遊☆戯☆王 ポケットモンスターズ   作:木之下ジャンクション

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7.プラズマ団あらわる!!

 

(くっ……このオレがポケモンセンターに出戻りとは……!)

 

 

 メイとのバトルを終えた海馬は、不機嫌そうに草むらをかき分け、ポケモンセンターへ足を進めていた。

 相方のヒトカゲは先の激闘に敗れたために、ボールの中で伸びている。さっさと回復させてやらねば、今後の旅もままならない。

 

(おのれ、あの小娘――メイといったか……!)

 

 荒ぶる感情の矛先はもちろんあの少女。勝利の余韻を噛み締めて笑う、その涼し気な顔を思い出して、海馬は更に苛立ちを募らせる。

 

 確かに、メイの戦略は見事だった。パワーで上回るヒトカゲの猛攻を、道具とワザの効果を駆使して凌ぎ、戦況を逆転してみせたのだから。

 そこまでは流石の海馬も認めざるを得ない。

 しかし、だからこそ。海馬は己の至らなさを痛感するのだ。

 これほどまでに屈辱的な敗北を味わわされたのは、久々の出来事であった。

 

(いずれ奴は、必ずこの手で叩き潰してくれる! プラズマ団と共に──)

 

 煮え滾る怒りが決意に変わる。海馬は固く拳を握りしめ、鋭い眼光を前方に向け直し──ふと。

 

 

「ム……?」

 

 

 迫る異変を感じ取り、ふと足をとめた。

 そして、思わず身構えた直後。

 

 

「ドガ~~ス」

 

 

 突然草むらの中から飛び出してきた、一匹のポケモンと相対する。

 

▽野生の ドガース が現れた‼

 

 まるで風船のような球体が、にやけ面で浮かんでいた。だらしなく開かれた口の真下にはドクロマークがあり、明らかに毒々しい体色だ。

 これだけでも異様な姿なのに、表面の噴気孔からは濁ったガスを絶えず噴出させており、何とも言えない悪臭をまき散らしている。

 

「な、なんだ……このひと際ふざけたモンスターは?」

 

 鼻を突く臭いに顔をしかめて、海馬は呆れ果てたような口調で呟いた。

 何も考えていなさそうな、気の抜けきった阿呆の顔。吹き出すガスの異臭こそ酷いが、真面目に怒る気にもなれず、手で追い払おうと試みる。

 

「気に入らん、とっとと消えろ。目障りだ」

「ドガ~~ス」

「……もう一度言うぞ。とっとと消えろ」

「ドガ~~ス?」

「――――ッッ‼」

 

 しかし警告虚しく、ドガースは能天気な声で鳴きながら宙を舞うばかり。その身体がのらりくらりと揺れ動くたびに、不快なガスも漂う方向を変えて広がる。

 その掴みどころのない態度に、とうとう海馬の堪忍袋の緒が切れた。

 

「ええい、ならば貴様の身をもって思い知らせてやるわ‼」

 

 海馬は啖呵を切るなり、ベルトに装着されたボールへ手を伸ばす。

 だがヒトカゲは既に戦闘不能で戦えず、その事を直前に思い返したことで、彼の行き場の無い怒りは遂に頂点へと達してしまった。

 

「おのれ……ッ‼」

 

 こうなってしまえば、この身一つでどうにかするしかない。

 海馬はコートのポケットをまさぐり、指先に触れたものを素早く掴むと勢いのままに、ドガースへ向けて投げつける。

 そんな怒りに身を任せて投げられた道具――新品のモンスターボールは、狙い通りドガースの眉間にクリーンヒット。

 

「ドガ?」

 

 呑気な声を上げたのも束の間、ドガースは光の粒子に包まれて、ボールの中へと吸い込まれていく。

 そして数回ボールを揺らした後に大人しくなり――ポン、と捕獲完了の音が鳴った。

 

▽海馬 は ドガース を捕まえた‼

 

「な……!」

 

 ボールの電子音で我に返った海馬は、ふと目の前の状況に絶句した。

 ドガースはいつの間にか消え失せており、その場所にはモンスターボールが転がっているではないか。

 

(くっ……このオレとした事がまさか、こんな間抜け面のモンスターを捕獲してしまうとは……‼)

 

 激情に囚われてしまったことを悔やむが、時すでに遅し。海馬は忌々しそうにモンスターボールを拾い上げる。

 不思議な技術のおかげか、悪臭は周囲に充満していた分も含めて、綺麗さっぱり消え去っていた。

 

(……毒ガスを放つモンスターか。使えるかはわからんが……捕らえてしまった以上は仕方あるまい)

 

 海馬はそう自分に言い聞かせ、ドガース入りのボールをしまった。

 完全に成り行きでのゲットのため、腑に落ちない部分は当然あるが。しかし、この際どうでも良いと割り切った。

 そんなことよりも、彼には一刻も早く向かわねばならない場所があるのだから。

 

「兎にも角にも、ヒトカゲを回復させねば話にならん」

 

 低く呟いて、海馬は再びポケモンセンターへと急ぐのであった。

 

 

 

 

 

〇●〇●〇

 

 

 

 

 

「はい、お預かりしたポケモンたちは元気になりましたよ! またのお越しをお待ちしております!」

 

 二十分後。返却されたボールを受け取り、海馬は再びポケモンセンターを後にした。

 ヒトカゲはすっかり元気を取り戻して、ボールを微かに揺らしている。

 だが、前よりも幾分か大人しく思えるのは、やはりバトルの結果を本人なりに気にしているせいだろうか。

 

「……いつまでも敗北を引きずるな。グズめ」

 

 ボール越しに発破をかけて、ベルトに装着しなおす。

 その横には新たなしもべ、ドガース入りのボールがぶら下がっている。

 

(まったく、我ながら要らん寄り道をしたものよ)

 

 時刻は既に昼さがり。この曇り空では時間間隔も鈍ってしまうが、付近の設備時計を見やればわかる。

 メイとの決闘に、ドガースゲット。すべて偶然とはいうものの、早朝イッシュに降り立ってから、えらく時間を食ってしまった。

 

(そろそろ本筋に戻らねば……!)

 

 忘れるなかれ、当初の目的は青眼の入手と、それに伴うプラズマ団の殲滅だ。

 こんな場所でいつまでも立ち止まっているわけにはいくまい。

 海馬はそう気を引き締め直し、とりあえず市街地へ繰り出そうと歩き出す。

 

 ──と、数歩進んだところで、海馬の足が止まった。

 

 ふと聞き馴染みのない音がする。出所を探れば、左腕に巻かれたライブキャスターが、着信の報せを発している。

 ハンサムからの連絡だ。海馬は即座にライブキャスターを起動する。

 

「なんだ?」

『ああ、海馬君、私だ! ちょっといいかな、緊急事態だ!』

 

 応答直後、間髪入れずに忙しない声を響かせるハンサム。

 次いで画面に映し出された彼の表情は、妙に切迫した様子で口元を引き締めており、また額からは汗がにじみ出ている。

 嫌な予感を覚えながらも、海馬は話を促した。

 

「どうした。手短に話せ」

『それが……ついさっき、プラズマ団の目撃報告があったんだ!」

「なに‼」

 

 プラズマ団。その単語を耳にした瞬間、海馬の目つきが鋭くなる。

 彼は語気を強めて、逆にハンサムを問い詰めた。

 

「教えろ、その場所はどこだ?」

『うむ、幸運なことに、私たちのいる場所からかなり近くてね。目撃場所は、私のいるサンギ牧場。とはいえ既に逃げ出したようだが……君のいるタチワキシティに潜んでいる可能性も高い!』

「なに! プラズマ団がこの街に……⁉」

『あくまで可能性の話だけどね。だが、引き続き捜査を頼むよ。怪しい人物を見かけたらすぐに報告してくれ……いいね?」

「当然! 何処に隠れようが、ネズミは俺の手で捕らえてくれる‼」

『いや、まずは私に知らせてくれ!』

 

 ハンサムは、そう早口で捲し立てつつも、海馬の身を案じて念押しを忘れない。

 時折顔色を窺っていたが、彼の表情が徐々に殺気立っていくことを察したためか、人差し指を立てて入念に警告する。

 

『情報では、目撃された団員は三人組だったらしい。発見したら、尾行しつつ私まで報告して欲しい。いくら君と言えど、単身では――』

 

 プツン、と。

 ハンサムが言い終わらないうちに、海馬は通信を終わらせた。

 

「フフ……プラズマ団め、とうとう俺の前に尻尾を曝け出したか‼」

 

 それさえ知れればもう充分。

 まるで獲物を追い詰めた猟犬のような笑みをたたえて、海馬はコートを翻す。 

 そして付近の適当な路地に狙いを定めると、薄暗い影に閉ざされた、よりディープな空間に向かって、躊躇うことなく進んでいった。

 

 

 

 

 

〇●〇●〇

 

 

 

 

 

 遠くから、激しいロックのリズムが微かに聞こえてくる。

 次いでボーカルのシャウトに、湧き立つ反響まで――ゲリラライブでも始まったのだろうか。

 海馬は小うるさい音漏れを聞き流しつつ、堂々とした足取りで一人裏路地を歩く。

 

 元から陽の当たりにくいタチワキシティ。それが裏通りともなれば、日中でも黄昏時のような暗さで、どこかじめっとした空気が漂っている。

 配管はコンクリートの壁を蛇のようにつたい、隙間から漏れ出た滴が、ぽたりと垂れては地面で弾ける。

 そんな陰鬱な道だというに、海馬の歩みには一切の迷いが感じられない。

 

 屋根からチョロネコが見下ろす角を横切り、階段を下りて人気のない水路沿いの道へ。

 停泊している、年季の入った貨物船を横目に進むと、やがて赤錆びた橋の高架下に辿り着く。

 よりいっそうの闇に閉ざされた、その不穏な場所に――海馬は足を止めると、ニヤリと口元を歪めた。

 

「フフ……警察風情には理解るまい。だが、俺の勘は鋭くてね……」

 

 誰にともなく、そんな言葉を呟いて。

 海馬はカッと目を開くと、正面の暗闇を指差し高らかに告げた。

 

「そこに貴様らがいるのはお見通しだ! 姿を表せ、ネズミども‼」

 

 

 

「………」

 

 

 

「……………‼」

 

 

 

 すると、海馬の呼びかけに答えるようにして。

 高架下の暗闇が蠢き、徐々にその姿を現す。

 

「……チッ、さっきからロクな目に合わねぇぜ」

「つけられていたとはな。けどよ、誰なんだコイツは?」

 

 そう言いながら出てきたのは、見るからに怪しい二人の男たち。

 いずれも黒いコスチュームに身を包み、帽子を目深に被って、口元をマスクで覆っている。不審者そのものの格好だ。

 予想だにしない追っ手の存在に、二人は顔を見合わせながら訝しむ。

 

「ぱっと見サツには見えないよな? いや、一般人にも見ないけど」

「知らねぇよ。でも俺達の後をツケて来てんだ。絶対ロクな奴じゃあねぇ」

「それはそうだな。……おい、お前!」

 

 男の一人が、海馬に向かって指をさした。

 

「わざわざ出向いてきてくれたようだが、あいにくこっちは忙しいんだ!」

「そうよ俺達、泣く子も黙るプラズマ団のメンバー! 舐めてると痛い目合わすぜ!」

 

 威勢よく啖呵を切る二人組の手には、固くモンスターボールが握られていた。

 

「ほう、雑魚がよく吠えたものだ。身の程知らずの負け犬のくせにな‼」

 

 しかし海馬は、彼らの威嚇を歯牙にもかけず、煽るような眼で嘲笑う。

 その態度が、短気なプラズマ団員たちの精神を真っ向から逆撫でする。

 

「この野郎……! 俺達を馬鹿にした罪は重いぞ‼」

「クソ生意気なその面に、プラズマ団の恐怖を刻み込んでくれるぜ‼」

「フフ……ならばやってみせるがいい‼」

 

 

▽プラズマ団たち は ミネズミ と チョロネコ を繰り出した‼

▽海馬 は ヒトカゲ と ドガース を繰り出した‼

 

 

 怒りを剥きだしにする二人と、尊大な笑みを崩さぬ海馬。

 両者は一斉にボールを投げ、互いのポケモンを繰り出した。

 

「ふん、奴らに力の差を見せつけてやれ! ヒトカゲで攻撃‼」

「カゲェ‼」

 

▽ヒトカゲ の ひのこ‼

 

 突如勃発する。プラズマ団とのダブルバトル。

 海馬が即座に指示を出すと、ヒトカゲは先陣を切ってフィールドを駆け、その大きく開けた口から燃え盛る火球を次々に吐き出す。

 

「グギャッ……‼」

 

 火球の礫は正面のミネズミ目がけて猛スピードでカッ飛び、着弾。

 爆発で立ち上る黒煙と共にミネズミを吹き飛ばし、一撃でノックアウトしてしまう。

 

▽ミネズミ は倒れた‼

 

「なっ……俺の道具が一撃で⁉」

「フハハハハ‼ 所詮はネズミ、大した能もなかったな」

「ヒート、カゲカゲ‼」

 

 驚愕に目を丸くするプラズマ団員たち。それを見やり、海馬とヒトカゲはこぞって高笑い。

 特にヒトカゲの方は主人の真似も板につき、絶好調といわんばかりの強気モードだ。

 その気迫に押され、焦る団員たちは一歩後ずさり。

 

「クソッ、なら隣のアホ面から片づけてやる‼」

 

 しかし、負けじと叫んで今度は、もう一人の団員がチョロネコをけしかける。

 チョロネコは俊敏なステップでドガースに接近すると、その鋭利なツメを突き立てた。

 

▽チョロネコ の ひっかく 攻撃‼

 

「ドガ~?」

 

 しかし、対するドガースは至って呑気にかまえていた。振り下ろされた一撃を易々と受け止め、何事もなかったかのように間の抜けた声を上げる。

 意外な守備力に目を丸くするチョロネコだったが、それだけでは終わらない。

 後ろに三歩下がった途端、強烈な眩暈に襲われたように、細い足がふらつき始めた。

 

「なんだ、どうしたチョロネコ⁉」

「フフ……そいつには既に(トラップ)を張らせておいたのさ」

 

 海馬は満足そうに鼻を鳴らす。

 

「『スモッグ』の追加効果により、貴様のモンスターは毒を浴びる!」

「なっ、毒だと……‼」

 

▽チョロネコ は毒のダメージを受けている。

 

 毒状態のポケモンは毎ターンダメージを受け続け、やがて戦闘不能に陥ってしまう。

 攻撃力では叶わず、ダメージすら通せず。追い詰められて狼狽えるしかないプラズマ団員たち。

 それでも海馬は、目の前の敵に一切容赦などしなかった。

 

「俺のターン‼」

 

 己の力を誇示するかのように轟く一声。

 彼は、ここが幕引きとばかりに畳みかける。

 

「ワハハハハハ‼ ヒトカゲよ、奴らにトドメを刺せ‼」

「ヒートッッ‼」

 

 再び放たれた"ひのこ"の攻撃を対処する術は、チョロネコにも、そして主人のプラズマ団員にもなかった。

 毒に冒され弱った身体を襲う火球。叫ぶ間もなく目を回して、チョロネコは足から崩れ落ちる。

 

▽チョロネコ は倒れた‼

 

「俺達の道具を、こんなあっさりと……⁉」

「嘘だろ……‼」

 

 いっそ蹂躙とでも呼ぶべき、あまりにも一方的な試合運び。

 瞬く間に倒されたポケモンたちを前に、最初の威勢は何処へやら。プラズマ団員たちの声は動揺に震えている。

 

「ふん、随分と呆気なかったが、これで済むとは思わんことだ」

 

 逃げ腰で後退る彼らを、じわじわと壁際まで追い詰めながら、海馬は尊大な態度で言い放った。

 

「貴様らには聞きたいことが山のようにあってな。いい機会だ、洗いざらい吐かせてくれる……‼」

 

 




ついでに新戦力ゲットです。
これからも増える社長の手持ち、ぜひとも予想してみてください。


【死のデッキ破壊ウイルス】(マタドガス)
モンスターではありませんが、海馬が愛用する「ウイルスカード」の代表格。
青眼推しが目立つものの、凶悪な罠やウイルスで相手を嵌める戦術も社長の得意分野ですね。

タチワキ周辺で手に入る&数々の変化ワザを習得できるマタドガスが選ばれました。
カードの性能通り、相手への妨害が主な役割となるでしょう。
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