すみません。
お母さんが入った棺を6人の神父の人が担いで運んでる斜め後ろくらいの所で、自分の服を掴みながら顔を下に向けて歩く。脇同士を強く締めながらいるけど、でも、目がすごく熱くて前がほとんど見えない状態なのはほとんど変わらなくて。たまに限界まで顔にしわを作っちゃう。
でも、その間の辺りから聞こえてくる大きな声、お母さんの名前を呼んでたり何かを早口目に叫んでる声だったり。細い布で作ってあるベルトパーテーションの向こうにいる人たちは私の前にいる人たちの様子を見てたり、顔を下に向けてたりしてる。
でも、そっちにいる人たち全体でベルトを作ってるみたいな感じ立ち止まってて、私たちの方に近づいてくることなんてない。その結果として通路のほぼほぼ真ん中を歩く私たち一行と向こうの人たちの間にはけっこう大きめな隙間が出来上がってた。
目線だけを少し上の方へと持ち上げるみたいにしたら、そっちでは真っ黒な服を着て棺を担いでる人たちの後姿しか見えなくて。そっちを見てるだけで唇同士を強く紡ぎながらまた目線を斜め下に向けるけど、そしたらそっちはそっちでたくさんの人たちが並んでる様子の足元がまた視界に入ってきた。その色とりどりの靴を見てるだけで一度瞬きしながら視線を元に戻した。
神父の人が何か全然わからない言葉をずっと言ってるのか歌を歌ってるのかわからない状態が続いてるのを聞きながら、もう四角く掘ってある穴の中に入った棺の様子を見つめる。隣にいるおばさんの方から何も聞こえてこない。ただ、ずっと神父の人がお墓の前でずっと本みたいなのを眺めながらずっとぶつぶつ何かを言ってるのだけを聞いてた。
そんな中で私は自分の黒いワンピースを掴みながら少しだけ背中を猫背にしてる。さらに、瞼も落っことしながら下唇に上のを押し付け続けてた。でも、それでも私の背中の方にいる誰か全然知らない人たちが並んでる気配は全然消えなくて。ずっと背中でそれを感じ取りながらいた。
ただ、その一方で私が参列した人の中の先頭中央にいるせいもあって、目の前に並んでるのは神父の人を入れなきゃ背が低くて私の膝に届くか届かないかくらいの墓石が並んでるだけ。それはどれも遠目にはみんな同じ形をしてて。それが縦横どっちも一列にずっと並んでる。
私が顔を少し伏せがちにしてるせいもあって、自分の視界の中で見えてるのは、それ以外には緑色をしてる芝生が朝露を残したままになってるせいで、それが太陽の光を反射してるのくらい。私の方には横の方で植わってる大きな木があるせいで、私とそっちの間に大きな影がある。視界の中にあるので照らされてないのは神父の人の影で一部が暗くなってる棺くらい。それなのに、私は体が全部影の中になってた。
神父の人の何かを言ってるのが終わった辺りで、人がみんな何かを話ながら次から次へと後ろへと向かって歩いて行ってて、どんどん気配だけで人がいなくなってるのに気づくけど、それに対して私は何もせずにずっと同じ姿勢で目元と口元だけに力を入れてる。
ただ、周囲がしばらく足音だったり話声だったりに包まれているのもそれが数分間くらいだけで。気づけば植物が風で揺れる音だけに支配され始めた。気づいた時には私は鼻で1回息を一気に強く吸い込むみたいにする。ただ、それは勢いよく息を吸ったけど、吐いてく時の最初の数秒間は止めたままにしてて。でも、苦しくなるよりも先に少しずつ出していく。
それに対して、横にいるおばさんは真正面に向けてた顔を斜め下へと傾けていくようにしながらため息を吐く。相手の様子を見ているだけで、私はいつの間にかそっちへと斜め上に向けるみたいにしてた顔をまっすぐに戻して、力なく上側の眉を落っことす感じに。そのままちょっとだけ顔の前を前のめりにする感じで傾けた。
「終わった終わった」
おばさんは一度体を伸ばすとゆっくりと息を吐く音と同じタイミングで声を出して、両方ともの腕を円を描くような動きと一緒に落っことしていく。それの後には肩を両方とも落っことしているポーズのまま頭を斜めに傾けていた。
それから、数秒間はじっとそのままいて、私も周囲の風の音だけを感じているかのようにしていた。目の前のすでに穴が埋まっちゃったお母さんの棺があった場所だけが茶色くくっきりのこってて。そこがほんの少しだけでこぼこしてるのを、少し離れたところから見つめ続ける。
急におばさんの方から私の方へと、ほんの少しだけ頭の角度をこっちに近づけるみたいにしながらため息交じりの声を出してきた。
「おばさん帰るけど……」
そう言うと一緒に、その人は左右に視線を向けてから振り返って。すぐに後ろに向けて歩いていくと、芝生を踏みしめる音が等間隔でこっちにまで聞こえて来てた。でも、それに対して私はただ顔に力を入れないまま、ずっとお母さんのお墓の所だけを見つめ続ける。穴だった場所だけが赤が混じったような茶色をしてるのがわかるけど、でも、その横の芝生の向こう側に土がいる場所ですらも、全く同じ色をしていた。
ずっと私はただまっすぐに視線を下に向けながら上の瞼を落っことすことでそこを細くしているだけ。体と平行にしてるみたいな感じにすることで落っことしたままにしてる腕もずっと重力のままに。ほんの少しだけ鼻から息が通ってるのを感じてた。
いつの間にか、おばさんの足音も聞こえなくなって。周囲で聞こえているのは風で芝生が揺れる物や枯れ葉が風で転がって擦れるものだけ。周囲以外では遠くのどこかから馬車が走る馬の足音と車輪が転がる音くらい。
そんな中で、私はお母さんと同じ色をしてる長い後ろ髪が風に揺れてほんのちょっとだけ持ち上がるのを感じる。でも、私はそれに対しても何もしないでただそこで立っているだけ。両手は握ってはいるけど、そこに力入れないで。親指とそれ以外の指を触れさせてるだけにしてた。
おばさんが用意してくれた馬車が揺れてる中で一番大きく聞こえてくる音は、やっぱりそれが進むための車輪の音だったり馬の足音だけど、それよりも外では人が話してる最近話題のマカロンだったりクレープの話で、それ以外にも手を叩いて笑いながら歩いてる人たちがいたりするくらい。
カフェの横を通ってるときは明るい太陽の日差しを避けるために「暑いね」とか言いながら手で体を扇ぎつつ体を椅子へと倒してる女性くらい。その人たちも甘そうな名前もわからない飲み物を片手に正面の人と話してる。でも、それを私がじっと視線をぶつけるように見てられるのも数秒間の間だけで。すぐにその光景は後ろへと流れて行った。
それに対して私は、馬車の羽目殺しになった窓に頭を斜めに傾ける感じで押し付けてるだけにして、視線を斜め下へと落っことしながら目の前の流されて行く光景を見つめる。両方の手はただ甲側を下にする感じで椅子の上に落っことしてる。肩も窓がある方のをそっちへと押し付けていた。
そっちには私の姿が反射して映っている物の、そのほとんどが街の色に染まりきってて、ほんの少しだけ輪郭が見えているようにも感じるくらい。それは馬車が道を曲がることで光が入る角度が変わっても一切変わらない。
私の対角線上、斜め前にいるおばさんは一度鼻からため息を吐く。その音でこっちの視線もそっちに引っ張られるみたいになって。目だけで相手を見るたら、相手が頬を潰すような頬杖を突きながら外を見つめていた様子から一度体を前にすると、ポシェットの中から道具を取り出して化粧を始めていた。
しかし、それをこっちが見つめているのは数秒間だけにして。目を細くしているまま、その中身だけをまた窓の外に映し、その音だけが嫌でも馬車の音の間から聞こえ続けてた。
おばさんと別れて、ただ足だけを等間隔のペースで、ピンク色の外壁とポップな文字で書いてる看板が付いてるモーテルの階段を登っていく。その間も、両方の腕は重力に従わせてるみたいに落っことしたままにしておいた。
視線は下を向いてるって程じゃないけど、顎を自分の胸に近づけるみたいにしてる。両方の唇をくっつけてるけど、そこに力を入れてるわけでもなくて。階段を登り終えるまではずっと同じ間隔で鉄骨の階段が立てる大きな音が遠くにまで届きそうなほどなのを味わう。
足場の錆の赤茶色が水で垂れ下がってるみたいなものや、モーテルの壁にも黒っぽい薄汚れで同じようになっている姿が視界の中に入りながらも、それへと目線を向けることもなく、ただ自分1人の部屋へと鍵を入れて入る。
それから、ベッドへと勢いよく飛び込むと、両方の腕を軽く曲げながら前の方へと出す体勢に。さらに顔を横に向けて、この部屋の唯一の光源になってる、目隠しの加工がしてある窓の方を虚ろな目でじっと眺め続けてた。
読了ありがとうございました。