反転生徒はキヴォトスをかき乱す   作:オルソル

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先生、おやすみなさい

「速報です! シャーレの建物が崩れ落ちました!」

 

 その情報は、キヴォトス全土を駆け巡った。クロノススクールによる中継が大型モニターに移り、市民は困惑していた。

 各学園も独自に動き始めた。

 

 現場にいち早く到着したのはRABBIT小隊と救急医学部、救護騎士団のコンビ。

 

「した……負傷者はこちらに!」

「私達が治療します!」

 

 セナとセリナの声が突入するRABBIT小隊に向けられる。隊長であるRABBIT1、月雪ミヤコはその声を聞いて指示を飛ばす。

 

「RABBIT2、RABBIT4は私と共にシャーレ内部に。RABBIT3は外で待機、何かあればすぐ連絡を」

「了解した」

「わ、わかった」

「任せて~」

 

 空井サキ、霞沢ミユ、風倉モエが答える。

 

 ミヤコはサキとミユと突入する。シャーレはもはや機能していない。一目見ただけでわかる。

 建物自体が崩れ落ちる程の爆発なのに、ガスの匂いがない。電気系統? それなら火災が主なはず。

 

「おい、大丈夫か!」

 

 サキの声がする方に振り向くとエンジェル24の店員、ソラが倒れている姿が見えた。

 

「ここは任せます、私達は先生を」

 

 ミヤコとミユは無事な階段から先生がいるであろう事務室を目指す。配線のショート、飛び散る火花、いつ火災が起きてもおかしくない。

 瓦礫の山に足を踏み入れた二人は大きな揺れに体制を崩しかける。上の階もダメージを受けていたのか崩落が起こる。

 

「またです、またシャーレが!」

 

 二度目の崩落。

 

「ミユ!」

「ミヤコちゃん!」

 

 互いに手を伸ばす。無事な階層はもうない。せめて命だけでも守る。

 

(先生……!)

 

♢♢♢

 

「い……………………お……だいじょ…………!」

 

 誰かの声が聞こえる。気絶していたミヤコは勢いよく起き上がり状況を確認する。

 

「サキ、あの――」

「気にするな。ところで先生はどうした?」

 

 先生。その言葉にハッとするミヤコ。周囲を見渡して先生を探さなければ。

 かすり傷も気にせず立ち上がり、足を踏み出そうとして

 

 水たまりの中に足を踏み入れた。

 

 水たまり? 屋内で? 雨漏りの可能性はない。昨日は晴れていた。……………………まさか。

 

「先生?」

 

 血だまりの中に沈む先生を見つけた。

 

 吐き気を抑え、叫びたい気持ちを抑え、瓦礫を退かす。

 

「サキ、手伝ってください」

「ミヤコ」

「早く! このままでは先生が!」

 

 鬼気迫るミヤコの様子にサキは頷くほかなかった。止血のための包帯を巻きつけて外に運ぶ。

 

 先に運び出されたソラよりも酷い。

 

「頭部の損傷、右腕は無くなっている、脇腹からの出血。これは」

「止血を優先! 輸血パックはありますか!」

 

 事態は一刻を争う。ミネ達四人が治療する中、ミユが異変に気付く。

 

「先生の体、震えてる?」

 

 モエが左手を握るとピリッとした感覚があった。

 

「ねえ、先生の体震えてるけど大丈夫なの?」

 

 モエの言葉に手が止まった瞬間、先生が血の塊を吐き出して苦しみ始める。

 

"が、ああ……ああああああああああ!!"

 

 タブレットを放り投げ、右腕があった部分を押さえて苦しんでいる。

 幻肢痛。そして体の震えと電気が走る感覚。

 

「体の内部の損傷も激しい……! ここでの処置では間に合わない」

 

 感電に加えて体の欠損。内外部を同時に傷つけられることで治療はより難しくなる。それを見越して?

 考えるな、まずは先生が優先だ。

 

"ああ、あ、うぐああああっ……!"

 

 暴れ出すせいで運べない。四人が先生の体を押さえつけるが上手くいかない。

 

「暴れないでください先生!」

 

 ハナエの声は届かない。意識が朦朧としているせいか、自分が襲われているという幻覚を見ているに違いない。

 

"……たすけ――"

 

 そう言ったと思うと、先生の体が内部から破裂した。

 

 この場にいる全員の動きが止まり、静寂に包まれる。

 バンッという音を立ててお腹が裂けた。状況を表せと言えばこの程度で済む。だが、こんな姿になった先生を見て冷静でいられるはずがない。

 

「先生? …………先生!」

 

 ミヤコが先生の体を揺さぶる。サキとモエは口を手で覆い、ミユに至っては気絶していた。

 

「離れて下さい! このままでは先生が本当に死ぬんですよ!」

「いや、いやっ、先生が、そんな、そんなことっ!」

 

 完全に正気を失ったミヤコ。セナが引き剥がそうとするも力が強く引き剥がせない。

 ミネは先生の顔色と呼吸、脈のほか、目に光がないことも確認した。セリナとハナエにこれ以上は見せられない。車に戻るように言った。

 

 ミネはミヤコの腕を掴むと単刀直入に言う。

 

「大量出血に肺、内臓の破裂を確認しました」

「え……」

 

 ミヤコはその意味がわかったのか、か細い声を出す。

 セナはミヤコを止めるのに必死で先生のことを見れなかった。ミネの言葉に嫌な予感が頭を――

 いや、予感じゃない。これは。

 

「先生は、せん、せいは……っ」

 

 ミネは手を強く握りしめて口を開く。

 

「死亡しました……………………」

 

 赤く染まった死体が一つ出来上がった。

 

 セナは先生の頬に触れる。初めて触れる死体の感触。冷たい。温かさがない。半開きの虚ろな目。まるで、助けられなかったことを呪うようで

 

「う、おえっ、うあ――」

 

 吐き出した。

 

 クロノススクールの中継も二度目の崩落で途切れ、事実を知る者はこの場にいる生徒数名。

 

 先生の死体の前で泣き崩れるミヤコの声と吐き続けるセナの声だけが響いた。




 第二章これにて閉幕。

 先生の死から始まる復讐劇。ブルーではなくレッドアーカイブですよもう。

 次は第三章という訳ですが、うん、まあ……シリアス直行ですね。

 バンバン曇らせます。

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