スタンドアップ   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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第17話「太陽が欲しい」

 何も言わずに歩いている間、私は視線を下の方に向けたまま唇を紡いでいることもあって、視界の中に見えてるのはわずかな地面の範囲と自分の体を覆ってる硬い作業着の様子だけ。それを見たままただいつも通りの道を歩く。でも、周囲は今も太陽が出たばっかりなせいもあって、地面の石畳はまだ青と黒の中でもかなり前者が多めに混じっている。

 

 それに、明け方なせいで市街地から少し離れた場所になってる周囲には誰も人がいないみたいで、私の足音以外に聞こえてくる音は何もない。

 

 でも、ハッとした瞬間に顔を勢いよく上げて首を上に持ち上げながら口から息を吸って。その音を自分でも聞くけど、すぐにそれを強く紡ぎながらさっきほどじゃないけど顔を下の方へと向ける。そのまま鼻の下を伸ばすみたいにしながら上の唇を下のに押し込んでて。両方の瞼を垂らしてた。

 

 それからはなるたけ足を止めないことを強く意識。例え自分でも進んでるのかわからないくらいのペースであっても、足を動かすのだけは辞めない。そんな中で、視線だけだけど目線を横に向けて、そっちにあるお店のガラス張りにトゥルーディアの様子が反射して見えるけど、でも、そこには朝焼けも一緒に交じり合っているみたいで、その体の色は全く見えなかった。その上、強く光を反射している所と顔の高さがほとんど同等に。

 

 そっちの方へとわずかに顔を持ち上げるみたいにしてるけど、その間足を止めてるのに気づいて、両方の手を交互に前後へと動かしながら早歩きで進む。出来るだけ体をまっすぐにしようと意識している物の、勝手に前のめりになってしまいそうだった。

 

 そしたらいつの間にかだんだんと遠くから朝練をしてる女子たちが同じリズムの掛け声を出しながらこっちに近づいてくるのが聞こえてくる。私がまた足を止めた状態でそっちの方を見てるけど、それに対してそっちでは何も変わらないペースで声を出しながらずっと前を向いて同じ足音を立ててるだけ。みんな私の横を通り過ぎていくだけだった。

 

 気づけば、トゥルーディアが私の後ろの辺りに来てるみたいで、その体から放ってるほんのわずかな光を私の足同士の間からほんのわずかに入れてくるみたいにしてて。気づいた途端にすぐ体を回して両方の手を限界まで落っことしたままそこでわずかにそれを前後に動かし続ける。ずっとそのままいるみたいにするつもりだったのに、風が急に吹いたのに気づいて。その瞬間にトゥルーディアの名前を少し大きめの声で読んだ。

 

 でも、私が振り返ったその時にはもう相手は体を前のめりにしながら前に向けて飛んで行ってて。それに気づいた間、私はほんの少しだけ息を吸いながら、ただ両方の両腕を伸ばすみたいにするだけにしてたのに気づいて。すぐに走ってその姿を追いかけるけど、そこに力は出来るだけ入れないでいた。

 

「トゥルーディア」

 

 それでも十分トゥルーディアの後ろにすぐ追いついた。少し高めの所を飛んでるその様子へと首を向けるみたいにしながら足を動かし続ける。でも、その間向こうは言葉になってるのか全然わからない声をこっちに向けて出しながらいるだけ。そのまままっすぐにただ飛んでるだけにしてる。

 

「トゥルーディア」

 

 さっきよりも語尾に近い辺りを大きくする感じにしてたけど、それなのに相手はただ、また何かわからない声を出しながら首を横に振るだけ。一度口を開閉してから視線を斜め下に反らす。それに対して、周囲では何も音がしない。でも、それでも私の方を見ずに飛んで行ってる相手の様子は全然変わらない。

 

 ただ依然として私が見上げてる状況は変わっていないのに、それでもトゥルーディアの顔が全然見えないままなのも同様。相手の体の前側は自身の体が影になっているせいで、その周囲に身に着けてる銀色の鎧もほとんど光を私の方へ届けない。

 

 唯一あるとすれば、ほんのわずかだけ漏れ出るみたいになってるピンク色の炎が火の粉を周囲に散らすみたいにしてて、それが私の方にも来てるけど、でも体を前のめりにしてもそれがこっちに熱さを訴えてくることはない。

 

 向こうの跳んでいくスピードに何とか間に合わせようと早歩き気味に足を動かしてるけど、その音はどこに行くこともなく、反響することなんかもない。静かな街の中でただその音だけが聞こえてた。

 

 でも、そうじゃなくなったのは、私たちの少し前の方からゆっくりとだけど、でも確かにこっちの足よりも速く進んでるバスの音が聞こえてきた時で、それが角を曲がることでこっちにもその全貌が確認出来た。ただまっすぐに進んでくるそれが止まってドアが開いた途端。トゥルーディアが急に飛ぶスピードを上げて。

 

 気づくのが一瞬遅れてスタートが出遅れた私は両手を小さく振りながら走る。私の方に姿を見せずにその中の影に入って行ってて。すぐに私も大きな声で何度も「乗ります」って言いながらその中にあった小さな階段で大きな音を立てながら登る。息を何度も繰り返しながら左右を見渡すみたいな動きをして。まだ数人しか乗ってない席の中でも一番端っこの場所に座ってるトゥルーディアの様子を確認。

 

 数秒間そっちの方だけを見てたら、いつの間にか他のお客さんや御者が私のことをジロジロ見て来てるのに気づいて。それのせいでただ1人立ってる私は両方の手を落としながら私の近くの席には誰も座ってない様子だけを見る。それからもう一度確認したら、こっちを見て来てる人たちは、顔は別の方向を見てるのに視線だけを投げかけてくるみたいにしてた。

 

 ほんの一瞬だけ息を吸いつつ体を縮めながら細かく足を動かして大型馬車の先頭の方に移動。それから早口目の小さい声で運転手にトゥルーディアと私の分を払うって言ってから切符を受け取る。

 

 振り返りながら息を吐き、下を向きながら歩く。でも、それもすぐに顔を元に戻したら、さっきと同じ体勢でいるトゥルーディアの所に行こうとして。途中で馬車が動き出したところで態勢を大きく前のめりに。一度手すりでバランスを取り直してからもう一度進みなおした。

 

 トゥルーディアは今も両方の手を膝の間に入れるみたいにしたまま、頭と肩を羽目殺しになってる窓の方に押し付けてて。風景を見てるのか見てないのか、今も視線を私が座ってる方とは真逆の方に向けたまま固定してるだけ。馬車が動き出してから私は前の座席に片方の肘を乗っけてそこから伸ばした拳におでこを乗せたままにしてた。

 

 周囲では私たちの他にお客さんがほとんどいないせいもあり、周囲で聞こえてくるのは乗り物が揺れていたり馬が鳴くのがしてる音しか聞こえなくて。ずっとただ私は体を揺らしてるだけにしてる。そんな中で、たまに聞こえてくるトゥルーディアが鼻をすする音。その時に顔を持ち上げてそっちの方を見たら、バスの窓に反射する形で相手の顔が見えてるのに気づく。目尻を垂らしたまま唇を紡いでその両端にえくぼを作っちゃってる様子がわかる。

 

 でも、私ももう1回さっきと同じ体勢に戻って。一度ため息を付いちゃう。そしたら、またもう一度ハッとしながら相手の方を見て。そっちで瞼を小さく震わせながら顔の向きを正面に近い角度に変えてた。それを見てるだけで、自然と椅子の上に突いてた肘を落っことして。それから体を少しだけ前のめりにしてた。

 

 その間も、馬車は前に進み続けてて、窓の向こうの景色は流れ続けてるし、停留所の前に止まっては鞭の音がして。それでお客さんが乗り込んできたり降りたりをしてる。そして、私たちがいる一番奥の長い椅子の所にもスペースを開けながらも普通に他のお客さんも座ってた。

 

 それだけでなく、楽しそうに話してる私よりも少し幼いくらいの年齢の子たちの笑い声がしたり、それ以外の所でも、お客さん同士が挨拶したりしてて。その間、馬車が動いてるせいもあって、私たちはただ左右に揺れてることしかできなくて。気づいたら、私の方から近い方の腕でトゥルーディアの肩を抱き、もう片方の手で相手の近い側の手を握った。

 

 私が顔を下へと向けたままにしてる私だけど、ほんの少しだけ手に力が入ったり抜けたりするみたいにしてるそれの少し湿った感覚だけを味わったままにしてる。視界の中にそれが見えてるのか見えてないのかわからないくらいの位置で目線を横に反らして、前の椅子の様子だけを見るみたいにしてた。

 

 

 

 

 

「あの、終点なんですけど」

 

 ずっと同じ体勢のまま、トゥルーディアが伝えてくるほんの少しだけ温かい体温だけを感じるみたいにしてたら、ほんの少しだけ息を吸って顔を上げて、声を出してくる御者の顔を見る。眉間に少しだけだけど確かにしわを作ってる様子を見て、こっちはちょっとだけ笑うみたいな声を出しながら体を立ちあがらせて、目線を左右に泳がせる。ただ、そうしようとした瞬間、横で指同士を引っかけさせながらトゥルーディアが私のことを見上げながら小さく口を開けてて、開いてる方の手を自分の胸の所に持ってきてった。

 

 その様子と目線が合ってる時間が続く。一回だけ口を紡ぎ直すみたいにしてから顔を上げて。でも、手は繋いだままにするどころか、こっちの方からそれを強く締め付ける感じにしてから、中腰みたいな体勢にはなるけど、それでも運転手の方を見てた。

 

「お金は払います。もう一周してくれませんか」

 

 なんだか煮え切らないみたいな声で返事をした御者が席の方に戻っていく間、気づけば停留所から次から次へと他のお客さんが乗り込んで来てて、それぞれに全く別のことをしてるみたい。

 

 私が手だけを繋いだまま体を座席の上へと勢いよく落っことしながら頭を背もたれの先端に乗せる。そのまま勢いよく息を上に向かって吐き出して。ただそっちの方を見てるだけにしたかったけど、足をほんの少しだけ擦るみたいに動かしてた。

 

「ごめんなさい……」

 

 まだ顔を下に向けたままいる相手の、エンジンの音に消えそうなわずかな声を聞いて。でも、私は大きく振動してるその音と揺れだけを感じながらそこに座ってること以外には何もしない。繋いである手もそのまま。

 

「いいって」

 

 そう言いながらもう1回肩を抱いた私は、そっち側の手で相手のそこを撫でてあげる。そして、開いてる私に近い側に自分の頭を預けるみたいにしてみた。その体勢は乗り物が動き出した後も変わらなくて、2人の体が動きに合わせて左右に揺れているくらい。

 

 トゥルーディアはさっきしてたのと同じ感じで顔を下に向けたまま、両方の腕同士の間をだいぶ狭くしてる。そんな状況でほんの少しだけ唇に力を入れて、真ん中あたりをへっこませるみたいにしてた。

 

 そのまままた馬車が一周して、もう一度終点に来た時、「降りれそう」って私の方からエンジンの音に消えそうな声で聞いたら、向こうも数秒間時間を置いてから「うん」って答えてくれた。

 




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