メスガキゲーマーのわからせたい! 保管庫 作:にゃあたいぷ。
プロゲーマーと呼ばれる職業がスポーツ選手と同列に扱われるようになったのは何時頃か。
商品の広報にVsを雇うのは当たり前となり、eスポーツによる試合は公共の電波に乗せられる。世界人口が増えているので野球やサッカーを始めとした現実競技が廃れる事もなく、良い感じに棲み分けが出来ていた。数あるゲームタイトルの中で現在、最も成功を収めているのがCODE:F。少年がプロ野球選手に憧れるのと同じようにCODE:Fで鎬を削るプロゲーマーに憧れるのが当たり前の時代が訪れたのである。
八目鰻は今年で19歳、高校を卒業すると同時にプロのゲーミングチームの誘いを受けた彼の注目度は生半可なものではない。世界最高峰のゲーム大会であるPUWCの本戦まで残るプレイヤーの平均年齢は三十半ば、どれだけ若くても二十台前半という環境で去年、彼は二次予選を見事に突破してのけた。
日本人プレイヤーで本戦まで残った者は二人だけである。去年までは一人だけだった。
今回、彼が降り立った戦場はショッピングモール。
吹き抜けになった四階建ての構造、南北に伸びた建造物で東西の通路を繋いだ連絡通路が各地で交差する。三次元的な戦闘が強制される本マップは、CODE:Fの中でも人気のあるマップの一つである。羽織ったフライトジャケットには、彼が契約した企業のステッカーが縫い付けられている。前を開いたジャケットから覗かせるのは「Yatsumeunagi.」と筆記体で書かれたシャレオツなシャツ、視聴者からは変なTシャツと評判の代物だ。
掛けたサングラスは相手に表情を読み取らせず、不適に浮かべる笑みは強者の風格を纏っていた。
no name:流石のRENも年貢の納め時かな?
no name:鰻に勝てるとは思えん
no name:ダイヤモンド上位と当たるのおかしくね?
no name:一昨日、獣との五十先でダイヤモンド中位までポイント落としてる
no name:RENがクソガキを分からせるところが見てみてぇ
no name:変Tよりも美少女を応援するのは当たり前なんだよなあ
no name:ガキがイキってるだけ、持ち上げられすぎ
no name:は?
no name:八目鰻の実力を疑うのはモグリなんよ
視界の端に高速で流れるコメント欄、三千程度だった同時接続数が一万を超える。
RENが小春日和を倒したのが昨日の話。鉄は熱い内に叩けというけど、此処までの反響は流石に想定していなかった。CODE:Fに興じるVsも観戦しているようなので恰好悪い所を見せる訳にはいかない。愛用の突撃銃を呼び出し、刻まれるカウントに注視する。
プロゲーマー疑惑のあるREN、日本のアカウントなので日本在中だという事は割れている。
しかし八目鰻の記憶には、彼女に該当するプロゲーマーは存在しない。RENの戦法は、攻めて、攻めて、攻めまくるガン攻めだ。身体に染み付いた戦術は一朝一夕で真似できるものではない。仮に近接縛りをするにしてもCODE:バーストを選択するプロゲーマーは居ない。CODE:バーストが弱いCODEなのは、世界的な共通認識だ。ストーリーモード専用CODEと呼ばれる程度には、対人戦だと使い道がないとされて来た。
RENの衝撃波の反動を利用する移動法、あれは元々RTA勢が活用していた技術だ。
何十回と思考を繰り返し、漸く成功する高等技術。難易度が高過ぎてRTA勢であってもストーリー序盤でしか運用しない技術である。実戦で運用できる代物ではない。故にRENにはチート疑惑があり、しかしRTA勢が検証した所、不自然な動きがなかったので通報までは至らなかった。
あの精度でCODE:バーストを使い熟すプレイヤーを八目鰻は知らない。
「それでもCODE:バーストが強いとは思えないんだよな~」
カウントが刻まれる中、彼は愛用の突撃銃を手元に呼び出す。
青少年がノートPCにシールを貼り付けるのと同じように所狭しとステッカーが乱雑に張られている。ミリオタが見ると発狂してしまいそうだ。何処かに潜んでいる段ボール好きの蛇人間もお叱り待ったなしである。
しかし八目鰻は気にせず、カウントが0を表示すると同時に駆け出した。