スタンドアップ   作:コンテナ店子@コミケ出ます

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次回の日曜日の更新はYCSJ行ってくるので休みになる可能性大です。
申し訳ございません。


第4話「ありふれた病室」

 息を口から吸いこみながら、病院の中の濃い茶色をした木材で出来た床の様子を見る。でも、この廊下の中でランプの灯りが付いてるのは私がいる背の低いソファのちょっと手前側にあるやつと、もっと奥の方にある階段の所に付いてるやつだけ。その間の所にあるのはただ影で薄暗くなっている様子だけ。

 

 でも、私がずっと下を向いたままにしてるせいで、視界の中で見えてるのはその後者の部分だけで、前者の所はとても入ってこれない。一方で、一応照らされてる中にはギリギリ入ってこれてる私のすぐ前の床の所は、ワックスが塗ってあるみたいでこっちの様子を反射して映して来てる。

 

 でも、ただ長く背中の方に伸びてる私の後ろ髪は全部体の向こう側に行ってるせいで全然見えない。その一方で、前髪が私の前の方に大きく垂れて来てるせいで、目元にまでそれが伸びたままな上に、色も周囲の影の色に隠れちゃってた。

 

 ずっと両方の手を組み合わせたまま両側の手首を肘の上に乗っけたまま猫背になってた私だけど、ふとした瞬間、前の方から音がしたのと一緒に、首を使って顔を一気に上げる。でも、そっちの方にあるのはさっきと同じ光景。目隠しの塗装がされてる窓の向こうから、薄暗い白い灯りがほんの少しだけ入って来てるかもしれないように見える引き戸だけ。そこの縦に細い取っ手がほんの少しだけ揺れてるのが見えるくらいだった。

 

 息を吸ったのと一緒に持ち上げた顔を前に出したままいたけど、すぐにまた視線を元に戻して自分の膝と両手を見つめる。しばらくそのままでいたら、いつの間にか歩いて来た大人の人が階段の所から現れて、私はすっと立ち上がるけど、自分胸の前辺りで両方の手の指だけを重ねたままいた。

 

 でも、それに対してその人は何もしないで、現れた時と同じペースのままこっちのすぐ横を通り過ぎる。ちょっとだけ目を開くみたいに開けながら反応して、すぐに振り返ったら、病室のドアの前にいて、そこでノックしてて。すぐに私もそっちに行くけど、やっと着いた時にはもうドアが閉まるのと一緒に、廊下に何度も響くくらいのカギが閉まる音がする。

 

 また手を少しだけ前に出したまま1人だけ私が取り残されちゃって。持ち上がってた指が落っこちるのと一緒に顎も自分の体に近づける。歯を強く噛みしめながら喉の内側同士を擦り付ける感じにすると、一緒に口の中から唾液の音がして。目や両手も同じように力を強く入れた。それもほんの数秒間だけにしておいて、咄嗟くらいの勢いで前に出て。両方の腕を体の前に出すくらいの動きをするけど、それも1回ずつくらいで終えたらそのままに引き戸に体を体当たりさせる。それで起きたそこが激しく揺れる振動を肩でのよりも脳での方が強く感じ取って。それのせいで体を片方の腕を突きながら床に尻もちを付く。

 

 でも、頭のもドアのも振動が終わるよりも早く、すぐに体を勢いよく立ち上がらせると、両手で付けた勢いと一緒にもう1回ドアに体当たり。でも、ドアをもう一度見てもその動きはさっきと同じ。そこが細かく前後に揺れる音だけ。でも、私の耳に聞こえてくるのはいつの間にかそれだけになってた。

 

 ただ、私の体の動きを止めてるのはほんの数秒間だけに。その間は周囲の誰もいない廊下の様子だけを見ながら、もう1回立ち上がる勢いのまま体当たりをする。でも、ドアの方はただ震えるだけ。それと枠のほんのちょっとの隙間からこぼれてる光が見えているのに気づくのも少しだけにしてたら、中から大きな足音が聞こえだしたのでハッと意識を取り戻す感じで目を開く。

 

 また体当たりをしようとした足の勢いを一度踏みとどまらせる感じで数歩小刻みに動かして。その時、ようやく私の体の音が廊下の中で響き渡ってるのに気づく。それから、そこで何度も息を整える感じで吸ったり吐いたりを繰り返す。

 

 続けて、ドアが勢いよく開いた瞬間、その横側を掴んで肩側から勢いよく前に出る感じで進んだと一緒に、そっちにいたたぶん人の体だと思う物に全身がぶつかった。

 

「お母さん!」

 

 何度も、何度もお母さんのことを呼ぶ。出来るだけ体を、邪魔してくるおばさんを何度も両手で押し込みながら、体を限界まで前のめりにしながらそこで何度もねじり続ける。ただ、その間廊下と病室の境目の所で、目を閉じながら歯を食いしばりながらいたせいでしばらく見えてなかった。

 

 私を抱えるみたいにしてる人の腕を振りほどけるまでずっとそうしてるつもりだったけど、向こうの方からいきなり力が抜ける感じで私を放してきて。そのせいでこっちは両方の手をほんのちょっとだけ前に出すみたいな体勢のまま静止。中腰のまま、周囲が静かになった状態を味わう。そこで数回息を吸ったり吐いたりしながら、廊下とは真逆の色をしてるほぼほぼ白一色の病室の中でも私の目の前になるほんの一部だけを見つめる。でも、それはほんの一瞬だけにしておいて。すぐに顔を上げて正面の方を見た。

 

「お母さん……」

 

 下の唇を上に上げる感じにしながらさっきまであったパーテーションがおばさんの手でどけられて。それで車輪が回り続ける音だけを聞いてたはずなのに、いつの間にか口から力が抜けた状態で、こぼすように声を出す。

 

 最初は外の斜め上の方から入り込んでくる太陽の光を浴びながら、両方の手を自分の膝の上で重ねるみたいに置いてたお母さんだけど、でも、髪の毛がなくなった頭を下に向けると一緒に顔に力強く両方の手を押し付けて。そのままでも、勢いよく息を吸い込んでる音と細かな音ですすり泣いてるのが、まだ病室の入り口辺りにいる私にも聞こえて来てた。

 

 でも、それに対してこっちはほんのわずかな声を出すくらいしかできなくて。もう1回お母さんのことを呼ぶけど、それもほんの一瞬で消えちゃいそうな、すごく小さな声だった。

 

「プリメラ、ごめんね……」

 

 何とかひねり出したみたいな、私の名前を呼んだ時と、謝る次の言葉の間にすごく大きな間が出来てた。そのせいで、私はただ片方の手だけを宙に浮かせるくらいの感じで前に出してるだけになってる。その中で出来てることと言ったら、口を小さく開けたり閉じたりしながら、少しずつ指を落っことしてる動きくらい。

 

 でも、その間もお母さんはずっと両手に顔を伏せながら小刻みに震えてるだけで。それ以外の動きなんか全然ない。ベッドの上に座ってるみたいな体勢で伸ばしてる足は毛布の中に隠れてるけど、でもそれが薄いせいで細い足が確かに見えてるし、それに、真っ白な病衣の袖が重力に従ってずり落ちてるせいで、骨の形がくっきりと見えてるみたい。

 

 自分の唇が震えるのを無理やり抑えるために、そこに力を入れて、顔をお母さんがいない方の斜め下に向けて。目を強く瞑りながらそこに目いっぱいしわを作る。小さく震えながらいるのに対して、持ち上がってたはずの手もいつの間にか落っこちる。

 

 私の後ろのドアと向こう側のほんの少しだけの隙間をおばさんだったりお見舞いに来てた人やナースの人が順番に抜けて行く。それから数秒後、辺りからは人が1人もいなくなって。それからしばらくの間は私とお母さんだけがこの場所に残される。今まで気づかなかったけど、お母さんのベッドの方から聞こえてくる機械が等間隔で音を立てているのがこっちにも聞こえて。それ以外には外に植わってる木が風で揺れるのくらい。だから、周囲で聞こえてくる音がその2つだけになる。

 

 ただ、私の方から先にそれを打ち破って、お母さんのすぐそばにまで行く。でも、駆け足で進んだそれが止まったのはベッドの直前の所。マットレスの上に両方の手を重ねながらおいて、その上に頭を重ねたら、大声を押し付ける。

 

 喉が耐えきれなくなったらまた息を取り戻してからまた大きな声を出して。それはお母さんが私の頭を撫でてくれて。それでも全然収まることなんかなかった。

 

 

 

 その次の日、お母さんは息を引き取った。

 




読了ありがとうございました。
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