なので、本作は途中で打ち切られることはないと思います
私が家の鍵を探してる間、トゥルーディアは私の斜め後ろ辺りを浮かびながらモーテルの様子を見てるみたい。でも、そうやって周囲を見てられるのは数秒間だけ。鍵を見つけられた数秒後に顔を上げてもう一度そっちの方を見たら、口も目も小さく開けながらいる。
でも、近所の子供がはしゃぎながら走ってきた時は、その数秒間だけ私が半歩前に出てたけど、そっちは小さく驚く声を出しながら後ろに下がってってた。一緒に一瞬だけ胸元で開いた手を元に戻しながら一度ため息を吐いて、こっちのすぐ後ろに戻ってくる。その頃にはこっちの家の鍵も開いてた。
一度改めてトゥルーディアの方を見たら、屋根や柱があるせいでだいぶ薄暗くテラスの中もその子の周囲だけが薄い炎の光に照らされてるみたいで、じっと私の方を見つめて来てた。ただ、私は薄暗いこの場所の向こう、でこぼこしてる壁や柱、塗装が剥げ続けてる手すりの向こう側に広がってる街の空の青さを見つめてるだけ。
数秒間そうしてる後に小さく返事をするみたいにごめんって言ってから、寝起きのままになってたベッドのことを見た瞬間に思い出しながら部屋の中に入ってく。でも、電気をつける以外には何も特別なことはしないで、そのままベッドメイクに移った。
上に置きっぱなしになってた本だったり化粧用品を近くにあった棚の上にとりあえず置きながら「その辺座ってて」って言ってる私に対して、トゥルーディアはさっき話してた声よりも少し高めな声を出してて、それに続けて小さな声で「お邪魔します……」と言いながら中に入って来てた。
髪の毛を掻きながらあらかた整えたベッドの様子を確認。その後、玄関の少し横の方で立ってるだけのその子の様子を見たら、向こうは軽く笑いながら色んなことを言ってた。
「そっちのベッド使って」
言葉を言い終わると、驚くみたいな声と表情をしてるトゥルーディアのすぐ横の所に取ってきたブランケットを敷くと、そのまま私は床の上に寝転がってそれを自分の体に巻き付けた。でも、こっちのすぐそばで今もその子が浮かんでる気配が消えなくて。寝返りして振り返ったら、その姿は今も私をじっと見降ろしながらほんのちょっとだけの声を出すだけにしてるのに気づく。
一度上半身だけを両方の腕を使って持ち上げてから、上瞼をわずかに下ろして目の範囲を狭めつつ見つめた。
「いいから」
それだけ言い残すと、私は元の体勢に戻る。そして、それと一緒に自身の体にブランケットをかけ直す。そしたら、トゥルーディアに対して背中を向けることになって。でも、しばらく目を開けたまま、ほんのちょっとだけ外の光がこぼれている家の窓を見つめ続ける。それに対して何もせずにただただ私はそこにいることしか出来ない。
外ではまだ誰かが歩いてる音だったり話してる音だったり篭った感じで聞こえてるままだった。
「起きた?」
頭をほんの少しだけ傾けるみたいにしながらこっちの方を見て来てるトゥルーディアは、両方の手を床の上に突いたまま四つん這いの体勢で私のことを見下ろしてる。そんな様子に対して私は重い瞼を無理やり開けながら見てるみたいにして。一度ため息をつきながら背中の痛い所を何度も押したりしつつ体を起こす。
起きてからも肘は折り曲げたまま手のひらをおでこに付けて、目線を斜め下に落っことしながら唇を強く締め付ける感じに。その頃、外で誰か人が歩いてる音が聞こえた辺りで下半身も立ち上がらせたら、水道から水を一杯だけ飲む。それから使ったブランケットを畳んでるけど、その間ずっと私はトゥルーディアに対して背中を向けたままになってた。でも、そこから振り返って化粧道具を取りに行くときに見えた相手の様子は、同じ四つん這いの様子のままこっちを見てた。
「これから私仕事だから」
特に抑揚をつけることもしないで、ただ化粧を始めつつ棚に置いた鏡を見ながら話してる私に対して、トゥルーディアは何かほんのちょっとの声を出すだけにしてるみたいで。でも、その子は鏡の中に写ってない。今これの中にいるのは私だけ。でも、それでもその子が出してる声だけは私の方にも届いてた。
「次のトーナメントまでちょっとしかないよ?」
胡坐を掻いたまま座ってたベッドの上から飛び降りて荷物の中身を確認。台所から先日作っておいたお弁当を取って歩く。すぐに私の様子を顔の向きで追いかけて来てるトゥルーディアの後を通り過ぎていく。その間、こっちはほんの少しだけ体を前のめりにしながら歩いてたせいもあって、気づいたらドアに近づきすぎてるみたいな感じになっちゃってた。
「その日、私休出入ってる」
しばらく黙ったままになってる相手の様子に1回振り返って、出来るだけ頬を持ち上げて口を開ける範囲を広げながら目も少しだけ細くするのを意識する。そして、声もなるたけゆっくり話すのを意識する。
見上げてくるトゥルーディアに対して、こっちは家のドアを開けたままにしてる。でも、向こうの方は開いてる範囲がほとんどないせいで向こう側のテラスの見えている範囲は影になっている場所だけだった。
でも、外に出た瞬間、太陽の光がこっちにまで届くくらい眩しいのが来て、それに目を瞑りそうになっちゃう。手で目元に傘を作るようにしている後に、数秒間だけ鼻から息を吐きながら荷物を横に背負いながら歩き出して。モーテルの建物に私が鉄製の階段を降りていく音が響いて行くのを聞きながら進んでる間も、人とすれ違ったりはするけど、その間も互いに外側に寄るだけでそれ以外には何もしないでほとんど歩くペースも変えないままだった。
工場の中にある機械が何度も同じペースで音を立ててるのの間で、確かに聞こえてる音。私の前にある鉄製の入れ物の中にボルトが落っこちるのを聞く。それらが山積みになっている物の中の2つを検品して、やすりでばりをはがす。
それからそれを私の横でずっと動いてるベルトコンベアの中に放り投げるとまた同じ動きをする。それが終わったら、また別のボルトをと言うのを何度も何度も繰り返しながらいた。
でも、ふとした瞬間、別に何かがあったわけでもないのに、たまたまボルトが入ってる入れ物の側面に反射して作業着に身を包んでる私の様子を見ることに。少しずつ手を落っことしながらそこにいる薄暗い工場の中で灰色の帽子や作業着に包まれてる自分の様子を見つめる。
同じ色をしてないのは、顔だけで。手のひらですらもその一部がボルトを持ってるせいでその色に染まっているみたいだった。
「何かあった?」
いつの間にか目尻が落っこちている表情を眺めていた所で、ハッとしながら勢いよく振り返りながら首を回して相手のことを見つめる。それから視線を左右に向けるけどそれで何かを私の目が捉えることもできなくて、結局元の現場責任者の元に戻ってて。その上、手に持ってたボルトを自分の胸元に来てるのに気づいたら、すぐにそれへと視線を落っことして、両面を確認し始めた。
「いや、すみません」
早口でその言葉を出した私に対して、現場責任者はすぐに踵を返してどこかに行ったみたい。それに対してこっちはただずっと何かをするということもなく、ひたすら次から次へとボルトの様子だけをずっと確認してるだけにしてた。
肩を中心にして体を左右に揺らすみたいな動きをしながら歩いてる私が音もほとんどしないほんのわずかな息を口から吐く。それで足を止めたのは、モーテルの階段を登ってる途中で、自分の肩にかけてる荷物はそのままにして、少しだけ下に向けておいた顔を上に向ける。でも、それで見えるのは階段の先にある一番近い場所になる部屋のドアくらい。それ以外はテラスの床や屋根の様子だけ。
それからもう一回階段を登り始めるけど、その瞬間に後ろから子供が走ってくるせいで、こっちは体を斜めにしてその姿を避ける。しばらく開いてる方の肘を折り曲げたまま、階段の手すりの所に体をくっつける。その間、私の所を通ったのは、子供の母親だと思う人くらい。でも、私の方を見ずに小さく謝るだけ。階段をすたすたとただ歩いて行って、モーテルの柱の影に消えていった。
私はその様子を同じ場所に立ったまま顔も含めて視線で様子を追ってた。その間、月も星も見えない曇った空の様子も一緒に見えてたけど、それに対して何もしないでそっちの方を眺めてるだけ。しばらくしてからまた最初と同じ方を見て階段を登り始めた。
ただ、自分の部屋に入ろうとした瞬間、荷物の中に入れた夕飯が私の分しか入ってなかったのに気づいて、ノブを握ろうとする私の体が止まる。またもう1回息を口から吐いてからまたもう1回外へと戻って行った。
読了ありがとうございました