敵同士から一変、今は仲良く洞窟を探検している。
ゲヘナの中でも異端であろう便利屋の面々は私の計画を狂わせる。リンネは次の計画を練っていた。
「先生、何もないよね?」
"今のところは大丈夫そうだけど……。"
人口の洞窟だ。コウモリが出る訳でもないし、水が滴り落ちる訳でもない。今一番気になるのは……。
「だ、だだだっ、大丈夫なんでしょうね? お化けとか出て来ないわよね?」
陸八魔アル。社長の癖にオドオドしている。小心者と笑い飛ばしたくなるが、ハルカの怒りを買う。呆れつつも奥に進む。
進んでも進んでも景色も何も変わらない。歩き疲れた頃、タブレットの光とは違う光が見えた。
"皆、出口だよ。"
「ようやく出れるね」
「はあ。何かあったらって思ったけど、何もなくてよかった……」
「ア、アル様。何だか変な匂いがします」
ハルカの言葉にくんくんと匂いを嗅ぐアル。
「これって」
「温泉開発部と一緒に掘った温泉がこの先にあるの。近道のために洞窟も掘るなんてね」
私の言葉に便利屋は頷いた。
「じゃなくて! 温泉があるの!? は、入っても大丈夫なの?」
「不安にならないでよアルちゃん。入ってもいいと思うよ~?」
ムツキの言葉に覚悟を決めるアルだが、カヨコが待ったをかける。
「何も持ってきてないし、爆弾が置かれている理由もわかってない。それに」
カヨコが見据える。
「まだ怪しい。信じない方がいいよ」
流石は最年長、見抜かれているか。今回は偶然そうなっただけで、こんな事態が無ければ逃げる気でいた。いつ捕まるかと怯えるよりもゲヘナに戻った方がいい。
「私を信頼している人は少ない。それは確かなことだけど、今は帰る方法を考えないと」
懐疑的な視線が向けられる。何のつもりだと言わんばかりの目。言葉より早い意思表示。
「そうね。戻りましょう」
アルの一言にカヨコの力が抜ける。
「命拾いしたね」
「お互い様」
カヨコと言葉を交わすと、順番を逆にして戻ることにした。
♢♢♢
思えば随分遠くにまで逃げたものだ。バイクを載せた車に乗りながらそう思った。
今頃ヒナ委員長は見つかっているし、退学は免れないだろうし、反逆者として牢に入れられる可能性もあるし。本当、どうして逃げたのか。
いっそのこと――
車が急ブレーキを踏む。一体何が。前方に現れたのが誰か分かった瞬間、笑みを浮かべた。
まだやるのか。まだできるのか。
「お久しぶりですね、リンネさん」
「轢いたこと、まだ根に持ってるって言うと信じる?」
ゆっくりと振り向いた彼女は屈託の無い笑みを浮かべ
「信じますよ」
そう言って笑った。