私が正面の地面を照らしたまま歩いてる後ろをトゥルーディアが空に浮かんだまま付いてきてる。それ以外には何も動いている物を感じない。それは外も同じみたいで、私の左側にある窓ガラスがずっと並んでるのの向こう側も同じ。電気が全く付いてない工場の様子であったり商店の様子を横目に見ることになる。ただ、その向こうに広がってる夜空は今も雲で埋め尽くされてて、その灰色っぽい色が濃くなったり深くなったりしてるだけの様子しかない。
でも、いつの間にか私がずっとそっちの方を照らしたままになってたみたいで。トゥルーディアに語尾を持ち上げる感じで私の名前を呼ばれたところで気づいて、軽く謝ってから数秒間だけ早歩きで前に進む。それからは建物の床の所を懐中電灯が照らすけど、おそらく日中に働いてる人たちがろくに掃除してないせいで床が砂だったりで薄汚れている様子であったり、埃がそのままになっている様子などが映る。
それだけじゃなくて、廊下の上にずっと放置されたままになったもののせいで状態が悪くなってる箱が何個も詰み上がってたり、ドアが開けっ放しのままになってたり。特に後者があった時にはその中まで確認するけど、たぶんお昼の時に食べたと思うものの臭いが未だにしてたし、入り口に置きっぱなしになってるゴミ箱の中身が見えて汁だったりソースだったりがつけっぱなしになってる包装紙や新聞紙がそのまま捨てられてた。その上、中身も全然分別されてない。
一度だけため息を吐きながらまた同じ方へと向けて進んでく私に対して、一度トゥルーディアの方に振り返ったら、そっちは下の唇で上のを押しつぶしながら頬を膨らませるみたいにしてて。両方の手で懐中電灯を持ったままいた。私がそっちをしばらく見てたら、向こうの方から「こっちは異状ないよ」って早口目に言ってから、脇を締めてる。
しばらく口を少しだけ開けながらほんの少しの声を出してる私が、目線を反らして外の誰もいない寝静まった街の様子を見る。窓に反射して見える、私の懐中電灯とトゥルーディアの灯りにだけ照らされてる2人。その向こうでは、今までは影になってて見えなかったし、建物そのものはずっと近いところにある他の建物で隠れちゃってるのに、コロシアムの方から空に向けて光が数本伸びていて、それがずっと左右に揺れ続けてる。
私たちと一緒に映ってるドア枠の中の休憩室の真っ暗な様子を見てたら、いきなり相手から私の名前を呼ばれて、それと一緒に眉を力なく落っことしてるその様子に気づいて。私も軽く笑う声を相手に聞かせながら後ろに数歩だけ下がる動きをしてく。
ただ、その後はすぐにまた背中を回して目線を左右に向けながら早歩き目に足を進めていく。周囲から聞こえてるのは私の足音だけにして。すぐにやってきた曲がり角を歩いて行った。でも、その間に急に足を動かすペースが上がっちゃった気がして。足をまっすぐに止めて。両方の腕を落っことしたまま限界まで体を押しつぶし感じで両方のそれに力を入れる。
それだけじゃない。顎を下に向けたまま眉にも力を入れて。それから勢いよく後ろに振り返った瞬間、後ろから激しい足音がして。息を吸いながら私もそれに負けないくらいの足音で体を前のめりにしながら走り出した。
「トゥルーディア」
何も考えずに角を曲がりながら走り出した私が勢いよすぎて角を曲がり切れずに反対側の壁に体を押し付けちゃいそうになってるのに対して、トゥルーディアは私の方に背中を向けたまま体の炎を燃やしながら走ってるせいで、何度も足同士を引っかけて体を斜め前に転びそうになりながら蛇みたいに進んで行く。
その様子が少しずつだけど夜の闇の中に混じりながらいる中で、ただ私は壁にぶつかりながら転びかけてる体勢のままいることしか出来なくて。息を吸ったり吐いたりしながらただ正面の方を見つめてて。でも、何度も息を切らしながらいるせいで頭を外の空気に触れさせるように帽子を脱いだら、そこになんだかわからない文字が書いてあるままのを見つめる。その状態でいられるのはほんの数秒間だけで。すぐに体を前のめりにして、最初は斜め前に進んで行くみたいにしながら、廊下の中心線の軌道に乗った後は両方の腕を振る。
それの結果として光があっちこっちのめちゃくちゃな方へと何度も向かってしまい、右側にある窓の方を何度も照らし続けてて。もちろん、それは例のコロシアムがあるところも例外じゃない。
「トゥルーディア」
もう1回、この廊下全体に響くくらいにおっきな声で相手の名前を呼ぶ。それのせいもあってその大きな音が反響しそうになってるのを感じる。でも、そんなの私には関係ない。むしろそれ以上の勢いで体を前のめりにしながら進んで。一瞬だけ顔を下の方に向けちゃいそうになるけど、すぐにまた起こして正面に戻す。
ほんの少しだけ音がしたドアの前に付いた所で、両方の手でそこを抑えながら体全部が激突しないように抑え込むけど、おでこが前のめりになるせいで帽子のつばが潰れる感じで引っかかる。
それから咄嗟にドアノブを開こうとするけど、でも、そこが引っかかって何度もそこがガチャガチャとなっちゃって。それに気づいた瞬間ほんの少しだけ息を吸ったり吐いたりを繰り返しながらそっちの方を見てるようで少し逸らすみたいな角度に視線を向ける。
「トゥルーディア」
また頭を左右に振る感じで大きな声を出して名前を呼ぶ。それから、片方の手でドアノブを握りながらもう片方でその腕を握ったままにしてる。さっきまで足音だったりノブをひねる音を何度も起こしたりを繰り返してた私は、それのせいで廊下の中にこのフロアに何度も反響させるみたいになってたのに、今は自分自身の呼吸の音しか聞こえない。
こっちの手元から転げ落ちた懐中電灯が足元を照らしてるのだけが後ろの方にまで伸びているのを見て、またそっちの方に埃だったり段ボールだったりが積み上がってる様子を見ることになった。両方の腕を伸ばしたまま後ろに向けて振り返ってる状態で数秒間いる私はしばらくそっちの方を見ている羽目に。
「ごめん」
いつも以上に高い声を聞いて意識をドアの方へと戻す。でも、それですらもドア越しだったせいで相当に籠って聞こえてて。それに続いて聞こえた鼻をすする音も全く一緒。それからは数秒間だけだけど確かにこっちにも何も聞こえない状況が続く。
ただ、私は息を1回吸いながら、握ってるノブに向けてまっすぐ伸びてる腕とそれを包んでる作業着を見る。そして、それの奥にある体を包んでるベストの様子を見た。気づいたら、そこがだんだん降り曲がってて。口を強く紡ぎながら顎を体へと限界まで強く近づけた。
「待って、1回、休憩にしよ」
言葉を出すたびに数秒間の隙間を開けて。その間に目元が震えるのを感じる。それから唇を強く閉じ、今まで帽子のつばに支えられてた場所を外し、それをおでこごと押し込むみたいに。それで結果として帽子の部分も同じにする。
それから、しばらくただ目元に強く力を入れてしわを作るみたいにしてるのが続いている間、辺りからは何も聞こえなくて。夜特有の冷たい空気がさっき走ったせいで火照った体に染み込む。ずっと唇を両方で押しつぶしてるみたいにしてたはずなのに、そこを何度も閉じ直すみたいにしてて。肘を折り曲げたまま体を自分の体にくっつけた。
ほんの少しだけ口の中の唾液が音をたてたみたいになった時、ドアの板が少しだけ押されるけど鍵だったりが引っかかって途中で止まる音と動作を肌で感じて。顔をそっちに向けた。それから、トタン製のそれが低く滑る音だったり塗装の破片が剥がれる音がする。
続けて、私も背中をそこへとくっつける。それから両方の膝を折り曲げることで持ち上げて、限界まで自分の体に近づけてから太ももの位置はそのままに残りの足はまっすぐに伸ばして行く。体をほんの少しだけ前のめりにするけど、それだけじゃなくて、頭も少しだけ横に傾ける。
さらに、膝を肘の上に乗っけてるまま力なく前腕同士を近づけるみたいな角度で、ギリギリ両方の指同士をかみ合わせる感じにする。唇も紡いでるのかそうでないのかギリギリぐらいの距離にしておく。
一方で、そのまま顔も少し伏せがちな感じにして床の方を見てるせいで、視線の中で動いてる物なんかなくて。強いて見えるのは月明かりが今日は曇ってるせいで少ないから、何とか視界を保っていられる黒の中に少しだけ青が混じってるみたいな色をしてる周囲の様子の他に見えてるのは、懐中電灯が照らしてる薄汚れてる床だったり、埃だったり段ボール箱の状態が悪い様子くらい。
細くした状態で力を入れないままにしてる目で、そっちの方に視線の焦点をほとんど合わせないままいた。
「あのさ……」
その言葉は自分の口が動いてるのかいないのか、それどころか表情も自分で変化しているのかわからないままさっきまでと同じような顔の角度、態勢のまま出してた。体がほとんど動かないせいで自分でも呼吸をしているのかすらもわからないような状態。それが確認出来るのは自分の心臓の音だけ。それが自分の胸を大きく打つみたいにしてるのを強く感じて。それのせいで口元を一度また紡ぎ直した。
「トゥルーディアは、私の所来るまでおばさんと住んでたの」
その声を出す時、目線を横の方に向けそうになるけど、それで見える物なんかただ自分の方から離れれば離れるほど暗くなってる廊下だけ。一番奥の方に行くと真っ暗で何も見えない状態。そこで顔を自分の腕と体で隠すみたいにしてた。
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