムの音聞こえるでしょ?」

 

「ああ」

 

「ズン、ズン、ズン、ズン、って刻んでるよね。ズンズンチャの場合もあるけどこの曲はズンズン。このズン4つが一小節。ラップに限らず小節ってのは基本4拍の塊なの。覚えておいて損はないよ」

 

「覚えた」

 

「じゃあ、試しにやってみて」

 

「え?」

 

「実際にやってみるのが一番! さぁ!」

 

 ズン、ズン、ズン、ズン、Rep! ズン、ズン、ズン、ズン――。

 

 3小節目で玄咲はビートに乗った。

 

「お、俺の、名前は、天之玄咲だ、YO……」

 

「うん。リズムは掴めてるよ。でもそのノリは古いかな。20~30年遅れてる。痛いからやめた方がいい」

 

 厳しい指摘に押し黙る玄咲にアルルが続けて、

 

「その小節を8個繋げることはできる?」

 

「よ、余裕だ。俺なら余裕だ……!」

 

「無理そうだね。じゃあ8小節じゃなくて4小節にしようか。そして8小節×4の予定だったけど4小節×2で行こう。あまり短くするとバトルが成り立たないからこれが限界。ピッと」

 

 アルルがビビットビートを操作する。玄咲は初め何が変わったのか分からなかった。しかしすぐに変化を理解した。

 

 ズン×16 Rep!  ズン×16 Rep! 

 

 先程までは32泊毎に入っていたRepの掛け声が16泊毎に入るようになっていた。理解した上で玄咲はアルルに尋ねた。

 

「このRep!という謎の掛け声は何なんだ」

 

「ターンの区切りだよ。このRep! の掛け声を境に僕と君のターンが入れ替わるの。分かりやすいでしょ」

 

「分かりやすい。でも、そうじゃなくて、なぜむさくるしい男のダミ声なんだ」

 

「シン・ピーターの声だよ。ジャガイモみたいでしょ? 味があっていいよね」

 

「……そうだな。人によってはたまらないだろうな」

 

 趣味が悪い。そう思うも失礼なのでその言葉は不採用にして無難な返答をする。アルルは笑顔で頷いた。

 

「うんうん。君はよく分かってるね。じゃ、そろそろ始めようか。先行、後攻、どっちがいい。ちなみにラップバトルはアンサーでやり込めたように見せれる上に、ラストバースが客の耳に強烈に残る後攻の方が有利と言われているよ」

 

「後攻」

 

 より有利な条件を選ぶ。玄咲にとってそれは本能的な常識だった。

 

「OK。判定はこの場につけれそうな人が僕しかいないから僕がつけるね」

 

「私がつける」

 

 シャルナが手を挙げる。

 

「シャルナちゃんは無条件で彼に挙げそうだからダメ」

 

 シャルナが硬直する。アルルがビートを止めて、予約再生ボタンを押す。ビビットビートが10カウントを数え始める。

 

『テェーン。ナイィーン。エェーイト。セェブゥーン――』

 

「……このむさくるしい声はやっぱり」

 

「シン・ピーターだよ。0になったらビートが流れる。そしたらバトルスタートだ。先行は僕。Rep! の掛け声でターン交代。4小節×2本。さぁ、そろそろだよ」

 

『スリィイイイ。トゥウウウウ。ワァアアアアン――』

 

「……」

 

 淡々と、というには少し暑苦しく進むカウントダウンの中、玄咲は瞑目し脳裏にシーマの言葉を思い出す。

 

『どんなに上手いフリースタイルよりもね、私はポケット・ボーイの前で格好つけてた玄咲のフリースタイルが大好き』

 

(そうだ。シーマは俺のフリースタイルを好きだと言ってくれた。ならば自信を持て。俺が信じる俺でも、シーマが信じる俺でもない。俺が信じるシーマを信じろ!)

 

『ゼロ――Rep!』

 

「行くよ!」

 

「来い!」

 

 玄咲はマイクを握り締めた。アルルがマイクにバースを吐き出す。

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