転移したら暗黒の破壊者に変身出来る様になった件   作:仮面大佐

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第34話 コリウス国へ

 ある場所。

 そこでは、長い銀髪の女性が、氷で出来た棺と思われる物の前に立っていた。

 長い銀髪の女性は、全裸だった。

 

「やはり、気になる。妾自身の目で、かの者たちを見定めておくべきであろうな」

 

 長い銀髪の女性はそう言う。

 その視線の先にある氷の棺の中には、全裸の黒い長髪の女性がいた。

 氷の棺に手を置くと、その銀髪の女性の手が火傷のような跡が現れる。

 

「お前の願い、必ず妾が叶えてやろうぞ」

 

 その銀髪の女性は、自分の顔が焼けるにも関わらず、頬を棺につけて、そう言う。

 氷の棺の中の女性の見た目は、クロエ・オベールに似ていた………………。

 精霊の棲家で、子供たちを救い、獣王国ユーラザニアや、武装国家ドワルゴンとの国交が樹立して、リムルが自由学園から帰ってくるまで、残り数日となっていた。

 俺も、色々と仕事を終わらせていた。

 

「さて。仕事は大分片付いたな」

 

 俺はそう呟く。

 仕事も片付いたし、あとは、万が一にファルムス王国がテンペストを襲撃してきた際の備えもしておくべきか。

 現状、ドレットルーパーは零式が数体完成している。

 あとは、ロールアウトと量産を続けるだけだ。

 そう思っていると、レプリスマホーンに連絡が入る。

 

「ん?リムルから?」

 

 俺が持っているレプリスマホーンに連絡が入るという事は、リムルからだろう。

 俺は対応する。

 

「どうした、リムル?」

「閻魔か!?少し、手伝って欲しい事があるんだけど……………」

「ん?」

 

 リムルはそんな事を言ってくる。

 どうやら、神楽坂優樹から、ある事をお願いされたそうだ。

 それは、コリウス王国への潜入捜査。

 優樹曰く、アスラン殿下とサウザー殿下の王位継承権争いの内情を探る事だそうだ。

 アスラン殿下はAランク冒険者でもあり、熱砂の英雄王子と呼ばれていて、そのカリスマ性によって、コリウス王国のギルドマスターが懐柔され、反乱を起こしたそうだ。

 その為、自由組合としては、放置出来る問題ではないとの事。

 

「いや、事情は分かったが、なんで俺にも声をかけるんだ?」

「それが……………引き受ける条件として、俺が提示したんだよ。閻魔にも手伝わせるって」

「はあっ!?」

 

 俺がそう聞くと、リムルはそう答える。

 リムルの奴、なんで俺を引き合いに出すんだよ!

 

「お前……………!」

「悪かったって!アイツにも、閻魔が断ったら俺も断るって事で話してるからさ!」

 

 俺がそんな声を出すと、リムルはそんな風に言う。

 確かに、他国の諍いに、巻き込まれる謂れはない。

 だが、アイツが何を考えているのかを把握する為にも、接触する必要性はあるか。

 

「はぁ……………分かった。引き受けるって伝えてくれ」

「ええっ!?悪いな……………」

 

 俺はため息を吐きつつ、そう言い、リムルはそんな風に言う。

 ちなみに、俺も冒険者の資格を取っており、リムルと同じランクだ。

 あと、自由学園に居るジェフ先生が、紹介状を俺の分まで書いてくれたそうだ。

 手が早いこって。

 ちなみに、俺はカイトという名前で動くことにした。

 リムルが適当に決めたらしい。

 やる事は、パウロという冒険者のサポートだそうだ。

 しばらくして、俺はイングラシアへと向かい、リムルと優樹と合流する。

 ちなみに、シズさんは、自由学園に居たからか、話を聞いていたそうで、同行すると言ってきた。

 イングラシアの酒場に到着すると、シズさんは優樹に話しかける。

 

「優樹君久しぶりだね。仕事も頑張っている様で良かった」

「シズ先生もお元気そうで…………!」

 

 シズさんがそう言うと、優樹は笑顔で答えるが、顔から冷や汗を流していた。

 

「今回の件でリムルさん達の力を借りたい気持ちは分かるよ。でもね、リムルさん達の気持ちを無視して勝手に進めるのは良くないって…………分かるよね?」

「えっ、ええ勿論!でっでも、リムルさん達に頼るにはこうするしかなかったと言うか………」

 

 目が笑っていないシズさんの笑顔の圧に耐え切れなかったのか震える優樹だった。

 その後、説教をされた。

 優樹が真っ白に燃え尽きる中、その件のパウロがやってくる。

 

自由組合総帥(グランドマスター)!俺の為にわざわざ出向いて下さり、ありがとうございます!!」

「ハハハ。当然だよ、パウロ。君は今回の試験でとても優秀な成績だったからね」

「おお……………!ありがとうございます!」

「けど、実戦ではどうかなって」

「え?実戦……………ですか?」

 

 パウロは、優樹に対して頭を下げる。

 俺の目で見てみたところ、裏表が無い。

 まあ、信頼出来る………………か?

 優樹がそう言うと、パウロはそう訝しむ。

 すると、俺とリムルとシズさんの存在に気づく。

 

「そちらは?」

「ああ。こちらはリムルさんと閻魔さん、そしてシズ先生だよ」

「えっ!あの爆炎の支配者の!?」

 

 パウロがそう聞くと、優樹はそう答えて、パウロは驚いた。

 まあ、無理もないが。

 

「その通り。リムルさんと閻魔さんはB +ランクの冒険者だけど、今回の任務で、シズ先生と一緒に君のサポートを頼んでいるのさ」

「パウロだ!これでも、討伐部のA -ランクでね。三度目の試験に挑戦中なのさ」

「えっと…………リムルです」

黒輝閻魔(エンマ・クロキ)だ」

「シズよ。宜しく」

 

 優樹がそう紹介すると、俺たちはお互いに自己紹介をする。

 

「腕は確かだから、そこは信頼してくれて良い」

「グラマスが認める人たちなら、実力を疑ったりはしませんよ。あの爆炎の支配者も居ますし。それで、依頼とやらに教えて下さいや」

「もちろんさ」

 

 パウロがそう聞くと、優樹はそう答え、俺たちは名乗る。

 A -ランクって事は、俺たちよりも上か。

 というより、三度目って……………。

 説明に入る事に。

 というより、こんな場所でそんな事を説明して大丈夫なのか?

 すると、シズさんが話しかける。

 

「防音魔法が仕掛けてあるの」

「防音魔法?」

「うん。元素魔法のエアフローシャットで、発動したのは、カウンターの向こう側にいる人よ」

「ああ……………あのマスターね」

 

 シズさんはそう言う。

 なるほど、機密保持はバッチリって訳ね。

 というより、優樹が何を考えているのか、いまいち分からないな。

 一応、警戒しつつだな。

 優樹は、パウロに今回の件を説明する。

 

「分かったぜ!アスランとやらが何を考えているのか、探れば良いんだな!?」

「そうなるけど、相手は王族だぜ?もっと敬意をもって接する様にしなきゃ」

「そ、そうか。了解ですよ、優樹さん!」

『なあ、閻魔。あのパウロって奴、大丈夫だと思うか?』

『どうだろうな……………』

『あははは…………』

 

 パウロと優樹がそう話す中、俺とリムルは思念伝達でそう話す。

 不安しかない。

 何せ、王族相手にタメ口を聞きそうな気がするからな。

 すると、優樹が話しかけてくる。

 

「リムルさん、閻魔さん。パウロはこんな感じなので、助言してあげて欲しいんですよ」

「お、おう……………。」

「リムルと閻魔と言ったか!ま、よろしく頼むわ!」

「お、おう。……………ところで、俺たちはサポートで良いんだよな?」

「何を言っているんですか!作戦担当はリムルさんと閻魔さんですよ!」

「いやいやいや!普通ならパウロが主導するのが筋だろうが!!」

 

 優樹、パウロとそう話す中、俺は優樹にそう聞く。

 すると、そんな事を言われる。

 マジか……………。

 パウロが口を開く。

 

「おう、リムル、閻魔!俺は細かい事が苦手なんだわ!アンタ達の指示に従うから、俺がAランクになれる様に協力してくれや!」

『こいつ、気安いな……………』

 

 パウロはそんな事を堂々と言う。

 ダメだコイツ。

 本当に大丈夫だよな?

 そんな不安は、見事に的中してしまった。

 クロエ達が野外訓練に用いたキャンピングカーで出発して、宿に着く。

 

「おぉ!なかなか良い宿だな!」

「……………支払いは別だからな」

「ちょっと待てよ!アンタ達は、優樹さんから俺の面倒を頼まれてんだろ?」

「………………金の面倒までは頼まれてないんだが?」

「自慢じゃねぇが、俺は金がねぇんだ!」

 

 宿に着くと、パウロがそう言い、リムルがそう言うと、パウロはそんな風に言う。

 嫌な予感がした俺はそう聞くと、パウロは情けない事を堂々と口にする。

 

「お前……………!仮にもA -ランクという一流冒険者がどうして貧乏してるんだよ!?」

「ナッハハハハ!いやな、イングラシアの様な大都会で、興奮しちまってな!持ち金を使い切っまったのさ!」

「コイツ……………………!!」

 

 リムルがそう聞くと、パウロはそんな事を言う。

 こいつ、筋金入りのバカか?

 そりゃあ、田舎の出身が大都会に来たら興奮するのは分かるけどさ。

 本当になんでこんな奴を寄越したんだよ。

 すると。

 

「………パウロ君?」

「はい!なんで………すか」

 

 シズさんに声を掛けられて、パウロは元気良く振り返る。

 だが、目が笑っていないシズさんの笑顔を見たのか、パウロは、顔色が青ざめて、冷や汗を流した。

 

「一流の冒険者の前に、大人として自分のお金の管理くらい出来ないとダメだよ」

「はっ……はい」

 

 シズさんは、パウロに説教をしていった。

 結局、俺とリムルが、パウロの分も支払う事になった。

 その翌日、砂漠を嵐牙が引っ張るソリで移動していた。

 ちなみに、パウロは爆睡していた。

 

「お前のおかげで、予定よりも早くコリウス王国に入る事が出来たな」

「ありがとうな、嵐牙」

「お褒めに預かり、光栄です!我が主達!」

 

 俺とリムルは、嵐牙にそう言うと、嵐牙はそう返す。

 俺たちは、少し話をする事に。

 

「交易路って感じでも無いな」

「魔物や盗賊に出会したら、自分で対処しろって事だろ」

「うん。コリウス王国って、交易が最小限だから」

 

 俺たちはそう話す。

 予め話を聞いており、コリウス王国は、交易が最小限なのだ。

 だからこそ、自衛をしろって事だろ。

 シズさんも、一度コリウス王国に行った事があるそうだ。

 しばらくすると。

 

「この俺は、空拳のパウロ!命が惜しければ、黙って去りな!」

「素手で戦う様ですね」

「相手が盗賊なら良いよ」

「でも……………あれは素手で挑んじゃいけない奴だろ」

 

 魔物が現れたので、パウロが戦闘をすることに。

 そりゃあ、盗賊なら素手でも倒せるだろう。

 だが、目の前に居るのは、盗賊ではなく魔物。

 しかも、あからさまにヤバそうな毒を身に纏っている蜥蜴だった。

 一応、優樹から貰った魔物の生態情報を見る事に。

 

「ポイズンリザード。エビルムカデと同等のB +ランクです。ただし、体表を覆っているのは、強酸性の猛毒なので、物理攻撃の際には、飛散に注意して下さい…………って!?」

 

 これはダメだろ。

 武器を使うのならまだしも、素手で挑むのはダメだろ。

 俺たちは、パウロに忠告しようとする。

 

「おい、パウロさん!ちょっと待って……………!」

「安心しな!俺の力を見せてやるぜ!」

「いや、そうじゃなくて……………」

「ナックル………クラーーーッシュ!!」

 

 リムルが止めようとするが、パウロは聞く耳を持たず、そのまま素手で挑んでしまう。

 結果は。

 

「ああぁぁぁぁ!!目が!顔が熱い!ぬぉぉぉぉぉぉっ!!」

 

 こうなりました。

 ポイズンリザードを倒す事は出来たものの、その強酸性の毒をまともに浴びてしまった。

 俺とリムルは呆れながら、パウロの方へと向かい、フル・ポーションをかける。

 

「お…………?こ、これは…………?」

「座れ。」

「おお、リムルに閻魔よ!助かったぜ…………」

「良いから、座れ」

「ひっ!」

「グルルルルル!我が主達が仰せだ!!」

 

 パウロの治療を終えると、俺たちはそう言う。

 無論、説教だ。

 パウロは地面に正座をする。

 

「人の言う事を聞け!無茶をするな!出来る事を確実にやれ!」

「あと、相手を見ろ。素手が通用する相手ばかりじゃないんだ」

「は、はい……………」

 

 俺とリムルはそんな風に言うと、流石のパウロもそう言う。

 しばらく進み、夕方になったので、一旦休憩する事に。

 その際、パウロから話を聞く。

 

「元々、体術と棒術が得意なんだ」

「だったら、武器を使えよ」

「使ってた木の棒が折れちまってな!」

「新しいのを買えよ!」

「素手で十分!ふん!」

「それで怪我をしたんだろうが…………」

 

 パウロは体術だけでなく、棒術も得意らしい。

 だったらとそう言うが、そんな風に返す。

 俺が呆れながらそう言う中、リムルは何かを取り出しながら言う。

 

「お前なぁ……………大サービスだぞ」

「おぉぉぉ!!」

「ほい!」

 

 リムルが取り出したのは、棒だった。

 もちろん、黒兵衛が作ったものだ。

 リムルからその棒を受け取ったパウロは、それを振り回す。

 

「すげぇ!すげぇよ、これ!!」

「はぁ……………俺からのサービスだ。大切に使えよ?」

「分かったぜ、リムル、閻魔!いや、リムルさん!閻魔さん!」

 

 パウロがそう言いながら喜ぶ中、俺はフル・ポーションを渡す。

 危なかしくってしょうがない。

 こうして、俺たちはパウロに懐かれた。

 それも、必要以上に。

 しばらくして、出発すると、嵐牙が口を開く。

 

「見えてきました!我が主達!」

「コリウスの首都、ハーバリアか」

「オアシスにある街みたいだな」

 

 嵐牙がそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 コリウス王国の首都、ハーバリア。

 ハーバリアは、オアシスを中心に発展した様な街だった。

 その中に入り、ジェフ先生が紹介状を書いてくれたアマディ侯爵家へと向かう。

 シフォンという女性が対応して、口を開く。

 

「姉が大変お世話になりました」

「姉?」

「……………もしかして、ウラムスさんの妹さんですか?」

「そうです」

 

 シフォンさんがそう言うと、俺はそう聞く。

 すると、シフォンさんは肯定する。

 マジか。

 ウラムスとは、野外訓練でのゴタゴタの際、俺たちが治したグラトル伯爵の奥さんだ。

 という事は、ジェフ先生は、コリウス王国で不穏な気配があるのを察して、俺とリムルを派遣したのか。

 食えない人だ。

 

「シフォン・アマディと申します。ジェフ・シーガル伯爵の妹にして、我が夫、バラク・アマディの第一の妻ですわ」

「パウロです!これでも俺、A -ランクの冒険者なんですよ!」

『おい、馬鹿…………!』

「まあ、それは素晴らしいですわね。是非とも、当家でおもてなしさせて下さいませ。」

「はい!」

「……………お客様をお連れして」

 

 シフォンさんが自己紹介をするので、俺たちも自己紹介をしようとするが、パウロが遮る。

 優樹にも忠告されてただろうが…………!

 シフォンさんは笑みを浮かべていたが、途中から笑みを消し、そう言う。

 すると、パウロは筋骨隆々の二人の男に抱えられ、連れていかれる。

 

「え?え?えぇぇぇぇ!?」

「主人が待っております。どうぞ、こちらへ」

 

 パウロが連れていかれるのを呆然と見ていた俺たちに、シフォンさんはそう言う。

 俺たちは、旦那様の元へと案内される。

 シフォンさんにワインを注いでもらうと、リムルは口を開く。

 

「アマディ侯爵閣下……………でよろしいでしょうか?」

「バラク……………で構わんよ。貴殿らは妻の恩人。つまりは、俺の恩人である。遠慮は不要だ」

「あの……………パウロは?」

「あの男は武人だが、品が無い。リムル殿と閻魔殿の連れだから屋根は貸すが、贅を尽くして興する謂れはない」

「ご安心を。食事は用意させておりますので」

「まあ、それなら問題ないか。」

「そうだね」

 

 リムルがそう聞くと、バラクさんはそう言う。

 パウロについては、妥当な判断だろうな。

 失礼な事をやらかしそうだし。

 食事を終え、従者達が去る中、バラクさんは口を開く。

 

「……………さて、腹芸は好まぬ。貴殿らは、シフォンを連れ戻しに来たのかな?」

「え?」

「ん?」

「シフォンさんを?」

 

 バラクさんの質問に、俺たちは首を傾げる。

 シフォンさんを見ると、気まずい表情を浮かべていた。

 

「ああ、そういう事ね。ジェフ先生から頼まれて、シフォンさんを迎えに来たと思われたのか」

「違うのですか?兄はああ見えて、身内にはとても優しい方ですの」

「いえ、違いますよ」

「ふむ。だとすると、自由組合(ギルド)に関する事だな」

 

 リムルがそう言うと、シフォンさんはそう言うが、俺は否定する。

 それを聞いたバラクさんは、すぐに察する。

 シフォンさんは、説明する。

 

「我が国は、最果ての守りの任を負う代わりに、各国から援助を受けています。安全保障上、今の状況を思わしくないと考えているはず」

「正解ですよ。俺たちの目的は、ギルドがどちらに与するかを調査する事」

「アスラン殿下の独立宣言を黙認する事は出来ないけど、状況次第では、手を組むのもありだそうです」

 

 シフォンさんがそう言う中、俺とリムルはそう言う。

 何回か、この世界の地図を見せてもらったが、コリウス王国の隣は、不毛の大地という場所らしい。

 そこから、魔物が攻めてくるのを守るのが、コリウス王国の立場という事だ。

 すると、バラクさんが口を開く。

 

「うむ……………俺の立場からしたら、それは歓迎出来ん話だ」

「夫は、サウザー王太子殿下の腹心ですので、ご容赦くださいませ」

「当然だと思います」

「ただ私たちは、判断する立場ではないの」

「その点はご理解して頂けますか?」

 

 バラクさんは、顔を顰めながらそう言う。

 そりゃあ、無理な話だろう。

 忠誠を捧げる人を裏切る真似なんて。

 俺たちがそう言うと、バラクさんは口を開く。

 

「無論だ。貴殿らの行動を邪魔せぬし、むしろ、協力しようと思う。明日、サウザー様にお眼通ししよう。彼の方と接すれば、貴殿らも正しい回答を得られるだろう」

「それは、俺たちの立場的に問題があります」

「お気遣いしてくれてありがとうございます。ただ、その申し出はご遠慮させて下さい」

 

 バラクさんはそう言う。

 だが、俺たちはあくまで状況を確認しに来ただけだ。

 そこまではしなくても大丈夫だろう。

 

「そうか。残念だが、無理強いはしない」

「それでしたら是非、ゼノビア王女にお会い下さいませ。」

「ゼノビア王女殿下…………ですか?」

「ええ。アスラン殿下とサウザー殿下の妹君です。ゼノビア様は今、病に臥せていらっしゃいますの。リムル様と閻魔様は、高名なお医者様だと兄から聞き及んでおります。あの人を褒める事が滅多にない兄が、『ウラムスが助かったのは、リムル先生と閻魔さんのおかげだ』と。きっと、快癒の手立てが見つかると存じますわ」

 

 バラクさんがそう言う中、シフォンさんはそう言う。

 そういえば、ウラムスさんを治したの、俺たちだな。

 とはいえ、そんな手術とかじゃなくて、アピトの蜂蜜を飲ませてみるのもありか。

 どちらにせよ、断れないな。

 俺たちは、ゼノビア王女と会うことにした。

 その翌日、俺たちはパウロと話していた。

 

「…………でもよ、俺は調査とかした事ないぜ?」

「良いから行け。ギルドの酒場に行って、話を聞くんだよ」

「あとは、適当に愚痴でも言ってれば良い」

「愚痴?」

「ああ。『貴族の知り合いの護衛でここまで来たが、わがままで困ってる』…………とかな。適当でいいんだよ。適当で」

 

 パウロがそう言う中、俺たちはそう言う。

 パウロには、酒場でアスラン殿下に関する情報を探ってもらう事にした。

 リムルがそう言う中、パウロは叫ぶ。

 

「なるほど!」

「分かったなら、さっさと行ってこい!」

「うぐうぐ…………ぷはぁぁぁ!!分かったぜ、リムルさん、閻魔さん!!」

 

 パウロはそう言うと、グラスの中身を飲み、俺たちに預けて、走っていく。

 無論、そのままにする訳がなく。

 

「蒼影、居るか?」

「ここに」

「パウロを尾行して、会話を全て聞き取ってくれ。護衛も頼む」

「承知」

 

 念のため、蒼影をつける事にした。

 蒼影は、分身体を生み出し、片方はリムルの影へと消え、もう片方はパウロを追う。

 それで、俺たちはゼノビア王女に会いに行く事にしたのだが………………。

 

「そりゃあ、後宮は男子禁制だろうけどさ」

「俺もか……………」

「お似合いですよ」

 

 そう。

 着替えさせられたのだ。

 この格好に。

 後宮が男子禁制なのは分かるが、女装をする羽目になるとは。

 リムルはまだシズさんに似た容姿だから、大丈夫だろうけどさ。

 俺なんて、顔は整っているとはいえ、男だよ?

 何で俺まで……………。

 それを見て、シズさんは含み笑いをする。

 朱菜に見られたら終わりな気がする。

 すると、目の前から誰かがやってきて、シフォンさんは小声で俺たちに話しかける。

 

「……………少し、不快な思いをすると存じますが、何卒、ご容赦くださいまし」

「これは、これは!侯爵夫人!ゼノビア姫のお見舞いですかな?」

 

 シフォンさんがそう話しかける中、目の前にいる男がシフォンさんに話しかけてくる。

 見た目からして医者の様であり、二人の従者を連れていた。

 だが、何か不穏な気配を感じる。

 それが何かはいまいち分からないが。

 すると、シフォンさんが口を開く。

 

「ええ。グスタフ侍医長殿」

『侍医長……………ゼノビア王女殿下の専属の医者ってことか』

「それは、それは。後ほど、私の所にも寄って欲しい物ですな。健康状態をお調べ致しますぞ?」

「侍医長殿のお手を煩わせるなど、畏れ多い事でございますわ」

「ふっふっふ。遠慮は無用ですぞ。……………そちらは?」

 

 グスタフ侍医長とシフォンさんはそう話す。

 仲悪そうだな。

 というより、グスタフ侍医長は怪しさしか感じないのだが。

 すると、俺たちに気づく。

 

「リムル様と閻魔様と仰らるのですが、とても珍しいお薬を持参しておられますの。少しでも、姫様の為になるならばと、無理を言って来て頂いたのです」

「くだらん!どこの馬の骨とも分からん詐欺師を呼び込むとはね!不愉快だ。陛下に奏上し、あなた方の愚かさを罰してもらわねばなりませんなぁ!!」

 

 シフォンさんがそう言うと、グスタフ侍医長は不愉快さを全開にしながら、去っていく。

 

「…………大丈夫なんですか?」

「あんなふうに言ってましたけど」

「平気よ。さ、行きましょう」

 

 俺たちがそう聞くと、シフォンさんはそう答えて、そのゼノビア王女がいる部屋へと向かう。

 部屋の中に入ると、部屋の中は植物がたくさんあり、その中心にはベッドが置いてあり、従者が二人いた。

 ベッドには、女性が居た。

 すると、ゼノビア王女が口を開く。

 

「あら?どなたかしら?」

「良かった……………起きておられたんですね。ゼノビア様。本日は紹介したい方々をお連れしましたの」

「その声はシフォンね。あなたが人を紹介したいだなんて、珍しいわね」

 

 ゼノビア姫がそう言う中、シフォンさんはそう言う。

 というより、ゼノビア姫は目が見えないのか?

 ずっと目を閉じている。

 そう思う中、シフォンさんが紹介する。

 

「こちらは、リムル様と閻魔様ですわ。私の姉を治療して、病を癒して下さった、とても素晴らしいお方ですの」

「ただいま紹介に預かりました、リムルと申します」

「同じく、閻魔と申します。本日は私たちに、姫様を診察する許しをいただければと」

「よろしくてよ。でも、痛いのは嫌なので、優しくお願いしますね」

 

 シフォンさんがそう言う中、俺とリムルは挨拶をする。

 ゼノビア姫は、ぱっと見は顔色はよさそうだがな。

 

『…………でも、やっぱり食事の量が少ないのか、少し痩せ細ってる気がするな。何やってんだ、アイツ』

 

 俺はグスタフ侍医長に毒づく。

 仮にも侍医長なら、ちゃんと治療してやれ。

 

「奇遇な事に、私も痛い事は苦手です」

「では、失礼しますね」

 

 俺がそう毒づくが、俺とリムルはゼノビア姫に近寄り、診察をする。

 とは言っても、リムルが解析鑑定をするのだが。

 

『リムル、頼んだぞ』

『おう』

 

 リムルに思念伝達でそう伝え、俺は診察を続けるふりをする。

 具体的には、指の先端から針を出し、血流を調べると見せかけて、血液を採取する様だ。

 俺には、誤魔化す。

 すると、解析結果が出たのか、リムルが思念伝達を送る。

 

『閻魔。血液検査の結果が出た。極度の栄養失調で、衰弱状態みたいだ』

『やっぱりか。解析鑑定では正常だと出たが、おかしいと思ったら、妨害されていたのか?』

『分かんないけど…………取り敢えず、薬として、アピトの蜂蜜を渡すぞ』

『ああ』

 

 本当にキナくさいな、あの侍医長。

 だが、今はゼノビア姫だ。

 俺とリムルは、蜂蜜を取り出す。

 

「では、薬をお渡しします。これは万能薬です。毎食後に服用なさって下さい」

「苦いのは嫌ですよ?」

「ご心配なく。私たちの大好物でございます。毒見して貰っても大丈夫ですので、感想をお聞きになって下さい」

 

 リムルがそう言う中、ゼノビア姫はそう言う。

 俺はそう言い、従者の人たちに毒見をさせる。

 従者の一人が蜂蜜を舐めると。

 

「まあ!」

「紅茶に淹れてのも美味しいですよ。クッキーやケーキに入れるのもありかな」

「リムル、口調。……………美味しいかと存じます」

 

 従者が歓声を上げる中、リムルは口調を崩していたので、俺は肘打ちしながらフォローする。

 従者の人が紅茶に蜂蜜を入れ、ゼノビア姫に渡す。

 ゼノビア姫は、その紅茶を飲む。

 

「ああ…………美味しい」

 

 ゼノビア姫はそう言う。

 蜂蜜は美味いからな。

 ゼノビア姫が何かの反応をする。

 すると、先ほどまで閉じられていた目が開いていたのだ。

 

「眩しい……………。リムル…………様?閻魔…………様…………?」

「ふふっ」

「はい」

「リムル様。閻魔様」

 

 そう。

 ゼノビア姫は、自分の目で俺たちを見たのだ。

 それを見たシフォンさんがゼノビア姫に駆け寄る。

 

「姫様!」

「シフォン……………!見える…………見えますわ!」

「姫様……………!!」

 

 シフォンさんが駆け寄る中、その場にいる全員が涙する。

 そりゃあ、いきなり回復したからな。

 アピトの蜂蜜って、すげぇな。

 すると、ゼノビア姫が話しかけてくる。

 

「リムル様………!閻魔様…………!ありがとう……………ありがとうございます!」

 

 ゼノビア姫がそう言う中、俺たちは笑みを浮かべる。

 助けられてよかったよ。

 俺はそう思うのだった。




今回はここまでです。
今回は、コリウスの夢の話に入りました。
後宮に向かう際、閻魔も女装をする羽目になりました。
朱菜に知られたら、確実にとんでもない目に遭いそうですね。
そして、シズさんも同行する事に。
次回は、策略が動き出します。
感想、リクエストは絶賛受け付けています。
いよいよ、ファルムス王国戦が近いというのもあって、なかなか進みません。
閻魔のパワーアップに関しては、ファルムス王国戦であるパワーアップをして、クレイマン戦で参式、紅蓮の絆編で終式、ヒナタとの戦いでドラドを、帝国との戦いの際に、竜種を獲得して、エルドに変身ができる様になる感じです。
ガッチャードのVシネマが楽しみですね。
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