オリシュモンッ!! 異世界転生者の魂が超進化した完全体デジモンだ! 必殺技は空想の剣製《テンプレイト・フィクション・ワークス》!!   作:GT(EW版)

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パートナー結成! オリシュモン
うろ覚えのテンプレチート! オリシュモン降臨


 

 ──体は剣で出来ている。

 

 血潮は鉄で、心は硝子。

 幾たびの戦場を越えて不敗。

 ただの一度も敗走はなく。

 ただの一度も理解されない。

 彼の者は常に独り剣の丘で勝利に酔う。

 故に、その生涯に意味はなく……

 

 ──その体は、きっと剣で出来ていた。

 

 

 

 

 ふとした拍子に、長い間忘れていた記憶を思い出すことがある。必死に頭を捻りながらこちらが思い出そうとした時にはまるで正しい記憶を呼び起こせなかったのに、後になって何の前触れも無く急に思い出してしまうアレだ。例えばそれは、失くしたと思っていたロッカーの鍵が数年以上経って見つかった時の心境に近いだろうか。あまりにも、今更な話だ。

 

 つい先日、私が思い出したのはこの世界に転生した際、前世の私がハイテンションで願ったチート能力を発動する為の詠唱だったのだから苦笑するしかない。今更思い出しても、もう遅い。

 

 アンリミテッド・ブレイド・ワークス──無限の剣製。

 

 空には巨大な歯車が刻まれ、丘には無数の剣が突き刺さっている結界、いわゆる心象風景の具現化である。結界内の剣を投影することで、現実の世界にも文字通り無限の剣を生み出すことができる錬鉄の魔術……この世界と比べれば幾分平穏な日常を過ごしていただろうに、前世の私は何とも物騒な能力を要求したものだ。

 

 ……と、そんな風に他人事のように語る私は、察しの通り転生者である。

 

 こことは違う別の世界で死んだ一人の男は、ブラックアウトした意識の中で微かに聞こえた黄金色の神様のような「声」に促されるがまま、厚かましくも要求したチート能力をひっさげてこの世界に生まれ変わった──どこかで聞いたような存在である。

 そのような過程で生まれた英霊とは欠片も呼べぬ私だが、前世の記憶は酷くうろ覚えで大部分が欠落していた。

 それはこの矮小な魂が異世界に至るまで果てしない距離を渡る過程で摩耗してしまったのかもしれないし、分不相応なチート能力を得たことによって、前世の私から記憶というリソースが削がれてしまったのかもしれない。

 

 だが、そんなことはどうでもいいのだ。重要ではない。

 

 確かに新たに生まれ落ちたこの世界が前世の世界よりも文明レベルが劣っていたならば、先進国の住民として持ち越してきた知識を以て歴史に名を刻むような夢を追い求めたのかもしれない。

 しかし生憎にも、前の世界でそれほど頭の出来が良くなかった私が頭脳面で活躍できるほどに、この世界の文明は低レベルではなかった。

 運良く持ち越すことができたうろ覚えの知識一つとて、この世界では大して役に立っていないのが実情である。

 私がこの世界に転生してから二十年は過ぎたが、この第二の人生を今日まで生き延びることができたのは、大半がこの世界で新たに習得した技能や知識のおかげだった。

 

 その一つがこれ──当店唯一のメニューである、私特製日替わりチャーハンである。

 

「へい、日替わりチャーハン二人前お待ち!」

「わぁ! うまそー!」

「わーい! これが噂のグゥレイトチャーハンってやつー?」

「まあ、そんなところだ。本日はオーソドックスな五目チャーハンにしておいたぞ」

「オリシュモンの店って毎日メニューが変わるから面白いよね!」

「当店のシェフは気まぐれなのでね。味わって食べるといい」

 

 スプーンを片手にそわそわと円卓に待機していた黄色の「小竜」と、もっふもふなぬいぐるみのような「小兎」が、私の手により献上された五目チャーハンを見て満面の笑みを浮かべ、早々と咀嚼していく。

 うまい、うまいと呟く語彙力は無垢な子供のような彼らだが……その姿は先ほど述べたように人間のそれではない。

 

 黄色の小竜の名は「アグモン」。

 もっふもふな小兎の名は「ロップモン」。

 いずれもこの「デジタルワールド」で暮らす住民──「デジタルモンスター」であった。

 

 

 

 ──そう、私が転生した世界はデジタルワールド。そして我が真名を「オリシュモン」と言う。

 

 

 一人に一つずつ固有の特殊能力を持っていることが当たり前なこの世界に転生した私は今──中華料理店(チャーハンのみ)の店主兼コックを勤めていた! 

 

 

 

 

 

 

 デジタルモンスター、縮めてデジモン。

 この世界に生きる不思議な不思議な生き物は、空に、海に、森に、街に……世界中の至る所でその姿を見ることができる。

 

 ……ああ、前世から持ち越すことができたうろ覚えの記憶にも、役に立ったものはあったか。

 前世の私がアニメやゲームで触れたこの「デジモン」についての知識だけは、私を転生させた神様らしき存在が気を利かせて守ってくれたのだろう。たとえそれがにわかファンめいた朧げな知識でも、何の予備知識も無いよりマシだったのは違いない。

 転生早々砂漠の中に墜落し、襲い掛かる数々の凶暴な野生デジモンを相手にしたサバイバル生活を生き延びること幾年。紆余曲折を経てデジタルワールドの中では比較的治安の良いこの「ファイル島」まで辿り着き、この島唯一の究極体デジモンであるジジモンが村長を務める村で生活基盤を整えることができたのも……デジモンとデジモンを取り巻く世界観についてある程度知っていたことが役立った。

 私自身がデジモンになっていたことについても特に狼狽えなかったのも、それが理由の一つなのかもしれない。

 

 ──そう、デジタルワールドに転生した私自身もまた、人間ではなくデジモンだった。

 

 180cmをゆうに超える身長。引き締まった鋼のごとき筋肉を覆う肌は浅黒く、オールバックに逆立てた髪は銀に近い白色。

 赤い外套にニヒルな眼光と併せれば、今の私の姿はいかにも体が剣でできてそうな弓兵の姿である。

 つい先刻までこの姿のモデルとなった人物の代名詞たる魔術詠唱すら忘れていた私だが、今の私を私にすることを願った前世の私は、よほど彼の存在に憧れていたらしい。

 

 かの弓兵のような「正義の味方」になりたいと──彼はそんな理想に溺れて溺死した結果、今の私に生まれ変わったのである。

 

 尤もただでさえ記憶が朧げな上に、「デジモン」という名の電子生命体となった今の私からしてみれば、前世の私のことは今や自分自身とは別の存在として認識していたが……そんな愚直な意志だけは、うろ覚えなりに叶えてやりたいと思っていた。

 

 今この村で小さな飲食店を営んでいるのは、この記憶に残っている前世の私がそう望んでいたからというのも理由の一つである。

 

 ──チャーハンはご飯で出来ている。

 

 具材はタマゴで油はサラダ。

 幾たびのフライパンを翻して不休。

 ただの一度のお残しもなく。

 ただの一度もおかわりされない。

 彼の者は常に独り焼き飯を肴に酒に酔う。

 故にその紅生姜に意味はなく……

 

 ──そのチャーハンは、きっと米で出来ていた。

 

「何言ってんのオリシュモン?」

「浸っているのさ」

「そっかー」

 

 何故チャーハンを炒めるのかって? 何故だろうな。

 どうにも彼のリスペクトする長身の赤服男はとても料理が上手く、彼が気まぐれに振る舞ったチャーハンはそれは絶品だったそうだ。

 デジタルワールドでの暮らしに慣れた私はそれを思い出した時からこの腕でフライパンを振るうようになり、次第に私自身もその奥深さに引き込まれ、今ではチャーハンの研究が一番の趣味と言えるほどのめり込んでいた。

 

 さて、そんな私がこのファイル島一の安全地帯であるジジモンの村にオープンした我が飲食店「Nonstop great works」は、今年で開業二周年を迎えたところだ。

 因みに店名も同様に、前世の私が憧れた赤服の色黒男にあやからせてもらった。直訳で「止まらない素晴らしき作品」である。

 村の競合店には近場でベテランシェフと名高いメラモンが経営している中華料理店があるが、チャーハンの味だけならば劣っていないと自負していた。

 

「君たちもそう思うだろう?」

「うん! チャーハンはここの方が好きー!」

「でもメニューは少ないよね。メラモンはラーメンや麻婆豆腐も作れるけどオリシュモンはチャーハンしか作れないから」

「おっと心は硝子だぞ」

 

 新規客のロップモンは素直で可愛いな。会計は割引しておいてやろう。

 だが常連のアグモン、貴様は駄目だ。人に優しくすることができない奴は憧れのグレイモンにはなれないぞ。ダークティラノモンにでもなっていろ。

 レパートリーの少なさは自覚しているが、私のような天才ならざる者が一人で飲食店を回すには仕方あるまい。料理人としてメラモンほどの才能が無い不器用な私が目指すのは、オールマイティーではなく究極の1なのだ。

 

「わかってるよ、オリシュモンのチャーハンはファイル島1ー!」

「……ふん」

 

 軽口を叩きながら満面の笑みで舌鼓を打つアグモンたちの様子に苦笑を返した後、窓際の席で「五目チャーハン……! こういうのでいいんだよ」と今日も孤独のグルメを堪能しているウィザーモンを尻目に私は厨房へと戻っていく。いつもありがとうございます。

 

 ふと別のテーブルから興奮気味な声が聴こえたのは、その時だった。

 

 

「おい知ってるか?」

 

 

 アグモンたちが談笑しているテーブルとは、別のテーブルだ。

 こじんまりとしたこの店でランチタイムに洒落込んでいるもう一つのグループから上がった声に、思わず意識が傾く。

 あのデジモンたちは……いつも三人組でつるんでいる、やんちゃ坊主なガジモンたちのグループだったか。

 

 

「この島に、ニンゲンの子供がやって来たんだってさ!」

 

 

 アグモンたちより先に来店し、既に手元のチャーハンを完食していたグループの中で、一人のガジモンが厨房まで届く声量で言い放った。

 ニンゲン……人間。

 盗み聞きの趣味は無いが、前世の私の種族を指すその言葉に、私の耳はまるで自分の噂話を拾い上げたかのように過剰な反応を返した。

 もちろん、彼らが今話しているのは私のことではない。私がデジモンだということも彼らは知っているし、そもそも子供ではないからな。

 

「ニンゲンの子供って……またゴブリモンか誰かと間違えたんじゃねーの?」

「今度は本当だって! さっきジジモンとレオモンが話してるのを聞いたんだよ!」

「レオモンが!? ジジモンはともかくレオモンが言うことなら本当……なのかなぁ」

 

 ……なるほど。それは何とも信憑性が高い話だ。

 ジジモンとはこの村の村長のことで、レオモンとはその名の通り気高き獅子の姿をした獣人型デジモンである。村に外敵が迫ってきた時にはいの一番に現場へ駆けつけ、日夜人助けに島を廻る言わずと知れたナイスガイだ。私も含むこの村のデジモンたちの多くが彼に助けられており、皆にとっては父親のような大黒柱的存在だった。

 

 私が見ているところでは何故か頻繁に死にそうになるのが玉に瑕だが、この世界において特に尊敬できる人物であることに違いは無い。少なくとも彼が嘘を吐くことは無いだろう。

 

「それでよー! その子供は頭にゴーグルを着けてて、パートナーデジモンも連れてるんだってさ!」

「! 選ばれし子供だってこと……!?」

「えー!? 選ばれし子供なら僕がパートナーになりたかったのにー」

 

 噂を持ってきたガジモンの話に対して、後ろの席から食いついてきたのがロップモンとアグモンである。

 私も皿洗いをしながら彼の話には驚いていたが、特にアグモンの反応は大きかった。

 比喩抜きに目をキラキラさせて、彼らの話に混ざっていく。

 

「アグモン、選ばれし子供の伝説大好きだもんねー」

「うん! いつか伝説のウォーグレイモンみたいに、選ばれし子供のパートナーになるのが夢なんだー!」

「なんだお前もか! 俺もガルルモンになって、いずれはメタルガルルモンになるんだぜー!」

 

 今しがた彼らの語った「選ばれし子供たち」とは、この世界では子供でも知っている御伽噺である。それこそ日本で言えば、桃太郎ぐらい一般的に語り継がれている話だ。

 

 それは遥か昔、このデジタルワールドに訪れた存亡の危機──それをリアルワールドから来訪した七人の子供とパートナーデジモンたちが、力を合わせて救ってみせたという英雄譚。

 

 ……私のうろ覚えな前世の記憶にも、それと良く似た物語が断片的に残っている。彼らの会話を客同士の世間話として聞き流せないのは、おそらくそれが理由だろう。

 

「選ばれし子供、か……」

 

 私もこの世界を旅回っていた頃、「選ばれし子供たち」の伝説は何度も聞いたことがある。リアルワールドから勇者のごとく舞い降りた彼らの勇気と友情の物語には、斜に構えた私の硝子の心さえも踊ったものだ。

 

 故にアグモンたちのような純粋な心を持つ成長期デジモンたちからすれば、その伝説は自らの行動原理の礎を築くほどの聖典と言えた。

 

「オリシュモンも何か聞いてない? レオモンとは仲良いんでしょ?」

「いや、私も今初めて聞いたな。本当に人間の子供がこの島に現れたのなら、確かに今年一番のビッグニュースだが……」

 

 実を言うとリアルワールドから人間が来訪すること自体は、この島では十年に一度あるか無いかという珍事ではあるが全く無いわけでは無い。

 しかしそれが伝説に謳われた「選ばれし子供」とするならば、この島がお祭り騒ぎになるだけでは済まない出来事である。……良くも悪くも。

 

 それこそこの世界を守護する大天使や聖騎士たちが「神」の名の下に動き出すほどの案件だろう。故にレオモンとジジモンは、島の有識者として真偽の確認も含めて事を慎重に運ぼうとしているのだろうな。

 

「選ばれし子供はともかくとしても、「外」から人間の子供が迷い込んでくることは稀にある。今回もそのケースかもしれんぞ」

「オリシュモンはニンゲンと会ったことあるんだよねー。羨ましいなー!」

「マジで! やっぱニンゲンって、ロイヤルナイツやバンチョーと殴り合ったりするの!?」

 

 それはレアケースだ。ジジモンの昔話によると遠い大陸にはそういう人間も現れたことがあるらしいが……コメントは控えておこう。

 

「まあ、会ってみればそこまで特別な存在でもないさ。お前たちもあまり前のめりになり過ぎないことだ」

 

 彼ら成長期デジモンたちよりかはこの世界での人生経験が豊富な私は、知ったような口でそう語る。

 素直なロップモンは私の言葉に「はーい」と蕩けるような声で返事を返したが、選ばれし子供たちの伝説に脳を焼かれているガジモンやアグモンはそれでもニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべながら二人で内緒話をしていた。アイツら、件の人間に会いに行く気だな。

 

 だがそれも仕方ないのかもしれない。竜型のデジモンは誰しもグレイモンになりたがり、獣型のデジモンはガルルモンになりたがる。それがこのデジタルワールドに生きる成長期デジモンたちの常識ですらあった。

 このファイル島は比較的平和な島だが、村の外に出れば成長期のデジモンには危険な外敵も少なくない。年長者としては厄介ごとに首を突っ込まないように釘を刺しておくべきなのだろうが……彼らが本当にグレイモンやガルルモンへの進化を目指すのなら、いつまでも村に庇護されているわけにもいくまい。

 そう思ってあえて忠告も程々にしてみたのだが……何故だろうな。

 

 この時の私の中では彼らと同じように、その子供と会ってみたい気持ちが強く揺れ動いていた。

 

 

 




 そろそろオリ主のデータだけでデジモンが生まれそうだと思ったので。
 オリシュモンはうろ覚えなのでEMIYAの認識に姿の似ているディアッカ(2ch)とオルガが混ざってます。
 チャーハン詠唱どこかで既出かもしれないがすまない……
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