メスガキゲーマーのわからせたい! 保管庫   作:にゃあたいぷ。

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旧5.バトルロワイヤル戦

 RENの参戦で同時接続数が二十万を超える。

 プロゲーマーまで注目し始めた事で話題は海外にも波及し、更に視聴者の数を加速させた。

 司会兼実況の祭田喝采の魂は半ば、口から漏れ出している。

 

no name:なんでこんなに人が集まってるの?

no name:さあ?

no name:世の中なにがバズるかわからないもんだな

no name:酒カス正気に戻れー

no name:試合始まるぞー

 

 そんな彼女を意にも介さず試合開始までのカウントダウンは機械的に刻まれ続ける。

 日本は、プレイ人口の観点から見ると世界的なゲーム大国だ。しかしFPSの系譜を継ぐCODE:Fに限定すると世界的には中堅国の扱いを受けていた。というのも日本には突出したプレイヤーは居らず、過去三年間の世界大会で優勝した経験が一度もなかった。世界の強豪国と日本では人間性能に差があり、技量が高くとも、それ以外の面で海外に後れを取っている。八目鰻も人間性能だけでいうと世界にも通用する期待の新人ではあるのだが、技量の方が追い付いておらず、また自分と同等以上の人間性能を持つ相手との対戦経験が少ないので思うように成績が上げられずにいた。

 それでも日本人が世界から注目を浴びるのは、日本人は層が厚いからだ。

 日本人の気質なのか全体的に技術の高いプレイヤーが多く、勢いだけの戦法は好まれなかった。勿論、強豪国のトッププレイヤーは理論も完璧に熟しているのだが、多くのプレイヤーが人間性能頼りのプレイスタイルに落ち着きやすい。また日本人は変態的な技術や戦法を開拓する者が多く、今まで見向きもされて来なかったCODEで世界大会に殴り込んでくる事が多々あった。他にも基礎を身に付けた上で非効率な戦法も仕掛けてくるし、それが特定条件で噛み合うので度々日本人が地元の英雄を討ち倒す姿が見かけられている。

 そんな事を毎年のようにやっちゃうので世界から見た日本は魔窟と称されている。

 

 0と1の数式が支配する現世に残った最後の摩訶不思議アドベンチャーである。

 そんな環境で戦い続ける日本のプロゲーマーが騒いでいるのであれば、気になっちゃうのが人の心だ。流石に配信までする人は少なかったが、地元のプロゲーマーが視聴するとSNSで零せば嫌でも興味が惹かれる。

 そうして世界中から数万の視聴者が集まってしまったのである。

 

no name:マップは遊園地か

no name:クソマップ

no name:デートかな?

no name:知ってた

 

 今回、対戦に選ばれたフィールドは遊園地。シングル戦では選択できない大型マップである。

 円形の敷地を東西南北中央の計五つのエリアに分割する少し特殊なマップで、観る分には楽しいが、初期配置に有利不利が発生するので競技性に乏しいのもある。

 では何故、今回このマップが選ばれたのか。

 それはteam.風花雪月が、このマップでの対戦が大好きだからだ。

 

 遊園地は、競技としては相応しくなくとも娯楽としては最高のマップだ。

 多くのギミックが搭載された本マップでは、同じ展開になりにくいという特徴がある。そして競技性よりもゲーム性を優先した時、紛れの要素があった方が面白いのだ。また本マップはエリア毎の完成度も高く、エリアを一つに限定したマップであればシングル戦で選択する事もできる。

 シングル戦で遊園地を選択する事を、Vs界隈では遊園地デートと呼んだ。

 

 大会等では競技性を損なうとして、禁止にされる事も多いフィールドである事も確か。

 このフィールドが出て来た事に海外勢が「what!?」等と驚きを表明していた。

 運営もプレイヤーもミラーまでは確認していないので、海外の人達が困惑するだけに留まる。

 

「さ、さあチームメンバーを紹介して行きますよ!」

 

no name:お、復活した

no name:ワンカップ奢ろうか?

no name:ほら、飲んで良いぞ \300

 

「試合終わったら頂きます!!」

 

 喝采が放心している間もカウントダウンは刻まれ続けている。

 

 

 最奥部になる北部エリアでは、小春日和が率いるチーム風の面子が集められている。

 周囲には大人向けの如何にもなアトラクションが多数、配置されている。空に飛ばされたり、遠心力で振り回されたり、後はお化け屋敷なんかがある。残念ながらお化け屋敷に入ることは出来ない。そんな光景に目を輝かせるのはサイバネ所属の双子の姉妹。二人はナビゲーター風に改造したセーラー服の上から萌え袖のジャージを着ている。緑のジャージが歌風ハルカ、赤いジャージが歌風カナタ。二人はまだ事務所に来て三ヶ月の新人で、今回は二人の顔を売り込む意味もあって小春日和のチームに組み込まれている。

 小柄な双子の後ろで狙撃銃を手に殺意を高めているのは、リーダーの小春日和。彼女もまた双子と同じ改造セーラー服を着ており、その上から白色のパーカーを羽織る。胸元には桃色の桜の意匠が凝らされている。ちなみに改造セーラー服は、サイバネの制服でもあり、今回の企画の花でもある小春日和のチームはサイバネの制服で統一してある。

 今回、日和には枷が嵌められている。

 それは双子の姉妹に活躍の機会を設ける事だ、双子は共に血気盛んなアタッカータイプである。

 日和は二人が倒されるまで自分から前線に出る事を禁じられている。

 

「……リベンジしたい」

 

 思わぬRENの登場に日和は逸る想いを必死に抑えていた。

 うずうずと身体を動かす偉大な先輩を見て、双子の姉妹は互いを見合わせる。

 二人はリアルでも双子であり、姉と弟だった。

 アイコンタクトだけで意志疎通を終えた二人は日和の方を振り返った。

 

「日和ねーちゃん♪」

「ちょっとそーだんがあるんだけど♪」

 

 色以外では区別が付けられない双子は、リアルでも問題児だった。

 例えば、偶に二人で衣服を交換して悪戯したりする。

 女装をした姿で男子トイレに入り、スカートの裾を咥えて用を足したりする。

 それは見る者を困惑させて、脳を破壊する。

 だけど日和は、なんとなく二人の見分けを付ける事ができた。

 男性っぽいのが姉で女性っぽいのが弟。

 永久脱毛に何時行くべきか本気で悩んでいる方が弟である。

 毛があった方が良いと止めている方が姉だ。

 

「ん~?」

 

 そんな双子の言葉に耳を傾ける。

 とっくの昔に脳を破壊されてしまった日和は、二人の性別を意識する事を止めている。

 どちらも可愛い後輩で固定したのだ。

 

 

 遊園地の西部は、ふんだんに水を使ったウォーターパークになる。

 ゴムボードでの急流滑りを楽しむアトラクションもあれば、移動手段の代わりとしても使われる船の駅。水辺にはフードコーナー等が建ち並んでおり、テラス席に洒落た机と椅子が用意されていた。デートスポットとしても人気のありそうなエリアで御姉様と一緒に食事を摂ったり、急流滑りで濡れた姿を妄想するのはチーム花のリーダーでもある小春茉莉であった。

 妄想を捗らせるだけで。゚+.パアァァッ゚+.゚と胸を膨らませる彼女は、御姉様がサイバネの制服を着ると聞いたのでペアルックにする為に制服に黒色のパーカーを着ていた。黒色なのは一応、彼女なりの視聴者に区別を付けやすくする為の配慮である。パーカーの胸元の意匠は、彼女のバーチャルネームと同じジャスミンが施されている。

 そんな彼女を冷めた目で見つめるのは、彼女と同じチームメイトの二人の少女である。

 

「ねえ、アイツから先に撃っても良い? アイツもサイバネじゃん」

「やめとけ。あんなでもウチらの中じゃ一番強いんだ」

 

 二人は余所の事務所から来たVsで一応、茉莉に誘われた助っ人でもある。

 物騒な事を口にしたのは、ゴーストプ(Gghosts)ロダクシ(Production)ョンの幽谷風子。足元まで届く黒色のコートに袖を通し、サングラスを掛けている。少し首を動かす度に揺れる栗色のポニーテールがチャームポイントだと彼女をデザインしたママが言っていた。もう一人は、革ジャンにジーンズ、ニット帽と少し古臭いセンスをしている。バーチャルネームは伽藍堂ソラ、Emo.NETからの参戦だ。

 共にVs界隈だと名の知れたゲーム巧者で、チームのエースを務めている。

 

 そんな二人が不服ながら今回の要請を受けたのは、対戦相手が小春日和だったからだ。

 血気盛んな三人で今日、本気で伝説を討ち倒す準備を進めて来た。

 姉狂いの自称妹が百合営業ではなくて、ガチだった事にうんざりしながらも二人は頑張った。

 主に耐える方面で、とっても頑張ったのだ!

 遊園地対策で何故か姉とのデートプランを聞かされても頑張って耐えたのだ!!

 

no name:なんだか戦う前からやつれてない?

no name:一人だけ肌艶が良いけどな

no name:姉談義に付き合わされたんやろうなあ…

 

 その辺りは視聴者も察していた。

 

 

 遊園地の東部は、子供向けアトラクションを備えたキッズパークになっていた。

 ゴーカート用のサーキットコースに巨大な迷路、そしてメリーゴーランド。その光景にキラキラと瞳を輝かせる小柄な少女はProjec();Code()Opera()から参加のうたた寝メリー。羊をモチーフにしたモコモコなドレスに袖を通し、くるんと巻いた羊の角を模したイヤーマフを被る。半開きで眠たそうな目とは裏腹に、お尻から垂らした羊の尻尾はぶんぶんと振り回している。この尻尾は彼女の精神状態と同期して動く彼女の為に開発された特注のアイテムである。

 ファンからはメリーさんの愛称で知られる彼女を、少し困ったように眺めるのはチーム雪の葛葉小雪。狐の耳に尻尾を生やした小柄な彼女は、今日は特別に巫女装束。他のチームと区別が付きやすいようにと配慮した結果である。

 何処ぞの自称妹とは違うのだ!

 

no name:害獣さん!

no name:キャー! 今日は巫女装束ですってよ!

no name:普段は正月とか夏祭りとかでしか着ないレア衣装!

no name:畜生狐さんこっち向いてー!

 

「えー? 聞こえなーい♪」

 

 コメント欄に連なる愛称を見て、小雪は余裕のある笑みを浮かべたまま顔を背ける。

 彼女はシングル戦ではプラチナ下位とteam.風花雪月の中では弱いのだが、対戦とは相手の嫌がる事を信条に的確な判断と指示で幾度とチームを勝利に導いて来た。team.風花雪月がチームとして機能しているのは、彼女が居るからに他ならない。

 そんな彼女は今、好奇心旺盛なメリーを見て、少し扱いに困っているようにも見える。

 二人の少女の可愛らしい仕草を見守るのは、変質者のお姉さん。もといサイバネプロダクションのキャラクターデザインを担当する大人のお姉さんことサフランである。縦縞のセーターを着た眼鏡で巨乳のお姉さんだ。母性が凄いと噂されている。噂だけである。

 カメラを片手に涎を垂らし、二人の少女を撮影する姿は変質者そのものであった。

 

「小雪ちゃ~ん、こっち向いて~?」

「は~い♪」

 

 しかし小雪は小雪でノリノリでポーズまで取って撮影を受けているので犯罪者ではないのかも知れない。

 犯罪者ではないだけで変質者である事は確かだ。先ずは可愛く舌出しピースでパシャリと撮り、くるりと回ってパシャリとポーズ。そして逆方向に半回転した後の拘りの角度でパシャリ。呼吸の合った二人の様子に視聴者達も「なんだ親馬鹿か」という気持ちになって来た。

 だが、それは錯覚だ。

 撮影対象がメリーになった途端にサフランは様々な角度から写真を撮る為にゴロゴロと地面を転がってパシャリ、飛び込み前転からパシャリ。そして最後に腰を落とした姿勢で、スーッと腰を右から左に移動させながら狙いを定めてパシャリ。変質者の所業である。

 その間、メリーはずっとメリーゴーランドに目を奪われていた。

 

no name:俺達は何を見せられているんだ?

no name:わからん

no name:わからないけど可愛いからヨシ!

 

 視聴者は深く考えるのを止めた。

 

 

 最後に遊園地の南部、玄関口から続く商店街の中心に件の少女が立っていた。

 金髪は太陽の光を受けて美しく靡き、金色の瞳はまだ見ぬ敵を見据えて凛と輝いた。何時も初期アセットの格好をしている彼女も今日、少しだけオシャレをしている。というのも同じチームメイトの女の子が試合開始寸前に必死で頑張ったのだ。前を開いた青色のジャンパーにスパッツを合わせた姿、中にはサイバネが販売しているシャツを着込んでいる。手に持っていた帽子をくるりと回して被り、RENはドヤッとした顔を浮かべた。

 健康的な彼女の姿を見て、視聴者の一人が深く頷いて「やっぱり金髪少女は正義だな」と書き込んだ。

 

no name:随分と雰囲気変わったじゃん

no name:少し前まで初期アセットのままだったからな

no name:初期アセットってなんだっけ?

no name:白シャツに短パン

no name:えぇ…

 

 兼ね兼ね好評なRENのイメージチェンジの功労者である少女は、青褪めた顔で小動物のようにプルプルと震えていた。

 彼女のバーチャルネームは久遠(くおん)綴璃(つづり)。文学少女という触れ込みでVsになった彼女は、丸眼鏡に三つ編みのおさげという王道なアバターを利用している。サイバネの制服であるセーラー服の上から少しダボッとしたセーターを羽織り、頭には何故か軍用のヘルメットを被っていた。普段は朗読を配信し、自分の好きな物語を紹介している。一応、ゲームもするけどもあまり得意ではなかった。じっくりと考え込んでプレイするのが好きなので、恋愛要素が強かったり、インディーズの少し短い物語を楽しんだりしている。ゲームは、雰囲気の良いものが好きだった。フルダイブ機能を使わないレトロゲームなんかも好きでプレイしており、ゆったりとした落ち着いた声が視聴者からのコアな人気を集めている。

 付き合いでCODE:Fもプレイするけども展開の慌ただしいゲームは苦手で、シングル戦ではプラチナの下のゴールドにも入れていなかった。

 完全に人数合わせである。

 前線に出なくても良いという理由で狙撃銃を持たされていた。

 

no name:震えちゃって可哀想

no name:可哀想だけど可愛い

no name:震えてる子って可愛いね

no name:朗読配信とかしてる子だよ

no name:今度、行ってみようかな

no name:ホラゲーの配信はしないの?

no name:守りたいと泣かせたいが両立する

 

 そして今もまた彼女のコアなファンが増えつつある。

 幸か不幸か綴璃は今、コメント欄を読む余裕がないので流れるコメントに気付いていなかった。

 それでチーム月を率いる呉紅葉こと傭兵さんは、のほほんとしている。

 

no name:傭兵さん、なんでRENを呼べたの?

no name:RENって今の状況ちゃんと分かってる?

no name:傭兵さん、聞いてる?

 

 コメント欄に流れる質問も何処吹く風と傭兵さんは空を見上げていた。

 彼女は今日、軍隊の戦闘服の上からタクティカルベストを着込んだ姿で対戦に参加している。この衣装はまだ彼女が事務所に所属する前、匿名で日和の相方を務めていた時に来ていた由緒正しい傭兵さんスタイルだ。

 空を見上げていた彼女は、意を決した顔で小さく頷いてみせる。

 

「おにぎりはツナマヨ……!」

 

no name:おい、こいつ何も話を聞いてねーぞ

no name:ミュートにしてるのかな?

no name:ちゃんと話を聞いて貰える?

 

「…………綴璃は可愛いけど、虐めるのは悪い子だねえ」

 

no name:そ こ じ ゃ ね え

no name:傭兵さんはクールビューティー、そう思っていた時期もありました

no name:対戦中は頼れるんだけどなあ~

 

 阿鼻叫喚するコメント欄に紅葉が小首を傾げる。

 そんな事をしている間にもカウントダウンは数字を刻んでおり、もう試合開始はすぐそこまで来ていた。

 紅葉は集中する為にコメント欄の表示を切る。

 

no name:あ、今こいつコメント欄の表示を切ったな?

no name:おーい!

no name:ちょっと待てやこらぁ!

no name:ポンコツ!

no name:言及は試合が終わってからかなあ

 

 なんだかんだで視聴者も慣れている。

 自分が天然だと思っていないのは本人だけなのだ。

 

 

 カウントダウンが残り十秒を切る。

 バトルロワイヤル戦の火蓋が切られるまで後僅か。

 20万人を超える視聴者が見守る中、空気が張り詰めていくのを否応なしに感じ取る。

 ピリピリとした中で解説の八目鰻が予言する。

 

「あのRENって奴、絶対に真っ先に突っ込んでくよ」

 

 カウントが0になった瞬間、彼が予言した通りRENは遊園地の中央エリアを目指して真っ直ぐに駆け出す。

 しかし動き出したのは彼女だけではない。小春日和と共に居る者、挑む者、そんな彼女達が血気盛んでないはずがなかった。そこにRENという起爆剤が加えられた今、彼女達を抑えられる者はもう居ない。CODE:Fのプレイヤーとしての矜持を掛けて、獲物を狩りに向かったのである。

 真っ先に駆け出した双子の背中を見た小春日和は、羨ましそうに目を細める。

 

no name:行かないの?

no name:めっちゃ行きたそうな顔してる

no name:我慢は身体に悪いよ?

 

 仲間達を応援したい気持ちがあり、だけどRENに負けて欲しくない気持ちもある。

 そんなもやもやっとした思いを押し殺し、彼女は双子を援護する為に高所を目指す。

 

「今日の私は頼れる先輩なの」

 

 日和は街路樹を駆け上がり、建物の屋根を経由してジェットコースターのレールに飛び移った。

 レールを走りながら東西南北のエリアを繋ぐ中央広場が見渡せるポジションを探る。相手の位置が分かるレーダーは、生存人数が多ければ多い程に敵の位置を報せるまでの時間が長くなる。元々かくれんぼ防止用のシステムなのだ。全員残っている今はまだ、レーダーに頼る事は出来ない。丁度良い場所まで移動した後、レールに体を隠すように身を屈める。まだ敵を見つけられていない。中央広場に駆け込む双子の位置を確認しつつ目視で索敵を続ける

 狙撃だけならプロゲーマーが相手でも引けを取らない自信が彼女にはあった。

 

「あ、敵を見つけた」

 

no name:はやっ

no name:どこ?

no name:わからん

 

 ふふん、と得意げに鼻を鳴らし、日和は双子とのボイスチャットを開いた。

 

 

 ウォーターパークから中央広場を目指して走る私は幽谷風子。

 ゴーストプロダクション、通称GoProのチームではエースアタッカーを務めている。ランクはプラチナの下位でVs界隈の中ではビッグ3の一人に数えられる。全国オンライン大会では予選で敗退してしまう程度の実力だ。決勝戦まで勝ち進むには、最低でもダイヤモンド以上の地力が必要と言われている。素直に考えれば、私が小春日和に敵う道理はない。

 だけど、それは理屈の話。対戦すると決めた以上、全力を尽くすのがゲームを楽しむって事だ。

 

 私のすぐ後ろを走るのは、普段は敵だが今は味方。小春茉莉と伽藍堂ソラの二人だ。

 愛用の短機関銃を握り締める。幾度と辛酸を舐めさせられた二人が自分の背中を守っている事実に妙なむず痒さを感じる。

 そんな事を考えていると、まだウォーターパークも抜け出せていない距離で右側から物音がした。

 

「CODE:プロテクト!」

 

 咄嗟に物音がした方向に障壁を展開する。

 数舜、遅れて放たれた弾幕が障壁に襲い掛かった。

 

「ぐうぅ……っ!」

 

 CODE:プロテクトは手の翳した方角に障壁を展開する。

 最初にリソースを大きく消費した後、障壁の維持にリソースを継続消費するタイプのCODE。

 そして障壁を展開している間は、内側からの攻撃も通すことが出来ない。

 

「CODE:アクセラレーション、起動!」

 

 一方的に弾幕を撃ち込まれる後ろで伽藍堂ソラがCODEを使って駆け出した。

 急加速した彼女は砂塵を巻き上げて、弾幕が発射される脇道を目指す。そして脇道に入る前にテラス席の机を蹴り、弾幕を上に避ける形で脇道の中へと飛び込んだ。

 脇道の壁を蹴りながら相手の居るはずの方角に散弾銃を構える。

 

「居ないッ!?」

 

 しかし、そこにはもう姿を消してしまったようだ。気付けば銃撃が止んでいる。

 

「上よッ!」

 

 CODE:プロテクトを解除した私に、茉莉が叫んだ。

 喫茶店の屋根の上にサイバネの制服にジャージの上着を着た二人組が立っていた。その片割れが重機関銃を構えている!

 

「動きが読まれてる!」

「良いから撃ち尽くしちゃいなさい! 撃ってる間は反撃来ないから!」

「それもそうだ!」

 

 確か日和と一緒のチームに居た双子だ、対戦した事はない。

 突然、高所に移動したって事はCODE:テレポーテーションの効果だろうか。

 いや、今は考えるよりも身を隠す方が先だ。

 重機関銃の砲身が回転を始めて唸りを上げる。

 CODE:Fの中でも超火力の銃口が私達に向けられていた。

 

「あんた達が此処に居るって事は、御姉様の作戦じゃないのね」

 

 私達ではなかった、銃口を向けられていたのは私だけだった。

 少し目を離した隙に茉莉が双子の居る屋根の上まで駆け上っていた。

 両手に握り締めた二挺の拳銃が太陽の光を反射する。

 

「わあ、姉キチだ!?」

「自称妹さん!!」

「誰が自称ですってェッ!!?」

 

 短機関銃を持った少女が、もう一人の子を守る為に応戦しようとする。

 しかし反応が遅い。少女が構えるよりも先に茉莉の二丁拳銃が二人の眉間を捉えた。

 後は引き金を絞るだけ、

 

 ダン! と遠くの方から銃声が聞こえた。

 

 茉莉の身体が弾き飛ばされる。

 屋根から彼女の姿を見て、恐らく狙撃を受けたと確信する。

 建物の向こう側、目視は出来ない。

 だけど、理解した。

 今の狙撃は、小春日向によるものだ。

 

「良い仕事をするね、ほんッと!!」

 

 私は、軽機関銃を構えて、下から屋根の上に居る二人を狙って引き金を絞る。

 

「わわっ!? 下からも攻撃がっ!?」

「日和さんが一度、撤退しろだって!」

「テレポーテーションは、リソースの消費が激しいのに……」

「CODE抜きで私達が茉莉さん相手に逃げ切れる訳ないじゃん!」

「わかってるよぅ」

 

 二人はCODEを使用し、その場から離れてしまった。

 恐らくまだ近場には居るはずだ。

 だけど二人の退路には、CODE:FではVs界隈最強プレイヤーの銃口が待ち構えている。

 立て直す方が先だ。地面に落ちた茉莉は、全身が痺れて動けずにいた。

 高所から落ちた事によるスタン効果。

 死亡判定はまだ出ていない、当たったのが頭部じゃなければ一発程度はシールドで耐え切れる。

 

「今の戦闘音で他のチームにも居場所がバレたかな?」

「とりあえず身を隠すか?」と路地裏から戻って来たソラが告げる。

 

 そうね、と私が返した時、ドン! とCODE:バーストの衝撃音が聞こえた。

 

「私の居ない場所で初戦闘なんてズルくない?」

 

 まだ体勢を整え切れていない私達に金髪の少女が突っ込んで来た。




▼チーム風
〇小春日和@CYB :P狙撃銃・E突撃銃・E短機関銃:CODE・オートトラッキング
〇歌風ハルカ@CYB:P短機関銃・?・?:CODE・?
〇歌風カナタ@CYB:P重機関銃・?・?:CODE・テレポーテーション

▼チーム花
〇小春茉莉@CYB :P二挺拳銃・?・?:CODE・リコチェット
〇幽谷風子@GoP :P軽機関銃・?・?:CODE・プロテクト
〇伽藍堂ソラ@Emo:P散弾銃・?・?:CODE・アクセラレーション

▼チーム雪
〇葛葉小雪@CYB   :?・?・?:CODE・?
〇うたた寝メリー@PCO:?・?・?:CODE・?
〇サフラン@CYB   :?・?・?:CODE・?

▼チーム月
〇呉紅葉@CYB :P銃剣付突撃銃・E小銃・P擲弾発射器:CODE・アクセラレーション
〇久遠綴璃@CYB:P狙撃銃・?・?:CODE・?
〇REN     :P片手剣・P短剣・P大鎌:CODE・バースト

※P=物理、E=エネルギー
※CYB=サイバーネスト、サイバネプロダクション、GoP=ゴーストプロダクション、Emo=Emo.NET、PCO=Projet;CodeOpera


ストックが切れたので毎日ではなくなるかも知れません。
出来るだけ頑張ります。
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