将来頂点を目指すと誓った幼馴染から実力不足で逃げ出し隠れて暮らしていたら、結局見つかって大事に大事に捕まえられてしまう話やで 作:やゆゆゆゆ
「そう、これこそが国生みの神話。レイとレオ、二柱の神様の血でつながった始まりの神話なのじゃ―――――」
ぱちりぱちりと爆ぜる薪の音。それは寒く凍えるような冬の夜だった。窓の外を見れば分かるように今日は生憎吹き付けるような吹雪だから、外で元気に駆け回っているわけにはいかない。こんな日はいつもばあちゃんが暖炉の前で絵本を読んでくれるのが決まりだった。
「ねぇ、ばあちゃんばあちゃん……もう何回もその話は聞いたよ。つまり、国生みの神話ってのはレイさんとレオさんのお二人さんが仲良くちゅっちゅしてお仕舞いってことなんだろ?退屈な話だよな!」
「もう、ガット!そんな言い方ってないわ!おばあさまが私たちが退屈だろうからって折角こうしてお話して下さっているのに。それに、私この話は何度聞いても大好きよ。だってとってもロマンチック!二人が出会うところなんて何回聞いてもドキドキしてしまうわ!人類初めてのラブストーリーなのよ、この物語は!」
耳にかかる高い声。毛布をずらして隣を見てみればそこには金髪の女の子がむっとした顔でこちらを見ている。両耳の上で高そうな髪飾りで結んだツインテールがぴょこぴょこと揺れる。
「おお、ドレア様はなんと出来たお子さんじゃろう。お嬢様のおっしゃる通りじゃぞ、ガット。この物語は国生みの神話。何度聞いても味わい深い原始から語り継がれてきた物語なのじゃ。耳にタコが出来るほど聞いてもなお聞き足らん、皇国の常識なのじゃ」
ばあちゃんは「やはりお嬢様は賢いですのう」だのなんだの言ってぴょこぴょこ揺れるツインテールを撫でる。隣で同じように毛布に包まった女の子、ドレアは嬉しそうにえへえへ笑ってこっちに自慢げに目線をよこした。なまじ顔が整っているからか自慢げにする顔でさえ様になるのが腹立たしい。
「ふん、国生みの神話だか何だか知らないけどさ、そんな常識だのなんだの知ってたって何になるっていうのさ。俺がこの前読んだ雑誌ん中で「石像のガンダルフ」だって言ってたぜ。『人を超えていくものは常に常識を疑うものだ。当たり前のように生きていては当たり前を超えられぬ』ってなぁ!やっぱり、英雄の言うセリフは一味違うね、俺も常識なんて知らねぇ豪快な男を目指さねぇとな!」
「なにが石像のガンダルフじゃ。英雄とは生まれた時から人とは違うもの、一般の農民が目指すようなものではない!そんなことよりちょっとでも畑の勉強でもした方が身のためになるというのがなぜ分からん!」
手の中で相変わらずドレアを撫でながら叱ってくるばあちゃん。毎日のように甘やかされたからか随分とうちのばあちゃんに懐いた金髪娘も真似するようにじっとこちらを睨んで来た。
「そうよ、ガット!なんにも分かっていないみたいね。ガンダルフの本の中に書いてたのは常識を知っていて、なおそれを捨て去るということ。知った上で捨てることと知らないただの無知では天と地ほどの差があるのよ!そうよね、おばあ様?」
「おぉ、ドレア様は賢い。本当に賢いですなぁ」
なんだなんだ、今日は随分と説教が長いな。いつものばあちゃんの小言くらいだったら別にどうということもないのだが、引っ付いてきたドレアが何より小賢しいったらありゃしない。最近、屋敷の本を矢鱈目ったらに読んではあれを読んだこれを読んだと自慢してくるのが鬱陶しかったのだが、そのせいか語彙力やら説得力やらが上がっているのは完全に誤算だった。
「もう、うるせぇうるせぇ!お小言なんてばあちゃん一人で十分なんだ。そんなことより飯作ってくれよ、俺ぁ腹減って仕方ねぇよ!」
めんどくさくなった俺は二人を避けるためにリビングの方へと向かう。こんなとこにいたらいつまで説教垂れられるか分かったもんじゃねぇ。
「こら、ガット!まだ話は終わっておらんぞ!ほら、そこに座りなさい。今日という今日はしっかり神話の大切さというのを教えてやろう!」
「そうよそうよ、今日こそ教えてやるわ!」
エンドレスお説教タイムを続けるべく後ろから叫ぶばあちゃんとなぜかふんぞり返って引っ付いてくるドレア。なんだか今日は随分と旗色が悪い。「戦は常に相手よりも数で上回らねばならない」ってのは「千人切りのサカ」の名言だが、お説教においても相手の数を上回るってのは大事なことなのか。考えているうちにもどかしさとイライラ、鬱陶しさがふつふつと込みあがってきた俺はしばし考えてこの厄介なモンスターに対抗すべく、必勝のセリフを口にすることに決めた。こういうのは禁じ手だが仕方ない。二人して説教かましてくるのが悪いのだ。
「もう、ドレアのことなんて知らねぇ!明日の遊びだって連れて行ってやんねぇからな!一人で家ん中で本でも読んでろよ!」
放った言葉が狭いリビングの中に反響した。暖炉の中の薪が崩れてぱちぱちと音を立てる。
「う、嘘だわ?明日はライゼルの丘に連れてくれるって約束したもの!」
「ふん、そんなの知るもんか。ばあちゃんの味方に付く奴がわりぃんだ。とにかく、明日は遊ばねぇから。そのつもりでいろよな!」
捨て台詞を残して俺は食事場へと走る。後ろから「うぁぁっぁぁん、ガットが、ガットが私と遊ばないって言ったぁっ!約束した。約束したのにぃ!」だのなんだの甲高い泣き声が聞こえてきたがそんなの知るもんか。ばあちゃんに味方する奴には天罰が必要だ。ちょっとは反省するといいさ。
「こらぁっ、ガット!ドレア様にきちんと謝りなさい。ガット、ガット!こっちに来るのじゃ!ガット!」
暖炉の方からばあちゃんの叫び声とどたどたと走ってくる音。びぇんびぇん泣く泣き声が一層強まる。忘れてた。そうだ、そうだった。完全に忘れてたがドレアを泣かせたらばあちゃんがもっと怒るんだった。焦る頭とじわじわと吹き出る汗。俺は迫りくる大きな脅威を避けるには何処に隠れればいいのか、切実に頭を悩ませた。
最近思いついたヤンデレ設定
ある大陸を支配する帝国の話。巨大な権力と武力、あらゆる力を極めた帝国にある日、一人の子供が生まれた。いつか王子となるその子供は優しい性格をした子供であったが残念なことに知能が生まれた時から低く、だまされることの多い子供だった。そんな優しい皇子に送られてきたのは皇子を誑かすための革命派で知られる家臣の一人娘の銀髪眼鏡の賢い少女。当然、王宮派の子供たちに反乱の種だと虐められる娘だったが頭が悪く優しかった王子は周りを押し切って美しい娘のいじめを辞めさせる。助けた勢いのまま、普段は知能の悪さから馬鹿にされることの多い中で優しく接してくれた少女に惚れていく王子。年月が経ち、ついに父が死んでしまった後馬鹿な王子は少女を宰相に指名してしまう。そうして幾分かの時間が過ぎた後、だれもがやはり少女は反乱の意思などないと安心しきり、王子が軍の慰労のために地方を訪れた時、事件は起きる。宰相率いる革命軍が反旗を翻したというのだ。信じられない王子と次々と迫る敵の軍勢。軍才なんて当然ない王子はどんどんと兵を失いついには革命派に囚われてしまう。処刑のためにと王城の地下牢獄に連れられる王子。冷たい檻の中に現れたのは自分が信頼しきっていたはずの、優しかったはずの少女だった。
「あぁ、やっと・・・やっとね王子。貴方が私を救ってくれた時から、あの日から革命よりも王冠よりも何よりも私が欲しいものは貴方だった」
「ずっと、ずぅっっっと・・・一緒に暮らしましょうね」
状況を理解できず怯える王子ににっこりと微笑む少女。彼女の銀髪が捕らえられた王子の頬にあたり、眼鏡の奥、喜色に染まる銀瞳がぎらぎらと輝いていた。