第二の後継   作:TARAKON X

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今回は少し長めです。
数々感想、本当にありがとうございます!

 では、どうぞ




第7話 遭遇

「公開討論会ィ?」

 

 馬鹿みたいな放送があった日の次の日の夕方。鋼から伝えられた内容に俺は思わず顔を顰めた。

 

「よくそこまで漕ぎつけることが出来たな。あそこまでしたのに、生徒会をそこまでさせる理由があったのか?凄く意外だな」

「さあ、どうかな。同盟側があまりにも考えなさ過ぎて話にならないから、そういう場を設けてひとまとめにして片づけちゃおうっていう生徒会側の考えかもしれないし」

「ああ、成程。そういうことか」

 

 鋼の推測が的を射ている気がしてきた。まあ、高校生にもなってあんなことをしでかす連中の考えることだ。志はあっても脳が足りないとは、可哀そうな連中だ。

 

「それで、鋼はどうするんだ?行くの?」

「あれ、言ってなかったっけ?僕は部活連に所属してるから、風紀委員と一緒に会場の警護だよ」

 

 それはまたなんとまあ……

 

「めん……いや、重大な役割だな」

「…今、面倒くさそうって言おうとしなかった?」

「してない」

「したでしょ」

「してない」

「……」

 

 それにしても、生徒会側も大変だな。こんな仕事を増やされたらたまったもんじゃないだろう。

 行動を起こした側はもう少し冷静になるべきだ。そして考えるべきだ。二科生として評価されても、この学校で用意されたカリキュラムに取り組み、自分を鍛え、見つめなおすことをするだけでそれなりに成果は出せる筈だ。なのにあいつらはそれをせず、平等だの差別撤廃だの響きだけは良い言葉に踊らされて周囲にその理論をばら撒く。それで他人の考えを改めさせるならいざ知らず。いいようにあしらわれようとしているとは。全く愚かな。きっと努力して出した成果が他人より劣っている事実を突きつけられるのが怖いんだろうな臆病者が。

 人というのは他人より劣っていることを実感して初めて成長するものだ。そして成長しきった人間は、最終的に自身の身の丈に合った最適な場所に腰を落ち着かせる。

 なのに彼らはその事実を受け入れず、自分はまだやれる、上にいけると思い込んでる。

 馬鹿が。我武者羅に突っ込んで何とかなるわけないだろう。そういうのは創作の世界でしか起こりえないというのにそれが分からないとは。ああもうほんと、視界に入らないでほしい。

 

「……ああ、うん。やめようこのことを考えるのは。今日行くカフェのスイーツのことを考えよう」

「あははは……礼司はどうするのって聞こうと思ったけど、やっぱりいいや。どうせ来ないんでしょ?」

「ん?よく俺の考えてることが分かったな。その通り、俺は明日はゆっくりするさ。そうだな、明日は予報じゃ天気がよさそうだし、屋上で昼寝か、読書でもするかな」

「そっか。あ、部活連の呼び出しがかかったから僕は行くね」

「ああ、おつかれ」

 

 学校を出て下校中にカフェに寄り、そこでケーキとコーヒーを堪能したあと。家に戻った俺は工房で本棚に収納してあったてきとうな魔術書を手に取る。さてと、今日は……そうだな、いつも通り宝石魔術の文献を読むとするか。

 なんか無性に嫌な予感もするし、使い魔の数も増やすとしよう。

 ああ、こうしているとやはり俺はこういうのが性に合ってるとつくづく実感する。魔法師のことを学ぶのもそれなりに面白いが、魔術のことの方が個人的にずっと面白いと感じてしまう。やっぱり俺は、時代が変わろうが世界が変わろうが生き方は変わらない。平等とかほざく連中もこれくらいの自己を持てばいいのに。まあ、それはちょっと無理な話か。

 

 ーー

 

「あー眠い…」

 

 次の日の3時ごろ。俺は屋上のベンチで横になっていた。昨日の夜つい本をめくる手を止めることが出来ず、3時間しか寝ることが出来なかった。おかげで今日は眠気と格闘してばかりだった。

 

「よくないよなあこれ。生活習慣病まっしぐらな気がする」

 

 まあいいさ。明日は休みだし、今日は家に帰ったらさっさとベッドに直行するとしよう。だがその前に。

 

「流石は未来!天気予報の的中率はほぼ確実だ。いやー天気の良い日にする昼寝は格別だな!」

 

 天候の予測なら魔術を駆使しても出来るが、そんな無駄なことはする必要性を絶望的に感じない。やはり、使えるものは使わなきゃ勿体無いな。

 今日は公開討論会なこともあって周りに他の生徒もいないし、屋上はもはや俺の独り占めだ。開放的でとても快適。素晴らしい。こうなる機会を作ってくれた有志同盟の彼らには少し感謝しなくちゃな。思うだけで直接伝えるわけでもないし示すわけでもないが。

 

「取り敢えず、三十分くらい寝るか。そんでその後は……ん?」

 

 妙な車が校内に入ってきたな。機材の搬入か?それにしては積み荷は物騒だな。それに何だ?この感じ。どこかで覚えがあるような……え?

 

 次の瞬間、車から降りてきた男が手に持つロケットランチャーが発射され、学校に炸裂した。

 

「………………は?」

 

 俺はそのあまりにも唐突な光景にただ唖然とするしかなかった。だってそうだろ。いきなり学校にテロリストがやってくるとは普通は思わないだろ。

 

 

「何だこりゃ…どんどんと攻め込んできやがるぞ。思い切りが良いな。よくもまあ国立の機関であるこの学校に殴りこめたもんだ」

 

 まあまず今日襲撃してきたのは公開討論会絡みだろう。ということは生徒側にこれを手引きしたと思われる輩がいるんだろうが…正気か?いくら未成年とはいえやって良いことと悪いことの区別くらい出来るだろ普通。就職先が無くなるどころの話じゃないぞ。いや、まてよ?暗示とかだったらまだ全然可能性はあるか。だとしたらお気の毒だな。可哀想に。捕縛されたらまず事実確認としてその辺を警察に調べてもらえるよう祈るしかないな。

 

「まあ、どうでもいいが」

 

 それにしても、荒削りなやつが多いな。よく見てみたら連中、魔法師として三流もいいところだ。少し時間が経てばこっちの教員や生徒も反撃しているし、よく見ると既に鎮圧しているところもある。

 

「こっち側もすぐに対応してるし、まあこれなら俺が直接対応はしなくても大丈夫そうだな」

 

 だが、一応俺も今はこの学校の生徒だ、飛んで来る爆弾の処理や他の生徒の援護くらいはやっておくか。

 んでもって大体片付いたらほとぼりが冷めるまではここで大人しくしているとしよう。

 

 ーー

 

 校内に侵入したテロリストを鎮圧し、アジトの居場所を突き止め、十文字克人率いるメンバーがアジトへ向かった後。校内に残った者たちは今回の件の後始末に追われていた。

 

「真由美。怪我人の数は把握出来たか?」

「ええ、大体は把握出来たわ。でも重症だったり意識不明の重体に陥ってる子はいないわね。酷くて骨折程度よ」

 

 生徒会、風紀委員を率いる二人はそれぞれに課せれた仕事をこなしていく。だがそれでもやるべきことは山積みだ。状況の確認、怪我人の保護、侵入者の扱い。目の前のことが片付いても仕事が減っていく実感が全く沸かない。もはや一種の拷問であった。

 

「まったく嫌になるな。皆頑張ってくれてるが圧倒的に人手が足りない」

「はんぞーくんが手の空いてる子や体力が有り余ってる子に手伝いを呼びかけてくれてるけど、それでもギリギリカバー出来てる程度ね…」

「壬生のこともあるし、他にも洗脳、または暗示に掛けられていた生徒もいるだろう。彼等への対応も慎重に考えなければな」

「ええ、そうね」

 

 壬生沙耶香。反魔法国際政治団体ブランシュに利用され、テロリストを学校に手引きした。いや、させられた生徒。

 彼女以外にも洗脳や暗示などに掛けられ、認識が曖昧なままテロに加担した生徒は一人や二人程度ではないはずだ。彼等への対応を考えると流石の真由美も頭が痛くなる。

 

「なるべく警察、ましてや公安に話を持っていかれるのはマズイわね。なるべくこちら側で………ん?」

「どうした?」

 

 真由美と摩利が後始末をする中、魔法科高校の職員達は鎮圧したテロリストの対応に追われていた。

 

「収容用の車両は何台まで詰め込めるんだ?」

「二十人ほどだ。三台来るらしい」

「分かった。じゃあ……「あ“あ“!」……ん?」

 

 その時、捕らえたテロリストの中から幾人かの様子が変わった。

 

「あ、あ、あ……あああああああああアアアアアアアアガアアアアアアアアアア!!!!!!」

「な、何だ⁉︎」

「こいつら急に⁉︎」

 

 発狂する者、悶え苦しむ者、暴れ回る者。それぞれの様子は様々だった。中には体の一部が巨大になったり歪に変わるものもいた。だが、幾つか共通する部分が最低でも三つある。

 

 一つ目は、人並み外れた怪力を持つこと。

 

「ガアアアアアア!!!!!」

「うおっ⁉︎」

 

 地面を殴りつけただけで地面が罅割れる。その衝撃波によって大の大人が吹き飛ばされるほどだ。

 二つ目は、

 

「な、何なんだコイツら⁉︎」

「魔法が効いてない…いや違う、通じていないだと⁉︎⁉︎」

 

 魔法が通じないことだ。

 

 吹き飛ばそうとしても、切り刻もうとしても、炎で焼き尽くそうとしても通じていない。効果がいま一つとして無い。

 霊に物理法則が効かないような、理不尽な何かがそこにあった。

 それは、まさに化け物であった。

 最後の三つ目は、

 

「aaaaa……」

「お、おい⁉︎何してる!くるな⁉︎やめてくれ!お願いします!待って!助けてくれ!!」

 

 化け物は既に捕縛され、身動きが取れないテロリストの男へと近づき、くみつき、そして歯を突き立てた。そして、

 

「いやだああああああああああああああああああああ“あ”あ”あ“‼︎⁉︎⁇」

 

 噛みつかれた男は化け物と同じような存在に成り果てた。これにはその場の誰もが恐怖した。なにせ、ああなれば自分たちもこの化け物と同じ存在になり果ててしまうのだ。恐怖しない方がおかしい。

 

「摩利!」

「分かってる!真由美は生徒の避難をー」

 

 その悪夢は、二人にも微笑んだ。

 

「アアアアアアアァァァァァaaaaaaaaaaーーーーーー!!!!!!」

「⁉︎この!」

 

 真由美も摩利も、脅威に臆することなく干渉系の魔法を行使し応戦する。

 

「ガアアアアア!」

 

 だが、結果は無惨なものだった。

 

「…………うそ………?」

 

 十師族の一員だとしても、化け物の前ではそれはまったくの無力であった。

 化け物の手はまず、真由美の頭を目掛けて振り降ろされた。その頭を握り潰し、殺し、地面を彼女の血で染める為に。そうすることに特に何の意味も見出さずに。

 

「……………」

 

 その様子を礼司は校舎の屋上から見下ろしていた。暴れ回る奴らの正体を礼司は知っている。人間が化け物に変わるロジックも大まかに分かっていた。だが、今までその化け物どもが大人しくしていた仕組み、そして自身が化け物の存在を感知出来なかった仕組みは分からない。礼司はそれでも良いと思った。考えたってどうせ正確な答えではない。どうやって、どのようにしてやったかは礼司の住む世界においては重要じゃないからだ。

 礼司は自身の魔術回路を丁寧に、効率よく、そして素早く回転させる。

 

「ーset、swordbarrelー」

 

 その声と同時に、屋上では魔法師から見ても魔術師から見てもありえない光景が広がっていた。

 何百、何千。数えるのも馬鹿らしく思える数の剣が屋上に出現していたのだ。

 

 そしてー

 

「舞え」

 

 剣はまるで意思があるかのように飛び、暴れる化け物達に容赦なく突き刺さる。頭、胴体、腕、足。一瞬のうちに体のあちこちを蹂躙する。

 

「……え?」

「剣……?」

 

 化け物どもは倒れることもなくその場で電源が切れた機械のように動かなくなった。それはまるで一種のオブジェのようだった。現実感のない化け物にそれ以上現実感のない剣が何本も突き刺さっている。何も知らない人間が見れば、悪趣味なアート作品だと思うことだろう。

 

「よし、校内の屍食鬼は一掃出来たか。じゃあ後は………そこか」

 

 礼司は殺した化け物の、屍食鬼の死体に何らかのパスが繋がっていることを見抜いた。パスが繋がる先は、それらを送り込んできたブランシュのアジト。

 そしてそこに近づく覚えのある気配をいくつか感じた。

 

(この際仕方がない。この学校のことは教会に任せよう……それにしてもあの屍食鬼、何かが変だったような…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…いや、今はいい)

 

 協力者への最低限の連絡だけ済ませ、礼司は強化魔術を自身の体に行使し、屋上から飛び降り街を疾走する。屋根に乗り、または飛び越えながら一直線に駆けていく。

 向かう先にはきっと、今まで自分の頭を悩ませてきた元凶がいると信じて。

 

 ーー

 

「あ、あああぁぁぁぁああああ!!!手がぁ!僕の手があああ!!!!」

「…司波、これで全員か?」

「おそらくは」

 

 ブランシュのアジトは既に達也率いるメンバーが制圧したあとだった。

 リーダーである司一も、腕を切断された際の痛みで苦しんでいる。最早彼自身に反抗出来る力は無い。達也はそう確信していた。

 

「クソ!クソクソクソクソクソ!!!!こんなっ!こんな筈じゃ!折角()()の力添えも貰えたというのに!」

 

 その言葉に達也だけでなく、その場にいた桐原、十文字も反応する。

 

「おい待て。先生ってのは何だ?まだ他に仲間がいんのか?ああ⁉︎」

 

 桐原が司一の胸倉を掴み恫喝する。だが一はそれを気にすることなくただただ叫び続けた。

 

「先生!お願いします‼︎コイツを!こいつらを殺してくださいいいいいいいいぃぃぃぃぃいいい‼︎‼︎」

「テメェ‼︎さっきから良い加減にー」

 

 その瞬間、達也の全身に今まで経験したことのない悪寒が走った。

 

「どうしたんだい司クン。大声なんか出して、喉を痛めてしまうよ」

 

 それは、その場に突然現れた。

 

「………は………?」

 

 気づいた時には、桐原の腕から司が消え、それに持っていかれていた。

 

「おやおや?おやおやおやおやおや?どうしたんだい司クン。腕が無くなっているじゃないか。イメチェンにしては少し張り切り過ぎだよ君。削ぎ落とすところはきちんと考えて削ぎ落とさなきゃ、美しくないよ」

 

 それは一見、普通の人間の男に見えた。だが何かが違った。

 肩まで伸びた金髪、薄気味悪いほどに白い肌にルビーのような、血のような真っ赤な瞳。現代風のコートを着ているが、何故かそれが貴族の正装に見えるほどの貫禄。そしてその貫禄を打ち消す軽薄な言葉使いの中にある、ドス黒い何か。

 

(こいつは……)

 

 達也は男の異質さを感じとっていた。眼を使って男を見たわけではない。礼司との一件以来、圧倒的に不明瞭な物を見た時の対処法を達也自身が編み出せていないのもあって直ぐに精霊の眼を使わなかった。

 この男の異質さを感じとったのは、達也の人間としての、生物としての直感だった。『こいつは、何かがヤバい』と。

 

「せ、先生‼︎コイツを、コイツらを殺してください‼︎それか、僕にも力をください‼︎コイツらをグチャグチャにして嬲り殺せるようになれる力を僕に!」

 

 司は懇願する。まるで玩具を強請る子供のように。

 

「ふむふむ、ふむふむふむふむ成程成程なーるーほーどーねえ……」

 

 男は周囲を見渡す。品定めをするかのような、価値を見極めようとする目を達也に向ける。そして、どこか落胆した顔をした後、

 

「じゃあ、頑張って♪」

 

 ズブリ、と。男が司の胸に自身の腕を突き刺した。

 

「……え?……ガッ⁉︎」

 

 変化は劇的だった。

 

「ああああ……ああああああはははははははははははは!!!!あは!アハ!あはははははあ!!!」

 

 司の体中に血管が浮き出て、顔のあらゆるところからから血が溢れ出す。失った腕の断面からは、赤い触手のようなものが生えてきた。

 

「凄い!凄い凄い凄い凄いですよ先生!この力があれば、僕は無敵だあああ!」

「おやおや。なんとまあありきたりな言葉だ」

 

 司は喜びを露わにしながら赤い触手を振るう。すると、アジトのあちこちが切り刻まれていく。

 

「な、何だっ!おい司波兄!お前、何がどうなってんのか分かるか⁉︎」

「……すいません、何も。でも今はそんなことよりこいつをどうにかしなければですよ」

(今のは、何だ?切断の魔法?それとも収束系で血液を水刃カッターのようにして切り裂いたのか?いずれにせよ危険だ)

 

「これで、これで死ねええええええ!」

 

 司が自身に襲いかかるのを落ち着いて認知した達也は、CADを構え魔法を行使する。だが、

 

 達也の魔法は、発動しなかった。

 

(……何?)

 

 だが、達也にその理由を考える時間は無かった。

 

「あああ!!!!」

「チィ!」

 

 絶え間無く赤い触手の連撃が達也を襲う。達也は紙一重でそれらを躱すが、それにも限界があった。

 

(避けきれない…)

「お兄様!」

「深雪⁉︎」

 

 深雪がその場にやってきてすぐ自身の魔法を司と男に向けて行使する。

 『ニブルヘイム』。深雪が使う魔法の中で特に強力な振動減速系広域魔法。深雪はそれを最大出力で対象にぶつけた。そしてそこに畳みかけるように十文字が得意とする『ファランクス』を行使し、二人を押しつぶそうとする。

 

「へえ、成程」

 

 そして司と男はそれを軽くいなした。

 十文字の『ファランクス』は男により小突くだけで破壊され。

 

「馬鹿な……」

 

 深雪の『ニブルヘイム』に至っては何も効果が表れなかった。

 

「そんな……………!」

 

 十文字は動揺はしたが、すぐに冷静になり次に自分自身が出来る対処法を頭の中で模索する。だが深雪は、自身の魔法に自信を持っていたが故に、効果がなかったことにショックを受け、一瞬動くのを止めてしまった。

 その隙を、司は見逃さなかった。

 

 

「死ねえ!女ァ!!」

「……あ……………」

 

 赤い触手が、深雪に迫る。

 

「深雪!!」

 

 達也の頭に、深雪の死という最悪の未来が浮かび上がる。そうならないために、今まで出したことのない速さで体を動かし、深雪を庇おうとする。だが、それも間に合いそうになかった。

 だが、赤い触手が深雪に届こうとしていたまさにその時。

 

 何本もの剣が、全方向から司を串刺しにした。

 

「え?」

 

 そして今度は、どこからともなく現れた何者かが、司の首を刎ねた。

 

「……へ…?」

 

 刎ねられた首は、

 

「失せな。害虫」

 

 何者かから放たれた光によって消し炭にされた。

 

(あいつは…)

 

 達也はその者を知っている。自身の眼を破壊しかけるほどの情報量を持つ異様な人間。

 

 遠坂礼司。

 

「おやぁ?これはまた実に面白い客人だ。やあ魔術師クン、コーヒーでもどうかな?」

「遠慮するよ。ただその代わり、あんたを殺した後手に入れた金で高いケーキでも食わせてもらうよ。死徒のお兄さん」

 

 礼司は中華風の短剣を二振り手に持ち戦闘体制に入る。

 

「コーヒーで我慢しておくと良い。甘いものは胃もたれするよ」

 

 男、いや使徒は右手を前に出し構えをとる。

 ここに魔術師と死徒、魔法師にすら理解されないであろう二人の異常者の殺し合いが始まろうとしていた。

 

「「……………………」」

 

 刹那の静寂が、その場を支配する。そしてー

 

 ジャキン!という金属音の後に礼司の背後に無数の剣が現れる。

 

「投影、一斉射出」

「ははっ!いいねえ!!大盤振る舞いだ!!!!」

 

 戦いの火蓋が切られた。

 

 

 

 




まほよイベント、想像してた五倍はトンチキだった……


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