第二の後継   作:TARAKON X

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まほよコラボマジで良かった……最高かよ!




第6話 誘い

 

 ふと、達也は目を覚ました。

 

「……ここは……俺の部屋、か……?」

 

 そこは慣れ親しんだ部屋だった。慣れ親しみ、落ち着ける自分自身の部屋だった。だが達也は違和感を感じていた。はっきりしないのだ。自身にとっての最後の記憶が。どうして、どのようにして自分自身の部屋にいるのか、その理由が達也には分からないでいた。

 

(確か、深雪と皆で一緒に帰って、それで…アイツを、精霊の眼で……あぁ……そうだ俺は、気を失っていたのか……)

 

 気を失う前の記憶がフラッシュバックする。遠坂礼司に向けて精霊の眼を行使したこと。行使した途端、無限にも等しい情報が頭に流れ込んできたこと。そのせいで脳がダメージを受けたこと。異能が上手く働かず、死にかけたこと。

 

(そうだ、俺は死にかけたんだ。死にかけて……死にかけてどうなった?俺の意識が回復したということは、再成が上手く働いたのか?…だが…どうやって?あれだけの情報を一気に喰らったんだ。加えてあのオーバーロードのせいか俺の魔法も上手く働かず、脳のダメージがそのままになって危うく死ぬところだった)

 

 なのに何故、自分は生きているんだ?

 

 達也はそう思わざるを得なかった。

 

「………んう……」

「!」

 

 起き上がり、馴染みのある声に目を向けると、そこには自分のベッドに体を持たれかけている妹の姿があった。規則的に息をする様子の妹に安心感を抱きながら、達也は深雪の頭を撫でる。

 

(深雪……余計な心配をかけさせてしまったか…不甲斐ない…)

「深雪……起きなさい深雪。こんなところで寝ていたら風邪をひいてしまうよ」

「…………お、兄様………?………⁉︎お兄様‼︎良かった!目を覚ましたのですね‼︎‼︎」

 

 泣きながら自身に抱きつく妹の頭を撫でながら、達也は考える。

 

(これからの礼司への対応を考えなければな。アレは普通じゃない。精霊の眼をオーバーロードさせる魔法師。放置するのはあまりにも危険過ぎる。ひとまず、借りは作りたくないが、師匠に身辺調査の依頼を出すか。……ん?待てよ、そういえば……)

 

 そこで、ふと思った。自分はどうやってここに運ばれたのかと。救急車がきて自分を運んだ。その可能性はもう消えている。そうであるならば、自分がいるのは病室のはずだからだ。

 

「深雪、聞きたいことがあるんだが、どうやって俺はここに?深雪が師匠を呼んで運んでくれたのか?」

「え?ああいえ、そうではなくてですね……その、何と言いますか…お兄様をここまで運んでくださったのはですね…」

「気を失って倒れたにしては随分と元気そうだな達也。朝飯は食えそうか?」

「⁉︎」

 

 何か言い淀む深雪の言葉に誰かの声が割り込んだ。

 そして達也は思い出す。自分が気を失う直前に最後に聞いた声を。

 

「お前は……どうして此処に…?」

「どうしてって言われてもな。達也をここまで運んだのは俺なんだからいて当然だろ?まあ、お前が倒れたことの責任は少なからず俺にもあるからな。朝になっても俺がいるのは、余計なお世話ってやつだけどな」

 

 扉の前には達也が倒れた原因である遠坂礼司が立っていた。

 

「学校を休む気がないならさっさとリビングに来い。まだ温かいと思うぞ。冷たいのが好きなら話は別だがな」

「リビング?温かい?一体何の話だ?」

「何って、朝飯だよ。何だ?もしかして普段から朝飯は食わないタイプなのか」

「いや…別にそんなことはないが…」

「そうか…じゃあさっさと来い」

 

 礼司の後について行きリビングに向かうと、そこには達也と深雪、二人分の食事が用意されてあった。米とだし巻き卵、味噌汁まで用意してある。

 それは、一般的な朝食だった。

 

「これは………」

「俺はもう食べたから、学校行くなら食器も俺が片づけておくが、行かないなら自分達でやっといてくれ。俺は今日も学校に行くつもりだからな」

 

 その軽薄な態度に、達也は何故か気色悪さを感じた。

 

「どういうつもりだ?」

 

 達也は何も取り繕うことなく率直に問う。

 

「ん?どうって何がだ?俺がここにいることにか?それともここで朝飯を作ったことにか?」

「全部だ」

 

 普段の達也であれば、例え同じような状況になっても落ち着き、取り繕い、対処してみせるだろう。

 だが、今回に関しては別だった。何故なら達也は礼司に対して尋常ではないほどの気色悪さと不気味さを感じていたからだ。達也自身が他人に対してそのような感情を抱くのは、初めてのことだった。

 

「…何だ、意外と早かったな。もうちょっとは取り繕うと思ってたのに、予想よりも早く辞めたなそれ」

「質問に答えろ。返答次第では「俺を殺すか?四葉の司波達也」!?」

「!?あなた…一体何言って!?!?」

 

 その言葉は、あまりにも突然だった。それは、決して知られてはならない、自分達兄妹にとっての秘密だった。

 自分達の正体。それがこんなにも簡単に暴露されて、深雪はおろか、達也でさえも動揺を禁じ得ないでいた。

 

「お前は、一体……?」

「あー、そうだな。お前の態度次第では言う気は無かったんだが。仕方ないか」

「……シッ!」

 

 達也は拳を礼司の首をめがけて手による突きを繰り出した。それは、武道の達人から見ても速く、鋭い一撃だった。その手は、的確に礼司の首を突き刺した筈だった。

 

「おいおいおい。人の話は最後まで聞けよ危ないなあ」

 

 だが、それは起こらなかった。何故なら達也自身の腕が、地面に転がっていたのだから。

 

「な…に…?」

「理解出来てない顔だな。そんなに難しいことはしてないぞ。ただこれでお前の腕を斬っただけなんだが」

 

 礼司の手元には、どこから出したのかも分からない西洋風の短剣が握られていた。

 

(何だ?あの剣は?一体いつからそこにあった?)

「おい、いつまでそんな不細工な身なりでいるつもりだ?いい加減とっとと治せよ。ほら、さっさと再成を使え。わざわざ何の為に腕にしてやったと思ってる?頭を切り落とすことも出来たんだぜ」

「!?!?」

 

 その言葉に戦慄が奔る。礼司は達也が四葉でいること以外に、異能についても知っていることに。

 

「お兄様⁉︎あなた、お兄様になんてことをッ!?」

『Schlafen』

 

礼司は深雪に向けて手をかざすと、深雪は電源が切れたかのように眠ってしまった。

 

「うるさい。生憎君には用もない。黙って寝てな」

「深雪⁉︎」

 

 達也は礼司の前で心を露わにする。妹に危険が及んだ。その事実が、達也の体を突き動かす。だが、礼司の剣が達也の首筋に触ることでそれは止められた。

 

「おっと。珍しく動揺してるな。深雪さんに危害が及ぶのがトリガー…いや、元からそうだったのか。何とまあ無駄なことを、そう設定するのは結構な労力がいるはずだ。おい、達也。おまえにその魔法をかけた人間はどうしてる?おそらく肉親だろ?」

「⁉」

 

 今までひた隠しにしてきたことがすべて暴露される。自身の生まれも、境遇も、力も、この男の前では全て無価値なのだと錯覚する。

 

「おまえ……」

「ああ、俺だってここまでお前にしたくはないさ。初対面の印象も良かったし、三年間良い関係を築けるとは思ったさ。でもな、やっぱり駄目なんだよ。その眼で俺を見たこと、それが俺にもそれなりに我慢ならない。人としての俺じゃない。魔術師としての俺が許さない。だからお前の前でお前自身のことを暴露するのはそれのちょっとした仕返しだ」

「……魔術師………?」

 

 魔法師ではなく、魔術師、その言葉の意味を思わず達也は考える。魔法ではなく魔術。その違いが何を指すのかを。

 

(……深雪は恐らく問題無い…か。本当に眠らされてるだけだろう。…悔しいがここは……)

 

 達也は腕を再成で修復させると疑問をはらす為に礼司に問いかけた。

 

「俺を…俺たちをどうするつもりだ?」

「へえ?やっと俺の話を聞く気になったか。でもまあ、答えを聞くにしてもそこまで身構えることはないぜ。今更だけど、俺はお前ら二人に何かするつもりは無いからな。まあさっきまではお前らの記憶を消すつもりでいた」

「何?」

「だってそうだろ?今のお前らは何も知らない、不幸にもこっちのことを見ちまっただけだ。だがそれは、俺以外の連中にとってはブチ殺しに行く理由に十分なりえる。それはお前らの立場的に俺も望むところじゃない。だからお前らの記憶を消す。そう思ってたんだが、気が変わった」

「……気が、変わった?」

 

 礼司は、手に持った剣をその場から消すと。達也を指さして言った。

 

「お前を、俺の使い魔にする」

 

 ーー

 

「使い魔、だと………?」

 

 まあ、流石にそういう反応になるよな。俺だって言われたらそうなるだろうさ。

 他人に対して平然と不条理を押し付ける。このままでは俺は獣と同義だ。

 

「ああ、最近手足となって働いてくれるやつが欲しくてな。でも安心してくれ。なるかならないかの決定権はお前にある」

「……さっきから一体何を言っている?俺がお前のことを見たから、俺のことを手駒にするために来たんじゃないのか?」

「いいや違うね。嫌々でやってもらっていつか寝首を搔かれたら後の対処が面倒臭いだろ。だったら当人の方から来てもらった方がお互いのモチベーションも上がるし、winwinの関係も築けると思ってな」

 

 俺は懐から紙を取り出し、住所と連絡先を書いて達也に手渡した。

 

「もし俺の使い魔になりたかったら連絡くれ。お前が俺を見て気絶したことの真相を教えてやるし、魔術師ってのも教えてやる。もしかしたら魔術も多少は教えてやれるかもな。ああでも、このことを他の誰かに言うことは無しだぞ。特にお前のお家とかな。もし話したら、俺がお前のお家の人間を皆殺しにしなきゃいけなくなる」

「……⁉待て、それはどういう⁉⁉」

「詳しく知りたいなら俺の使い魔になることだ。ああ、理由は個人的にお前が気に入ったからだよ。そこら辺で死なせるのは惜しいからな」

 

 折角いじりがいのあるやつを見つけたんだ。そう簡単に他の連中に遊ばせてやるものか。それに、手足になって働いてくれるやつも欲しかったしな。

 さて、言いたいことは全部言ったし、学校行くか。あ、そういえば忘れた。

 

「深雪さんのことだけど、あと五分くらい経てば起きるから気にしなくて良いぜ。あ、あと飯の方は気持ちが悪かったら捨ててしまって構わないから、HARだっけ?それ使っときな」

 

 さて、もう本当に用は無くなったし、学校に行くとしよう。

 

「それにしても……」

 

 いいとこ住んでんなあの二人。これくらい家がデカけりゃ工房も大きく作れるだろうさ。やっぱり工房は広い方がいいよなあ。引っ越したばかりだけど、良さそうな物件また探すか。ちょっと面倒だが。

 

「じゃ、俺はこの辺でお暇させてもらうよ。さっきの提案、気が乗ったら何時でも連絡くれ。そんで今回の件は誰にも言わないようにな」

 

 そして、俺はキャビネットに乗り込んで一旦家に戻り、着替えてから学校に向かった。学校に着くとちらりと見えたが、あの二人は今日も学校に登校していた。試しに手を振って見ると、達也は俺を見て顔を引きつらせ、深雪さんは睨み付けてきた。まあ、当然といえば当然だな。

 

 一日目と打って変わって、そこから暫くは落ち着いた日が続いた。

 部活勧誘期間で校内があちこちしっちゃかめっちゃかになったり、それを二科生で初の風紀委員になった達也が鎮圧してそれに反発した一科の馬鹿が乱闘騒ぎを起こしたり集中砲火したりと、いろいろあったが図書館に籠ったりささっと帰った俺には殆ど関係のないことだった。

 

 まあ、この街に巣食う死徒のことについても進展がないのは全然駄目なんだが……。

 

「ああクソ…どうなってんだ一体…?」

 

 とこのように、学校にいるにも関わらず独り言が漏れてしまう始末だ。

 

「どうしたんだい?深刻な顔して?」

「やあ鋼。ああいや、そんな大したことじゃないよ。気にしないでくれ。今日の晩飯のことを考えてたらちょっとね」

「……普通夕飯のことでそんな顔になるかな?」

「するでしょ人によっては」

 

 でもやっぱりこのままはまずいよな……。いまのところ屍食鬼すら見かけない。でも教会の連中や俺の探知礼装はこの街にいるって言ってやがる。やっぱり霊脈が乱れたせいだよな、これ。

 

『全校生徒の皆さん!!』

「ん?」

 

 なんだ?何かしらのイベントか?それにしてはスピーカーの調整ミスってないか?

 

『失礼しました!僕達は学内の差別撤廃を目指す有志同盟です!」

 

 ああ、そういう……。

 

 入学式の席だったり、この前の騒ぎだったり、よくここの連中は爆発しないなと思ったが、やっぱり爆発したか。

 クラスの様子は様々だ。プライドの高い連中が『何を馬鹿なことを!』と憤慨する一方で、今日はもう帰っていいのか戸惑う人に分かれてる。

 

「よし、帰るか」

「え、帰るの?」

 

 ん?何でそんな反応?

 

「いやそりゃ帰るだろ。こういうのは生徒会とか風紀委員に任せておけば良いのさ。少なくとも、俺はこういうのに関しては心底どうでもいいから」

「あ、ああそう。言われてみればそうか。じゃあね礼司。また明日」

「ああ鋼。また明日」

 

 そうして俺はいつも通りの下校路を歩いた。この学校の問題に殆ど興味を示すことも無く。その姿勢を、後の俺は後悔することになる。

 もう少し首を突っ込んでおけば、あんなことにならずに済んだというのに。

 

  

 




遅くなってすいませんでした。
でも次もこれくらいのタイミング出すかもです。
誤字報告ジャンジャンください!待ってます!
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