反転生徒はキヴォトスをかき乱す   作:オルソル

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トリニティ襲撃、先生と二人の■■

 トリニティは惨劇の渦にあった。どこの誰かとも知らぬ生徒が学園を襲撃。辺りが火の海に変わっていた。

 襲撃者に銃を乱射しても意味をなさない。ことごとく返り討ちにされる。逃げ惑う生徒の波に背き、リンネが校舎に足を踏み入れる。

 

「トリニティって大きい。段違いだよねー」

 

 意味のない独り言をつぶやきながらモブを潰していく。倒れている者達の頭にはヘイローが浮かんでいない。気絶させていることから、どうやら本気で潰そうとしているわけではないらしい。

 

「止まれ! ここがどこかわかって――ぐあっ」

 

 腹を殴る。

 

「イ、イチカひぎゅっ」

 

 首を絞める。

 

「逃げないと大変なことになるよー」

 

 車に向けて一発。漏れたガソリンに引火して爆発した。蹂躙という一言では説明にならない。自分が求める物はこれだと言わんばかりの笑顔で、暴虐の限りを尽くしている。

 リンネは足を止め、隅で震える少女と自分を睨む少女に視線を向ける。

 

「正義実現委員会の子じゃん。なになに、二人だけ?」

「あなたのせいで、この子の友達が!」

「そうだったそうだった。ヘルメットの子だったよね? 友達だったんだ。まあ、殺したから関係ないか!」

 

 叫びながら突撃していく彼女に向けて撃つ。銃が壊れ、右手が動かなくなる。それでもリンネに掴みかかろうと一歩踏み出す。

 リンネは左手で頭を掴み、近くの壁に叩きつけた。

 

「弱い弱い」

 

 隅で震える少女に向けて投げる。あるのは恐怖。そして絶望。自分では勝てるはずがない、それがありありと理解できた。頭からは血が滲み、すぐに治療をしなければ助からない。

 だが、できなかった。体は動かず声も出せない。ただただ、その子の死を待つのみ。

 

「あ、ああ……」

「その子、助けないと死んじゃうよ?」

 

 しゃがんだリンネは投げた少女の首を掴んで右に曲げる。ゴキリと嫌な音が響き、ヘイローが砕ける。

 目の前で命の終わりを見届けた少女は遂に狂った。

 

「いやああああっ!! 助けて先輩!! だれか、だれかあっ!!」

「うるさいから静かにしてよ」

 

 頭を銃底で叩いて黙らせる。丁度その時

 

"リンネ!"

 

 先生がやって来た。

 

"その子を放せ。"

 

「ねえねえ、信頼できる大人が来たよ。助けて欲しい?」

 

 リンネの問いに首を大きく振る少女。その動作は少し弱く、傷つけられたことがわかる。

 先生が一歩ずつ近づき、リンネから少女を取り戻そうとする。先生が少女に目線を合わせたその時――

 銃口を向けられる。

 

「先生はバリアで体を守ってるんだ。余程のことがない限りは死なない。体は傷つけられなくても、心ならいくらでも傷つけていいよね?」

 

 そう言うと、左手に隠し持っていたガラス片で少女の首を斬った。飛び散る鮮血が先生の顔とスーツ、シッテムの箱を染めていく。

 少女は先生の胸に顔を預けると、弱弱しく呟く。

 

「せんせ、ごぼっ……たす、け、て――」

 

 ヘイローが砕ける。物言わぬ亡骸が二つ出来上がった。リンネはガラス片を捨てて立ち上がると、先生にこう言った。

 

「自分の選択が全部正しいって自惚れるなよ」

 

 茫然自失の先生を置いたまま、リンネはトリニティを後にした。

 

♢♢♢

 

 冷たい体。虚ろな目は半開きのまま涙を流していた。目に光はない。この子は、リンネが

 

"くそっ、くそっ、くそっ!"

 

 どうして早く気づけなかった! なんでユウカやノアのことを信じなかった! どう後悔しても全てが遅い。失われた命は戻ってこないのに。

 自分の愚かさを呪い、地面を殴る。何度も何度も殴りつける。

 

「先生、それ以上は」

「やめてください先生! そんな姿、私は見たくあり」

 

"静かにしてくれ。"

 

 プラナとアロナの言葉を遮る。あまりの気迫に、二人は黙って従うほかなかった。

 少し離れた場所で倒れている子にも近づいて肩を揺する。揺するまでもなく、結果は同じ。死んでいる。

 

"……………………。"

 

 うなだれる。生徒を守れなかった。責任を果たせなかった。私は、私は――

 

"うわああああああああああっ!!"

 

 叫びは燃え盛る炎と共に空に響いた。




 先生、リンネのことを見抜けなかったね。目の前で生徒を失った気分はどうだい?

 苦しいか? 悲しいか? 痛いか? 辛いか?

 ねえ今どんな気持ち?
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