遊☆戯☆王 ポケットモンスターズ   作:木之下ジャンクション

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まさかの青眼ストラクまで発表されて嬉しいどころの騒ぎではありません。
これはもう、社長デッキを組み直すしかないですね。



15.忍び寄る魔の手‼

 

 無事リゾートデザートを抜けた一行はライモンシティにて別れた。メイとヒュウはライモンジムへ挑戦するつもりであるという。

 彼女らの申し出を海馬は「そうか」と一言で済ませ、特に未練もなく立ち去った。彼からすれば快適な一人旅を取り戻せて幸運とすら思っている。

 そのまま解放感を土産にホテルへ直行。旅の垢を落とし、休息ついでに今後のプランを練って発とうと考えていた。

 

 そんな折に。

 

 

『やぁ海馬くん。こちらはハンサムだ!情報を共有したいので会えないかな?」

 

 

 間が悪くハンサムの通信が舞い込み、彼の予定は早くも狂わされることになった。

 

 

 

 

 

 そういうワケで、更に時間は飛んで数日後。ライモンシティのポケモンセンター。併設されたカフェにて海馬は、ハンサムと向かい合う形で席についている。

 

「……で、まともな情報はあるんだろうな?」

「いきなりご挨拶だね。まぁ、キミらしいが……少し待ってくれ。色々と持って来た」

 

 言いながらカバンをがさごそ漁るハンサムを眺め、静かにコーヒーを啜る。その態度はことさら不愛想である。

 当初の予定ではなるべく早く出立するはずが、この男と会うためにシティへ留まらざるを得なくなり、それで少々苛立っていた。

 

「ふん、なら早くしろ。オレは貴様と違って暇ではない」

 

 カップを置いてハンサムを睨む。気に入らなければ早々に席を立ちそうな雰囲気だ。

 

「そう急かさないでくれよ。ほら、これだ」

 

 一方のハンサムは、今まで散々翻弄されてきた経験もあってか、この程度では動じることもなく資料を出した。文字や画像が敷き詰められた紙面には「極秘」の朱印が押されている。

 向こうも切羽詰まっているのだろうか。渡された資料を目に、これまで退屈そうにしていた海馬も思わず「ほう」と関心を示す。

 

「これはなんだ」

「キミがタチワキシティで捕らえた下っ端たち。彼らから聞きだしたものだ」

「あの雑魚どもか。何か知っているようにも見えなかったが……」

「まあまあ、読んでみてくれたまえ」

 

 促されるまま資料をざっと流し見する。下っ端どものくだらない証言が大半を占める中、とある供述が目に留まった。

 

「……貴様が見せたかったのはこれか。『プラズマフリゲート』だと?」

「下っ端の一人がいきり立って話した言葉だ。隣の画像も見てほしい。最近イッシュ地方の各地で頻繁に目撃されているという、無登録の船舶だ」

 

 言われて海馬が目を向ければ、画質の荒い写真にはぼんやりと、青白い帆船が写っている。

 

「残念ながらフリゲートの詳細は、下っ端も聞かされていなかったようで不明だ。だが私は、君が聞きだした情報と照らし合わせて、一つの仮説を思いついた」

「面白い。言ってみろ」

「このフリゲートはただの帆船ではない。『王』とレシラムの二大巨頭を失ったプラズマ団が新たに開発した切り札であると、私はそう考えている」

 

 拠り所の無いカルトが暴走して武力に走るといった事例はよくある話だ。

 なるほど伊達に国際警察の肩書きを持ってはいない。海馬も否定することはなく、むしろ素直に頷いてみせる。

 

「フフ……貴様にしては悪くない推察だ。しかし妙でもある」

 

 ゆっくりとコーヒーを飲み干して、資料片手に小さく笑う。

 

「二年前のことには疎いが、連中は支配のために伝説の『青眼(ブルーアイズ)』まで持ち出してきたのだろう? その野望が潰えたとはいえ、軍艦一隻に全てを託すとは正気の沙汰ではない」

「それが不思議なところでね。イッシュ地方だってやわじゃないことくらい、プラズマ団たちも理解しているはずなんだが」

「つまりは裏があるということか。フリゲートの建造もその手段だと?」

「おそらくはね。ただ、彼らの真の狙いが不明のままというのが歯痒いな。いっそフリゲートに潜入することができれば……!」

「……ふむ」

 

 ハンサムの熱弁を聞き流しながら、ふと。

 海馬の視線が資料から逸れて、ガラス張りのカフェの外へと向けられた。

 見えるのはライモンシティの明るい街並み。通りを歩く人とポケモンたち。川に面した街路樹の隙間から顔を覗かせるシティのシンボルがひとつ、遊園地の巨大観覧車。

 何の変哲もない、あくびが出るほど平和な景色。しかしそれらを眺める海馬の眼は、妙な違和感を胸に右へ左へと移ろう。

 

「…………」

「どうした?何か気になることでも?」

「……言い忘れていたな」

「うん?」

 

 ハンサムが不思議そうに海馬を見返すと、彼は資料を突き返して言った。

 

「オレはどうも連中にマークされているらしい」

「……え?」

「ヒウンシティで一悶着あってな。そこでプラズマ団直々に宣告された」

「おいおい、嘘だろ……?」

 

 他人事のような物言いにハンサムの顔が引きつる。海馬のことだから決して冗談ではないのだろうが、どうしてこの男は行く先々で問題を起こすのか。

 彼は協力者でも警察の人間でないから捜査の心得がないのは、身に染みてわかっている。それにしたって、捜査対象から逆に目を付けられるなんて前代未聞ではないか。

 

「目を離した隙に何をやったんだ? 言ってるだろう、これは極秘の捜査だよ⁉」

「知るか。オレとて不可抗力だ」

「いや、それでも下手すりゃ今後の捜査も筒抜けに……‼」

 

 頭を抱えるハンサムをよそに海馬は淡々とした口調で、コーヒーのおかわりまで注文しながら、

 

「落ち着け。いずれは直接潰す組織だ、それが早まっただけだろう」

「早まった、って……」

「連中がオレを標的にするのは勝手だが、それは奴らが僅かな寿命を縮めるだけの愚行に過ぎんさ」

「いや、うん……そうかもしれないが……」

 

 底なしの自信をちらつかせる物言いにハンサムが呆れて息をつくと、ちょうど追加のコーヒーが届いた。湯気のたつカップを持ちながら、海馬は「しかし」と意味ありげな口調で言う。

 

「まぁ、貴様の言い分も理解できないわけではない。今後しばらくは、情報提供にも場所を考えた方がよさそうだ」

「おや、そりゃまた君にしては聞き分けが……いや、似合わない台詞だけど」

「先ほどから妙な視線を感じてな」

 

 海馬の不敵な笑みに、ハンサムもつられて視線をカフェの外を見やる。しかし、そこには先程と変わらぬシティの風景があるばかりで特におかしな様子は見られない。

 

「……私には何もわからないが」

「そうだろう、何せオレとて勘止まりなのだからな」

 

 含み笑いのままカップを口元に近づける海馬。その姿にハンサムは眉をひそめながら、自身もコーヒーを啜るのだった。

 

 

 

 

 

〇●〇●〇

 

 

 

 

 

 ――同時刻。カフェを視界に収められる距離の、とあるビルの屋上。

 

 

「……気づかれたか?」

「まさか。我々の技術は間抜けな下っ端どもとは比較になりません」

「気のせいで済めば良いが、くれぐれも監視は怠れんぞ」

 

 

 会話するのは二人の影。共に黒を基調とした服を着用し、腰を低く据えて標的の様子を伺っている。

 その影の一人はコンパクトな双眼鏡を手にカフェの店内を注視しながら、その虚ろな眼を細めながら言った。

 

「一瞬動いた奴の視線。私たちに探りを入れるように動いていた。確かに、報告通りの切れ者やもしれんな」

「そうでしょうか。私には狂った独裁者にしか見えませんが……」

「うむ。いずれにせよ、我々に仇なすものは排除せねばならん。それがあのお方の御命令とあればなおさらな」

「もちろんです」

 

 そう言ってもう一方の影は、懐から取り出した端末を何やら操作する。

 

「おっと、いいタイミングだ。向こうから連絡が入りましたよ。……既に手筈は整い、あとは合図を待つだけと」

「よろしい。さっそく取り掛からせろ。私はこのまま監視を続ける」

「承知」

 

 短いやりとりの後、影の一人は音もなく消えた。

 残された影は再び双眼鏡を覗きながら、くつくつと陰気な笑い声を漏らす。

 

「さて、どう出る海馬とやら? 貴様の実力図らせてもらう……!」

 

 

 

 

 

〇●〇●〇

 

 

 

 

 

 ここはライモンシティの名所。稲妻煌めく輝きの遊園地。

 イッシュの娯楽の中心とされるこの街には、バトルコートやミュージカルなど様々な娯楽施設が集まっているが、中でもここは別格だ。

 立派な巨大観覧車の下にはネオンが彩るジェットコースター、ピカチュウバルーン、そしてポケモンジムを兼ねた華やかなステージ。元より活気に溢れたスポットであるが、今日は休日ということもあり、普段以上に大勢の客で賑わっている。

 

「どうにかゲットしてやったぜ、ボルトバッジ!」

 

 そんな人混みを一望しながら、ヒュウは一人川沿いの柵にもたれて笑った。

 上機嫌な彼の手にはジムで獲得したばかりのボルトバッジが誇らしげに輝いている。激闘を征して手に入たそれを眺めるのが、ヒュウはたまらなく好きだった。

 旅を通して自分は強くなっている。そう実感できるからだ。

 

(オレはもっと強くならなくちゃならない。そのためにはまず、ジムバッジを集めて……!)

 

「ヒュウ! ここにいたんだね」

 

 勝利の余韻に浸りながら物思いにふける彼へ声をかけたのは、ジム戦を終えて合流したメイ。彼女の手にはヒュウ同様にボルトバッジが握られている。

 

「おぉメイか。お前も勝ったのか?」

「うん! カミツレさん、とっても綺麗でバトルもすっごく楽しくて……」

 

 メイは丸い瞳をキラキラさせて頷き、バッジを見せつけて頬を緩める。余程充実したバトルだったのだろうが、羨ましさすら覚える純粋な喜びようだ。

 

「……お前はいつも、バトルの度に笑ってるな」

「そうかな? でも、それが私のスタイルだから」

「スタイルか。……メイらしいよ」

 

 穏やかに微笑んでいるが、どこか陰りが感じられる表情のヒュウ。

 ぼそりと呟き、物憂げに遠くの方へ目を向けた――まさにその時だ。

 

 

 ドゴオォォォォォォォン、と。

 

 

 凄まじい轟音が鳴り響き、二人は思わず耳をふさいだ。

 

「な、なんだッ⁉」

「ヒュウ、あれ……‼」

 

 メイが指さすのは観覧車のてっぺん。空のゴンドラが黒焦げになって煙を上げているのが見える。おそらくは今の爆音の正体だ。

 

「爆発だと⁉」

 

 同時に、逃げ惑う客たちが口々に叫び声をあげる

 

「襲撃だ……!プラズマ団の襲撃だ‼」

「プラズマ団が遊園地に‼」

「逃げろ、なにしてくるかわからないぞっ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ヒュウはもう駆け出していた。

 

「ちょッ⁉ 待ちなよヒュウ、危ないって――」

 

 咄嗟に止めようと伸びたメイの手を振りほどき、人波に逆らって突き進む。

 プラズマ団の名を耳にしては、いてもたってもいられない。ヒュウは怒りに髪を逆立て観覧車の下へと転がり込んだ。

 

 

「どこだ! どこにいる、出て来いプラズマ団ッ!!」

 

 

 怒鳴るヒュウの眼に飛び込んできたのは、観覧車を占拠する複数の人影。その数ざっと十余か。皆一様に黒ずくめのスーツを着込み、にやつきながら立っている。

 そしてプラズマ団員の足元には、たくさんのモンスターボールが散乱していた。彼らがせっせと地面に落ちたそれらを回収する様子から、ヒュウは即座に察した。

 

「また人のポケモンを奪いに来たな、プラズマ団どもめ……ッ‼」

「あん? 何だお前は」

 

 ヒュウの怒号に動じる様子も見せず、下っ端の一人は煩わしそうに顔を上げた。

 

「こっちは仕事で来てるんだよ。お子様は帰んな、ケガするぜ」

「誰が子供だ! お前こそ、盗んだボール置いてとっとと失せろよ」

「盗んだ? ……やれやれ人聞きが悪いな」

 

 下っ端は拾い上げたボールをしまってせせら笑う。

 

「これは我々が有効活用してやるのさ。人が育てたポケモンで楽に勝たせてもらうってな」

「……ッ‼」

 

 悪辣な態度に堪忍袋の緒が切れる。気付けば感情のままに、モンスターボールのスイッチを押していた。

 

「なんだよ、やる気か? プラズマ団に刃向かおうってのか?」

「当然だろ……‼」

 

 ヒュウはその目をカッと見開き、勢いよくボールを投げつけ宣戦布告する。

 

「オレは今から、怒るぜッ‼」

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