リンネは先生がゲヘナに来ることを予測して動いていた。ゲヘナから遠くに逃げれば追いかけて来ないだろう。
そう考えていたけど、どうやら皆さんの方が一枚上手のようだ。
「お揃いでどうしたの?」
「先生からの依頼を受けたの。あなたを拘束して欲しいってね」
便利屋68の社長、アルが言う。
「今急いでるんだけど。私と戦いたくなかったら逃げるのがベストだよ」
「どうするアルちゃん? やる気満々みたいだけど」
ムツキの問いかけに「どうするもこうするもないわ」と答え、銃を向ける。
「ここで止めなきゃいけないでしょ」
「先生と約束したからね。依頼は必ず果たすって」
「は、はい。がんばります……!」
カヨコとハルカもアルの横に並び立つ。
便利屋68。金さえもらえればどんなことでもやる、何でも屋。先生の依頼は金のない依頼だが、先生のためという考えであっさりと仕事を受けるとは。始めの頃から仲良くしておけばよかった。
「財布落ちてる」
「え、どこ、どこに!?」
しゃがんだアルの脇をバイクで通り抜ける。これで便利屋も追って来られない。
「逃がさないよっ!」
ムツキの投げたバックが空中で爆発したが、遠くて当たらない。
逃走に成功した。
サイドミラーで追いかけて来ないか確認。心配しなくてもよさそう。
取り敢えず小屋で休憩を取る。ペットボトルの水を飲み一息つく。
「思わず逃げてきちゃったけど……。どうしよ、後で戻らないといけないなー」
急いで事を起こしたのがいけなかったかな。無計画で飛び出したことに後悔した。銃を取りに戻って、装備の確認もして、それから……。
んー、いっか。考えるのはやめやめ。せっかく逃げたんだし、もっと逃げてみよう。
アプリを開いて『便利屋68』と入力。さて、反応はどうかな?
赤い点がこちらに向かって来ている。私の居場所がバレたのか? 先生にはたくさんの味方がいる。こうなっても不思議じゃない。
「そろそろ行くか」
再びバイクを走らせた。
"カヨコ、リンネは?"
「すごいスピードで離れてる。追いつけるかどうかわからない」
先生達はリンネを追いかけていた。ムツキが爆弾で牽制したが効かず。だが向こうも攻撃はしてこない。カーチェイスをしているようだ。
「ア、アル様。見つけたらどうしますか?」
「そうね。まずはバイクの方を止めて話を聞くようにしてもらわないと」
「でも大丈夫? 片手で撃っても当たらないかもよ」
ハードボイルドショットのように片手で撃っても当たるかどうか厳しい。これはムツキの言う通り。皆の個性をフル活用できる作戦を立てるにしろ、バイクに追いつかなければ意味がない。
「な、なにか起こればいいのですが」
"ハルカ、それだ!"
「なにか考えがあるの?」
"ああ。皆、私の指示に従ってくれるかい?"