将来頂点を目指すと誓った幼馴染から実力不足で逃げ出し隠れて暮らしていたら、結局見つかって大事に大事に捕まえられてしまう話やで 作:やゆゆゆゆ
かつて、まだこの大地も人も自然すらもなかったころ。
なんにもない所からぽつりと生まれたメガミサマは、自分以外に誰もいない世界にひどく悲しみ涙をボロボロと流しました。
「あぁ、寂しや寂しや。我の声に答えるものは誰もおらぬのか」
真っ白い暗闇の中に答える声はありません。ただありふれた絶望だけがメガミサマを包みました。
涙を流し悲嘆に暮れ泣き叫んで、とうとう零れ落ちる涙の一粒もなくなった頃、ついに絶望に耐えきれなくなったメガミサマは自分の腕を力強く引っ搔きました。
刻まれた痛々しい傷跡からはぽつぽつと血がこぼれます。
ぽつりぽつりと赤く赤く。ぽつりぽつりと痛々しく。
血がその腕をしたたり床に落ち、周りが朱色に染まっていって、そうして果てしなく長く数えることすら億劫なほどの時間が経った頃、足元に広がった血だまりの中からメガミサマは自分と異なるかすかな呼吸を感じました。
なんだろうと見てみれば海のように広がった血の海の真ん中、そこには横たわるように一人の男が眠っています。
「あぁ、我が君。我が君よ!」
初めて見る自分と異なる命、生きている存在。その喜びに震えたメガミサマは恐る恐る男を揺さぶります。
「なんだ、なんだ。俺を起こすお前は何者だ」
「わ、われは……われは……」
これまで一人で生きてきたメガミには自分につける名前などありません。男はそんなメガミの様子に不思議そうに首を傾げます。
「な、名前はないのだ。お前以外の者とあったことさえない。だから、どう呼ばれるのか知らぬのだ」
「ふぅむ、そうかそうなのか。これは失礼なことを聞いた。それならば、それならばな……美しきお前はレイ。レイと呼ぼうではないか」
「レイ?」
「そう、お前はレイ。俺の名前はレオというのでな。同じような名前にしたのだ! ……っと、良いと思ったのだがな、もしかして気に入らぬか?」
まっすぐに見つめる男の瞳にメガミ、女神レイはぶんぶんと首を横に振ります。
「いや、気に入った。気に入ったぞ。そうかそうか、我はレイ。我はレイというのだな。なんと美しき名前。なんと麗しき名前。何よりも何よりもお前と似ている名前というのが気に入った。そうだ、我はレイ。我はレイなのだ!」
「そ、そうか。気に入ったのなら良かったよ。というかな、レイよ。見た所ここにはお前以外何にもないではないか。ひどく寂しくむなしい所だぞ、ここは」
「そ、そうか、そうかもな。ここには人も物も何も、すべてがない。寂しい場所だ」
レオとレイ、この世界に初めて生まれた二柱の神様は再び周りを見渡します。一面に広がる血の海と真っ白い空、特徴も変化もない平面が広がる世界はどこまでも無機質でした。
「寂しい場所、寂しい場所だよ、ここは」
息をつき遠くを見つめるレイに「それならば変えるだけだろう」とレオは言いました。
「変える?」
「そう、変えるのさ。全部全部なにもかも。そうだな、国を作ろう……大きな国だ。俺とお前だけじゃない何億と人が住む大きな国を作るんだ」
真っ直ぐに未来を見つめるレオはにやりと笑いましたが、困惑したレイは言葉を返せません。
「とりあえずさ、俺について来いよ。こんなとこに一人でいるってことはお前も暇だってことだろう? 退屈はさせないぜ」
にこりと笑ってレオは一人ぼっちだったメガミサマの手を取り走り始めました。先頭を行く足と追いかける足、二人の足元の血の海は不思議と段々と青く澄み渡っていきます。
そう、これこそが国生みの神話。レイとレオ、二柱の神様の血でつながった始まりの神話なのです。
亀更新なので期待せずお待ちください