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トリニティは惨劇の渦にあった。どこの誰かとも知らぬ生徒が学園を襲撃。辺りが火の海に変わっていた。
襲撃者に銃を乱射しても意味をなさない。ことごとく返り討ちにされる。逃げ惑う生徒の波に背き、リンネが校舎に足を踏み入れる。
「トリニティって大きい。段違いだよねー」
意味のない独り言をつぶやきながらモブを潰していく。倒れている者達の頭にはヘイローが浮かんでいない。気絶させていることから、どうやら本気で潰そうとしているわけではないらしい。
「止まれ! ここがどこかわかって――ぐあっ」
腹を殴る。
「イ、イチカひぎゅっ」
首を絞める。
「逃げないと大変なことになるよー」
車に向けて一発。漏れたガソリンに引火して爆発した。蹂躙という一言では説明にならない。自分が求める物はこれだと言わんばかりの笑顔で、暴虐の限りを尽くしている。
リンネは足を止め、隅で震える少女と自分を睨む少女に視線を向ける。
「正義実現委員会の子じゃん。なになに、二人だけ?」
「あなたのせいで、この子の友達が!」
「そうだったそうだった。ヘルメットの子だったよね? 友達だったんだ。まあ、殺したから関係ないか!」
叫びながら突撃していく彼女に向けて撃つ。銃が壊れ、右手が動かなくなる。それでもリンネに掴みかかろうと一歩踏み出す。
リンネは左手で頭を掴み、近くの壁に叩きつけた。
「弱い弱い」
隅で震える少女に向けて投げる。あるのは恐怖。そして絶望。自分では勝てるはずがない、それがありありと理解できた。頭からは血が滲み、すぐに治療をしなければ助からない。
だが、できなかった。体は動かず声も出せない。ただただ、その子の死を待つのみ。
「あ、ああ……」
「その子、助けないと死んじゃうよ?」
しゃがんだリンネは投げた少女の首を掴んで右に曲げる。ゴキリと嫌な音が響き、ヘイローが砕ける。
目の前で命の終わりを見届けた少女は遂に狂った。
「いやああああっ!! 助けて先輩!! だれか、だれかあっ!!」
「うるさいから静かにしてよ」
頭を銃底で叩いて黙らせる。丁度その時
"リンネ!"
先生がやって来た。
"その子を放せ。"
「ねえねえ、信頼できる大人が来たよ。助けて欲しい?」
リンネの問いに首を大きく振る少女。その動作は少し弱く、傷つけられたことがわかる。
先生が一歩ずつ近づき、リンネから少女を取り戻そうとする。先生が少女に目線を合わせたその時――
銃口を向けられる。
「先生はバリアで体を守ってるんだ。余程のことがない限りは死なない。体は傷つけられなくても、心ならいくらでも傷つけていいよね?」
そう言うと、左手に隠し持っていたガラス片で少女の首を斬った。飛び散る鮮血が先生の顔とスーツ、シッテムの箱を染めていく。
少女は先生の胸に顔を預けると、弱弱しく呟く。
「せんせ、ごぼっ……たす、け、て――」
ヘイローが砕ける。物言わぬ亡骸が二つ出来上がった。リンネはガラス片を捨てて立ち上がると、先生にこう言った。
「自分の選択が全部正しいって自惚れるなよ」
茫然自失の先生を置いたまま、リンネはトリニティを後にした。
♢♢♢
冷たい体。虚ろな目は半開きのまま涙を流していた。目に光はない。この子は、リンネが
"くそっ、くそっ、くそっ!"
どうして早く気づけなかった! なんでユウカやノアのことを信じなかった! どう後悔しても全てが遅い。失われた命は戻ってこないのに。
自分の愚かさを呪い、地面を殴る。何度も何度も殴りつける。
「先生、それ以上は」
「やめてください先生! そんな姿、私は見たくあり」
"静かにしてくれ。"
プラナとアロナの言葉を遮る。あまりの気迫に、二人は黙って従うほかなかった。
少し離れた場所で倒れている子にも近づいて肩を揺する。揺するまでもなく、結果は同じ。死んでいる。
"……………………。"
うなだれる。生徒を守れなかった。責任を果たせなかった。私は、私は――
"うわああああああああああっ!!"
叫びは燃え盛る炎と共に空に響いた。
先生、リンネのことを見抜けなかったね。目の前で生徒を失った気分はどうだい?
苦しいか? 悲しいか? 痛いか? 辛いか?
ねえ今どんな気持ち?