第二の後継   作:TARAKON X

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 まずは謝辞を。もう一方小説があるのにこんな作品を書いてしまった自分を許してください。そしてこの小説は、魔法科サイドが結構雑に扱われます。作者はアニメ勢です。それが嫌な人はブラウザばっくを。良い人はお楽しみください。それではどうぞ。




第1話 魔法使い

 子供から大人になると、人というのは自分の力のことが段々と分かってくるものだ。

 自分の力。少しカッコつけたが、一般的に言えば学力や運動能力のことだ。いや、一応才能も付け足しておこう。小学校、中学校と進み、自分のことが分かってきた子供は自分にあった高校を選ぶ(早い人は中学もだけど)。そして自分への理解を深めた人はまた自分にあった大学を選ぶ……いや、これも人によるか...仕事をし始める人もいるだろうし。ん?中学を出てすぐに働く人もいるって?ふむ、まあそういう人もいるか。

 まあいい。いや良くないと言えば良くないが、兎に角何が言いたいかと言うと、それが一般的な人の人生だ。子供から大人への階段を登り、最終的には自分のあるべきところに収まる。それが普通だ。そして俺も、家柄は特殊だが同じようになると思っている。いや、いたと言うべきか。ついさっきこの人に会うまでは。

 

「何やら深く考え込んでいるようだが、どうしたというのだね?三分も儂の顔を凝視して、そこまで考えにのめり込めるものか?」

「……まあ、普通の人なら誰しも疑問に思うことだろうけど、あんたに関しては別じゃないの?自分の立場を誰よりもよく理解してるのはあんた自身だろ」

「ふっ、まあな」

「………」

 

 何時も通りの日だった。いやちょっと違うか。何をどうしたのかは知らないが、母さんが持ち前のうっかりで家のWi-Fiをぶち壊し、家のネットは荼毘に付した。そのせいですっかり夕飯の時間なのに直すためのお使いで、近所の電気屋まで自転車を走らせ、無事我が家の救世主(Wi-Fi)を購入した俺は。再び自転車を走らせながらちょうどサブスクに配信されて気になっていた映画のことを思い出していた。いつか見ようと考えていたが、もしかしたら今日と同じことが明日も起こるかもしれないと考えた俺は、夕飯を食べたら自室で見ようと決めた。

 そして普段使う近所のスーパーの前を通りかけたところで、そういえば映画見るんだから菓子もいるよなと思い至り。ポテチとコーラ、あと少し暑かったのもあってアイスクリームを購入した。ちょっと溶けやすいアイスだったのもあって、家に着く前にちゃちゃっと食っちまおうと思ってすぐそこの公園のベンチに腰を落ち着かせ、さあ食べようとアイスを口に運ぼうとした瞬間。

 

「急にすまないが私の話を聞いてくれないか?」

 

 この(ジジイ)が現れた。いきなり目の前に。何も感じさせることなくだ。俺自身の対応とジジイの登場の仕方を客観的に見ると知り合いに見えるかもしれないが実際は知り合いでも何でもない。まったくの初対面だ。なのにどうして俺がこんなにも塩対応、尚且つ警戒心剥き出しでジジイなんて呼んでいるのかと言うと、俺の眼が訴えてくるからだ。『こいつはヤバイ』と。

 

「ふむ、儂を視認しても正気を保つか。やはり私の目に狂いは無かった」

「さっきから何ぶつぶつ言ってんだよ。そもそもあんた誰だ?」

「はて?君の眼は儂のことを正確に認識している筈だが。分からないとは言わせんぞ」

 

 分かってるよ。分かってるからこそ認めたくないんだ!

 

「……ふふふ、いやすまん。確かにいきなり出てきて名乗りをあげないのは流石に意地が悪かったか。では、改めて名乗ろう。そして儂の話を聞いてもらおう」

 

 月の光に照らされた夜の公園で、黒い外套を身にまとい、純白の髪と宝石のような眼を持ったジジイは俺の目を見てこういった。

 

「儂はゼルレッチ。キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。魔道元帥、宝石翁、様々な呼び名があるが、君にはこれを名乗ろう。第二の魔法使いと。今日は君を儂の後継とする為にきたのだよ。()()礼司君」

 

 ーー

 

「………」

「おや?偽物だとは思わないのかね?」

「あんたの名前を喜んで騙るやろうなんてこの星に一人もいないだろ。いるとしたらそいつはあんたの名前と肩書を知ってるだけの魔術の魔の字も知らないガキくらいだ」

「ふっ、違いない。予想通りの反応だな。顔には出ておらんが内では感情が入り乱れておる。だが中でも一際つよいのは困惑か」

 

 ジジイ。いや、ゼルレッチのジジイは平気な顔して心を読んできた。家族以外には少しも察知されたことが無かった感情の起伏をこうもあっさりと。

 

「難しいことではないさ。年の功というやつだよ。それよりも、言いたいことが山程あるのではないかね?遠坂礼司君」

 

 成程。確かに言いたいことは山程ある。でもまずはこれを言わせてもらおう。

 

「礼司で良いよ爺さん。まあそうだな言いたいことも聞きたいこともたくさんあるけど一番最初にこれを言わせてもらおう。断る」

「……ふむ。一応理由を聞かせてもらおうか。何故だ?君はすでに両親から受け継ぐべきもの(刻印)を全て受け継いでいるだろう?持つべきものは全て手に持っているのではあとは進むだけだとおもうのだが、違うのかね?」

「……俺では「荷が重いと思っているわけではないのだろう?」……」

 

 ゼルレッチのジジイの言う通りだ、荷が重いと思ってるわけじゃない。ただこれをいったらこの世の魔術師共は揃っておれをボロクソにブッ叩きに来るだろう。母さんも含めて。来ないのは多分父さんと同様の魔術使いくらいだ。

 

「申してみよ。何故断る?」

 

 ドクン、ドクンと心臓の音が聞こえた。柄にもなく緊張しているのだろう。当然だ。多分この世で一番の魔術師に打ち明けるのだから。だがこれを打ち明けずにこの局面をとっぱするのはまず不可能だ。ここは、腹を括るしかない!

 

「…………………………さいから」

「………すまないがもう少し大きな声で「面倒くさいから」…………………………何?」

 

 ああ、その反応は間違ってはいないよジジイ。でもこれは本心だ。面倒くさいから嫌なんだよ俺は。

 

「第二魔法のことはよく知ってるよ。五つある魔法のうちの一つ。平行世界の運営。星に希望を与えた御業。知らないわけがない。俺は遠坂の魔術師だからな」

「……では儂の後継になることは魔術師である君にとってはとても名誉なことではないかね?それを面倒くさいという理由で断るのは、すまないが頭がおかしいのではないか?」

「ああ、そうだな。確かに名誉なことかもな。そしてそれを断った俺は、頭がおかしいんだろう」

 

 というかあれだな。言って気づいたが面倒くさいというのはちょっと違うのかもしれない。

 

「面倒くさいからって言うのは言い直す。単純に気が乗らない」

「気が乗らない、だと?」

「ああ、単純に気が乗らないんだ。悪いな」

 

 まあ面倒くさいからっていう理由もあるにはあるが、大部分は気が乗らないって理由だな。

 

「………………成程、良く分かった」

「ああだからこの話は無かったことにしてくれ」

「尚のこと、君に私の後継になってもらおう」

「おう、そういうことで頼むって何ィい!?!?!?」

 

 このジジイ人の話ちゃんと聞いてたのか????

 

「お爺ちゃん、俺の言ったこと分かる?耳ちゃんと聞こえてる?俺断るって言ったの俺は普通に遠坂の当主だけやりたいの。魔法使いなんてなりたくないの分かる?」

「聞こえておる。聞いたうえで言っておるのだ。儂の後を継げ」

「ざっけんな!俺に継がせるくらいなら他のやつに継がせろよ!やる気のないやつよりやる気のあるやつの方が良いだろうが!」

「生憎、君以外に儂の魔法を継げるものはおらんよ。知っておるだろう?適性のあるものしか魔法使いにはなれん」

 

 確かにそうだが、別にあんたに関しては後継もいらないだろ!というかそもそもあんた人間じゃないだろ!

 

「あんた、自分の年齢数えてみろよ。老いたから後継を探してるって訳でもねえだろ?」

「……ふむ、確かにそうだが、これにはちゃんとした理由があるのだよ」

 

 ゼルレッチのジジイはさっきとは変わった威圧感を持ち出した。自然と体が強張るのを感じた。何だ?もしかして本当に理由があるのか?

 

「それは……………」

「………………それは?」

 

 

 

 

 

 

 

「………………もうそろそろ本格的に隠居してゆっくりしても良いかと思ってな」

「………………………………」

「……………………………」

「……………あ、アイス溶けちまった。まあいいや。じゃあ俺もう帰るから。家にさっさとWi-Fiも設置したいし、夕飯もまだだし、見たい映画もあるからな。じゃあ失礼するよ」

 

 そう言って俺は停めておいた自転車に指をかけた。

 

『止まるがいい』

『resistッ!?!?!?』

 

 全く体が動かない。嘘だろ?抵抗するのには自信があった、タイミングも完璧だと思ったが、本当に動けなくなった。

 

「君が軟弱な精神の持ち主ではないことは分かっている。取り繕うのはやめたまえ」

「知ったようなこと言いやがるなあんた!」

「もし君が本当の本当に軟弱ならば、君はヤツとは戦わなかったはずだ」

「!?」

「戦わず、工房でずっと引きこもっていたはずだ。だが君は戦った。あの死徒と戦い、大勢を救った。そんな君が軟弱者の振りをするのは、救われた人間に対する侮辱ではないかね?」

「はあ?一体いつ俺が軟弱者の振りをしたって?元から俺はこんな性格だよ!」

 

 抵抗する力を強めるが、俺の体は全く動かない。俺自身の体にあるメイン150、サブ60本の魔術回路を回転させても、魔術刻印に魔力を回しても全然だめだ。

 

「おい!いい加減放せ。いつまでこうするつもりだよジジイ!」

「儂もいつまでも君を拘束するつもりはないさ。ちゃんと放してあげるとも。向こう側でな」

「!?」

 

 向こう側?今こいつ向こう側って言ったのか?まさか!?

 

「課題をやろう。なに、単純な課題さ。帰ってくるだけだ。それだけで君は第二の魔法使いになる」

「本気か!こちとらまだ受験もまだなんだぞ。中学も卒業せずに行方不明とシャレにもなんねえよ!」

「向こうで受験して高校生になればよかろう。もう一つ戸籍が増えると考えろ。そうすればマシに思える筈だ」

「どこに連れていくつもりだジジイ!」

「なかなかユニークな所さ。もういいか?では、送るぞ」

「ちょっ、待ってー」

 

 瞬間、俺の体は虹色の光に包まれた。

 

 ーー

 

「…まったく、騒がしいやつだ」

 

 ゼルレッチは先ほどの少年を思い出す。ぱっと見普通の少年で、騒がしく、どこにでもいるような、本人さえも気づかない危うさを持った少年を。

 

「まあ、ああいうタイプの人間は環境を変えれば自然と自身を見つめなおすものだ。まあ大丈夫だろう。…ん?」

 

 ふと、足元に目を向けると。袋に入った菓子と飲み物、そして箱に入った機器が落ちていた。すぐそこには倒れてそのままになった自転車も散乱している。そして思い出す。あの少年はお使いの最中だったことも。

 

「……仕方ない。届けてやるとするか」

 

 おそらくだが、彼にお使いの引継ぎをさせた人間は、あの少年くらいだろう。

 

 ーー

 

 礼司がゼルレッチに跳ばされた直後。ある日本家屋に住む夫婦は息子の安否を心配していた。

 

「士郎どう?礼司から連絡は来た?」

「いや、全然だめだ。繋がらない。そっちはどうだ?」

「こっちもダメ。使い魔を飛ばしてるけど全然見つからない。ああもう!どこにいるのよアイツぅ」

 

 さっきまでは普通のはずだった。だが、近くに大きな魔力を感じたと思ったら。息子の気配も無くなっていた。

消失したのだ。なんの前触れもなく。二人にはそれが途轍もなく恐ろしく感じた。

 

「この際仕方ない。おれが直接探してくるよ。凛は引き続き使い魔で礼司を探してくれ」

「分かったわ。こうなったら手持ちの使い魔総動員で『ピーンポーン!』!?」

「誰だ?」

 

 宅配便が来る予定はない。この時間に来るとしたら、妹かあのいつも元気一杯な虎くらいだ。

 

「…凛」

「分かってる。油断はしないわ」

 

 何が起こっているのかは分からないが、こういう時は冷静にならなければ足元を掬われる。もしこれが罠でさっきの状態のまま敵に襲撃でもされたら一瞬で二人共あの世行きだ。そんなことはあってはならない。

 

「「……………」」

 

 歩を玄関に進ませながらも、何時でも動けるように、回路はすぐにでも動かせるように準備しておく。刻印は二人共息子に継がせたが。使い慣れた魔術くらいなら一瞬で行使出来る筈だと。そう自分たちに言い聞かせる。

 

「え?」

「誰も、いない?」

 

 だから、玄関前に誰もいなかったときは。思わず座り込みそうになった。

 

「………何なのよもう……………」

「いたずらか?取り敢えず…ん?」

 

 ふと横を見ると、そこにはいつも息子が愛用している籠付き自転車があった。籠の中にはお使いで頼んだ物とお菓子とジュース。そして手紙が入っていた。

 

「これは…士郎」

「ああ、『解析開始(トレース・オン)』」

 

 使い慣れた魔術で手紙をきちんと精査するが、怪しいものは何も無かった。ただの手紙のようだ。

 

「異常はない。開けるぞ」

「ええ」

 

 二人は意を決して手紙の封を切った。そして、そこにはー

 

『お前たちの息子は儂の後継とする。キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ』

 

「「……………は?」」

 

 あまりにも突拍子のないことが書かれていた。

 

 ーー

 

 虹色の光に包まれたかと思えば、今度は夜の冷たい風が体を叩いた。

 

「いや寒っ!」

 

 この風の感触は覚えがある。これはビル風だ。ということは、本当に俺は跳ばされてしまったようだ。

 

「…ここは…」

 

 改めてあたりを見渡すと、真っ先に暗い空が目に入ってきた。そしてその空に突き立てるように、巨大なビルが周りに何本もそびえ建っていた。よく考えたらここもビルの屋上だった。

 

「クソっ!どこだよここは?」

 

 何度も辺りを見回した、だが俺自身が知るビルのある街にこんな景色は存在しない。そもそもここら一帯のビルのデザインはテレビで見るような東京や大阪や名古屋のものでもなかった。

 

「なんだ?22世紀の街か?ここは」

 

 少なくとも俺がさっきまでいた所ではないのは確かだ。近未来すぎる。遠くを見れば、普通なら明らかに自立しないような形をした建築物やオブジェが見える。

 そしてなにより。

 

「マナが濃い。なんだこれは?こんな近未来な癖して幻想種でも闊歩してんのか?いや、流石に違うか。だとしてもこれは……」

 

 試しに強化魔術を体に行使すると、いつもよりもスムーズに術が行使出来た気がする。

 

「………成程、ならまあいい」

 

 魔術が使えるなら幾らでもやりようがある。ひとまずは…そうだな。

 

「適当な魔術師の家に殴り込みかけるか」

 

 そうと決まれば行動開始だ。

 

 




次の話が書けるように頑張ります。
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