メスガキゲーマーのわからせたい! 保管庫 作:にゃあたいぷ。
全体的に背が低い建物が多いキッズエリアにも高い建造物は存在する。
メインストリートとキッズエリアの境目に設置された巨大迷路の中心に建てられた見張り台。子供達が道に迷わないように作られたものであり、相応に高く造られてはいるが安全性を考慮して二階部分までしか道が作られていなかった。だけど外から攀じ登れば、見栄えだけの三階まで足を踏み入れる事が出来るし、屋根の上にも登れる。そこまで高い位置に上る事が出来れば、かなり遠くまで射線を通すことが出来た。
距離があるので発射から着弾まで数秒のラグがある。
私の腕前では、相手の動きを予見して当てることは出来ない。その事は葛葉小雪も承知の上だ、なので数秒の時間を稼ぐと彼女は言った。
そして実際、彼女は成し遂げた。
だけど、狙撃の弾が当たる直前、日和は身を捩る事で致命傷を避ける。
結果、小雪は返り討ちになってしまった。
「ん~、悔しいですね」
射撃の方角から私の位置がバレたと思うので場所を変える。
見張り台から飛び降りた後、垣根の迷路を低空で飛び越えながら迷路を脱出する。此処から取れる選択肢は三つ、東のキッズパークに戻る道。日和の居るメインパークまで強行する道、最後に南部のメインストリートに行く道だ。この選択肢の中で妥当なのはメインストリート。キッズパークには、背の高い建物が少ないので狙撃ポイントを特定されやすいのが難点。メインパークは何処かで身を晒す必要がある為、狙撃手の日和相手に無事辿り着けるかが怪しい。メインストリートの欠点は、この選択を日和も読んでいることだ。
……此処で小雪が生きていれば、指示の一つや二つ、三つに四つと出してくれるのだけど、彼女は倒されてしまっている。惜しい人をなくしました、と涙ながらにメインストリートを目指してタッタカターと駆け出す。
結局、現状だとメインストリートに籠るのが一番、強いのだ。
遊園地の南にある出入口から中央広場まではメインストリートで繋がれている。
メインストリートの頭上は硝子張りの屋根で塞がれており、通りを挟んだ左右には欧州をモチーフにした建造物が建ち並んだ。
私は建物を伝って硝子張りの天井へと駆け上がった。
「ひゃあっ!?」
硝子張りの天井には先着が居た。
頭に軍用ヘルメットを被った文系少女がビクリと身体を跳ねさせた。彼女の事は、それはもうよくよく知っている。大きな丸眼鏡に三つ編みのおさげの文学少女。小動物のような愛嬌と落ち着いた声で現実社会に疲れ切った視聴者に中毒性のある癒しを与え続けるサイバネ所属の人気バーチャルストリーマー久遠綴璃その人だ。そして彼女をデザインしたのは何を隠そうこの私、サフランである!
3Dデザイナーとして一家言ある私が語るに、Vsは魂が詰め込まれて初めて命が吹き込まれる。人形に欲情するのは特殊性癖だけど、命の宿った存在に欲情するのは一般性癖。感情は所詮、電気信号の反応に過ぎないと言った者がいた。しかし魂の重量は21gという言葉も残されている。つまりは魂には電子質量21g分の情報量が込められていると言い換える事も可能なはずだ。魂には熱量がある、心には温もりがある。私が心のち〇こに従って具現化した性癖てんこもりのデザインが実際に命あるものとして魂が入った時、閉じた瞼が開かれた時に「おんぎゃあ」と電子の世界に新しい生命の誕生を実感する。
即ち久遠綴璃は私が腹を痛めて産んだといっても過言ではない。
世に送り出されたVsは様々な事を経験し、中に込められた魂と共に成長する。
ビバVs! アモーレ久遠綴璃!
私は世に存在する全てのロリVsを愛してる!!
次の衣装は絶対に獣耳と尻尾を付けてやる!
「……皆様は知っていますでしょうか? 3D化するだけでは、ただのマネキンで無味無臭なのですが、魂が入ると良い匂いと味がします」
no name:何を言ってんだこいつ?
no name:モデルに臭いなんてある訳ねーだろ!
no name:いやでも良い匂いしてそうだし…
no name:あるあr…あるある
no name:おかしいな?なんで味を知っているんだ?
no name:つづりちゃんがびっくりした時の猫みたいに固まってる
彼女に似合うのは猫? いや犬とか兎の方が可愛いと思う。
私が彼女の次の衣装について色々と思案していると綴璃は手に持っていた狙撃銃を脇に置いて、代わりに散弾銃を手に取った。
遠目から見ても分かる。あの散弾銃は拡散性を重視したタイプだ。
「傭兵さんが、近付かれたらこれでも撃っとけって……」
「あ、待って」
綴璃は無駄のない動作で流れるように散弾銃の引き金を引いた。
◆
時を遡って五分前。
◆
中央広場の中心には、大きな舞台が設置されている。
此処は遊園地で開催されるパレードの終着地点であり、DLCのストーリーでパレードの一部始終を確認する事が出来る。メインストリートから始まるパレードは中央広場を経由し、西部のウォーターエリアから北部のメインエリア。そしてキッズエリアを経由して、子供達を引き連れて中央広場に戻ってくる。実際の劇団員を雇ってモーションキャプターで作られた中央舞台のショーは一見の価値がある。
このDLCの残念な所はゲーム内のキャラクターに焦点を当てたストーリーで、ヒロインとも呼べるキャラクターと親密になる為のイベントとしてパレードが組み込まれている所だ。即ち、御姉様と一緒にパレードを楽しむ事が出来ないのである! まあ私がクリアした時には、御姉様も爆速でクリアしていたのですけども! 兎も角、日中からショーパフォーマンスを行う為に用意した空間は見晴らしが良くなるように作られている。
私、小春茉莉が装備するCODE:リコチェットは今日のマップでは、活かせる場所が限定されている。
「此処からどうするんだ?」
革ジャンを着た伽藍堂ソラが問い掛ける。
中央広場に戻って来たのは、チーム月との交戦を避ける為だ。
RENが好戦的な性格をしている事はよく知っている。相手が強ければ強いほど嬉々として特攻を仕掛ける彼女が、私達の中で最も強い御姉様を狙うのは自明の理である。そして御姉様が居る可能性が高いのは北部、中央広場を経由して来たRENは東部か南部のスタートなので次に彼女が目指すのは、まだ探索してないエリアの中で最も近い北部になる筈だ。私達が交戦した時、RENが突出していたのも根拠のひとつ。紅葉はRENの手綱を握れていなかった。よって御姉様と対戦するまでは無駄に消耗したくない私は、ウォーターエリアから南に大きく迂回してから中央広場に戻って来る事でREN達と再び出会う事を避けた。
周囲を警戒しながら半透明のウインドウを出し、各チームの被害状況を表示する。
チーム月以外の三チームで一人ずつ脱落している。チーム雪のリーダーである葛葉小雪が序盤で脱落しているのは少し意外だった。恐らく序盤で御姉様と交戦してしまったのだと推測する。
とりあえず開けた場所で身を晒し続けるのも不味いので一旦、メインストリートを目指す。
視界の端に表示されるレーダーに反応があった。
既にメインストリートに居るプレイヤーが一人、中央広場に近付いて来るプレイヤーが二人。
RENと紅葉の二人はまだウォーターエリアに居るようだ。
そしてメインエリアにポツンと一人居るのは、恐らく御姉様だ。
不味いな、と小さく呟く。
戦力が中央広場に集まりつつある。
出来れば、御姉様を消耗させたかったのだけど、このままでは私達の方が乱戦に巻き込まれてしまいそうだ。
シールドにも自動回復はある。だけど完回復する訳ではなくて、一度に受けた攻撃の半分程度だ。
御姉様の狙撃で半分以上を削られた私のシールドは三分の二まで回復している。
「……とりあえず、レーダーに映った敵の位置を確認ね」
北から一人、東から一人、西にはRENと紅葉。そして南に待ち伏せる敵が一人。
せめて囲まれないように南の敵を排除してから迎え撃つしかなかった。中央広場からメインストリートに繋がる建物の角に身を隠し、レーダーが映っていた方角を観察する。そこには建物しかなかった。自分の位置とレーダーに敵が映っていた位置を何度も確認し、もしかしてと考えた時に背後から重機関銃の砲身が唸りを上げて回転する音が聞こえた。時間を掛け過ぎた。振り返るよりも先にメインストリートの中に飛び込んだ。
大丈夫、敵の位置は恐らく上。レーダーには、高度までは表示されない。
「……ソラ?」
しかし相方のソラは、別の答えを導き出していた。
恐らく中に敵が隠れていると考えたはずだ。そして彼女が考えた最悪のシナリオは、メインストリートに隠れた敵と中央広場に現れた敵に挟み討ちにされる事。私がメインストリートに飛び込んだのを見た彼女は、私に背後を任せると同時に私の背後を守る為に中央広場に飛び込んで来た敵に向かった。私が呼び止めるよりも早く、彼女はCODE:アクセラレーションを起動して駆け抜けていった。
重機関銃から逃れる為に中央広場を囲う建造物に沿って、時計回りで北に居る敵に向けて駆け抜ける。
中央広場の周辺にある店は、飲食店が多い。歌風カナタが放った弾幕がテラス席の柵を破壊し、机や椅子を粉々にして行った。その中をソラが金属バットを振り回し、障害となる物を全て薙ぎ払って突き進んだ。その姿は、まるでハリウッド映画のアクションスターだ。辛うじて彼女が弾幕の嵐を潜り抜けた先に待ち構えていたのは、中央広場からウォーターエリアを繋ぐ道。建造物が途切れる。遮蔽物も何もない開けた空間で、ソラは更に加速して突き進んだ。
勇気の一歩は重機関銃の銃口を置き去りにする。
しかし背中から迫り来る弾幕にソラは咆哮を上げて、手足を懸命に振り回す。
道も半ば、その時、ウォーターエリアの方角から人影が飛び込んで来た。
金色の長い髪、振り抜いた片手剣が的確に伽藍堂ソラの頸を刎ね飛ばす。
同時に重機関銃の音が鳴り止んだ。
メインエリアに続く道から重機関銃による斉射を続けていた歌風カナタの両腕を切断される。
光剣が空を飛んでいた。数は三本、最後の一本がぐるんと横に薙ぎ払われて、カナタの頸を刎ねた。
なんで此処にRENが居る? 御姉様の所に行くはずでは?
兎も角、中央広場で戦うのは得策ではない。
私はメインストリートの奥へ向かおうとした時、一瞬、RENと視線が交差した。
背を向ける。私の背後で衝撃波の音が響いた。
少し音がおかしかった。何時もよりも大きな音がした気がした。
いや、まるで衝撃波の音が重なったかのような感じだ。
風を感じた、首筋に冷たいものを感じ取る。
「次はちゃんと戦ってよ」
咄嗟に身を屈めた、頭上を鋭い刃物が掠める。
前転の要領で飛び込んで、逆さまになった視界で片手剣を振り抜いた姿勢のRENを二挺拳銃で狙い撃った。
しかし私が引き金を引くと同時にRENがCODEを使用し、衝撃波の反動で真横に飛んだ。
私はRENを視線で追いかけながら身体を翻して立ち上がった。
頭が少し軽く感じる、私の銀髪のツインテイルがバッサリと地面に落ちた。
気にも留めず、RENの挙動を確認する。
「CODE:バーストの連続使用は五回、五回目でリソースが尽きる。私の推測が正しければ、今の攻防で三回使い切った」
RENは動きを止めず、地面を蹴って距離を詰める。
メインストリート、少し広いけど仕方ない。少なくとも左右が囲まれているだけでも戦い易い。
此処が正念場だ。私は覚悟を決めて、RENに向けて一歩、歩み出す。
「私は小春茉莉、team.風花雪月のメインアタッカーよ!」
「私はREN、趣味は強いもの虐め。お姉さんは強いのかな?」
飛び込むと同時に振り下ろされる片手剣を交差させた二挺拳銃で受け止めた。
体重を乗せた一撃も一度、耐え切れば、下から押し返す力の方が強くなる。
私は、RENの片手剣を弾き返し、大きく身体を開いたRENに二挺拳銃の銃口を突き付けた。
後は引き金を引くだけだ。
しかし何時の間にか投げられていた投擲物を視界に捉える。
首を捻って回避、左の目元を掠めた。
思わず閉じてしまった片目、数舜遅れて放った銃弾はRENの長い金髪を撃ち抜いた。
身を屈めたRENがもう一度、突っ込んでくる!
「纏わりつくな、鬱陶しい!」
「私は好きだよ強い人。そんな相手を降して見下した瞬間が最高に気持ちいい」
好戦的な笑みを浮かべるRENを見た私が次に叫んだ言葉は、奇しくも同じ言葉だった。
「「そのお高く留まった面をわからせてやるッ!!」」
◆
メインストリートに駆けて行ってしまった相方の背中を眺める。
あんまり突出しないで欲しいな。と深く溜息を零し、武器を突撃銃から擲弾発射器に持ち替えた。
背後に感じるピリピリとした威圧感。強者特有の存在感を肌身に感じ取りながらも、ゆっくりと後ろを振り返る。
三本の光剣をCODE:テレキネシスで操り、自分の周りに展開する少女。
もこもこのドレスに渦巻いた角は羊を髣髴とさせる。
「……仕方ないねえ」
私、呉紅葉は思考の一切合切を放棄した。
この後に小春日和が待ち構えていることを忘れて、これから始まる一戦に全身全霊を賭ける。
中央広場、開けた場所。既に交戦した後がある。
重機関銃の痕跡。随分と派手に暴れていたようだけど彼女とは関係なさそうだ。
少女は眠たそうに欠伸を零す。
「それは流石に油断し過ぎだねえ」
私は、躊躇せず擲弾発射器の引き金を引く。
シュポンと発射される擲弾。相手に着弾するか確認する前に擲弾発射器の次弾を装填しながら距離を詰めた。
羊の少女は両手を翳す。すると三本の光剣が同時に動き出し、その内の一本が擲弾を両断する。
「なるほど」
光剣を三本別々に操っている訳ではないようだ。
三本同時に別の動き方をするので分かり難いけど、三本の動きが一つの動作になっている。
人間の脳は並列処理ができる構造ではないので可笑しいとは思ったけど、そういう事なら納得も出来る。
バンドのドラムも両手足で別々のリズムを刻んでいるけど、脳は一つ。それと一緒だ。
種が分かれば、これ以上観察を続ける意味はない。
no name:おい、説明しろ
no name:テレキネシスは複数同時に操れても別々に動かすのは無理って話じゃないですかヤダー!
no name:勝手に納得してんじゃねえ
no name:ミュート外してどうぞ
CODE:アクセラレーションを起動、急激に加速する世界で銃剣付き突撃銃を構える。
羊の少女は、迫る私を見て周囲に展開した二本の光剣を手に取った。空中で操られている光剣は一本、構わず私は突撃銃の引き金を引き絞る。けたたましい発砲音と共にばら撒かれる銃弾。羊の少女は、驚く程の手捌きで銃弾を叩き落す。ギョッとした。彼女が両手に握る光剣の刀身が四本以上もあるように見えた。幾つか被弾はしているようだけど、急所は避けている。これだけで決定打を与えることは難しそうだった。
何よりも、厄介なのは空中に放たれた一本の光剣だ。
青色の光で出来た刀身が飛来する。まるで生き物のように弾幕の中を掻い潜って来た。
「くッ!」
突撃銃の先端に付いた銃剣で光剣を弾き返す。
しかし、それは射撃の手を緩めるのと一緒、羊の少女は半開きの目で私を見た。
タンと地面を蹴り、踊るように距離を詰められる。
突撃銃を構え直した。直後、頭上から飛来した光剣に銃身を弾かれる。
舌打ちする。もう距離は、相手の間合いだった。
「強い……ッ!」
握り締められた二本の光剣に空中を自在に動き回る一本の光剣。
今まで見た事もない戦法に対策を思い付くことが出来なかった。
▼チーム風
〇小春日和@CYB :P狙撃銃・E突撃銃・E短機関銃:CODE・オートトラッキング
×歌風ハルカ@CYB:P短機関銃・P短機関銃・?:CODE・アサルトラッシュ
×歌風カナタ@CYB:P重機関銃・P日本刀・P手榴弾:CODE・テレポーテーション
▼チーム花
〇小春茉莉@CYB :P二挺拳銃・煙幕弾・?:CODE・リコチェット
×幽谷風子@GoP :P軽機関銃・P拳銃・?:CODE・プロテクト
×伽藍堂ソラ@Emo:P散弾銃・P金属バット・P手榴弾:CODE・アクセラレーション
▼チーム雪
×葛葉小雪@CYB :テーザー銃・閃光弾・P弾道短刀:CODE・ダミードール
〇うたた寝メリー@PCO:E光剣・E光剣・E光剣:CODE・テレキネシス
〇サフラン@CYB :P狙撃銃・?・?:CODE・?
▼チーム月
〇呉紅葉@CYB :P銃剣付突撃銃・E小銃・P擲弾発射器:CODE・アクセラレーション
〇久遠綴璃@CYB:P狙撃銃・P散弾銃・?:CODE・?
〇REN :P片手剣・P短剣・P大鎌:CODE・バースト