転移したら暗黒の破壊者に変身出来る様になった件   作:仮面大佐

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第29話 救われる魂

 俺たちは、ラミリスに話を聞くついでに、休憩を取る事にした。

 子供達が駆け回る中、ラミリスは、チョコチップクッキーを食べていた。

 

「美味しい!うん!美味し〜い!」

 

 ラミリスは、美味しいと言いながら、チョコチップクッキーを食べていた。

 ていうより、よく食べるな。

 そんな小さな体で、どこに行くんだ?

 そう思う中、ラミリスは口を開く。

 

「殺すつもりも、怪我させるつもりもなかったのよさ」

「本当かよ?」

「本当だって。ビビらせて、ちょっと楽しんで、その後、颯爽と助けて、尊敬される予定だったの!」

「何だそれ?完全なマッチポンプじゃねぇか」

「自作自演って奴?なのに、精霊の守護像(エレメンタルコロッサス)を壊しちゃうなんて。拾ってきたおもちゃいじくって、や〜っと完成させたのに!」

「それは、仕方ないんじゃないかな………」

「やらなきゃやられると思ったんだから」

 

 まあ、状況的には仕方ないだろ。

 というより、尊敬されるためにマッチポンプを行うなよ。

 ラミリスは、言葉を続ける。

 

「大体ね…………アレはすっごい高性能だったんだよ!」

「うっ…………」

「地の精霊で重量を操作して、水の精霊で関節を動かし、火の精霊で動力を発生させ、風の精霊で熱を調整する元素の集大成!精霊工学の粋を集めて作ったのに!」

「精霊工学?」

 

 その単語には、聞き覚えがある。

 そう。

 カイジンとベスターが言っていたのだ。

 功を焦ったベスターが進めていた、エルフとドワーフが共同で作成していた魔装兵計画という物がある。

 それを使えば、ドレッドの量産も出来るのではと。

 

「それって…………ドワルゴンでエルフとドワーフが共同開発しようとしてた魔装兵って奴だよな?」

「ん……………ピンポン!ピンポ〜ン!よく知ってるね」

「そうなの?」

「ドワルゴンで、そんな事をしていたのを聞いたんだよ。ていうか、閻魔も知ってたんだな」

「まあ、ベスターとカイジンから話を聞いてたんだ」

「あの計画は、精霊魔導核っていう心臓部を作れなくて失敗したんだよ。そもそもね、通常の鋼材で作ったって、精霊力に耐えられるはずないのにね。暴走して壊れちゃった外殻が捨ててあったから、持って帰って復元したの!もしかして、あたしって天才?すごく無い?すごく無〜い?」

 

 そう言って、ラミリスは俺たちにドヤ顔を向けてくる。

 うざいが、ベスター達が失敗した研究を、自己流で完成させたのだ。

 凄いと思わざるを得ない。

 それを使えば、ドレッドの量産が出来るな。

 

「よし、凄いのは分かった」

「ん?」

「そんな凄いキミを見込んで頼みがある」

「はあ………頼み?何であたしがあんた達の言う事を…………」

 

 リムルがそう言うと、ラミリスはそう言う。

 すると、リムルは手から黒炎獄(ヘルフレア)を出す。

 

「聞く聞く!聞いてあげても良い気がしてきたのでありま〜す!!」

「素直なのは良い事だ」

「あんまり、脅迫はしないほうが良いんじゃないのかな……………?」

「魔王を脅迫するなよ…………」

 

 リムルに対して、俺とシズさんはそう言う。

 

「もちろん、無料とは言わない」

「あ?」

「精霊の守護像を壊したお詫びと言っちゃあ何だが、俺とリムルで、1体ずつ、新しい魔人形(ゴーレム)を用意するよ」

「………………早く話しなさいよ」

 

 俺とリムルの言葉に、ラミリスは顔を輝かせる。

 まあ、壊したの、俺たちだしな。

 それくらいはしてやらないと。

 俺たちは、子供達の事情を、何も隠す事なく、全てを説明した。

 体内のエネルギーを制御する為に、上位精霊を宿らせたい事。

 だから、精霊の棲家に行きたいのだと。

 それを聞いたラミリスは。

 

「なるほどね…………皆、苦労してるんだね」

「という訳で…………精霊女王に紹介して欲しいの」

「ん?あ〜言ってなかったっけ。あたしだよ」

「えっ?」

「だから、精霊女王、あたしの事だよ」

 

 シズさんの言葉に反応したラミリスは、そう言う。

 マジで?

 すると、リムルが声を出す。

 

「冗談言ってる場合じゃ………」

「ブブ〜!冗談じゃありませ〜ん!本当です〜!」

「あのね、君。なんで魔王が精霊の女王やってるんだよ」

 

 リムルがそう言うと、ラミリスは手に持っていたチョコチップクッキーを、リムルに投げつける。

 

「また、ブブ〜!逆で〜す!」

「逆?」

「というと?」

「精霊の女王が堕落して、魔王になっちゃったんです」

「自分で堕落したって言うか?」

「だって、堕落しちゃったんだもん。堕ちるのって…………簡単よね。ふっ」

「何格好つけてんだ」

 

 なるほどな。

 精霊女王も、堕落するんだな。

 すると、ラミリスはとんでもない事を言う。

 

「あっ、そういえば。あいつも堕落したんだった」

「あいつ?」

「レオンちゃん」

「……………ッ!?」

 

 その名前を聞いた途端、シズさんは、顔を顰めた。

 そう。

 魔王、レオン・クロムウェルの事だろう。

 ラミリスは、話し続ける。

 

「あいつさ、何か調べ物があったみたいで、大昔の上位精霊を呼び寄せてさ、契約結んだんだよね。びっくりだよね。で、仕方ないから、精霊女王のあたしは、レオンちゃんを勇者と認定して、精霊の加護を授けたって訳」

「ちょっと待て。何で勇者に認定した奴が、魔王になってんだ?」

「だから、堕落したんじゃないの?もしかして、あたしを真似たのかもよ?」

 

 魔王って、堕落してなる物なのか?

 まあ、立場にもよるか。

 シズさんの方をチラリと見るが、何とか落ち着いている様だった。

 リムルは、シズさんに話しかける。

 

「シズさん?」

「…………大丈夫。魔王レオンの事も気になるけど、まずは子供達だよね」

「ああ」

 

 どうやら、大丈夫そうだな。

 レオンへの憎しみがまだあるのか?

 すると、ラミリスが思い出したかの様に言う。

 

「…………そういや、レオンちゃん。無茶な事も言ってたな」

「ん?」

「異世界から、特定の人物を召喚してくれって」

「そんな事出来るのか?」

「無理に決まってんのにね。バッカじゃん!泣きそうな顔してたね。いや、あれは泣いてた。そう…………泣いてたと言っても過言では無い!泣き虫のくせに生意気なんだよ!バ〜カ!ワンパンだよ、ワンパン!!」

 

 そう言って、ラミリスはシャドーボクシングをする。

 どうやら、魔王レオンは、俺たちの予想以上に厄介そうだ。

 ラミリスって、ミリムと知り合いみたいだし、結構古い魔王なのか?

 見た目はちんちくりんだが。

 

「んっ…………ちょっとあんた達、今、とっても失礼な事考えてない?」

「いや、全く」

「考えてないぞ」

「アハハハ……………」

 

 ラミリスは、俺とリムルが思った事に勘付いたのか、そう言ってきて、俺たちは惚ける。

 それを見ていたシズさんは、苦笑する。

 だが、シズさんはすぐに真面目な表情になって、ラミリスに聞く。

 

「それで…………精霊の棲家に案内してくれるの?」

「ん…………ああ…………」

 

 シズさんの言葉を聞いたラミリスは、宙に浮く。

 そして、真面目な顔で言ってくる。

 

「……………あたしはね、魔王であると同時に、聖なる者の導き手。迷宮妖精であり、精霊女王でもあったの。レオンちゃんにそうしたように、勇者に精霊の加護を授ける役目も担ってるんだよ。だから、安心するが良いさ。公平だからね、あたしは。あたしが…………あたしこそが、世界のバランスを保つ者なのだよ」

 

 すると、周囲に様々な妖精が現れ、笑う。

 俺たちは、頷く。

 

「良いよ。召喚に協力してあげる。凄い精霊を呼び出すと良いさ」

 

 こうして、ラミリスが協力してくれる事になった。

 俺たちは、子供達を起こして、移動する。

 その間、トレイニーの事が話題になった。

 

「トレイニー?へぇ〜あの子達も元気にしてるんだ。昔は小さくて可愛い精霊だったんだよ」

「あれ?トレイニーさんは、今の精霊女王とは接点ないって…………」

「あ〜それね。あたしは死んで生まれ変わっても、前世の記憶を残してるからね」

「ん?」

「あの子達、その事知らないんじゃ無いかな…………。ずっと昔に逸れて、それっきりだったし…………。また今度、遊びに来てって伝えてよ」

「分かった」

「楽しみだな〜」

 

 そんな風に話していた。

 ていうより、トレイニー達とラミリスって、接点があったんだな。

 しばらく歩き続けると、目的地に到着した様だ。

 

「ああ…………!」

「ここが…………」

「迷宮の最深部。精霊の棲家」

 

 ここが、精霊の棲家か。

 少し、ヴェルドラが居た封印の洞窟に環境が似てるよな。

 自然エネルギーが満ち溢れているな。

 シズさんは、ラミリスに聞く。

 

「ここに、上位精霊が居るんだよね?」

「居るけど、上位精霊には自我があってね。呼び出しに応じてくれるかは、気分次第だよ」

「来てくれなかったらどうするの?」

「エネルギーを切り取って、新たな上位精霊を生み出せば良いんだよ」

「生み出す?」

「なるほど………呼んでも応じてくれないのなら、新しく生み出せって事か」

「そっ」

 

 なるほどね…………。

 それじゃあ、俺は難しいな。

 俺は、そんな事を出来る技量は持ってないし。

 悪いが、リムルに任せるとしよう。

 

「皆」

「う…………うん」

「大丈夫です」

「先生」

「へ…………平気に決まってるじゃない」

「頑張ります!」

「ガウッ!その意気だ!」

「リムルさん。お願い」

「ああ。ケンヤ!リョウタ!ゲイル!アリス!クロエ!やるぞ!」

「はい!」

 

 それを見たラミリスは、先に頂上へと先行していく。

 俺たちは、頂上へと向かっていく。

 頂上付近に着くと、ラミリスが口を開く。

 

「良いわね?あそこで、精霊に対して呼びかけるのよ」

「何を?」

「何でも良いのよ。助けて〜でも、遊ぼうでもね」

「そんな大雑把で良いのか…………?」

「それで良いのよ。興味を持った精霊がやって来てくれたら、成功なの」

 

 そんなもんで良いのか。

 ラミリスがそう言うと、リョウタは不安そうな声を出す。

 

「来てくれるかな…………。おっ!?」

「来てくれるさ!」

「う…………うん」

「シズ先生!来てくれるよね?」

「来てくれる?」

「大丈夫だよ。きっと来てくれる」

「大丈夫だ。最悪の場合…………悪魔でもなんでも従えてやる」

「ちょっとあんた、邪悪な顔してるわよ」

「リムルさん…………」

「リムル………………」

 

 リムルが、邪悪な笑みを浮かべながらそう言うと、ラミリスが突っ込み、俺とシズさんは呆れ声を出す。

 気を取り直して、リムルが口を開く。

 

「さあ、誰から行く?」

 

 リムルがそう言う中、ゲイルが行くと言った。

 リムル、ゲイル、ラミリス、ついでに俺とシズさんは、頂上部分の円形の床の方に行く。

 

「先生…………自分に何かあったら、あいつらを頼みます」

 

 ゲイルの言葉に、リムルはゲイルの肩に手を置く。

 ラミリスが前に出て、口を開く。

 

「さあ、どんなのが呼ばれてくるか、楽しみだね」

 

 ラミリスはそう言う。

 ゲイルは、前に出て。

 

「じゃあ、祈ります」

 

 そう言って、ゲイルは跪いて、祈りだす。

 ゲイルが祈りだして暫くすると、周囲に光が出てくる。

 あれが、精霊なのだろう。

 だが……………。

 

(あれは…………上位精霊じゃなくて、下位の精霊だな)

 

 恐らく、この下位精霊達は、ゲイルの祈りが切り取った大精霊の欠片なのだろう。

 すると、リムルが口を開く。

 

「ゲイル。そのまま祈ってろ」

 

 そう言うと、リムルは周囲を漂っている精霊に向かって、手を伸ばす。

 すると、暴食者(グラトニー)が発動して、精霊が吸い込まれていく。

 

「ちょ、ちょっと…………食べた?あんた、なんて事すんのよ!」

「黙って見ててくれ。考えはある」

「リムルさん…………?」

 

 一体、何をしようとしているんだ?

 まあ、あいつを信じるか。

 リムルは、ゲイルの頭に手を置き、光が出てくる。

 解析鑑定してみると、ゲイルのエネルギーの暴走が止まり、制御出来ている。

 つまり、成功だな。

 

「おし。もう良いぞ。よく頑張ったな」

「え…………」

「大丈夫だ。崩壊は止まっているよ」

「閻魔の言うとおりだ。俺が保証してやる」

「はっ………リ、リムル先生………!ありがとうございます!」

「リムルさん。ありがとうね」

「気にすんな。生徒を守るのは、当然だからな」

「バンザ〜イ!」

「おめでとう!」

「やったわね!」

「まだ喜ぶのは早いぞ」

「全員が成功してから、喜ぼう」

 

 まずは、ゲイルが救われたな。

 そうして、子供達に精霊を宿らせる作業は、続いていく。

 次は、アリスの番だ。

 アリスが祈ると、精霊が現れ、リムルが取り込む。

 それを、ラミリスは複雑そうな表情で見ていた。

 まあ、当然だよな。

 リムルは、アリスと擬似上位精霊を統合させた。

 そして、リムルはアリスをお姫様抱っこする。

 

「アリス、頑張ったな。もう大丈夫だぞ」

「フフッ」

 

 アリスは、微笑んだと思ったら、リムルの頬にキスをする。

 大胆っすね。

 後ろの子供達をチラリと見ると、クロエが頬を膨らませていた。

 おやおや……………。

 次は、ケンヤの番だ。

 

「う〜し!次は俺の番だ!」

 

 ケンヤはそう言って、前に出る。

 すると、周囲に光が出てくる。

 

「「あ?」」

「え?」

「もう祈ったのか?」

「いや……………まだ祈ってないのに…………」

 

 え?

 俺たちが戸惑う中、周囲を漂っていた光は、一箇所に集まっていく。

 

「何か、来る?」

「みたいだな…………」

 

 すると、一箇所に集まった光は、人間の形になる。

 それは、黄色い髪の人物だった。

 

「あ?」

「よお〜元気かい?おいらは元気さ」

「あっ、あ〜!あんた、何しに人の家にやって来てんのよ!?」

「ちょっとした気まぐれだよ」

「そちらさんは?」

「こいつは…………」

「オッス!おいら、光の精霊。初めまして。そこの魔物に堕ちた邪悪な妖精と違って、純粋な光の精霊様だよ」

「誰が邪悪よ!」

 

 邪悪って……………。

 まあ、堕天して魔王になったから、あながち間違いではない…………のか?

 リムルは、呆然としているケンヤに話しかける。

 

「ケンヤ。お前、光の上位精霊を召喚したみたいだぞ」

「えっ、ええ〜!?」

「ケンヤって言うのかい。じゃ、ケンちゃんだな」

「親しむの早すぎだろ…………」

「なんか、ケンちゃんに光る物を感じたんだよ。光だけに!」

「うっ…………」

 

 唐突にギャグをぶっこむなよ。

 それを聞いたケンヤとシズさんは。

 

「面白くねえよ」

「アハハハ……………」

 

 ケンヤはそう言って、シズさんは苦笑する。

 そんなケンヤのつっこみに、光の精霊は、機嫌を悪くせずに言う。

 

「…………ってな訳で、おいらがケンちゃんを助けてやるのだ。ケンちゃんが成長するまでは、おいらが保護するよ。もしかしたら、ケンちゃんも勇者になれるかもしれないからね」

「勇者!?」

「ケンちゃんが勇者…………」

「おお〜」

 

 光の精霊の言葉に、子ども達は驚く。

 尤も、クロエはアリスに詰め寄っていたが。

 それを聞いたケンヤは、固まっていた。

 

「うええ……………」

「それはまた凄いな…………」

「そうだね」

 

 俺たちも驚く中、光の上位精霊は、ケンヤの中に入って行った。

 

「あっ」

「宿った」

「えっ?」

「なんか…………あっさりすぎないか?」

「リムル先生…………?」

「あ?ああ、大丈夫!計画通りだ!ハハハハハ!」

「良かったね」

「あっ…………えっと………うん!」

 

 リムルとシズさんの言葉に、ケンヤは最初は戸惑ったが、すぐに頷く。

 次は、リョウタの番だ。

 リョウタが祈ると、青と緑の光が現れる。

 リムルはそれを取り込み、擬似上位精霊として統合して、リョウタとも統合させる。

 

(あと1人か…………)

 

 そう。

 あとは、クロエ・オベールだけだ。

 だが、クロエは顔を赤くして、もじもじしていた。

 

「リムル先生………あのね…………リムル先生………」

「あ?ん?」

「あのね、リムル先生…………あのね…………大好き」

「俺も好きだよ」

「フフッ」

「おやおやリムルさん。随分とモテモテだな。アハハハハハハ!…………ぷげっ!?」

 

 クロエの告白にそう答えたリムルに、俺は揶揄った。

 すると、不意打ちのストレートをお腹にもらう。

 

「不意打ちは無いだろ…………!?」

「大丈夫?」

「お前が変な事を言うからだ。さ、祈って」

「うん」

 

 クロエは、祈りだす。

 それを見ていると、とんでもないプレッシャーが、上空から来る。

 

「あっ…………!?」

「何!?」

「これって…………!?」

「凄まじいプレッシャー…………!?」

 

 俺たちが戸惑う中、目の前の地面が光る。

 

「うわ!」

 

 ラミリスが怯むなんて、相当だぞ。

 すると、目の前に、1人の女性が現れる。

 

(あれは…………精霊じゃない?)

 

 パッと見、精霊じゃないな。

 これまでの精霊とは違う気配を感じる。

 俺たちが戸惑う中、その女性は、俺たちの方……………というよりは、リムルの方に向かって行って、キスをする。

 俺たちが、後ろに行った奴を見ると、そこには、違う女性の姿が映っていた。

 

「あの人は……………!?」

 

 シズさんは、かなり驚愕していた。

 というより、アイツは何なんだ!?

 俺は念の為に、ドレッドライバーを腰に装着する。

 その精霊ではない存在は、クロエの方に向かっていく。

 

「待て!させないよ!あんたの好きにはさせない!!」

「おい!突然何を…………!?」

「うるさい!そいつはヤバいんだよ!見て分からないの?」

「分かる訳ないだろ!」

「何がヤバいんだよ!?」

「話はあと………ああっ!?」

 

 俺とリムル、ラミリスがそう話す中、そいつは、かなりの至近距離までに近づいており、突然、光となって、クロエに吸い込まれていく。

 

「宿っちゃった!もう手遅れだ………!やめやめ…………あたしは知らないからね?」

 

 一応、念の為に、クロエを解析鑑定する。

 膨大だったエネルギーは、綺麗さっぱりに消え失せていた。

 シズさんは、未だに呆然としていた。

 

「シズさん?」

「今のは…………あの人?」

「あの人?」

「うん…………私を救ってくれた勇者の姿が見えて…………」

「えっ?」

 

 それには、俺も驚いた。

 どうなってんだ?

 あのクロエ・オベールとは、一体、何者なんだ?

 

「さっきのは何なんだ?」

「分っかんないわよ!詳しくは分からない!でもね…………あれは多分、未来で生まれたのよ」

「は?」

「未来からやって来た、精霊に似た何か!とても信じられないけど、その子に宿った事で、自分を生み出す土壌を作った?」

「あっ?」

 

 未来からやって来た、精霊に似た何かか…………。

 だが、あのシズさんを救った勇者とやらの姿が映ったのは、どういう事だ?

 それに、ラミリスも分からないとは…………。

 そんなラミリスは、気になる事を言った。

 

「何言ってんだ?

「ああ〜!本当に分からない!!でも、あれは大きな力を持ってた!未来であれが生まれたら、大変な事になる気がする!もしかしてあれは、時の大精霊の加護を受けて…………」

 

 時の大精霊か…………。

 さっぱり分からないな。

 でも、過去のシズさんを救った勇者が、未来からやって来た精霊に似た何かに重なって見えるなんてな…………。

 どうやら、この世界は単純ではなく、色々と複雑なようだな。

 そう考える中、リムルはラミリスに話しかける。

 

「良いじゃ無いか。全員成功したんだからさ。ありがとな。お前のおかげで、子ども達も助かったよ」

「ありがとう」

「ありがとうございます」

「ありがとうございました!」

「感謝する!」

「そ…………そんなの良いってば〜!」

 

 ラミリスは照れながらそう言う。

 まあ、色々と謎が出来ちまったが、これで良しとするか。

 その後、俺とリムルは、壊してしまった精霊の守護像に代わる魔人形を用意したり、その魔人形にリムルは悪魔を、俺は精霊を召喚して憑依させた。

 リムルはベレッタ、俺はイングラムと名付けた。

 それで、その魔人形達で、一悶着あった訳だが、それはまた、別の話。

 ちなみに、ラミリスと交渉して、ゴーレムの設計図を受け取った。

 これなら、ドレッドの量産計画を本格的に進められそうだ。

 その後、俺たちは、イングラシア王国へと向かった。

 そして、リムルに連れられて、自由組合総帥(グランドマスター)の神楽坂優樹の所に向かう。

 

「おっす。」

「ああ、リムルさん。そちらは…………?」

「俺は黒輝閻魔だ。よろしく頼む」

「貴方が…………!どうも、神楽坂優樹です」

 

 俺と優樹は、握手をする。

 すると、優樹は頭を下げる。

 

「本当に…………ありがとうございました。閻魔さんには、シズさんを救ってもらって、リムルさんには、子供達を救ってもらって」

「いやいや。良いってことよ、良いってことよ」

「これで、子ども達はもう大丈夫だ。これで、普通の生活を送れるよな?」

「ええ。一度捨てた子を各国が再び攫う事は無いでしょうし、それは、国際法に抵触しますし。我々自由組合を敵に回す事にもなりますから」

 

 それなら良かった。

 少し、不安だったのだ。

 状態が安定化した子供達を、召喚した国が攫うのでは無いかと。

 まあ、大丈夫だな。

 とはいえ、若干怪しい部分があるな。

 少し警戒するか。

 俺は、ユウキに話題を振る。

 

「子供達にも身分証を発行して、組合員にするのか?」

「そうですね…………あの子達がそれを望むなら、それも良いかもしれないですね。しばらくは、自由学園でのびのびと勉強させて、未来を選べるようにしたいと思います」

「ああ、頼むよ。」

「ご心配なく。ところで…………やっぱり、教えてくれないんですか?どうやって解決したのか」

「フフフン。それは秘密だ。知らなくても良い事もあるよ。教えない代わり…………という訳でも無いが、これで勘弁して欲しい〜」

 

 リムルはそう言って力むと、リムルの体から、大量のシリウスが出てくる。

 なるほど、これを神楽坂優樹に渡してたのか。

 それを見た神楽坂優樹は。

 

「分かりました!ありがとうございます!師匠!!」

「アハハハ…………。」

 

 そう言って、神楽坂優樹は、頭を下げまくった。

 仮にもグランドマスターがそれで良いのか?

 まあ、気持ちは分からんでもないが。

 前の世界の産物を読む事ができるんだからな。

 俺たちは、自由学園へと向かった。

 子供達の方へと向かい、子ども達が遊ぶのを見ている。

 そんな中、俺はこれまでの出来事を振り返っていた。

 いつの間にか、この世界に転移したと思ったら、リムルの運命の人であるシズさんや、エレン、カバル、ギドの3人、そしてリムル達とも出会った。

 シズさんの中に居たイフリートが暴走して、俺がイフリートを怯ませ、リムルが取り込んだ。

 シズさんを救う為に、インフェニックスの力を使ったな。

 豚頭族(オーク)に里を滅ぼされた大鬼族(オーガ)と出会い、勘違いから交戦するも、勘違いと分かってくれた。

 その後、大鬼族達にリムルが名前をつけた。

 しばらくして、蜥蜴人族(リザードマン)と共に、豚頭族と交戦して、魔王ゲルドと交戦して、倒して、三体のガイアードの力で救った。

 そして、トレイニーさんの宣誓の下、ジュラの森大同盟が結ばれ、リムルが盟主となった。

 それを聞いた武装国家ドワルゴンの王、ガゼル・ドワルゴがやって来て、戦い、認めてもらった。

 更に、俺たちが魔王ゲルドを倒した事で、興味を持った魔王ミリムがやって来て、マブダチとなった。

 その後、獣王国ユーラザニア、ブルムンド王国、ファルムス王国からやって来たフォビオ、フューズ、ヨウムと出会った。

 テンペストにフォビオを核としたカリュブディスが現れ、ミリムの手によって倒された後、魔王カリオンと出会った。

 カリュブディスとの戦いの後、ギロリさんも生み出した。

 精霊の棲家で、クロエ達やラミリスと出会った。

 そして、つい先ほど、神楽坂優樹とも出会った。

 前世の俺に、こんな話をしても、信じてくれないだろうな。

 これほど濃い人生を送る事ができるとは、思わなかった。

 とはいえ、全てが順風満帆とは言えないだろう。

 まだ、きな臭い気配を感じるのだ。

 豚頭帝や暴風大妖渦の一件の裏で暗躍する中庸道化連。

 そして、イングラシアやブルムンド、ドワルゴン以外の国家。

 まだ不安要素がある。

 

(…………俺は、リムル達と共に、この世界を生き抜いていく。なんか、この世界でも絵を描こうかな)

 

 俺はそう決意したのだった。

 やっぱり、この世界でも絵を描いてみよう。

 一方、とある場所では、黒い服を着た何者かが、水晶でリムルの事を見ていた。

 

「一生の不覚………。折角呼んで頂けたのに、自分の眷属に先を越されるとは………。次こそ…………次こそは必ずや…………!あなた様方なら、私を、世界の真理へと導いてくれる筈…………。クフフ…………クフフフフ…………!」

 

 その人物は、何を考えているのか。

 そして、また別の場所では。

 

「ふ〜ん……………なかなかに興味深いね。この人間」

 

 その人物は、紫のサイドテールの少女で、紅茶を飲みながら水晶を見ていた。

 その水晶には、俺が居た。

 

???「それにしても、黒輝閻魔か。興味深いね。ふふふ…………。」

 

 その人は、何を考えているのか。




今回はここまでです。
今回は、精霊の棲家での話です。
クロエに宿った存在の正体とは。
そして、閻魔はしれっと、ラミリスからゴーレムの設計図を受け取っていた。
ゴーレム関連の話は、次回の話でやります。
そして、閻魔を見つめるある女の子。
その正体は。
いよいよ、運命の時が近づいていた。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
今後の展開でリクエストがあれば、活動報告から承っております。
ファイナルステージで終式が登場しましたが、紅蓮の絆編で出そうかなと思っています。
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