遊☆戯☆王 ポケットモンスターズ   作:木之下ジャンクション

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3.ポケモン、貴様に決めてやるわ‼

 

 穏やかな風が吹く昼下がり。トキワシティへと続く2番道路の景色は呆れかえるほど平和だった。

 暖かく照る日の下で育った綺麗な花々に、大空を舞う鳥ポケモンたちの群れが、新たな旅の始まりを感じさせる。

 

 

 しかし、そんなのどかな風景に似合わぬ男が一人いる。

 青々と生い茂った草むらを進む海馬瀬人は、行く手を阻む敵に向け、激しい怒りを爆発させていた。

 

 

「クルッポー!」

 

 

 激高する彼と対峙しているのは一羽のことりポケモン、ポッポである。

 茂みの中から突如鳴き声と共に飛び出して、出会い頭に砂煙を浴びせてきたのだ。

 

 

▽ポッポ の すなかけ‼

 

 

 小鳥とはいえ立派なポケモン。

 秘めたパワーは侮れず、旋風により巻き上がった砂粒の量も尋常ではない。

 流石の海馬も、不意の煙幕を真正面から受けて対抗する術は持ち合わせていなかった。

 

「くっ……この俺に砂を撒くなどふざけた真似を‼」

「ポッポゥ‼」

 

 コートに付着した砂を払いのけて悪態をつくが、むしろ逆効果であった。

 野生のポケモンは気性が荒い。

 ポッポも彼の行動を威嚇と見なしたのか、大空を背に翼を広げると、猛スピードで急降下。

 その小さくも鋭いくちばしを、海馬目がけて思い切り突き出してくる。

 

 

▽ポッポ の つつく 攻撃‼

 

 

 矢疾の如き突進をすんでのところで見切る海馬だが、回避に精一杯で反撃のしようがない。

 小柄で素早いポッポに渾身の手刀はかすりもせず、一時的に追い払うのが関の山といったところで、翻弄され続ける彼のフラストレーションは溜まる一方だ。

 

「おのれ、小鳥風情がこの俺を挑発するとは、随分と見下げ果てた根性よ!」

「ポッポォ!」

「……いいだろう、ならば丁度よい機会だ。貴様を実験台に、このモンスターの破壊力を試してくれるわ!」

 

 度重なるポッポの攻撃に業を煮やした海馬は、突進から身をかわす傍ら、腰のベルトに手を伸ばす。そこには紅白カラーが特徴的なカプセルが一つ取り付けられていた。

 

 

 ――モンスターボール。

 

 

 ポケモンを捕獲し連れ歩くための必須アイテム。

 幅広く流通するこの道具を持たずして旅するトレーナーはほとんどいない。

 世界に息づく様々なポケモンたちと交流を図る上では欠かせない存在として、多くの人々に愛用されており、もはや世界的なシンボルマークと言っても過言ではないだろう。

 何せポケモンに疎い海馬ですら、うっすら認知しているほどなのだから。

 

 

 ……まさか実際に使う日が来るとは思ってもみなかったが。

 

 

「いくぞ! モンスターを攻撃表示で召喚!」

 

 

 海馬がモンスターボールを高く投げ上げると、それは空中でパカリと開いて、白く眩しい閃光を放った。

 その光の中からポケモンが一匹、主の声に呼応し飛び出す。

 

 

▽海馬 は ヒトカゲ を繰り出した!

 

 

「カゲカゲ!」

 

 

 元気な鳴き声と共に草むらへ着地したのは、とかげポケモンのヒトカゲだ。

 出てきたばかりだが、既に戦意は十分といった様子で、尻尾の炎をメラメラ燃やして目の前のポッポを威嚇する。

 もっとも迫力はあまりなく――勇ましく両手を広げたその姿だが、むしろマスコット的な可愛らしさが勝っていた。

 

 

「……本当に奴の言うことは正しいのだろうな」

 

 

 繰り出したヒトカゲの見た目に疑念を払拭しきれていない海馬は、ふとオーキドの言葉を思い返すのだった。

 

 

 

♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

「なに、俺にポケモンを持てと?」

 

 

 

 遡ること数時間前。

 旅立ちの決意を固めた海馬だったが、その行く手はオーキドの警告に阻まれることとなる。

 

 理由は単純明快だった。

 モンスターボールはおろかポケモンに関する知識もない海馬を、彼が放っておけなかったから。

 

 普段から初心者トレーナーを支える教育者として、いつになく真剣な面持ちで頷いてみせる。

 

「うむ。旅を進めはしたが、手ぶらで発つなど無謀の極み。迂闊に草むらに入るなというのは常識じゃ!

 もし凶暴な野生ポケモンにでも出会えば、太刀打ちできずにやられるのは君の方じゃぞ?」

「ふん、くだらん。ポケモンなどなくとも――」

「どんな手段を使うのかは知らんが、少なくともその立体映像ではコラッタにすら勝てんよ」

「…………」

 

 デュエルディスクに伸びかけた手が引っ込む。

 

 自身の言葉を遮って突きつけられた厳しい言葉に、流石の海馬も閉口せざるをえなかった。

 問答に言い負かされた彼は、苦虫を嚙み潰したような顔でオーキドに突っかかる。

 

「……ならばどうしろと言うのだ!」

「焦る必要はない。君は新米トレーナーみたいなものじゃし、ワシは君のような新人をサポートする義務がある。ここは一つ、研究所のポケモンを貸してやろう!」

 

 誇らしげに言ってオーキドは、散らかった机の上に鎮座する無骨なケースに手を伸ばすと、海馬の前で開いてみせる。

 

 その中に入っていたのは、そっくりな見た目のモンスターボールが三つ。

 しかし、収められているポケモンは違うようで、目を凝らせばうっすらと中身が透けて見えるようだ。 

 

 戸惑う海馬を前に、オーキドは説明を続ける。

 

「ここに三匹のポケモンがおるじゃろ? どれも懐きやすく育てやすい、カントー地方の初心者用ポケモンじゃ!」

「この中から選べだと? だが、こいつらはあまりにも……」

「言いたいことはわかるが心配はいらん。進化後のパワーは折り紙つきなんじゃ!

 きっと気に入るぞ、ワシが保証しよう!」

「だが……」

「まぁよいから」

 

 湧き出る不満をこぼす間もなく。

 艶やかに輝く三つのモンスターボールをぐいと差し出され、海馬は選択を余儀なくされる。

 

「ほれ! 好きなポケモンを選びなさい」

「…………」

 

 しばらく彼は神妙な面持ちで立ち尽していたが――

 

「……くだらん。受け取ってやるが、期待はせんぞ」

 

 覚悟を決めて中央のモンスターボールを取り上げた。

 他の二体よりはマシだろうという、僅かな希望を頼りにして……

 

 

 

▽海馬 は ヒトカゲ を手に入れた!

 

 

 

 どうにか選び抜いたポケモンが、このヒトカゲというわけなのだ。

 

 

 

♢ ♢ ♢ ♢ ♢

 

 

 

 

「カゲェーッ!!」

 

 ポッポとの睨み合いもそこそこに、ヒトカゲは再度甲高い咆哮を上げると、こちらを振り返って指示を仰ぐ。

 手持ちに加えて間もないが、忠誠心は高いらしい。流石は初心者用と銘打たれているだけはある。

 少々慣れないところはあるが、海馬は迷いなく命令を下した。

 

 

 ――しかし。

 

 

「やれ! あの鳩に攻撃しろ!」

「カ、カゲッ?」

 

 

 あまりにも抽象的な攻撃宣言に面食らい、目を丸くするヒトカゲ。手足をバタバタさせて自身の困惑ぶりを訴えかける。

 その様子を見た海馬は、思い出したかのようにコートの内ポケットへ手を突っ込んだ。

 

「くっ……なんとも面倒な仕様だ!」

 

 そうぼやいて取り出したのは手帳型の赤い端末——オーキドから預けられたポケモン図鑑だ。

 出会ったポケモンを記録する他に、手持ちポケモンのステータスやワザも確認できる高度なガジェットである。

 試しにヒトカゲへ向けてみれば、瞬時にそのデータが画面いっぱいに表示される。

 

 

 — — — — — — — 

  ヒトカゲ(♂) Lv.5

  ▽ひっかく ▽なきごえ

 — — — — — — — 

 

 

 手持ちのポケモンを戦わせる場合、トレーナーによるワザの指示が必要となる。

 どうも貧弱なワザしかないようだが、レベルの低さを鑑みれば当然か。

 しかし今は、この限られた手札で戦うほかない。

 

「ふん、奴に鉤爪を喰らわせてやれ! "ひっかく''のだ‼」

「カゲッ!」

 

 改めて命令を受けたヒトカゲはこくりと頷き、ポッポ目がけて駆け出した。思いのほか俊敏な動きで間合いを詰めると、その勢いのままに鋭利な爪を振りかざす。

 

 

▽ヒトカゲ の ひっかく 攻撃!

 

 

 身構えていたポッポであったが、攻撃は顔面にクリーンヒット。流石に耐えられなかったのだろう、あえなく地面に叩き落とされて、目を回しながら突っ伏し倒れた。

 

 

▽ポッポ は 倒れた!

 

 

「なに、一撃だと……! 」

「ヒト~!」

 

 予想外の奮闘ぶりに驚く海馬。そんな主人を前にして、小さな勝者は胸を張ってひと鳴きしてみせる。

 するとポケモン図鑑のランプが青く光り、新たなメッセージを読み上げた。

 

 

▽ヒトカゲ は ひのこ を覚えた!

 

 

「……ワザまで習得したか。この成長速度、確かに奴が勧めるわけだ」

 

 図鑑を確認しながら、海馬は先ほどとは打って変わって感心したような声で呟く。

 今まで半信半疑であったが、こうも戦果を見せつけられては認めざるを得ない。いくら低レベルでも、ポケモンに秘められたパワーは馬鹿にできないという事か。

 

「悪くない。どうやら多少は戦えるようだな」

「カゲ、カゲ!」

 

 素っ気なくとも褒められたのは嬉しいのか、ヒトカゲは小躍りしながら海馬の周りを跳ねる。

 ポテンシャルは高いが、こういった仕草はやはりペットに近しい。

普段のデュエルで使役する、ソリッドビジョンのモンスターとは全く異なる存在であると思い知る。

 

「いいだろう、戻れ」

 

 短く告げると、海馬はモンスターボールを手に取りヒトカゲに向けた。

 すると開閉スイッチの先端から赤い光線が放たれ、それはヒトカゲの体を包み込むと、瞬く間もなくボールの中へと消えていく。

 

 そうして手元に残されたボールを眺めながら、誰にともなく独り言ちる。

 

「ふん、しばらくは()()()として使ってやる。光栄に思うことだ」

 

 その表情は、彼にしては珍しく穏やかに見えた。

 常識の通用しない世界に迷い込み、怒涛の展開に見舞われる中で、ようやく一息つけたからだろうか。

 しばらく真緑の自然にたそがれていた海馬だが、やがてボールを仕舞うと、再び力強い足取りで歩き始めた。

 

「行くぞ! 目的地は港のある――クチバシティとやらだ!」

 

 一人威勢の良い声を上げ、草むらを猛進する。

 

 彼のベルトに装着されたモンスターボールはまるで、主人の掛け声に応えるかのようにゆらゆらと揺れていた。

 

 




海馬が使うポケモンは、原作で使用されたカードの中から、比較的知名度が高いであろうものを選抜して当てはめていくつもりです。
いわゆる「他作品キャラなりきりパーティ」というやつですね。


【リザードン】(Y-ドラゴン・ヘッド)
「X-ヘッドキャノン」、「Z-メタルキャタピラー」と合体してパワーアップするユニオンモンスター。
原作の出番は短いですが、そのインパクトから知名度は高い印象です。

ビジュアル重視でリザードンが抜擢されました。
進化前のヒトカゲは初心者用のポケモンですし、今の海馬にもピッタリでしょう。
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