魔術の方も同様です。それでも大丈夫なひとはお楽しみください。
「......う.....うぅ.......」
「成る程ね。この端末みたいな物を使って今のを行使してたのか。便利な物だな」
あの後。さあレッツ殴り込みだー!と息巻いて周囲を探知したらすぐ近くの路地裏で微弱だが魔力を感じた。何の隠蔽もせずに魔術を使うとはどんな馬鹿野郎なのかと思って覗いてみれば、携帯端末?みたいなもので何かを行使した男がいた。あとついさっきまで生きていた気配のある体をぐちゃぐちゃに引き裂かれた人間の死体も。
「な、何なん...だお前は?」
「ん?何なんだって言われてもな。今さっき俺がやったことがいろんな意味で分かってないってことは、あんたこっち側の人間じゃないだろ?そんなやつに俺自身のことを話してもねえ」
で、取り敢えずこの世界のことを知るために話し掛けてみたが、どうやら目撃者は率先して殺しに行くタイプの人間だったみたいで襲いかかってきたものだから。鎮圧と、ストレスの発散も兼ねて取り敢えず強化魔術で手足の骨を折らせてもらった。本当は魔術なんて使わなくてもやれたが、あえてこの男の反応を見るために魔術を使わせてもらった。まあ、結果はまさに骨折り損のくたびれもうけだったわけだが。
「まあいいや。折角の情報源だ。しっかり利用させてもらうよ」
「なっ、何を!がっ…!放せ!何をする気だ⁉︎」
「はいはい動かない。すぐに済むから静かにね。でないとあんたの頭握り潰すから。『
「あ?……あああああああがあ″ あ″あ″あ″あ″あ″あ″あ″ぁぁぁ………!!!!!!!???????」
さてさて、ここはどんな………ん?……んん⁉︎
「え、マジで?そんなことありえるの?だとしたら時計塔や聖堂教会は……クソッ!ホントに変な世界に送りやがってあのジジイ!」
でもまあ、大まかなことは大体把握できた。でもこれは、まずはどこか落ち着ける場所を見つけて情報を整理した方が良いな。
「オレになな、何をし、た、んだ⁉︎」
「ん?ああごめん。ちょっと頭の中を覗かせて貰った。ああ安心しろ。この世界の情報に関してしか覗いてないよ。プライベートな部分には全く触れてないから。まあそのせいでアンタの脳には相当の負荷が掛かっちまったけどな。お詫びと言っては何だが、折れた手足は治しといてやるよ。記憶は消させてもらうけどな」
「ふ、ふざけるな!さっきから何を勝手なー」
『
「こと、を……………」
抵抗力が全然無いな。簡単な術だったがありえないくらい簡単に術を掛けれてしまった。
「……成る程、
ご大層な名前を持ってるもんだから一瞬ビックリしたが、どうやら魔術師とはほとんど別物らしい。
「取り敢えず、戸籍作って家探すか。手持ちの宝石2、3個売ればいけるだろ」
その後はまず時計塔がまだあるのか確認して………あったとしてもどうやって金を引き落とせば良いんだ?
「……仕方ない、目先のことだけ考えよう」
ーー
この世界には魔法が存在するらしい。超能力と呼ばれていた力を科学的に解析し、魔法式という、ようはオドによってマナを操作する工程をプログラム化した式を用いて生み出す事象をまとめて魔法と呼ぶそうだ。一見こっちの魔術と似ているようだが、実際は全然違う。魔術は世界を騙し、物理法則を歪めて事象を起こすことも出来るが魔法は大部分が物理法則に縛られている。一応そうでない魔法もあるようだが、そっちはそっちで使い手が限られるようだ。
でもまあ便利な物だとは思う、魔法の使用には使い手である魔法師とCADという補助機器があって初めて成立するものらしいが、魔法師には多少の才能があればなれるし、CADはそこら辺で携帯端末と同じ値段で手に入る。社会に普及しているのだ。
こっちの魔術なんて、一般の人間に存在が露見したら即アウト。神秘が薄れ使えなくなる可能性があるわけだからな。
「まあそういうのあるのは全然良いよ。そもそも世界が違うんだ。あっても不思議じゃない。でもさあ、名前はどうにか出来なかったわけ?」
宝石を売り払って得た金で適当なアパートの部屋を借り、余った金でCADを買って自分なりに魔法を試してみて気づいたことがある。
似ているのだ。こっちの魔術と。それはつまり魔術師が魔法師に技術提供をしたということを意味する。普通だったらそんなこと天地がひっくり返ってもありえない。では何故、技術提供が行われたのか。
恐らく、魔術協会と聖堂教会が結託しても防ぎきれないほど神秘が漏洩したのだろう。それも世界レベルで。そうなってしまえば、一組織の部署の一つでしかない法政科ではどうすることも出来まい。苦渋の決断だったのだろう。おそらく当時の魔術師達は、なるべく伝える情報を最小限に抑え、タイミングを見計らって姿を消した。そしてこれ以上、魔法師がこちら側へ来れなくなるよう何らかの策を打ったんだろう。
こっちの魔術が問題無く行使出来た時点で、魔術基盤が安定していることは確認している。魔術の消失は免れた。それは一介の魔術師としても嬉しく思う。
ただ、もう少し頑張れなかったのだろうか?
「いくらなんでも『魔法』はダメだろ。何で名乗らせちゃったんだ?なことしたら殆どの魔術師がブチギレちまうのは分かってるだろ。それともあれか?勝手に名乗っただけなのか?だとしても、魔術協会はてんやわんやだったろうなー。想像したくねー」
まあ、兎に角この世界については大体分かった。情報収集はこれくらいにして、本題に入るとしよう。
「………どうやって帰ろう………」
そもそも話が急過ぎるんだ。普通に日常を過ごしてただけなのに、いきなり魔法使いの後継に指名されて瞬く間に他の世界にぶち込まれた。正直今でも理解が追いついてない。……追いついてないが、自分の中で一つ分かってることがある。
「…帰りたい…」
そうだ。俺は帰りたいんだ。まだ家にWi-Fiを取り付けてないし見たい映画も見れてない。そして何より。
「父さんも母さんも大丈夫かなあ?」
向こうに残してきた両親も心配だ。何の言葉を伝えることも無くこんなところに来てしまった。少し恥ずかしいが、俺はあの両親とあの家が大好きなんだ。そんな二人に心配を掛けるのはとても苦しい。いやでも、母さんなら『ナイーブになってないでさっさと帰ってこい』とか普通に言って来そうだが。
「でもまあ長丁場になることは確定だよな。これは」
帰り道の探し方は分かってる。逆算すれば良い。ゼルレッチのジジイにやられた時の痕跡は俺の体に自分から刻み込んでおいた。あとはそれを逆算し解析すれば。俺は第二魔法の真似事が出来るようになる筈だ。というか、もうそれは既に始めてる。といっても、解析してるのは俺の魔術刻印なんだが。
「今の俺の魔力量と解析力からして、出来るようになるのは大体あと3、4年といったところか。高校生活はこっちで過ごすことになりそうだ」
高校といえば、役所の広告に魔法科高校入試ってあったな。ちょっと調べてみるか。
ーー
「良かったのかい?」
ゼルレッチしか存在しない場所で、受話器から発せられる気さくな青年のような声が響いた。
「何がだ?」
「彼のことだよ。あんな場所に送ってしまって。こういう言うのもアレだが、あそこは彼無しで局面を切り抜けるべきだと思うんだが」
「種を蒔いたのは協会だ。であれば後始末は儂か、遠坂の人間であり後継であるあやつが適任だと思うのだが」
「彼が訪れてから二年後に行われる聖杯戦争。確かにアレは最後はロクな終わり方をしないだろう。だからといって、それがどうしたと言うのだい?スノーフィールドの一件とは違って、あそこはどう転んでも何も決まらないはずだ」
声はゼルレッチに問う。声の主は分かりきっているはずなのに逢えて問う。まるで、劇の台本を読み進めるように。
「何故、と問うか。であれば答えよう。これくらいやって貰わねば、儂の後釜は務まらんからだ」
「自分から吹っかけておいてよく言う。ただまあ、成程。では私は今回も見守ろう。そして祝おう。新たな魔法使いの誕生を」
「ふっ、それはそれで、あやつは嫌がりそうだがな」
決して他者は踏み入れることの出来ない場所に二つの声が響く。この会話を聞くものは、
ーー
季節は飛んで四月。国立魔法大学付属第一高校では桜が舞い。新入生達を入学式に合わせて飾り付けられた校門が向かい入れていた。
校門に迎え入れられた新入生の顔は千差万別だ。でも殆どは新たな出会いや学びに胸を踊らせる者と、入学式にも関わらず、顔に落胆の表情を浮かべる者達だった。両者を外見で見分けることが出来るとするならば、肩に花のエンブレムがあるのと無いの違いだろう。
(そういう制度があるとは聞いていたが、ここまでなのか……)
その光景をベンチに座りながら見ていた少年、司波達也は、自分の制服の肩にもエンブレムが無いのを知りながらも、客観的な感想を心の中で述べていた。
「うわ、見てあの子ウィードのクセに張り切っちゃって」
「どうせこの3年間無駄にするのに、おめでたいヤツだな」
自分に向けられる軽蔑の視線も、彼は全く気にしない。そんなことよりも本の続きを読もうと端末を開いたその時。
「なあ君」
「ん?」
自分と同じおろしたての制服を身に纏った男子生徒が声をかけてきた。いや、同じというのは語弊があるか。何故なら彼の制服の肩には、花のエンブレムがあったのだから。
「……俺に何か?」
「え?ああすまん。いきなり声を掛けたら誰でも警戒するよな。悪いね。隣良いかなと思ってさ、ベンチ君の横くらいしか空いてなかったもんだからさ」
意外と気さくな態度に少し困惑する。花のエンブレムを付けた生徒、一科生の大半は、自分たち二科生を馬鹿にした目で見てくるものだったから余計に。
「あ、ああ。そうだったのか。だったらこちらも済まなかったな。どうやら自分でも気づかないうちに警戒してたらしい」
「いやいや、急に話しかけた俺が悪かったんだ。気にしないでくれ」
そう言いながら、彼は達也の隣に座ってきた。
(…珍しいな。こういう生徒もいるのか)
「自己紹介がまだだったな。俺は遠坂礼司。多分だけど君と同じ一年生だ、よろしく」
「司波達也だ。君の言う通り同じ一年生だ。よろしく。珍しいな、俺に話しかけてくる一科生は」
「ん?別に何も珍しいことはないだろ。人が人に話しかけて何か良くないことでもあるのか?」
「いや別に。ただ、こういう校風の学校だからなここは」
そう言いながら、達也は自分の制服の肩を見せた。何も付いていない、二科生のマークを。
「ん?ああ、あったなそんな制度。それがどう……いや待て、そういうこと⁉︎」
「うん?」
「客観的に見たらこれ、俺が君にダル絡みしているように見えるってことか!あー、ホント面倒くさいなこの制度」
礼司は本当に面倒くさそうな顔をしていた。この様子を見るに、本当に心の底から面倒くさいと思っているのだろう。
(本当に珍しいな。そういう考え方もあるのか)
なら、少し話してみても良いかもしれない。と思った達也であった。
「君はあまりそういうのを気にしない質なのか?」
「んー。まあそうだね。これは試験結果で振り分けされているらしいから、結果が出てしまっている以上俺からはなんとも言えないけど、別に君は怠けてた訳じゃ無いだろう?あの入試を自分なりに全力で受けたはずだ。……違うか?」
「いいや。持てる力を全て使って自分なりに全力で挑んだよ」
「だろ?じゃあ俺が言うことはなんも無いよ。これからよろしくとしか言えねえ」
「ふふっ、成程な」
「………今、笑える要素あったか?」
「いや済まない。清々しい考え方だと思ってな。ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
「いや、別にそこまで言われるようなことじゃ……………あ」
「?どうした急に」
話が段々と弾みかけたところで突然ベンチから立ち上がった礼司を見て、達也も少し戸惑う。
「(忘れ物でもしたか?)礼司?」
「え?ああいやごめん。俺、ちょっと先に会場に行くよ。悪いねこっちから話しかけておいたくせして」
「別に構わないが、どうしたんだ?まだ入学式までは少し時間があるぞ?」
「そうなんだけどな。このままギリギリまで話すのは少しいけない気がしてね。じゃあそういうことで。悪いな」
そう言って礼司は会場に向かっていった。
(……………なんだったんだ?)
その後、入学式が始まるギリギリまで本を読んでいた達也に再び声を掛けたのは、七草の名を持つ生徒だった。
ーー
昔からそうだった。嫌な予感がしたときや見えたときは理由が無くてもすぐに行動に移すに限る。それで昔から大抵の面倒ごとには巻き込まれずに済んだからな。と言っても、全部下らないことだが。
そんなことよりも、さっき会った達也のことだが。見た瞬間勢いで話しかけてしまったが、全然話せるやつで良かったよ。見た感じ、外からの精神干渉で感情の起伏を強引に抑え込まれてるもんだからちゃんと話せるか不安だったから余計安心した。
それにしても、あいつなんであんなことされてるんだ?ていうか今思い出したが、精神干渉で魔法師って確か四葉の魔法師が多いんじゃなかったっけ?あれ?冷静になってみるとやばいんじゃないか?これ。
「………………………………まあ、良いか」
もうとっくに関わりを持っちまったんだ。今更だ今更。
気を取り直して入学式に集中するとしよう。といってもあとは新入生総代が挨拶して終わりなんだけどな。確か女の子が総代だったっけ?
『新入生歓迎総代、司波深雪』
「はい」
壇上に上がる少女を、この場にいる殆どの人間が目で追っただろう。何故ならそれくらい、彼女は美しいという文字が似合っていたからだ。
いやはやすごいな、あんな美人が………………………ん?今、司会はなんて言った?司波?司波って言ったのか?じゃあまさか、達也の…いやそれよりも気にするべきことがあるだろう!何考えてんだおれは!よく見てみたらそうだ間違いない。俺の眼が訴えてくる。彼女は……!
「………………ホムンクルス、だと⁉︎」
達也「バレる訳にはいかない。俺の秘密を」
礼司「めっちゃ精神縛られてる……苦労してんなー」
まほよコラボが待ち遠しい!