メスガキゲーマーのわからせたい! 保管庫   作:にゃあたいぷ。

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旧6.バトロワに乱戦は付き物

 私、伽藍堂ソラが金髪の少女を見た時、先ず最初に考えたのは小春茉莉を守る事だった。

 迫る金髪少女に散弾銃を向ける。引き金に掛けた指に力を込めた瞬間、まるで予知するようにバレルロールの要領で横に跳んだ。気付いた時には発射してしまった散弾がRENを掠める。その間、RENは一度も私から視線を切らなかった。横に跳んで速度が落ちた分を後方に衝撃波を放つ事で補助し、跳躍して躱す前よりも速く距離を詰めて来た。

 ふざけんな、と思いながら私は散弾銃から金属バットに持ち替える。

 金属バットは、射撃武器を打ち返す事が出来る特殊な武器だ。タイミングさえ合わせる事が出来れば、狙撃銃の銃弾だって打ち返すことが出来るネタ武器である。勿論、片手剣や短剣の方が使い勝手は良く、CODE:Fでは弱武器に分類される。

 私が金属バットを愛用するのは、刃物よりも鈍器の方が使っていてしっくり来るからだ。

 

「CODE:アクセラレーション!」

 

 速度を倍加させる。

 ギュンと加速する景色の中で振り被った金属バットでRENの脳天に殴り掛かった。

 しかしRENは金色の髪だけを残し、姿を消す。

 金属バットは空振り、そのまま擦れ違った。

 靴が地面を削る勢いで急ブレーキを掛け、背後に振り返る。

 RENはスタン中の茉莉を仕留める気のようだ。

 

「風子ッ!」と私が叫んだ。

「分かってるッ!」と茉莉の傍で待機していた風子が返す。

 

 何時の間にか持ち替えていた拳銃で、応戦するも相手を捉える事が出来なかった。

 金髪の少女は、僅かに身体を左右に振りながら二人の下に駆け寄る。

 風子は舌打ちし、拳銃をストレージに仕舞って、右手を前に突き出した。

 CODE:プロテクト。呟く言葉と共に障壁が展開される。

 

「それを使ってる人多いけど……結構、弱いと思うんだよね」

 

 RENは転ぶんじゃないかって程の前傾姿勢から一瞬の溜めを挟んだ後、大きく跳躍した。

 CODE:Fの身体能力は、現実の人間を大きく凌駕する。

 障壁は、使用者を覆い隠すように展開されている。

 その上をRENは跳んでいた。

 援護は、出来ない。私の武器に、細かく狙い撃てる武器はなかった。

 見上げる風子の額に、短剣が投げられる。

 

「キャッ!」

 

 突然の事に風子が両手で額を抑えて、怯んでしまった。

 RENが地面に着地する。その右手には片手剣が握られており、切っ先が仰向けに倒れる茉莉の胸元に突き立てられた。躊躇はなかった、勢いのままに振り落とされる。直前の狙撃で削られたシールド。もう駄目だ、と私が考えた時、直前でRENが大きく仰け反った。パンと音が鳴る。RENは苦悶の表情を浮かべながら二人から飛び退き、その一歩で直ぐ前傾に姿勢を立て直した。

 茉莉は大きく足を開き、回しながら身体を起こす。

 両手には、二挺拳銃。睨み付ける先は、REN。茉莉は二挺拳銃の照準をRENに合わせる。

 

「CODE:バースト」

 

 衝撃波の音に紛れて、乾いた音が連続で響く。金髪の少女が真横に吹っ飛んだ後を二挺拳銃で連射される銃弾が追いかける。

 

「ソラ! 風子! 援護してよ!!」

 

 茉莉が打ち切った弾倉を抜きながら叫んだ。

 その一瞬の隙を逃さず、RENが一気に間合いを詰める。呆気に取られていた私と風子が銃器を構える。その時、突撃銃の発砲音と共に真横から弾幕を浴びせられた。不意を突かれた攻撃に風子がCODE:プロテクトを起動する。数舜、遅れて私もCODE:アクレラレーションを起動し、彼女が展開した障壁の背後に飛び込んだ。

 バチバチと放電するような障壁の内側から私達を襲った相手を確認する。

 

「傭兵さん……!」

「CODE:アクセラレーション」

 

 戦闘服を着込んだ少女が、長い黒髪を振り回しながら急加速で駆け込んで来た。

 ソラが私を見つめる。そこまで見つめなくても分かってるって、と私は手元に手榴弾を取り出す。

 投擲武器は、クールタイムがある。一定時間が過ぎた後、補充される。

 口で手榴弾のピンを抜いて、傭兵さんこと紅葉に向けて投げつけた。

 

「CODE:アクセラレーション、起動!」

 

 一対一で紅葉相手に敵うとは考えていない。

 だけど彼女を止められるのは同じCODEを装備した私だけだという事も理解していた。

 覚悟を決めて、呼び出した散弾銃を手に障壁の中から飛び出す。

 先に投げた手榴弾が爆発し、それを紅葉は悠々と横に跳躍して回避した。

 その隙を狙いすまして散弾銃の引き金を引く。

 火薬の爆ぜる大きな音、紅葉は、これもまた身を翻して大多数を回避する。

 数弾は命中した気がする。

 だけど、シールドを削り切るまでには至らなかった。

 

「………………」

 

 紅葉は、大きく弧を描くように横へ回り込みながら突撃銃で斉射する。

 直撃を避けようとすれば、私も相手と反対方向へ大きく弧を描いて走り抜けるしかなかった。

 結果、紅葉と私との距離が大きく離れる。

 AIMが苦手な私には、中遠距離の武器を用意していなかった。

 舌打ちを零す。

 紅葉は突撃銃からエネルギーライフルに武器を持ち替えた。

 この距離では一方的に撃たれるだけだ。

 一か八か距離を詰めるべきか?

 そう考えた時、視界に黒色のコートを着た風子が入り込んだ。

 丁度、私と紅葉で挟み込む形になる。

 CODE:プロテクトは、展開した後、その場に留まり続ける特性を持っている。

 この時、風子は障壁で背中を守りながら茉莉の援護に入ろうとしていた。

 

「風子……ッ!」

 

 私が声を上げた時、障壁の側面からエネルギーライフルの青白い閃光が風子を飲み込んだ。

 いいや、まだエネルギーライフルの一発では倒し切れないはずだ。

 私が風子と助ける為に駆け出した時、風子は持ち替えた擲弾発射器で私を狙っていた。

 風子と私の間で爆炎が起こる。

 その衝撃と熱風で、私は足を止めてしまった。

 爆炎が収まるまでの数秒、金色の風が風子の首を刎ね飛ばした。

 

 

 二挺拳銃の女を仕留めるには骨が折れる。

 前にも対戦した経験があるのか強襲を仕掛けても動揺はなく、銃器を持っていない事を前提に間合いを計られていた。それ自体は別に構わないのだけど、露骨に時間を稼がれるのは面白くない。軍人の戦闘服を着た匿名さんが二人を相手にしている。人数的に匿名さんの不利、二人が勝って援護に来るまで待っているのかも知れない。しかし、それは余りにも面白くなかった。

 シングル戦であれば、何処かで反撃に出なければならない。

 押されているだけの状態では、状況は悪くなる一方になる為だ。援軍を待つというのはシングル戦にはない駆け引きだった。

 ならば、と私は二人を相手に戦っている匿名さんに視線を投げる。

 

「………………」

 

 視線が交差したのは一瞬、だけど彼女は確かに応えた。

 タイミングは、匿名さんに一任する。程なくエネルギーライフルの眩い光、匿名さんから合図が来た。

 拳銃女を相手にするのを止める。

 私は踵を返して匿名さんと交戦していた二人の内一人を狙って駆けた。

 爆炎が上がる。拳銃女が私の背中を狙う気配があった。

 

 だけど、擦れ違った匿名さんが突撃銃で拳銃女を足止めした。

 私は片手剣で悠々と首を刎ねた。反応が間に合っておらず、余裕だった。

 裾の長い黒色のコートを着た女性が0と1の身体に分解される。

 

「これで少し攻める気にもなれるんじゃない?」

 

 晴れる煙に二人を見据える。挑発的な笑みを添えてやれば、革ジャン女が舌打ちを零す。

 

「此処で戦うのはごめんよ」

 

 しかし拳銃女が右手に握り締めた何かを地面に叩き付ける。

 とりあえずバックステップで距離を取った。直後、地面に叩き付けられた何かは破裂音と共に煙を弾けさせた。拳銃女を飲み込んで、辺り一面を覆い隠す煙の量に今、彼女が投げたものが煙幕弾であった事に気付く。煙幕弾をシングル戦で使っているプレイヤーは、ほとんど居ないので気付けなかった。残された革ジャン女も早々にCODE:アクセラレーションで煙幕の中に飛び込んだ。

 私は舌打ちし、次の獲物を探る為に周囲を見渡す。

 

「……なんだか最近、私の事を知ってる人が増えた気がする」

 

 不貞腐れるように呟いた言葉に「え~?」と匿名さんが間延びした声で語り掛ける。

 

「RENちゃん、めっちゃ有名じゃん」

「そうなの?」

「そうそう」

 

 私は「ん~?」と首を傾げた後で「ま、いっか」と頭を切り替える。

 

「こんなに大人数が居るのに戦わないのは勿体ないよね」

「攻め込むのはリソースが回復してからにしない?」

「むう」

 

 頬を膨らませつつも彼女の言う事も尤もだと思ったので大人しく回復するのを待つ事にした。

 

 

 ジェットコースターのレールの上で狙撃銃の弾を再装填する。

 ウォーターエリアの方角を見た時、建物の隙間に中央広場に向かう人影を見つけたので歌風姉妹にボイスチャットを繋げる。金髪は居なかったので初見殺しに近いRENは居ない。三人一組での行動だったので奇襲を受ける心配もない。向かう先も分かっているので待ち伏せをするのも容易だ。双子には、最初に軽く奇襲を仕掛けた後、私の射線が通る場所に誘導するように指示を出した。

 結果、釣れたのは自称妹の一人だけだ。

 双子に銃口を突き付けた時、最も油断する瞬間を狙って引き金に掛けた指に力を込める。一瞬の殺意、覗き込んだ照準器越しに自称妹と視線が合った。彼女は寸前で身を捻り、辛うじて急所を逃れた。ちょっとした恐怖体験である。仕留めそこなった悔しさよりも、私の殺意を感じ取った自称妹の事が純粋に怖いと思った。

 今の一発で警戒されたと思うので、双子にはボイスチャットで撤退を指示する。

 

 チーム花の追撃から逃げられるようにウォーターエリアの動向に意識を向けた。

 そして幾度かの爆発音。その内の一つは紅葉が愛用する擲弾発射機の音だ、つまりチーム花とチーム月が交戦状態に入った。チーム月には、あのRENが居る。否応なしに意識がウォーターエリアに向けられる。RENの戦いぶりが気になって、照準器でウォーターエリアを観察する。次の瞬間、照準器の視界を巨大な何かが覆い隠した。

 咄嗟に照準器から目を離す。筒状の形状、正体を確認する前にレールの上から飛び退いた。

 

「ぐうっ!」

 

 だけど一瞬、間に合わず、強烈な光が網膜を焼いた。

 なにかの爆ぜる音が聞こえたかと思えば、真っ白な視界と共に音が消えて、少し経って耳鳴りの音がし始める。RENに意識を奪われ過ぎた! 感覚だけで地面に着地し、そのまま横に跳んだ。何も見えないし、何も聞こえない。だけど、分かる。こんな事をしてくる奴は一人しか居なかった。私は肌の感覚だけで周囲数メートルの地形を読み取り、狙撃銃から持ち替えた短機関銃の弾を周囲にばら撒いた。

 そのまま後退する。地面を踏み締める感覚から今、自分が居るのは芝生の上だという事が分かった。

 即ちジェットコースターのレールの下、開けた場所だという事になる。整備されていない地面に転びそうになるけど、今この場に留まる方が悪手だ。その隙を逃す相手ではない、今日の面子で閃光弾を使うプレイヤーは一人だけだ。

 それは害獣さんの愛称で知られる────、

 

「──ゆっこね!?」

 

 少しずつ輪郭を取り戻しつつある視界、まだ葛葉小雪の表情を読み取る事は出来ないけど、

 

「ピンポーン♪」

 

 彼女が今、笑っている事だけは確信できた。

 

 

 私、歌風ハルカは妹のカナタと共に逃走中。

 茉莉が率いるチーム花は、近距離戦に特化した日和にメタを張ったチームだ。日和は近距離も熟せる狙撃手だけど、多人数が相手だと分が悪い。傭兵さんとチームを組んでいる時は、傭兵さんが妨害して日和が一撃で決めるというスタイルで戦っていた。日和は一人でも戦えるけど、自分の代わり相手の攻撃を受け止めてくれる仲間が居てくれた方が輝くのだ。

 今回、近接戦が主体の私達が日和のチームに組み込まれたのも同様の理由になる。

 

「倒せなかったのなら、せめて仕事のひとつも熟さないと!」

 

 最初に私達で敵の一人も撃破出来れば、日和が自由に動き出せる。

 少なくとも私達に活躍の場を作るという建前を達成し、日和にRENと戦う場を用意出来ると考えた。それで無理を言って、初手から攻め込んだのに戦果はゼロだ! 日和の援護がなければ、開始数分で倒されていた! もう少し戦えるって思ったのに茉莉の動きに全然、付いていけなかった!

 嘆きつつもメインエリアに戻る途中、小柄な少女が私達を待ち伏せていた。

 

「……わ、すごい。ほんとに来た」

 

 羊モチーフのふわふわドレス、今回の対戦で情報のないプレイヤーの一人。

 RENの対戦動画は何度も見たことがあるし、サフランとは一緒に対戦した仲である。幽谷風子と伽藍堂ソラは別事務所チームのエース、次回からは私達がサイバネ代表で参加して対戦する予定だ。葛葉小雪にも協力して貰って、他チームの情報はしっかりと頭に入れている。

 だけどうたた寝メリーは、本当の意味で情報がなかった。

 

「そもそもメリーさんって音ゲーマーだよね!?」

「スコアじゃなくて魅せプレイをするタイプだったはずだよ!」

「昔、違う名前で全国大会に参加して優勝したって話は本当かな!?」

「そん時はUMAって名前だったっけ!?」

 

 畜生狐とも称される小雪が、ただの人数合わせを連れてくるはずがない。

 最大限の警戒を、と思った時、ジェットコースターのレールの上で強力な破裂音と共に強烈な光が閃いた。

 閃光弾を好んで使うのは、小雪だ。そして、あの位置は日和の狙撃ポイントだ。

 小雪が何の策もなしに日和を襲うとは思えない。

 つまり私達の動きを見抜いた上で小雪は仕掛けてきた!

 

「日和お姉ちゃんが危ない!」とカナタが叫んだ。

「早く助けに行かなきゃ!」と私も妹に同意した。

 

 私が短機関銃、カナタが日本刀を手に突破を図る。

 

「CODE:アサルトラッシュ!」

 

 全速力で駆けた時、前面に半球の障壁を展開する。

 CODE:アサルトラッシュは一定以上の速度で一定時間、直進している時のみ効果が発動する。障壁は射撃武器による攻撃を弾いて無効化にする。CODE:プロテクトに対して、使い勝手は悪いのだけど射撃主体の相手に距離を詰めるには有効なCODEだ。なによりもCODE:アサルトラッシュは、一分以上走り続けてもリソースを使い切らないので、リソースの管理を気にせずに使えるのが良かった。

 私の直ぐ後ろをカナタが追走する事で二人同時に守る事も出来る。

 

「必殺! 歌風爆走列車!」

「止められるものなら止めてみろー!」

 

 これは近距離主体のプロチームが相手の陣形を荒らす時に使われている戦法でもある。

 

 しかしメリーは微動だにしなかった。

 少し眠たそうな目で頭上に手を翳し、筒状の同じ武器を三本も呼び出す。武器の形状に見覚えがあった。筒状の武器からエネルギーの刀身が噴き出す。某宇宙戦争の映画を一度でも見た事ある人間であれば、誰もが憧れるネタ装備。ゲーム中の表記は、光剣。だけどプレイヤーからはライトセイバーと呼ばれている。ネタと呼ばれる最大の要因は、ライトセイバーの刀身に重量がない事だ。

 軽過ぎて扱いが難しく、自傷が絶えない上にナイフ相手にも簡単に弾かれる。

 

 私も使いたかったけど、見た目の恰好良さに反した弱武器で扱いきれなかった!

 

「CODE:テレキネシス」

 

 空中で停止した三本の光剣が、急に軌道を変える。

 襲い来る光剣は、CODE:アサルトラッシュの障壁を擦り抜けて私の身体を貫いた。

 光剣は、シールドを突き破った。致命傷だった。

 身体が0と1に分解される。

 最後の力を振り絞り、妹に伸ばした手が届いたかどうかは分からない。




▼チーム風
〇小春日和@CYB :P狙撃銃・E突撃銃・E短機関銃:CODE・オートトラッキング
×歌風ハルカ@CYB:P短機関銃・?・?:CODE・アサルトラッシュ
〇歌風カナタ@CYB:P重機関銃・P日本刀・?:CODE・テレポーテーション

▼チーム花
〇小春茉莉@CYB :P二挺拳銃・煙幕弾・?:CODE・リコチェット
×幽谷風子@GoP :P軽機関銃・P拳銃・?:CODE・プロテクト
〇伽藍堂ソラ@Emo:P散弾銃・P金属バット・P手榴弾:CODE・アクセラレーション

▼チーム雪
〇葛葉小雪@CYB   :閃光弾・?・?:CODE・?
〇うたた寝メリー@PCO:E光剣・E光剣・E光剣:CODE・テレキネシス
〇サフラン@CYB   :?・?・?:CODE・?

▼チーム月
〇呉紅葉@CYB :P銃剣付突撃銃・E小銃・P擲弾発射器:CODE・アクセラレーション
〇久遠綴璃@CYB:P狙撃銃・?・?:CODE・?
〇REN     :P片手剣・P短剣・P大鎌:CODE・バースト
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