スタンドアップ   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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今回は少し長編です。


第15話「飛べない兎」

「うん」

 

 その声はほんの一瞬だけしか聞こえなかったけど、でも、それでも腕で膝を強く引くみたいにして。限界まで自分の体に寄せる。さらに、それだけじゃなくてそこの所に顎もくっつけた。結果として、自然と背中も曲がっちゃって。そこが丸くなってるのをずっとそのままにしてる。ただ私はずっと同じ体勢でいて、ドアの向こうにいるはずのトゥルーディアの方からも何も音がしないのだけをずっと感じ取ってる。

 

 目を細めて視界を出来るだけ狭くしたまま、ただただまっすぐに正面の少し下の方だけを見つめてる。そっちの方は、今日は月が出てないけど、濃い目の暗い青色っぽいような色に染まってて、たぶん元々は灰色っぽい色だったのもほとんど見えなくなってる。

 

 私がいるドアの所は少し走った通路と右側から伸びて来てるのとのぶつかり合う角の所で、左側にはコロシアムがある方の窓が一定の距離で平行に並んでる。でも、それはそこそこ高い所に設置されてるせいで私の今の下げた頭じゃ全然その高さに到達しない。それは被ってる帽子も一緒。

 

「あのさ、おばさんとは、何で一緒にいたの」

 

 私はまたさっきと同じ感じで声を出してみる。でも、その声は鼻から下を膝の内側に入れてて、鼻を腕の上に乗っけるみたいにしてるせいで、だいぶ籠って聞こえてた。最初の一瞬だけは口元を少しだけ離そうとしたけど、それで勝手に背中が動くせいでドアを体で押し込むみたいになっちゃうせいで、また同じ体勢に戻す。

 

 それから、言葉を言い終えると一緒に目線を横にまた向けて、唇を上と下両方とも口の中にしまうみたいな動きをしちゃう。瞼を落として限界まで目を細くしてるけど、それ以外の顔の部分はどこも変えないまま、暗くなってるだけの廊下の先の方を見つめ続けた。

 

「わかんない」

 

 ドアの向こうから私の言葉に答えてくれるまでだいぶ時間がかかった気がする。でも、向こうの言葉は声が小さくて、最初の一瞬は聞き取れないとすらも思ったほど。ただ、私はその場で座り込んで同じ姿勢のままいるだけにしておく。

 

 数秒間だけ何も言わずに、上の唇の重さで下のを押しつぶす感じにしてたら、脇を締めた力を入れて、体を小さくしそうになって。それでほんの一瞬だけにしておく。ただ、口を少しだけ開けてそこから息を吸って唾液が擦れる音を聞く。続けて、顎を引きながら鼻をすすった。

 

 向こうからも私からも何も話せなくて、しばらくはただずっと静かにしてるだけの時間が続く。でも、私の方から口を開くことにした。

 

「一緒にいたのは、いつから」

 

 特に意識したわけじゃないのに、ほとんど抑揚も付けないただ並んだ文字だけを読んだみたいな話し方になってた。そこまで強い力を入れてるわけじゃないけど、下の唇が少しだけつぶれるのを感じる。それだけだったつもりなのに、いつの間にか目の両端の所にたくさんしわを作っちゃってて。

 

 それがもう全部出来上がった後に私自身もそうなってるのに気づいて、目元を一気に開きながらお尻を持ち上げて体を振り返らせた。一緒に息を強く吸い込むけど、でも、そのドアから離れた状態のまま私は両方の肘を持ち上げて肘を少しだけ曲げて立ったまま。

 

「わかんない、わかんないよ」

 

 2回発せられる言葉はどっちも始まりの所だけ音が高めになってる。しかも、それは1回目の時よりも2回目の時の方がそれの割合が大きくなってる。気づいたら、私の目は少しだけ床の方でずっと左右に移動しちゃってて。それのせいで、たまにしか瞬きも出来ない。帽子を一度強く髪の毛に押し込んで深くかぶるみたいにしたけど、でも、両手でそれをやってた数秒後に脱いで。上半身を立ち上がらせてから懐中電灯を拾って小さく「ごめん」ってだけ言う。

 

 片方の手を腰辺りで灯りを進む方向に向けて、もう片方の手で帽子のつばを曲げた親指とまっすぐに近い形の人差し指でつまむ。それを両方とも確認してから進みだそうとした。でもそうしようとした瞬間、後ろのドアが廊下中に響き渡るくらいの大きさの音と一緒に開かれてる。

 

 だけど、私がそれに反応して後ろに振り返るよりも先に、トゥルーディアがこっちの腰に抱き着いてて。私はまたさっきと同じ感じで両方の肘を持ち上げてた。でも、それも数秒間の間だけ。両方の目を強く瞑ったままにして両手を上下で重ねたまま自身の胸の辺りにくっつけて、ほんの少しだけ体を前のめりに。

 

「ごめん……ごめんね……」

 

 消えそうなくらいに小さい声で私に向けて話しかけて来てるトゥルーディアだけど、それは声を出すその瞬間だけは溜めてたのを一気に吐き出すみたいにちょっとだけ大きくなってる。でも、向こうの体は私の体の上をすべるだけで、それ以外ではずっと力強く抱きしめてるだけ。

 

 ただ、それに対してこっちは両方の腕を落っことしたまま唇の重ねる位置を探す感じで何度もそこを左右に滑らせ続ける。でも、それに対して周囲で反応してる物なんか何もなくて、ただ、硬い帽子のつばが私のお尻の辺りを強く押し込んで来てる。

 

 相手がいる方とは逆の方に顔を斜め下に向けて、息を鼻から吸いこむ。それと一緒に上瞼をわずかに落っことすみたいに。同じ体勢のままただただずっとしばらくの間時間だけが過ぎてた。

 

「いいんだよ、悪いのは私の方」

 

 最初の一言はいつもよりも明らかに早口で、私自身ですらも声を上手く聞き取れないほど。その後、続く言葉を出せるまでの間に何かをしてるわけでもないんだけど、口を閉じてその場にとどまることしか出来ない。顔を床の方に向けてるけど、こっちの片手に持ったままにしてる懐中電灯を握ったまま下に向けて、自身の体よりもちょっとだけ後ろの方に向けてるせいで、ほとんど見えないままになってた。

 

 続けて出た次の声はさっきの時のとほとんど変わらないくらいの声で、抑揚も出来るだけ付けないように全く伸ばさないようにしてる。その結果、今どこからも音が聞こえないし、視界の中に動いてる物なんか何もないし、ただ月の青と夜の闇が交じり合った光景だけが周囲に広がり続けてた。

 

 夜だってこともあって、私の周囲の空気は震えるほどじゃないけどだいぶ冷たくて、そうじゃないのはトゥルーディアが抱きしめてる下半身の後ろ側の辺りだけ。靴の下から床の冷たさすらも伝わってくるみたい。

 

 ずっと周囲の静かな空気の中にただいるだけだと思ってたけど、ふとした瞬間に後ろから音がして。そっちの方に私が振り返った数秒後に下を見たら、向こうも私から少し離れて自分の胸の辺りに両方の手を重ねたままそっちを見てて。もう一度来た道を確認する。

 

 そっちはトゥルーディアがさっきまで入ってた部屋のドアが開きっぱなしになってる。その中は灯りがなにも付いてないせいでテーブルやロッカーの四角い影が形だけ見えてるくらい。両手を降ろしたままにしてるこっちも膝立ちになったままにしてる向こうも一切動かないままそっちの方を見てるけどさっき聞こえたはずの音がまたすることはなくて。しばらく静止した後に左右に細かくブレさせながら灯りを正面の部屋の中へと向ける。少し体を前屈みにしてそっちを見ようとしたけど、でも、その瞬間またそっちの方から細かく床を叩く音がして。上の唇で下のを押し込む。

 

 さらに、一度まっすぐになってた背中をまた戻すみたいな動作をしながら首を体に少しだけ近づける。そこから足を細かくすり足みたいに動かしてそっちに近づいていく。そしたら、私の後ろ側に来るみたいになってたトゥルーディアがこっちの名前を一瞬だけ呼ぶ声が聞こえて。でも、そっちの方に振り返ることもなく、足音を立てないように進んでく。

 

 こっちの動きに反応するみたいに手に持ってる懐中電灯が照らしている箇所が左右に揺れちゃってて。それに対して私は息を殺すようにしたまままっすぐに進んでくのに、それが変わることはない。その瞬間、中でまた私の灯りがほんの一瞬だけだけど、その小さくて素早く動くそれを捉える。

 

「トゥルーディア!」

 

 振り返りながら大きな声を出した私に対して向こうは顔をあげるだけ。でも、それもほんの一瞬のこと。すぐに物事に気づくよりも先に飛び上がるみたいな勢いでほんの一瞬の声を出しながら上に上がったトゥルーディア。

 

 でも、相手の足音で細い弧を描くみたいにしながら元々トゥルーディアがいた場所を避けていくみたいに走っていくのを察知。私も光が向かう方向を一切気にしないままに走り出す。あっちやこっちを照らしてるのを数秒間だけ続けた後に、そっちの方を見ながらスイッチを入れ直して今度こそ相手の方に向ける。

 

 向こうが止まっては進んで、止まっては進んでを繰り返しているはずなのに、そのペースがすごく早いせいでその影くらいしかとらえられない。そうこうしている間に通路の曲がり角へと到着。それが来る私はとっさに直前に角に近い側の壁に向かって一気に加速して、そこを蹴飛ばす。その勢いのままに反対側の壁に移動。そこで足をばねみたいに折り曲げながら跳躍。体を空中で1回転させながら着地した。

 

 相手も不意打ちだったみたいで、避けようと進行方向の角度を変えてたけど間に合わず。私の右足に激突してた。それで体を倒してる所を拾い上げる。

 

「お待たせ、この子が犯人だったみたい」

 

 トゥルーディアの方にゆっくり歩いていきながら、懐中電灯で照らした白いウサギを私の胸で抱えながら顎を指でくすぐる。一方で、その子は私に対して何もしないできょろきょろするみたいに明後日の方向をずっと見たりしてるだけ。

 

 ウサギの方へ顔を傾けながら見てた私だけど、それも数秒間の間だけ。いい感じの距離にまで近づいた所で足を止めてトゥルーディアの方を見る。ただ、向こうはまっすぐに斜め下に寄せた両手を体の前で重ね合わせて、指同士を組み合わせてた。

 

 しばらく私の方を見てるわけでもなく、ただ廊下の端っこの方に視線を投げ落とすみたいにしてるだけで何もせずにいるだけ。唇も目も両端を落っことしたままいるけど、それらの内私の側から見て奥側は顔を俯かせているせいでほとんど見えないままだった。

 

 ウサギが今も鼻を動かして左右をきょろきょろしているだけにしてるのを感じながらいる私がトゥルーディアの方に向けてもう1回声をかけたら、それで気づいたみたいで目を大きくしながら両手の平側を私の方に向けながら立ち上がって。早口で何かを言いながら後ろに下がっていく。でも、その間も視線はずっと左右に泳いでた。

 

「すごかったね……」

 

 一度ため息を吐きながら顔を横に向けながらも視線をこっちに向けてるトゥルーディアは、頭から炎を出しながらも、今は帽子を被ったままにしてるせいで、そのわずかな隙間からあふれ出るのしかない。それに気づいてから四肢の所の方も確認すると、そっちを隠してるものは何もないのもあって、炎が風に流されるみたいに細く出て行っててた。

 

 うさぎも何も鳴かないでただそこにいるだけにしてるのもあって、私は口を一度開け直してから声になってない声を出す。でも、それで向こうが何か反応することもない。体を横に伸ばしながら傾けながらドアの方を見て。それからトゥルーディアの方を避けてそっちに歩き出す。

 

 部屋に入るなり、ドア入り口が取れかかってるケージを見つけて、ため息を吐きながらその中にウサギを入れてあげる。その際、私の手にしてた懐中電灯を一旦床の上に置いてたのもあって、相手の目に私の様子が反射して映ってた。でも、それは夜の青い光に染まってる帽子だけ。つばのせいでより深い影になってて顔の様子は全く見えない。

 

 一度瞬きしてから目元を細くしながら手の平と指を添えるだけにして、ウサギが今も顔のところ以外は大人しくしている様子を見つめる。一度顔を左右に振りながら立ち上がった。

 

「行こっか。そろそろ仕事に戻らないと」

 

 すぐそばにいるトゥルーディアの方を見ないようにしながら灯りを付けて足を動かしてく。でも、その間もただ眉を両方とも落っことしたままいて。周囲に転がってるものだったりを漁って行って、小さな声で「えーっと」と言いながら特に意味があるのか自分でもわからないまま、手を左右に動かして漁り続ける。さらに、それだけでなく視線も左右に動かし続けながら小さな口から息を吐いてた。

 

 でも、しばらくしたら、さっき私が閉じたはずのドアが開く高い音がして、そっちの方を振り向くと、ドアを開けながらそっちその中に両方の手を差し伸べて、トゥルーディアが黒色をしてるケージの中からウサギを取り出してる。

 

 それに対してほんのちょっとだけ声を出しちゃう私だけど、ただ、口をさっきとそのままにしたままそっちの方を見てることしか出来なかった。

 

「うさぎは、淋しいと死んじゃうから」

 

 眉の形はそのままにしてそこを目に近づけながら、口の先端を両方とも持ち上げた状態で鼻からゆっくりと息を出してるトゥルーディアの様子を見つめたまま。私は小さく自分の手を前に出してる。でも、それもその子の様子を見てる間に勝手に落っこちていった。

 

 ウサギを出してるその姿へと視線を落っことしているままなのは数秒の間だけ。自分の帽子を外すと、それと一緒に炎が周囲に溢れてその量が多くなってる。そっちへと視線を向けてる私のことを向こうは一切気にせず、そのまま腕の中で寝転がっているウサギに自身の帽子を被せてる。

 

 こっちから見ると、トゥルーディアが付けてるベストの一部は見えてるけど、その多くが腕やウサギの様子で隠れちゃってて。特に胸元に付いてるなんかの文字が書いてある箇所はこっちからは完全に見えなくなってた。

 

 ただ、私はそっちの方を見てるだけにしてたのに気づいたらトゥルーディアがこっちを見ながら一度頭を下げながらお願いしてきてて。でも、私は自分の口を潰しながら一度瞬きして目線を斜め横へと流すみたいにしてる。でも、それもほんの一瞬だけで。一度だけおでこを撫でるみたいな動きと一緒に髪を撫でて。それから顔を起こし、頬を無理やり膨らませながら一度うなずく。続けて両方の腕を腰の上に乗っけて返事をした。

 

 向こうがゆっくりと文字を出しながら言うお礼に対して、私も少し早口目に「行こう」って言いながら体を翻す。少し早歩き目に進む足音を廊下に響かせながら数歩進んでる私に対して、こっちが振り返って声をかけるまで、トゥルーディアはウサギを眺めながらしばらく部屋の中で浮かんでた。

 




読了ありがとうございました。
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